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特オペ止めて時間軸(緩和)カードを切るとは…=日銀決定会合概況
 やっぱり「日銀心と秋の空」でありましたね。前回会合のエントリーで紹介したように、某紙S氏に 「『日銀心と秋の空』ではないが、時にこの中央銀行はハシゴ外すこともあるから要注意よ」と忠告しておいたのが、たまたま会見後にS氏と一緒になった。激しく納得しておられたようです。外され方がある意味見事でしたので。この中央銀行の土壇場の心理は微妙なので、近接戦になると危険。適当に距離を置くのが無難と思っております。
 で、今日のポイントは以下でありましょう。まずは、調節方針のステートメントに注目。
「1.当面の金融政策運営
 当面、現在の低金利水準を維持するとともに、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を通じて、きわめて緩和的な金融環境を維持していく。
 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針については、以下のとおりとする。
 無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.1%前後で推移するよう促す。」
 一パラ目の「当面、現在の低金利を維持する」の「当面」は次回会合よりもかなり先までの期間概念であり、これをステートメントで表明したということは「時間軸政策」の一歩でありましょう。日銀としては、異例措置の解除と出口政策を切り離すための「説明」との位置付けかもしれないが、二パラ目の従来のディレクティブが「なお書き」みたいに劣後した感じになっており、作戦書の書き方としては「時間軸政策」に定義される。
 この時間軸政策は、景気が二番底に向かう局面における最初の緩和カードだと思っていたが、異例措置解除との引き替えで繰り出すのは意外であった。歩を取って銀(or金)を捨てた感じに見える。小さいロスカットのために多大なコストがかかったような…。たかがオペ、されどオペ。
 
 「展望リポート」で日銀内外の専門家筋に注目されたのは、何と言っても潜在成長率の大幅引き下げ。物価の下落幅を縮めるために下げたように見えて仕方ない、というのがもっぱらの見方。ちなみに、日銀は世界で一番潜在成長率を語る中央銀行であるらしい。語る、というのは実践のロジックに応用することで、これは結構リスキーとの見方も内部ではある。未来を見る(展望する)とき、人はもちろん「願望」に包まれる。
by bank.of.japan | 2009-10-30 20:58 | 日銀 | Comments(9)
新郵政を赤字国債の受け皿にしても国内の国債消化力が増すわけではない
 引き続きツィッターの方に傾斜気味で、こちらのエントリー更新が停滞しており、申し訳ありません。今回もツィッターでのネタを展開する形となりますが、もともと思い付きネタをエントリー化している側面が強く(まさに備忘録的)、ツィッターやるとネタがそちらで捌けてしまうという感じでありましょうか。で、それはともかく、斎藤次郎氏の起用で新郵政が赤字国債の受け皿に使われるのではないか、との観測についての考察であります。
 郵政はご案内のように預金を原資に投融資している。何かを新たに買う場合、原資が必要となる。金がなくては何も買えないわけだ。資産を増やすには、それに応じて負債(預金or市場性調達)も増加しないといけない。政府が赤字国債をどんどん買わせるなら、郵政は預金をどんどんかき集める必要に迫られる。で、この預金はもちろん無から湧いてきやしないので、誰かがどこかに貯金しているものが郵貯に流れることになる。
 まあ、一般的には民間銀行の預貯金が郵政に流れ、それを元手にして郵政は新規に国債を買っていく。で、問題は、預貯金が抜けた民間銀行であり、当然ながら負債の減少に合わせて何かを売ることになる。まあ、普通は流動性の高い国債の売却となる。郵貯が預金を増やして国債を買おうとすると民間の国債売却につながる構図でありましょうか。
 国はもちろん国債発行で調達した金は使うので、いずれ使われた金は経済をめぐって(大半が国内に滞留するなら)かなりが預貯金に戻ってくるはずだが、戻るまでにはかなり時間がかかるので、国債需給は増発の規模次第だが、やり過ぎると発行時点で郵貯がどんなに頑張ってもだぶつき気味になる、と考えられる。まあ、私自身は国債増発してもデフレ基調下ではそう簡単には金利は上がらないとは思うが、増発速度は緩めにしておいた方が無難でありましょう(別に積極的にやれ、という立場ではない)。
 奥の手として、日銀による郵政向け貸出というものが考えられるのだが、これは間接的な日銀国債引き受けなので、直接やった方が分かりやすい。そもそも民主党は超強力な財金分離主義者なので、やるはずもないのだが(ですよね?)。ということで、郵政は国債引き受けマシーンにはならん、という結論でありました。実態としては「人を大量に雇った公共事業」という認識でいいんじゃないだろうか。
 斎藤次郎社長、それでよいのですか?

ps このブログ、あちこちに引っ張られる形で紹介されるようなので、いろいろ考えてコメントは承認制(試験的な面が強いです)としました。あしからず。
by bank.of.japan | 2009-10-29 22:53 | マーケット | Comments(10)
「経済的不平等はテロリズムを招くのか?」
 物騒な表題だが、これはMark Thoma教授の「Economist's View」にあったエントリー、"Will Economic Inequality Lead to Terrorism?"を訳したもの。扇情系のブログならスルーするところだが、Thoma教授がピックアップしたものなので、備忘録的に紹介しておきたい。
 テロリズムとは、アルカイダなどによるものではなくて、貧困化した米国人によるもの。元ネタはこちら。「It Could Happen Here」という本を書いたBruce Judson氏がラジオ番組に出演した際、視聴者からかかってきた電話内容がただならぬものであったようだ(Judson氏については、私はよく知らない)。
 電話をかけてきたのは、60才の元原子力エンジニア。
 「I’m an unemployed nuclear engineer. I’ve worked on 13 nuclear power plants. Making a dirty bomb is not a big deal. I’m not going to go out and tell everybody now to do it, but I’m just saying things like that can happen…」
 私は失業した原子力エンジニアだ。これまで13カ所のプラントで働いてきた。dirty bomb(汚い爆弾)を作るのは大したことではない。外に出て、みんなにそれ(爆弾を作ること)をやれと言うつもりはないが、そうしたことは起こる可能性があるのではないか…」
 これに続けて、失業が広がり、身の回りでいかに人々が希望を失っているかを切々と訴えている。関心ある方は直接元ネタの方をご覧頂きたい。
 バブル崩壊によって最も憂慮される事態は、社会秩序の混乱。まさにニーアル・ファーガソン教授が懸念しているのがこれだ。経済学的には、クルーグマン教授が言うように需給ギャップを埋める財政出動を行えば経済は安定を取り戻す、という考え方も可能だが、そううまくはいかずに経済運営が統制を失い、社会混乱につながるリスクもある。Thoma教授がこの手の話題を取り上げたのは、不安な兆候を感じているからであろうか。気になるところである。
by bank.of.japan | 2009-10-22 21:37 | FRB&others | Comments(4)
記者クラブ開放のビジネス的側面の考察
 しばらく前、ツィッターで記者クラブの開放問題をつぶやいていたので、そのまとめをこちらでやってみたい。私がこの問題で関心があるのは、このエントリーに関連するが、開放後のビジネスモデルである。ここでは対象となる記者クラブを官公庁に絞る(つまり政治経済ニュース)が、誰でも参加できるようになれば、果たして誰が生き残るのか。
 まず、現状である。マスコミは「記者クラブ」をベースに取材し、マス向けにニュースを流している。一部はマーケット向けに実務的なニュースを流している。で、儲かっているのか。ダメである。どこも苦しくて悲鳴を上げている。ニュース量が減って、売り上げが落ちたのか。違う。むしろニュース量は政変やら金融危機の余波で増大しているかもしれない。主因は、広告収入が落ちていること。ニュースに関係なく、企業は金を払ってくれない、払う余裕がないのだ。
 新聞社は個人にニュースを売っているが、広告収入の減少をまさか新聞代の値上げで補えるはずもなく、発行部数は落ちる一方だ。簡単に言えば、既存マスコミはどんどん儲からなくなっているわけだ。
 で、新規参入組である。個人かもしれないし、異業種かもしれないし、ベンチャーかもしれない。いずれせよ、取材に参入した人or組織は、まさかタダ働きするはずはないのだから、記者クラブ開放をビジネスチャンスとしてみなしているのだろうと思う。NPO的な動機でもよいが、それでも法人なら人を雇うコスト、または個人なら最低銀餓死しないだけの収入は必要なはずだ。
 新規参入組にとって幸いなのは、既存マスコミを反面教師にすればよい、ということ。つまり、より少ないコストで取材し、人々が金を払うニュースを安いコストで提供すればよいのだ。そのためには、①スクープは狙わない②マスコミとは違う切り口のニュースを書く③ネットを利用し、校閲・整理部を無くす-がポイントとなるだろう。
 ①は、スクープの大半はいずれ明らかになる事実を早く報じるもので、そのために夜討ち朝駆けなどで膨大なコストがかかっているため。②は、既存マスコミとの差別化のため。③は、ニュースが人々の手元に届く間のコストが莫大なため(多少の誤字脱字や変換ミスをなくすために別な人を雇うのは無駄でしょ?)。
 以上をクリアして画期的な取材モデルと画期的なニュースビジネスを考え出したあなたは、新たなマスコミ王です。初期的には、クラブ開放で物珍しさからたくさんの参入があるかもしれないが、いずれにせよタダ働き的な取り組みは長続きしないので、大半はあっという間に消えていくでしょう。

ps あなたの考え出したモデルが画期的でも、模倣が簡単なら既存マスコミが取り込むので、競争は厳しいでしょう。また、あなたの考えた画期的なニュースが売れないとしたら、もはや人々はニュースはタダで読むものであり、金を払うぐらいならニュースはいらない、という風土なのかもしれません。この場合、「マスコミ」(大衆向けの政治・経済ニュース)はビジネスとして終了。

ps2 一般論として、パイが縮む市場で生き残る方法は、より弱い会社が死ぬのを待つこと。このため、体力のあるメディアが生き残り、市場の寡占化を図る。このとき、ニッチ的に生き残る空間はあるので、そこがチャンスと言えばチャンス。大部隊の正規軍が無敵となる広い大通りに迷い出たりせず、路地裏の暗闘で勝つ方法を見つければよい。
by bank.of.japan | 2009-10-20 21:19 | マスコミ | Comments(20)
不況で二酸化炭素排出が急減=温暖化の脅威度と優先順位
 本日の日経朝刊(一面)に興味深い記事があった。ご覧になった方も多いと思うが、不況で二酸化炭素の排出量が急減したことを伝える記事だ。概略は以下の通り。

・主に国内生産部門のCO2排出量を各社の環境報告書を基に集計。
・鉄鋼大手4社は90年度比11%減少
・自動車5社、同39%減少
・いずれも不況による減産が主因
・07年度の製造業の国内CO2排出量は国全体の3割強だが、鳩山政権の掲げる中期目標「2020年までに90年度比25%減」は、自動社大手では達成された格好。
 現実問題として、エネルギー効率をいくら向上させても、プラス成長(生産増加)と同時にCO2排出を減らすのは無理なので、温暖化防止を最優先課題とするなら不況放置が最大の対策となる。で、問題は温暖化対策が本当に最優先課題なのか、ということ。
 言わずもがなだが、有無を言わさずに温暖化最優先となるケースは、温暖化によって人類滅亡とは言わずとも大災害などで大量の犠牲者が発生する可能性が高い場合だ。生活水準を落とさなければ死ぬかもしれない、となれば不況に耐えてCO2排出の削減に誰もが努力するであろう。
 温暖化対策の必要性に私がなお懐疑的なのは、経済的コストをかけるだけの価値があるかどうかが良く分からないからだ。不況がもたらす被害と温暖化がもたらす被害。後者の被害がかなり甚大であることが明確であるなら、不況に耐えるという覚悟が必要な気がする。
 それとこの関連では民主党政権が何をしたいのか分からない。よく言われることだが、CO2削減がそんなに重要なら、どうして高速道路を無料化するのか。むしろ値上げして温暖化対策に使うべきではないのか。まあ、そんなこと言っても、政権はドタバタ忙しそうで政策の整合性取る暇がないような感じである。
by bank.of.japan | 2009-10-16 22:37 | 経済 | Comments(8)
本日の決定会合&会見=ツィッター的雑感
 いろいろ解説しようと思って、それなりに記事を書いていたのだが、まあ技術論をこまごま書いても「寝言」の度合いが強まるだけ(苦笑)でありましょうし、この日銀の体制を生んだのが今の政権でもあり、願わくばこの政権と中央銀行の間で高度な政治判断に基づく以心伝心があって欲しいとは思うが、この親(政権)と子(中央銀行)の関係を推測するのは、なんだかよく分からない不思議な世界でもあり、私の手には余るので、日銀の判断には「グッドラック」と言う以外にはあまり何もないよなあ、と思う次第です。
 普通の感覚からすると、隊長のこのエントリーになるのだと思います。
 会見で一番印象に残ったフレーズは、「白川先生」の一言でした。
 たかがオペごときで消耗するのはかなり不毛なことなので、まあ適当にお付き合いするのが一番いいのかもしれない。
 それにしても、民主党の先生方にはさほど広くは聞いていないのだが、この日銀の体制を生んだのが自分たちである(親である)という意識はどれぐらいあるのだろうか。これは個人的な感想だが、「武藤体制」であるなら、こういう騒ぎは間違いなく起きてはいない、と思う。
 総裁会見後に日銀某氏と某紙ベテラン記者が話し込んでおり、ちょっと首を突っ込んだら総裁が言っていた「包括的に判断する」の「包括」をめぐって意見交換されており、私もそれなりの解釈を披露し、これには某紙ベテラン記者も同意。そこで「そのような解釈で記事をお書きになったらよいのではないか」と提案したら、やや迷った感もあり、「日銀心と秋の空」ではないが、時にはこの中央銀行はハシゴ外すこともあるから要注意よ、と忠告しておいた。これは冗談ではなく本気ですよ。Sさん。
 それと、津村先生、凱旋出席おめでとうございます。色々な思いもあって日銀を飛び出し、こういう形で古巣の最高意志決定会合に戻ってくることになったのはかなり感慨深いのではないかと思います。日銀の判断が狂わないように適切なご意見を述べられることを期待しております。
 最近ツィッターに傾斜しており、呟きの羅列的なエントリーになってしまった。興味ある方はツィッターへどうぞ。呟きが楽でよいですね。まあ、そのうちまとまったエントリー書きます。
by bank.of.japan | 2009-10-14 21:59 | 日銀 | Comments(2)
FRB、「出口言及」で見たタカ・ハト分類など=メモ的に
 東短リサーチの加藤さんが出口政策に関するFRB幹部動向をリポートにまとめていた。非常に参考になった。もっぱら自分用のメモ的として「出口政策」への言及などを基準にしたタカ・ハト分類を記しておきたい。加藤さん、少しお借りします。

<出口に言及する幹部>
・ロックハート総裁(アトランタ連銀)
・ビアナルト総裁(クリーブランド連銀)
・ダドリー総裁(ニューヨーク連銀)
 いずれも出口には言及しているが、出口そのものは差し迫っていないとの認識。

<インフレにやや警戒的な幹部>
・プロッサー総裁(フィラデルフィア連銀)
・ラッカー総裁(リッチモンド連銀)
・ホーニング総裁(カンザスシティ連銀)
 いずれもインフレに警戒的とはいっても、あくまでも中長期的な視野での話。

<タカ派色がある幹部>
・ウォルシュ理事
・フィッシャー総裁(ダラス連銀)
 現時点でのタカ派というよりは、引き締めにおいてはビハインドはしないというスタンス。上記挙げた幹部らも潜在的にはこの二人には近いのかもしれない。

 米国も需給ギャップは、クルーグマン教授が指摘するようにかなり拡大しており、デフレが懸念される状況で、この観点では出口は言及せずにもっぱら緩和策である点を強調し、時間軸効果を最大限に発揮させるのが常套手段ではないかと思われるが、一方で急膨張したB/Sにインフレ懸念を示す向きがあるのも事実で、インフレ期待が不安定化しないためにも出口は(視野にはなくても)指摘はしておく、というスタンスと受け止められる。

<おまけ>
・ローゼングレン総裁(ボストン連銀)の日銀量的緩和の検証
一 財政政策と金融政策が非常に緩和的だったにもかかわらず、なぜ日本はデフレを経験したか。
一 問題は金融機関にあった。政府は銀行問題を解決するのが遅かった。多くの邦銀は、資産を拡大するには資本が不十分であったため、制約を受けていた。
一 日銀はバランスシートを大幅に拡張したが、日本の貸出は拡大しなかった。
一 巨額の準備預金は、銀行が資産を縮小しているときには、経済にほとんどインパクトを与えない。
一 準備預金は銀行システムに居座り、休眠状態となって貸し出しに回らず、この結果として準備預金はインフレをほとんど高めない。
一 米国や日本の歴史的な経験に基づけば、短期的な第一の懸念はインフレよりもデフレだ。

 バーナンキ議長は8日に「We will need to tighten monetary policy to prevent the emergence of an inflation problem down the road」と述べている。経済が十分に改善したら、という前提条件付きだが、タカ派発言はマーケットで材料視された。ただ、nakedcapitalismのYves Smithは、アジア各国の介入はドルの下落そのものを止めるものではないとするエントリーで、Bernanke’s empty promiseと描写している。Yvesはドル安の効果には懐疑的だ。
by bank.of.japan | 2009-10-10 23:41 | FRB&others | Comments(2)
私的出口政策論
 CPとか社債とか色々騒がしくなっているが、まあドラめもんさんa-kunさんと同意見であります。それはさておいて、このバブル崩壊で奈落に陥った状態からの各国中央銀行の出口政策についての私見。
 結論的に言えば、世界を引っ張ってきた米国がうまく出口を出ないことには、他国も出口を出れないのではないか、と思う。その米国であるが、金融市場の機能が激しく不全に陥り、B/Sが炸裂的に膨脹し、しかも長期資産がたっぷりつまって、うまく縮小できるかどうかは全く不透明な状態にある。その出口は失敗するリスクがそれなりに高く(うまくいって欲しいが)、この失敗はドル安になりかねない。
 日本がドル安(円高)なんか気にしないよ、という国ならいいが、そういうわけでは全然ないので、米国の出口政策の成功をきちんと見届けるまでは、そう簡単には日銀も動けない、という構図にある。その間、日銀が何か動きをしようとしても、いずれせよ大したことはできないと思われる。この大したことのない動きにどれだけの意味を見いだすかどうかであろう。意味があると思うなら動く、思わないなら動かない、といういずれかだが、私は弱気なので後者のスタンスである。
 「神よ、変えることのできるものについてはそれを変えるだけの勇気を、変えることのできないものについてはそれを受け入れるだけの冷静さを、そしてこの両者を識別することのできる知恵とを与え給え」(Reinhold Niebuhr、"Serenityの祈り")-。故・速水氏の座右の銘に従えば、変えられないものを受け入れる冷静さ、の方であろうか。私の場合は諦観に近いが…。
 基本的に各国中銀の出口政策は為替を通じて連動性が強まっているので、一人だけ違ったことをやろうということはできない。豪州とか利上げしているけれども、まあそんなものは誤差の範囲というもので、本格的な引き締めというものではないだろう。
 市場機能論? 寝言だと思う。 低金利が続くとバブルになる? これも寝言と思う。
 ただ、注意すべきは、大バブル崩壊によってバブルはもう二度と御免だ、という風潮が世界的に高まっており、金融規制の強化やら中央銀行に対してホーキッシュなスタンスを取るような衆愚的な圧力が加えられること。民主党とか結構危ないんだが、まあそうなれば当分核の冬ですね。
by bank.of.japan | 2009-10-07 21:00 | 日銀 | Comments(6)
日経新聞のファーガソン教授インタビュー
 ニアルかニアールか、それともナイオールか迷うところだが、日経新聞にならってニーアル・ファーガソン教授とこれからは表記したい。土曜日にインタビューが出ていたので、個人用のメモとして要点を幾つか。経済的観点では、ファーガソン教授vsクルーグマン教授の論争は、後者に賛同するところが大きいのだが、政治的な観点では前者の主張も気になるところ。

・チャイメリカは中国の貯蓄と米国の消費が結び付く経済の概念だ。米中の相互協力を説く向きが多いが、明らかに利害対立があり、10年、20年では食い違いの方向にいく。
・中国の上の世代は争いを望んでいないが、若い世代は自信を持ち始めており、今後の中国は独断に走るようになる。
・ユーロはもう少し強くなって欲しいが、機能的には弱体なので、肩を並べていけると思わない。
・紛争を引き起こす3条件は変わらず存在する。①経済の不安定さ(より増している)②民族対立(特にイスラム世界)③覇権国家の衰退(米国の凋落)
・米財政がたどっている道筋は持続可能ではないことはクルーグマン教授も認めている。
・金融政策の量的緩和は有効だが、FRBの国債大量購入は長期金利の上昇を招きかねず、意図とは反対の影響が出る(流動性供給を狙った日銀型の短期物オペ中心の量的緩和が有効という趣旨?)

 インタビューの詳細に関心ある方は直接記事をご覧頂きたい。このエントリーに関連して本日の欧米ブログ巡回で気になったのはnakedcapitalismのリンクにあったDead Cats Bouncingの「America as Argentina?」でありました。ざっとしか読んでいないので、これからゆっくり目を通したい。
by bank.of.japan | 2009-10-04 23:15 | 経済 | Comments(4)
超繊維質を腹に抱えたままのFRBによるリバースレポ考察
 リバースレポによるFRBの吸収が話題になっているようだ。取り合えず目に入ったところでは、Econbrowserがまず取り上げ、Economist's Viewでリンクされ、Angry Bearが反応している、といった感じだ。我が日本銀行の世界一?多様性に富む供給・吸収を駆使した曲芸調節に慣れた短期市場関係者には、吸収手段の一つに過ぎない「リバースレポ」に盛り上がる様子は微笑ましいものと映るかもしれないが、リバースレポで一つの考察を行ってみたい。
 買い切ってしまった国債やMBSなどを資産サイドに残したまま、リバースレポ主軸に吸収していく場合、どういうことが起こり得るのか。これは多分にどれくらいのペースで吸収する必要があるのかが鍵を握るように思われる。言い換えると、インフレ期待の盛り上がり度合いによって左右されるという構図か。
 インフレ期待が非常にゆっくり台頭していくなら、急いで吸収する必要はなく、リバースレポによる強引な吸収という事態にならない。理想的には、買いきった国債やMBSなど超繊維質のデュレーション(数年?)にマッチした期間で超緩慢にインフレ期待がゆるゆると台頭する形になれば、なんとかうまく吸収が進むように思う(多分)。
 一方、インフレ期待が早く進行する場合はどうか。FRBはインフレ期待を抑制するため、利上げのピッチを早めざるを得ない。引き上げた政策金利が下がらないように吸収も強める必要がある。米インタバンク参加者がこのリバースレポに順調に応札するかどうかは読みにくいのだが、少なくともこの吸収オペによるレートはかなり高くなると予想される。
 この時、恐らくはFRBのB/S上では逆ザヤ部分が広がり、強引に吸収するほど逆ザヤの度合いが強まる可能性がある。極端な場合はFRBは赤字に転落する事態もあるかもしれない。莫大に膨れ上がった資産のポートフォリオはいじらずに吸収するのがうまくいくかどうかは実際にやってみないとわからないのだが、インフレ期待は緩慢であった方が障害は少ないのは確か。
 まあ、実際には準備預金の付利水準を上げるとか、預金準備率を引き上げるとか、いろいろ方法は考えられる。でも、どうやろうが収益減少には見舞われる。以上、技術的な考察でありました。インタバンク関係者の方々のご意見頂くと多謝です。
 補足 FRBの赤字転落は、それ自体はただちに信認低下につながるというものではないと思われるが、政府から補填を受けた場合は、独立性の低下を問題にする声が上がる可能性はある。
by bank.of.japan | 2009-10-03 22:52 | FRB&others | Comments(5)


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