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FRBも日銀に似てきた?=クルーグマン教授がBernanke-sanと呼び始めた
 米FRBが公定歩合を引き上げた。今後の正常化につながる措置であるならFF金利の引き上げ(引き締め)も視野に入れているとは思われるが、単に公定歩合の引き上げだけみれば、個別銀行向けの貸出を駆使した流動性供給の正常化に過ぎない。私は、それだけの技術的な措置であり、FF金利の引き上げは当分はないだろう、と思っている。だが、今回の早過ぎる?タイミングはハト派のエコノミストらには不評で、その筆頭の1人がクルーグマン教授であった。
 ツィッターでは簡単に触れたが、改めてこちらでも紹介したい。クルーグマン教授は「Disinflation」というエントリーで最近の物価動向を分析し、ディスインフレ色が強まっていることを指摘している。
 前段では、物価指数としてはクリーブランド連銀の“刈り込み”指数に注目していることを紹介。その上で、「these indicators tell a story of dramatic disinflation in the face of a weak economy」(これらの指数は弱い景気動向を受けて劇的なディスインフレの状況を物語っている)としている。
 で、結論は以下の通り。
 「I find this a scary picture. For one thing, it suggests that deflation may not be too far in the future. But beyond that, there’s a growing belief among sensible economists that we need higher, not lower inflation. What we’re doing now is moving in the wrong direction, with real interest rates rising even as the nominal rate remains at zero.
 We may have to start calling the Fed chairman Bernanke-san, after all」
要約 (これらの指数から)恐ろしい状況であることが分かる。そう遠くない将来にデフレが到来することを示唆しているのだ。分別あるエコノミストらの間では、インフレ率は低いよりも高い方がよいとの認識が広がりつつあるのだが、われわれは間違った方向に行こうとしている。つまり、名目金利はゼロなのに実質金利は上がっていくのだ。
 われわれはFRB議長を“バーナンキさん”と呼ばなきゃいけないかもしれない」
 バーナンキ議長には酷な言い方で、私は冒頭述べたように利上げするとは思わないのだが、IMFのブランシャール局長の論文(インフレ目標は高い方がいい、例4%)に傾倒しているクルーグマン教授にはFRBが日銀化しているように映っているのかもしれない。
 ちなみにお馴染みアトランタ連銀のアルティグ局長はブランシャール論文に懐疑的。白川総裁もそう。バーナンキ議長自身は恐らくはブランシャールに近いのではないかと思われるが、特にこの件ではまだ見解は示しておらず?、公定歩合引き上げという行為で日銀と同類とみなされたのだろう。
 白川・バーナンキのコンビが似た者同士とみなされる日が来るとは…。いやはや。
by bank.of.japan | 2010-02-23 00:21 | FRB&others | Comments(0)
政策金利の“水戸黄門”(だった)公定歩合の報じ方
 日本では政策金利の「公定歩合」は2001年2月に消滅した。言葉がなくなったので、マスコミは使いたくてうずうずしても使えなくなり、強いて使うなら「補完貸付金利(旧公定歩合)」といった程度。でも、これだと迫力も何もないので、そのうち寂れてきた(と記憶している)。で、残った「公定歩合」が米FRBのやつである。この辺、ツィッターでも多少触れたのだが、discount window(連銀貸出)に適用する金利=discount rateの翻訳が「公定歩合」なのである。
 もちろん、FRBのdiscount rateも日銀の公定歩合と同様にとっくにロンバート化(政策金利の市場金利より高い水準で受動的に貸す際の金利)しており、公定歩合とは言っても昔とは意味は全然違うのだが、discount windowのdiscount rateと言語はそのままなので、翻訳も「公定歩合」のままとなっている状態だ。で、そういう言葉をマスコミ的にはどう報じれば良いのかは難しい。
 「公定歩合」はかつては政策金利の“水戸黄門”だったので、言葉としては今なお(少なくとも私の世代は)インパクトがある。水戸黄門的なイメージをはらむところを強調した記事に仕立てるなら、本日の日経夕刊のように堂々の一面トップのデカ見出しとなる。ただ、実際には非常事態に対応した超流動性供給の修正の一歩に過ぎず、世間が騒ぐことではないと達観すれば、朝日夕刊のようにスケート特集の巨大記事に紙面を委ねて記事にすらしない、というのもアリ(掲載ありとの指摘あり、改めてチェックします)。中間を行ったのが読売夕刊ですかね。
 FOMCでは「The modifications are not expected to lead to tighter financial conditions for households and businesses and do not signal any change in the outlook for the economy or for monetary policy」と強調しているので、あくまでもテクニカルな修正といった位置付けだ。実務的には淡々とこの声明に沿って書き、利上げ(引き締め)時期は市場関係者の予想を取りまとめるというのが普通の書き方のように思われる。
 将来の引き締めという意味での利上げを予見させるアクションであるが、(全然タカ派ではないと思われる)バーナンキ議長の心中を察するならば、公定歩合引き上げを水戸黄門的に報じるのは少し可哀想でもあるかな、とは個人的に思ったりする。翻訳の方で「公定歩合」が残ってしまったから仕方がないのだが…。

 公定歩合の引き上げで上限金利は0.75%となった。一方、政策金利のFF誘導目標は0-0.25%のまま。もっと上限を上げてからFFを上げるのかどうかは分からない。金利の絶対水準は超低いので、上限0.75%のままでもFFの引き上げは可能。どうするのでしょうか。まあ、当分は今の状態を放置して金融経済情勢の好転で米インタバンクが強く利上げを織り込んでからゆっくり動けばいいのじゃないか、とは思うが。
 気になるのは、FRBの流動性供給が銀行救済とみなされ、それなりに世間的な批判が強い、と言われていること。衆愚的にタカ派ポーズを取らざるを得ず、出口政策をやや無理して進めることにならなければいいが、と思っている。バーナンキ議長も大変である。
by bank.of.japan | 2010-02-19 21:20 | FRB&others | Comments(4)
あの山本幸三先生も読んでいた白川総裁の“教科書”
 本日は、衆院予算委で日銀の白川方明総裁が参考人で登場。質問者は、あの山本幸三先生でありました。もはや金融政策をマニアックに追及する国会議員は山本先生ぐらいしか残っておらず、そのマニア度が期待された質疑でありました。
 私は、ご案内のように全然リフレ派ではない(方法によっては演技的にやるのはあり、と思う)ので、山本先生の見解には同調はしないが、その変わらないマニア度にはニヤリとさせられた。「マッカラムルール」とか、「ワルラス」(この名前でコメントしてくれる方もおりますね)とか滅多に聞かれない“専門的な言葉”にオーとなりましたよ。
 気が付いたのは、山本先生と白川総裁のやりとりが超空中戦となって、このところヤジで質疑が聞き取れないことが多い国会審議なのに、しばしばシーンとしてしまったこと。ヤジの入れようもないくらいにオタッキーになった、ということですね。シーンというよりポカーンであった、のが実情に近いと思うが。
 一番ツボだったのは、山本先生が「私も白川総裁のあの厚い本を読みましたよ」というところであった。もちろん、山本先生なので、批判的に読まれたのだと思うが、それでも敵を知るにはやっぱり読まざるを得ない本であった、ということが確認できた。
 この本、私も持っている。ただ、全部は読んでいない(先生は全部読んだのだろうか)。必要な項目を必要なときに読んでいる、という感じである。つまり、金融政策の実務を確認するうえで、非常に有用な参考書である、ということだ。日銀の方々も多分同じではなかろうか。まあ、いつも見聞きしていることなので、持っているけど読んではいない、という人が多い(知る限りでは)。
 金融機関に入ってマーケットに携わるという人、マクロ経済で金融政策を研究する人、個人投資家で金融政策に強い関心がある方、などにはお勧めであります。実際の金融政策について網羅的に解説した教科書はこれぐらいしかないので。まあ、いきなり読むと難儀かもしれません。
 山本先生と白川総裁の対峙は、国会議員が日銀総裁を質す、というより東大小宮ゼミの門下生同士の論戦という印象を受けて仕方がない。色々な思いが詰まった対峙ではないかと思える。年齢も近く、同郷でもありますしね。
 それと山本先生にはお節介かもしれないが、マネタリーベース(増やせ論)に立脚した攻めはどうしても単調に流れがちで、日銀側想定問答もほぼ予想されたものとなる。我々メディア側には過去の論戦の蒸し返しみたいなもので、思わず飛びつく新鮮なネタは浮上しにくいのではないかと思った。もう少し欧米中銀の手口を取り入れて攻撃方法を多様化し、日銀総裁が答弁で窮するような多段階型の攻めもあるように感じた。
 白川総裁はマニアックになるほどマニアに答弁する(底知れぬマニア)ので、新鮮なネタが浮上するかもしれない。また、マニア度が深まる途中で、道を間違えて万事休すになるかもしれない。これは巧妙な質問の勝利ですね。金融政策の理論と実際の間には必ずぜい弱なポイントがあるので、ここを突くしかない。そこを知るためにも白川総裁の“教科書”は必読。ただし、娯楽性はゼロです。
by bank.of.japan | 2010-02-16 21:17 | 日銀 | Comments(3)
ギリシャ悲劇の影でラトビアの惨劇=クルーグマン教授より
 財政悪化の深刻なギリシャの悲劇が世界的な注目を浴びている中、クルーグマン教授が「Riga Mortis」という短いエントリーをアップしていた。世界的なバブル崩壊でバルト方面の打撃も大きかったのだが、Club Medの影に隠れてこのところ忘却されていた格好だ。教授のエントリーからは、ギリシャ以上の悲劇に見舞われていることがうかがえる。

 「Latvia isn’t in the eurozone. But its determination to keep a fixed exchange rate against the euro lies behind the catastrophe」
→ラトビアはユーロ圏ではないが、ユーロに対して自国通貨のペッグを堅持している(=切り下げしない)。しかし、実体経済は悲惨な状況にある。

 悲惨な状況は、エントリーにリンクされたリポートにうかがえる。
「The Latvian recession, which is now more than two years old, has seen a world-historical drop in GDP of more than 25 percent. The IMF projects another 4 percent drop this year, and predicts that the total loss of output from peak to bottom will reach 30 percent. This would make Latvia’s loss more than that of the U.S. Great Depression downturn of 1929-1933」
→ラトビアの不況は2年以上続き、GDPは25%以上も縮小した。IMFの見通しでは、今年はさらに4%減少し、GDPはピークから30%近くも落ちると予想される。ラトビアの経済的損失は米大恐慌を上回る可能性がある。

 本来、ユーロ圏ではないラトビアは通貨切り下げという選択肢がある(これもコストは大きいが)。切り下げないで不況をしのごうとすると、通貨調整の代わりに国内経済の大調整(=大不況=経済の切り下げ?)が起きてしまう格好だ。 リポートの題名(The Cost of Adjustment With An “Internal Devaluation”)はそんな意味ではないかと思った。
 
 独仏を枢軸とするユーロ戦線。あちらこちらが泥沼化し、ユーロを囲む全戦線の維持が難しい状態にある感じだ。バトル・オブ・ブリテンの赤い新聞(FT)、日本を語っている場合ではないような…
by bank.of.japan | 2010-02-11 15:15 | ユーロ | Comments(8)
オーストラリア中銀が教える為替介入法
お知らせ=ブログパーツを強化し、簡単に翻訳機能が使えるようにしました。クリックして単語をなぞるとエキサイト翻訳が自動的に浮き上がります。
 
 オーストラリアの金融政策は、私は全然ウォッチしていないのだが、為替市場では注目されているようだ。オージー・円やっている人が多いからだろうか。予定された利上げがなかったとかで、一部では騒がれたようですね。ウォッチしていないのは、①GDPがとても小さい(スイスぐらい?)②そういう国の金融政策はグローバル的にはあまり影響がない③日銀でも話題にならない④同様にG7でも話題にならない-ため。
 ただ、そうは言っても日本人には昔から馴染みの国で、たくさんの人がオージー・円を手掛けるという行為が、あの国の金融政策にどんな影響があるのかな、と軽い興味を覚えてホームページをざっと眺めてみた。で、ちょっと面白いなあ、と思ったのは、マーケットオペレーションの中に「為替」の項目があったこと。その中に為替マニアor介入マニア(私は違いますが)にとっては興味深い記述があった。介入方法を具体的に紹介しておったのです。項目はここ
 その中のポイントは「How Does the Reserve Bank Intervene? 」です。
まず為替相場を操作する場合は以下のようにしている。
「For example, if the RBA was intervening with the intention of influencing the exchange rate, it could enter the broker market directly through the electronic broker market. Because the broker market is the main mechanism used by interbank market participants to trade among themselves, knowledge of the RBA’s presence in the market is immediately available to all active interbank players. They typically also inform their clients very quickly. This ‘announcement effect’ can itself have a significant impact on the exchange rate」
 要約→為替相場を動かしたくて介入したい場合は、ブローカーマーケットに直接介入する。そうするとインターバンクの参加者らはすぐに介入が分かってクライアントにしゃべりまくり、アナウンスメント効果がでかくなるんだよね。
 それと、オーストラリア中銀は外貨準備の調整(運用?)もやっており、その場合の為替取引(介入ではない)は以下の通り。
「if the RBA was intending to replenish foreign exchange reserves after a period of intervention, the aim might be to rebuild reserve holdings without having a significant impact on the exchange rate. Under these circumstances, the RBA might use an agent bank, so that the market as a whole is not aware of the RBA’s presence」
 要約→介入後に外貨準備を補強したい時は、相場に影響を与えなくないので、エージェントバンクを使う。そうすると、介入は気付かれず、相場に影響はない。(エージェントバンク=為替取引を委託された市中銀行=一般的には中銀取引の守秘義務を負う)

 世界的には介入と外準調整(=運用含む)を併用する国が多く、このオーストラリア中銀の説明は非常に参考になるので、為替取引に熱心な方はご一読を。日本みたいに「市場に出るのは原則として介入」という国はむしろ例外で、上記の解説はある意味、非常に新鮮に感じる。これぐらいMOFも解説したらいいのにとは思うが、そうすると介入の神秘性が薄れてつまらなくなるかもしれない(威厳も落ちる?)。口先介入、不意打ち介入、びっくり介入、隠密介入、覆面介入、だらだら(ジャンキー)介入、国売り介入、レートチェック、ポジションチェック、チェックまがい、まあ好きにやったらよろしい。

感想 豪州は基本は資源国で、経済も超小さい。それにしては豪ドルの取引規模はかなり大きく、ポンド・ドルぐらいはあるんですかね。これはかなりいびつな感じで、為替投機国ようなイメージがある。本当は、管理フロート色を強めて、資源取引に応じた実需原則の為替売買にとどめるのが身の丈に合っているように思う。オージー・円に突っ込むのはご自由なのだが、移住したいとか思わないのであれば、ボラの比較的高い通貨で短期の投機をやっている、と割り切った方がいいのかも。
 ドルを基軸とする管理通貨制度がぶっ壊れ、日本もかなりの社会不安が起きると思うのであれば、穀物と肉が豊富な豪州はラストリゾートの一つとしては有望。いいところらしいですし、英語が苦にならず、日本を簡単に捨てられるなら、淡々と豪ドル投資をやるのがいいかも。ニュージーランドもいいけど、あそこはちょっと寂しい。カナダもいいけど寒そう。
by bank.of.japan | 2010-02-03 21:30 | FRB&others | Comments(6)


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