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FEDウォッチ、ネタてんこ盛りで嬉しい悲鳴=連銀ブログ、クルーグマン教授、金利の上昇…
 このところ、FEDウォッチとその関係のネタが一気にてんこ盛り化して、中銀特化ブログとしては「うれしい悲鳴」状態であります(苦笑)。アトランタ連銀のブログが面白いエントリーを上げ、どう料理しようかと頭の片隅で転がしていたら米金利が急騰し、これはこれでFED絡みで論点多し。どうやってまとめようかと思っていたら、お馴染み連銀ウォッチャーTim Duy氏が興味深いエントリーを書き、あぁぁ、ネタが在庫過剰だー、とあせったら、クルーグマン教授が(金利急騰に関連して)インフレ懸念なんかねぇぞー、と言ってしまい、私の処理能力はパンク。全部がつながるネタで、じっくりとまとめればよいのだが、また新たなネタが浮上する可能性もあり、箇条書きという安易な形で恐縮ですが、一気に在庫放出といきます。

①アトランタ連銀ブログ
 21日に「More on interest on reserves」というエントリーアップしている。これは「B/S膨張の副作用に反論する米連銀ブログについての考察」で紹介したやつの続編で、読者の質問に答えたもの。
・最初の質問は「銀行が融資をしたらリザーブは減るのか?」で、ブログの答えは「ノー」。説明には微妙な面もある感じがするが、概ねその通り。準備預金制度はどの国でも分かりにくいようである。
・次の質問は、準備預金付利の下で利上げした時の銀行の準備預金の持ち方について。ご案内のように、ECBや日銀の例のごとく、準備預金に付利した状態でも金利政策は通常通りに実行でき、ブログもこれに沿った説明である。興味深いのは「Divorcing Money from Monetary Policy」という論文を紹介した上で、「マネーと金融行動に関する教科書的な説明では、金融政策の実施(オペ)における準備預金コントロールの重要性が強調されるが、唯一の方法論ではないのは確かだ」と指摘していること。連銀ブログはバーナンキ議長の意図はともかく、準備預金(ベースマネー)の激増は予備的資金需要に応じた技術的な対応と位置付け、それゆえに副作用(インフレ懸念)はない、とのスタンスだ。この場合、準備預金制度&準備預金(ひいてはベースマネー)は従来とは性格が異なるものになり、今後教科書の説明が変わるかもしれない、と思った。
 応用編としてはa-kunさんもしばしば指摘する「売手」の位置付けで、これは準備預金付利の変形でもあり、吸収なのにどんどんやれば広義ベースマネーの増大にもなったりして、まあややこしい存在である。白川総裁とか好みのテーマであり、日銀の誰か連銀ブログに投稿してみたらどうであろう。面白い議論になると思う。駆け足の説明で分かりにくいかもしれませんが、とりあえずの論点提供ということで。

②米金利急騰とFEDの出方
 結論的には、金利急騰は徐々に収まり、FEDは恐らくは様子見する、というのが私の見方。金利急騰で欧米ハルマゲドン系ブログは「終わりの始まりだー!」的な祭りの様相にあるが、管理通貨制度はそうは簡単には崩壊しない(超長期的には別)と思う。ファンダメンタルズの説明は割愛。一方、FEDは国債買入が介入化するリスクを避けようとしているように受け止められる。介入が市場との不毛な消耗戦に陥るのを分かっているのかもしれない。ここはこらえて市場のヒステリーが自然鎮火するのを待つべきではないかと思う。金利急騰の要因では一つ推測するシナリオがあるが、これも重いネタなので割愛。
 Tim Duy氏は、やけに長いエントリーで斜め読みしてしまったが、結論としては「hold steady on policy」(現状維持)で、まあ同じような感想を持った。長いですが、DeLong先生やBlinder先生、その他もろもろの声など紹介しているので、関心ある方はどうぞ。
 時間軸の話も書きたいが、きりがないので別の機会に。

③真打ちのクルーグマン教授、金利急騰について「インフレ懸念はほとんどない」と指摘。
 Economist's Viewで見つけたのだが、元はNYタイムズの教授のコラム。主張は以下の通り。
・誰もがいきなりインフレとか言い出し、極端な向きはハイパーインフレとか言う。
・インフレ懸念は合理的なのか、ノーだ。
・インフレよりデフレがthe clear and present dangerだ。
・ある向きはFEDが大量にプリントマネーするからインフレだと言い、別な向きは財政赤字が原因だと言う。
以下は原文、そして翻訳。
「Now, it’s true that the Fed has taken unprecedented actions lately. More specifically, it has been buying lots of debt both from the government and from the private sector, and paying for these purchases by crediting banks with extra reserves. And in ordinary times, this would be highly inflationary: banks, flush with reserves, would increase loans, which would drive up demand, which would push up prices」
 FRBが前例のない手段を取っているのは事実だ。具体的には、大量の官民債務を購入し、銀行に追加的な準備預金をもたらしている。平時においては、これはインフレ圧力をもたらす。なぜなら、銀行は余分が準備預金を取り崩して貸出を増やし、民需を刺激して物価は上るからだ。
「But these aren’t ordinary times. Banks aren’t lending out their extra reserves. They’re just sitting on them — in effect, they’re sending the money right back to the Fed. So the Fed isn’t really printing money after all」
 しかし、今は平時ではない。銀行は余分な準備預金を貸出に回していない。そのまま持っているだけだ、というか、実際には(オペで調達した)マネー(準備預金)をそのままFEDに打ち返している(準備として積んでいる)。つまり、FEDは現実にはプリンティングマネーなんかしていないのだ。
 以下、まだ面白部分ありますが、ダッシュして書いて、息切れです(指も痛い)。
 
 それにしても教授がここまで言い切ってしまうとは…。アトランタ連銀ブログの技術的ベースマネー(準備預金)増大論と同じでありますね(私は、バーナンキ議長はリフレ的意味を込めていると思う)。これはこれでさらに論点は広がり、いくつかに分岐し、いずれも超おいしいネタで、突入してしまうと抜け出せない罠にはまるのだが、ああ時間がない。それにしても「日本銀行が過去に採った政策と主要国の中央銀行によって現在採られている政策が、著しく似通っていることに気付かれたかもしない」(白川総裁)のは、欧米で展開される議論も含めて本当にそう思うこの頃であります。
by bank.of.japan | 2009-05-29 21:33 | FRB&others | Comments(16)
バーナンキ議長の講演で思ったこと
 バーナンキ議長が22日、ボストンカレッジの卒業式で行った講演が話題となっているようだ。ぐっちーさんらが取り上げていましたね。で、改めて読んでの感想を簡単に。
 少年時代からのエピソードはしんみりさせる。サウスカロライナの田舎町の薬屋さんの息子として育ち、高校ではまあ出来が良くて、カレッジ進学が当然視されていたが、もっとも本人は(進学は念頭にあったものの)家から遠く離れるつもりはなかった。ところが、その後は予想もしない展開で、FRBの議長になった。近所の友人Ken Manning氏とのエピソード、17歳の少年がハーバードの門をくぐった時の思いなど、ほのぼのする内容であります。
 経済学の限界も率直に語られており、納得する内容である。多くのセントラルバンカーが抱く思い(悩み)を代弁していると思った。私は経済学徒ではなかったこともあり、経済学にはシニカルになりがちである。日銀のその方面の方々には時にいじわるなことを言ったりするのだが(苦笑)、とは言うものの物理学や数学のように明解な答えが出せるには至らないにせよ、学問としての経済学が深まる努力は続けて欲しいと願っている。
 人間と言うのは気紛れで、個々人および企業の活動が集合した経済の動きがどうなるかを予測するのは、神でもない限り正確には見通せない。で、ここで諦めてしまうと、「結局は勘ですか」みたいなことになり、それだと経済が不安定化して多くの人々が困るので、少しでも将来を見通せるようになって欲しい。まあ、そう思っておるわけです。
 ただ、バーナンキ議長は経済学者出身であるだけに、経済学的な限界を率直に語り過ぎている(それだけ学者としての良心がある)という感じはした。グリーンスパン前議長が悪い、という意味ではないが、その意味の非常に取りにくい曖昧な言い方は、いい意味では建設的曖昧さとはなるが、一体真意がどこにあるのか分からず、この点は一時副議長を務めたブラインダー氏も確か苦言を呈してた記憶がある。
 FRBの議長は、基軸通貨を背負っているので、他の中銀よりも世界&マーケットの期待が高い。本人のキャラには合わないかもしれないが、やや宗教的なメッセージになってもいいから、人心の安定化を図るような演技があってもいいかもしれないと思った。

 それと法学部生で中央銀行を目指す方々には以下のところが参考になります。ロースクールでの講演なので、これはいいアドバイスですね。
「You have been trained in a field, law, that is exceptionally broad in its compass. At the Federal Reserve, lawyers are involved in every aspect of our policies and operations--not just because they know the legal niceties, but because they possess analytical tools that bear on almost any problem. In law school you have honed your skills in reasoning, reading, and writing. Many of you have work experience or bring backgrounds to bear ranging from history to political science to the humanities to science. There will always be a need for people with your abilities and talents」
by bank.of.japan | 2009-05-29 01:49 | FRB&others | Comments(9)
Ninja is back(死亡説も浮上?)=雑感など幾つか
 本日は酒の弱い私にしては少し飲み過ぎにより、幾つかの雑感にてご勘弁を。

・超長期でファーガソン的ハルマゲドン説に立脚するFinancial Ninja氏が久々にエントリーを再開していた。4月下旬からぱったり更新が途絶えており、約1カ月ぶりの再登場である。景気ベア派として株高に懐疑的なスタンスであったので、ここもとのラリーでかなりやられていることが想像され、「おまえ、生きてんのか?」と思ったりしたのだが、やっぱり死亡説が浮上していたようだ。本人も「rumours of my death are greatly exaggerated. I did not "get my head ripped off in this crap rally" or commit suicide」とか言っている。再開後はイールドカーブのベアスティープ化をネタにハルマゲドン路線を続行しており、まあ健在であります。

・Ninja氏のこのエントリーによると、ニュージーランドで面白い事件が起きたようだ。ある夫婦が銀行に数十万円の借金を申し込んだところ、事務ミスで数億円が振り込まれ、その後夫婦は行方をくらましたらしい。警察当局は国外逃亡したとみてインターポールに捜索協力を要請した模様だ。「なんか知らないけど、自分の口座に数億円があった。自分の口座のお金は自分のものだし、だからちょっと海外旅行した」という言い訳は通用するのだろうか。どんな言い訳しようと犯罪ですかね。法律に詳しい方、ご教示を。

・Only a madman can get the $ to rally?
 人気ブログ「The Big Picture」のエントリータイトルにはワロた。「Who would have thought that the best friend of a US$ bull would be Kim Jong Il but it was North Korea’s missile and nuclear test」→皮肉と言えば皮肉な事態である。

・「マーケットの馬車馬」氏、それから「Economics, Technology & Media」氏も久々にエントリー再開しておられます。いずれも興味深い内容でありますので、ご閲覧を。
by bank.of.japan | 2009-05-28 00:28 | ブログ紹介・お知らせなど | Comments(6)
不動産不況がもたらす疫病のリスク=米西海岸の“モスキートコースト”
 CalculatedRiskがモスキートハンターの活躍を紹介している。具体的には、蚊の発生源を突き止めるハンターである。何が起きているのかと言えば、カリフォルニア州では不動産不況で無人の住居が増えており、特に郊外のプール付き邸宅の場合は、この遺棄されたプールが蚊の発生源となりかねないため。元ネタはこちらだが、蚊による西ナイル熱の伝染が懸念されるらしい。
 西海岸には行ったことがないので、現地の住宅事情は良く分からないが、郊外の中級以上の住居はプール付きがデフォルトだとすると、不況で「沼地」があちこちにできてしまい、蚊の大量発生が懸念される事態になったということか。隣国メキシコから豚インフルがやってきたかと思えば、不動産崩壊で西ナイル熱の恐れが台頭するなんて米国は大変である。バブル崩壊は様々な副作用をもたらすが、プール付き住宅が疫病の発生源になるとは…。日本では考えられない副作用であります。ウサギ小屋でよかったということか。

以下、余談。
 CalculatedRiskのエントリーによると、ハンターの仕事は、セスナで上空を飛び、遺棄プールを探索すること。飛行機の胴体下部には対地カメラ用に30インチの穴が空けてあるらしい。
 で、この部分に関して以下ようなコメントがあったのはウケた。

「What size is the hole in Ben's helicopter?」

FRBの胴体(B/S)に大穴空いたように見えるんだろうか。
by bank.of.japan | 2009-05-26 20:32 | FRB&others | Comments(3)
日銀人事罫線がブル転(冗談ネタ)
 本日、日銀ではたくさんの人事が発令された。あるポストにおいて、ある人が去り、ある人が来た。これは景気循環を人事ジンクスで占う場合には、雨が去り、晴れが来た、というシグナルである。罫線的にはブル転。個人的には「キター」という感じ(笑)。まあ、偽りの夜明けかもしれませんが…。
 当エントリー、10人ぐらいにしかウケない本石町界隈の超マニアックネタでありました。
行った先で大雨になると、大変なことになるんですがね。罫線上のだましのブル転、地獄の二番底相場。まあ、それはないと都合よく解釈しましょう。
 具体的なご質問には答えられません。すいません。
by bank.of.japan | 2009-05-25 20:27 | 経済 | Comments(12)
「SDRが新しい国際通貨の芽生えとなるべきだ」=1971年、水田蔵相
 米国を震源地としたバブル崩壊によってドルの信認が揺らいでいる。最大のドル保有国である中国は新たな国際通貨構想を唱えたり、日本国内では民主党がドル安に懸念を表明。円建て米債の発行を呼びかけたりしている。かつてドルが最も揺らいだのは、1971年のニクソンショックである。表題は、金本位制から自由変動相場制に移行し、円相場の急騰に見舞われた水田蔵相の国会答弁である。国会議事録で見つけたので、その一部を参考までに紹介したい。

昭和46年10月05日 参院・決算委員会
○国務大臣(水田三喜男君) やはり将来の国際通貨は、特定国の通貨をこれに充てるということの矛盾が今度ははっきりと露呈されたことでございますし、特定国の国内政策によって左右される国際通貨というものは、将来国際通貨としてこれが好ましいものではないということははっきりいたしますし、したがって、せっかく四年前に各国が英知を集めてああいう特別引き出し権というようなものを創立して、それが将来新しい国際通貨への芽ばえになるであろうと期待されながら、いろいろな事情で今日まできたのですが、いまこそやはりああいうものが中心になった新しい国際貨幣が形づくられるべきであるというふうな認識は、これは私だけじゃなくて、欧州の各国も大体そういう方向にきておりますので、そうしますというと、これはやはりだんだんに金やドルから離れて、そういう金が国際通貨としての価値を持つような方向へ全体の国がこれは育てていくべきものじゃないかというふうに考えております。
○和田静夫君 ちょっと私のポイントをはずれているのですが、特別引き出し権といういわゆるSDRというものを中心にお考えになった金なら金の裏づけのないところの第三通貨などというようなところにまでお考えがいっているということではないのですか、いまの答弁。簡単に言えば。
○国務大臣(水田三喜男君) 金の生産というものが世界経済の進展に沿うて一緒に伸びていかないのですからして、したがって、やはり金が国際通貨となるための条件というものも徐々に欠きつつあるということも、これは問題です。そこからやはりいまの国際通貨問題が始まっていることでございますから、やはり金というもの、それから特定国の通貨というものを国際通貨にする方向から離れていかなければ国際通貨の将来の解決はないというふうに私は考えます。

 SDRを軸に新たな国際通貨を目指す構想はあったものの、結果的にドル基軸が続いて現在に至った。米経済が安定化し、ドル基軸が続くのか。それとも野村證券の故・田淵氏が「私の履歴書」で不安を示したように(通貨体制の)海の色が変わり、場合によっては実物を入れ込んだ新たな通貨体制に向かうのか。まだ帰趨は見えない。いずれにせよ、穏やかな調整に終わって欲しいものである。
by bank.of.japan | 2009-05-23 20:35 | マーケット | Comments(11)
イタリアンブルー=日銀、「総合判断」で非適格
 本日は金融政策決定会合。日銀が外債を適格担保にした。一年ほど前のこのエントリーでもちょっと触れたクロスボーダー担保による与信供与が本邦サイドで実現した。このスキーム、実務的にはかなり重い作業だったはずで、関係者の方々は大変であったと思う。ご苦労様であります。これにより、特に在日外資系金融機関の資金繰りセーフティネットはさらに拡充される格好となる。再び金融危機がぼっ発し、担保枯渇でデフォルトする、というリスクはかなり軽減すると期待される。マーケット的にはLIBOR安定化要因となる。
 対象は、英米独仏の国債。お気づきでありましょうが、G7のメンバーでありながら、適格対象に入っていない国がある。わが愛すべきイタリアであります。カナダもメンバーだが、それほど国債はない。一方、イタリアは独仏級の発行額があり、しかも格付けの要件は満たしている。で、なぜ弾かれたのか。別な要件が勘案され、総合判断で非適格となった。個人的な好きな国なので、残念であります。ワールドカップではイタリアンブルーを応援しているのだが、クロスボーダー担保では憂鬱な方のブルーとなってしまった。
 軽く聞いたところでは、もっぱらニーズの問題であるようだ。イタリアは国際市場で昔から国債発行はアクティブであり、海外による保有比率は高い方だ。ところが、中央銀行の流動性供給の担保として強いニーズがない。これは何を意味するか。中央銀行の取引先(銀行・証券)があまりイタリア国債を持っていないのだろう。じゃあ、誰が持っているのか。(中銀取引先ではない)機関投資家の保有が大きいのでしょう。証券が引き受け、最終機関投資家にはめ込まれる構図であろうか。比較的スプレッドありますからね。
 機関投資家における保有分布は良く分からない。万遍なく持たれているのか。それとも、投資家の趣味によって多いところもあれば、全くないところもあるのか。この辺の事情は害債さんの領域かもしれません。補足あれば多謝です(苦笑)。
 ニーズ以外で総合判断を左右した要因は…。オペレーショナルリスクなのかな、と思った。まあ、日銀のオペレーションスタンダードに照らすと、どこの国も見劣りするのかもしれないが。リーガルリスクはないとは思うが、日銀はまじめなのでイタリア語による担保関係の法律的なツメを行うかもしれず、そこまで諸々のコストかけるほどのニーズがなかったのでしょうね。
 後、潜在的にニーズがありそうなのは、スイス国債であろうか。あまり発行してない印象もあるが、どうなんでしょう。スイス系金融機関からのクロスボーダー担保の要求は高そうに思える。まあ、スイスもこれからたくさん国債出すかもしれないので、要チェック。
 ちなみに他中銀のクロスボーダー状況。英米は恒久的or臨時でやっていて、ECBはまだ。もっとも、欧州は既に通貨統合で域内クロスボーダーの状態にあり、あえてその外側に担保網を広げるかどうかということですね。あまりニーズはないかもしれない。
by bank.of.japan | 2009-05-22 20:54 | 日銀 | Comments(6)
一万田総裁と白洲次郎氏を同時ヒットした件=雑感的な歴史探訪の巻
 ドラめもんさんのGDP戦後最悪ネタに触発されて、何気に終戦直後の国会議事録を検索していたら、一万田総裁と最近ブームの白洲次郎氏が同時に登場している質疑がヒットした。白洲氏関係の本は未読ながら、マスコミの印象ではやけにカッコ良い印象があったので、ネタとして横道にそれるが、少し深堀りしてみた(当ブログ読者に白洲ファンが多いかどうかは不明ですが)。

 まずは、ヒットした質疑。これは昭和26年03月31日、参院本会議における木村禧八郎議員(労働者農民党=後に社会党)の開銀設立に反対する弁論である。

○木村禧八郎君 (略)この日本開発銀行の中身を検討して見ますと、どうしても我々の承服できない点があるのであります。
 (略)この総裁及び役職員の任命ということが非常に重要であると思うのです。この総裁、役職員が適正な人物であるならば、まだ我々は了承できると思うのですけれども、従つて非常に立派な人物を総裁その他役職員にするらば、これは任命については、国会の承認を得るべきであります。(「焦り」と呼ぶ者あり)ところが国会の承認は要らない。総理大臣が任命すればいいのであります。
 而もすでに伝えるところによれば、この総裁は非常に政党色の強い小林中氏が予定されておるのです。(「そうだ、不都合だ」と呼ぶ者あり)小林中氏は周知のごとくいわゆる吉田側近の人と言われ、白洲氏と非常に昵懇の間であつて、政党色が著しく強いことはもう明らかであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)。
 伝えられるところによれば、金融界でもこれは反対であり、大蔵省の役人も反対である。そういう人を総裁にしてどうして大蔵省が公正にこの資金の運用を監督できるか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)その責任は持てないというので大蔵事務当局は反対であるのです。(「よく聞いておけ」と呼ぶ者あり)而も金融界においても反対であると言われています。
 併しながら一万田日銀総裁は、反対すると日銀総裁の椅子が危いというので、あえて反対しないので、妥協して、そうして日銀総裁の椅子に(「黙つて聞け」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)居据るのに成功したのではないかと伝えられておるのですが、そういう疑惑が起るだけでも私は非常に不明朗だ。(「勝手なことを言うなよ」「勝手じやない、事実だぞ」「独断だ」と呼ぶ者あり)。
 私は銀行局長に聞いたのですが、こういう非常に重要な(「そんなことはわかりやしないよ」と呼ぶ者あり)この銀行の総裁を任命する場合、政党色があつていいかどうか。銀行局長は原則論としてそれはよろしくないと、こう言つております。併しこの開発銀行については、総理大臣が総裁を任命するのであるから、意見は述べられないと言つておるのです。
 このように非常に政党色が強い人が予定されておるのです、すでに。これは非常に不明朗だと思います。これは第二の復金になる公算が大きい。まあそういう疑惑を持たれても仕方がない。或いは又これは自由党の私設機関になる危險もある。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そういうようにも疑われても仕方がない。(「その通りだ」「嘘を言うな」「事実だ」と呼ぶ者あり)。
 若しそういう疑いを持たれることがいやであるならば、この総裁の任命についてはもつと公正な方淡によるべきで、国会の承認を得るようにしたならば、そういう疑惑を封ずることができると思うのです。なぜ国会の承認を得ることがいやなのか。(木村守江君「労農党の批判は要らんよ」と述ぶ)なぜ国会の承認を得て公正にそういう人の人選をすることに反対なのか了解に苦しむのであります。(「労農党の批判は要らん」「ノートを取つて筆記しろ」「覚えておけよ」「何を言つてる」と呼ぶ者あり)
 実はこの法案の中身を検討して見ますと、(木村守江君「労農党の口出しは要らん」と述ぶ)不明朗極まるのであります。(「勉強しろ」「少し教えてやらんと…頭が悪いから」と呼ぶ者あり)木村さんはこの法案の内容を御存じないのです。ないから、そういうことを言われておるのであります。よく御検討になれば、そう木村さんが、がみがみ言われるようなことはないのです。(笑声)こういう非常に重要な法案であります。非常に重大な法案でありますので、こういう法案、而もこれの総裁をきめることは最も公正な方法においてやるべきです。(「勝手なことを一人できめて言うなよ」と呼ぶ者あり)
 このようないろいろな点は仮に譲るとしましても、最後のこの人事の問題に関してはどうしても我々は譲ることはできない。(「そうだ」と呼ぶ者あり)こういう意味において、甚だ遺憾でありますが、(「木村はもつと勉強しろ」と呼ぶ者あり)労働者農民党としてはどうしてもこの予算案に賛成することができないのであります。(拍手)

ヤジが飛び交い、盛り上がっている感じですね(笑)。白洲氏は吉田側近筋として有名であったようで、それだけ野党などからの批判を受けやすい存在であったようだ。いろいろな委員会で名前が登場している。こんなのもあった。

昭和26年03月08日、衆院法務委員会
○世耕弘一委員 (略)特に注意を喚起したいのは、派閥よりも今日の政界を毒しているものは何かといえば、閨閥なのです。一、二私はここに例をあげましよう。たとえば吉田内閣における電力人事の問題――人の名前を申し上げては何ですけれども、これも事実だから申し上げましよう。電力人事に対する麻生、白洲某、これは派閥でなくて、むしろ閨閥だと世間では論ぜられております。せつかくあなたが派閥の端まで苦労して公正を期そうというやさきに、こういうことが新聞に麗々しく載つて今問題になつております。たまたま今度は検察庁の人事にやはりかような空気が漂うておつたとするならば、非常な国家の損失であります。

麻生、小林、白洲の三氏はセット的な感じでよく出てくる印象である。

最後に、白洲次郎氏は電源開発絡みで参考人として(恐らく)1回だけ国会に登場している。昭和27年04月12日、衆議院通商産業委員会である。興味ある方はご閲覧を。

歴史探訪の巻でありました。別なネタも幾つか見つけたので、そのうち取り上げます。議事録、久々に検索したが、やっぱ宝の山でありますね。
by bank.of.japan | 2009-05-21 21:33 | 一万田総裁 | Comments(7)
正社員は長期雇用を享受するのか=私的な労働観です
 正社員と非正規雇用の格差解消のため、前者の権利を弱めるべきである、という議論がある。正社員の首を簡単に切れるようにすれば、労働のパイは広がるのかもしれない。または、会社がここぞとばかりに首を切って、雇用が一段と悪化する可能性もある。これは景気次第であろう。パイが広がっても、それは労働市場全体のワークシェアリングで、社会の不安定化をある程度軽減するだろうが、マクロ的に所得は増えるものではない。
 で、ここから先は私的労働観である。
 正社員・非正規雇用の格差問題では、終身雇用または長期雇用とかが正社員の特権みたく言われるが、この特権を享受できるかどうかは、労働者それぞれの価値観と会社の社風や労働の中味次第であって、中小零細企業を転々とした私自身は長期(or終身)雇用という概念は念頭になかった。
 食うための仕事についてちょっと書いたこちらのエントリーにも通じるのだが、長く働くことはむしろ絶望感を深めるケースもあり、精神的臨界点を覚えると自ら辞めることになる。労働そのものより精神的束縛がきつかった。社運のために「名前を変えろ」とかマジ顔で言われたりしたこともあった。
 必ずしも正社員=長期雇用とは限らず、少なくとも数社を渡り歩いた私の経験上、身の回りに長期(or終身)雇用を目指していた同僚はあまりいなかったように思う。実際、2年もいれば古参社員となるようなところがほとんどであった。たまたま私の経験した会社が入れ替わりの激しい職場だったのかもしれないが…。
 仕事はまず「食うため」にあり、形態として正社員が有利だからそちらを選ぶ。ただ、正社員になった後、その仕事に長期に従事するかどうかは別で、いろいろな事情で辞めるケースが多く、雇用はもとから流動的になっている、というのが私の印象である。
 企業規模によって雇用の流動化状態はかなり違うような気がする。終身雇用が前提になるのは、あくまでも公務員か大企業に限った話で、労働人口の大半を占める中小・零細企業はかなり労働は流動化しているのではなかろうか。この辺をうまく捉えた労働統計とかないですかね。

追記 新卒のみなさん、職場はいかがですか。仕事がつまらない、理想と違った、としても、長期安定職場であれば、とりあえず居た方が良いです。大抵の仕事は最初はつまらない、またはつまらなく見えるものです。ある程度大きな会社はいろいろな仕事があるもので、その中からもしかしたら面白い仕事が見つかるかもしれません。そんなものです。変な先輩・上司がいても、大きな組織であれば定期異動でどっかいっちゃいます。我慢しましょう。強烈にやりたいことが見つかった、向上心に燃えている、という状況であるなら辞めるのも手かもしれません。
by bank.of.japan | 2009-05-20 23:05 | 経済 | Comments(18)
ドル安を懸念する日中外準大国のアンビバレント=クルーグマン教授の一理ある指摘
 大量のドル外貨準備を持つ日本がドル安を懸念しても仕方ないのではないか、というのはちょっと前に書いたとおりである。円高(ドル安)を避けるために介入し、結果的にドルを抱えた。つまり、日本の通貨政策は円高回避が最重要であった、ということだ。ドル安が不安だからドルを買わない、というのは外貨準備の損失回避が最重要となり、通貨政策は「円高に耐えるぞ」に変わるとを意味する。

で、クルーグマン教授の見解だが、「China and the liquidity trap」で興味深い指摘をしている。これはニューヨークタイムズの経済コラムニスト、David Leonhard氏の米中関係の記事(の一文)に反論したもの。同氏はこの中で「中国がこれからはドル(米債)を買わないと決めたら、金利が急騰して米経済は大変なことになる」と憂慮するが、クルーグマン教授は「違う」と反論している。その内容を超簡単にまとめると以下の通り。
①米国は金利がほぼゼロでも貯蓄が増えている、つまり“流動性の罠”にはまっている。
②中国のドル購入が減るとドル安になり、それは米国の輸出をサポートするので良いことである。
③むしろ中国がドルを買うのは、米国の立場からはピュアに悪いことである。

 まあ、中国のドル買い停止に米国の長期金利がどんな反応見せるか、少なくとも短期的には上るように思うが、クルーグマン教授のように「俺たちゃ“流動性の罠”にはまっちまった。通貨は安い方がいいんだよね」とか言われたら、ドル安を心配する日中外準大国は困るのである。「ドル買わなくて結構、ドル安にしてくれよ」と詰め寄られたら、日本(と中国)はその裏返しとして円高に耐えないといけない。
 各国とも金利がほぼボトムに落ち込み、それでも景気が回復しないのは「流動性の罠」に近い。取りあえず残された緩和策は、財政出動か通貨切り下げである。クルーグマン教授の「中国のドル買い減少は、金利上昇を招いて米経済に緊縮的であるとの主張は、(金利が上るから)財政出動が引き締め的であると言っているようなもので、間違っている」との言い分は一理ある。
 日本が好景気で円高なんか気にしない、という状況なら「ドル安が心配だ」と言える。しかし、現在の苦境に際してドルを買わないのは、円高による一段の苦境に耐えるというアンビバレントが生まれる。円高回避が今でも最重要なら政府ないし有力政党の偉い人は「ドルが不安だ」とかあまり言わない方がいい。
by bank.of.japan | 2009-05-19 22:28 | マーケット | Comments(7)


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