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FT紙がブロガーに見放された理由=マスコミが陥る罠
 これも海外ブログ巡回中に見つけたネタ。読んだエントリーをブックマークしなかったので、どのブログなのか見失っていたのだが、また発見した。「naked capitalism」の「Is the Financial Times Losing Its Edge?」というエントリーである。熱心な読者がなぜFTを見限ったのかに興味ある方は直接エントリーをご覧頂きたいが、簡単に事情を紹介すると、ある記事の見出しがややセンセーショナルで、内容も些細な動きをトレンドみたいに扱っていて「これはおかしいんじゃないの?」という不信感である。ミクロの動きがマクロの先行指標になることはあるが、さすがに用船料の上昇を需要回復のトレンドみたいに扱うのはまあ無理筋ですね(苦笑)。
 私が商売柄、FT(赤い新聞=英語はピンク)をよく読んでいたのは10数年前。日本関係の論調があまり好かない(今でもたまに読むと鼻につく)が、それを除けば比較的バランスが取れていて、特にバイアスはなかったと記憶する。その後、紙面は全然フォローしていないが、読者にこびようとしてレベルが下がったのでしょうかね。エントリーでは以下のようなコメントもあった。
 「t has been going downhill for a while. The minute the US became their biggest market, they started dumbing it down....The Op-Ed is particularly bad now. Martin Wolf is about the only one I can read regularly」
 日本でもしばらく前まで原油高を「インフレだ!、利上げだ!」とか騒いでいたので、ちょっとした動きを煽るのは、マスコミは内外どこも同じようなものだが、そうした中でFTは一応は経済専門紙としてステータスが高いメディアで、迎合的報道は洗練した読者の離反を招き、紙媒体としての価値を下げるリスクが高かろう。
 コメント欄もかなり手厳しい。前半部分しかざっと見ていないが、こんなのもあった。
 「I fully believe the FT is being dumbed-down. Not only is sensationalism creeping in, and factual errors - but also the horrid "punning" headlines favored by tabloids.

The FTs decline is part of a bigger malaise affecting all media. Now the BBC news won't even show simple charts or provide percentages when reporting changes in trend. I got sick and tired of hearing how "Obama was ahead of McCain" in the polls without even the simplest supporting statistics. Isobars have all but disappeared from UK weather reports. CDS's are always described as "insurance". I could go on... but its seems futile to rail against this trend in English-speaking countries」
 専門的知識を深める一般読者のマスコミ批判は世界どこも共通である。

 マスコミ(紙媒体)が退潮を余儀なくされる大きな理由は二つある。構造的要因(インターネットの出現)と世界的不況である。どちらも経営努力ではどうしようもない。「紙媒体」としてのありがちな努力は、記事を面白くする、わかりやすくする、読みやすくする、であるが、いずれも効果は薄い、というよりも迎合化が進んで、結果的に想定読者水準の引き下げにつながって、まあ自滅ですね、多分。
 皮肉というか、FTは本紙よりも「Alphaville」というブログが面白いようである。「ずんちゃか株式投資雑記帳さん」も「FT Alphaville ほんまおもろいわ」とご指摘されている。記者が自由に書くと記事は面白いが、一般受けはしなくなる。マスコミはマス意識を捨てることで生き延びる道を探す必要があることを示唆するが、問題はその道を見つけることが難しいことである。
 日経新聞さんが記者ブログ始めたら面白いのでは…。ヴェリタスブログ版とか、どうすかね。
by bank.of.japan | 2008-12-30 19:29 | マスコミ | Comments(14)
Bernanke-San、占星術が1位、前田参事役の講義=ブログの話題
 本日はブログから話題を幾つか。
・Bernanke-San
 しばらく前、FRBのバーナンキ議長が「Bernanke-Sanと呼ばれている」との話をチラッと聞いた。その後忘れたが、昨日思い出したので、ちょっとネットで調べたら、マーケットの一部で話題になったのですね。こちらの方が大体の経緯を紹介している。ご参照を。JPモルガンのエコノミスト(外人)が書き、ブルームバーグ(英語)が取り上げ、マーケットに広まった格好です。まあ、負債サイドにターゲットを置いた量的緩和ではないので「san」付けは正確ではないが(苦笑)。

・占星術が1位
 ブログサーフィンで見つけた話題。「MarketWatch」にあった2008年の当たったニューズレターランキングである。以下の通りである。
2008's Top Ten
1. Crawford Perspectives +42.4%
2. Peter Eliades Stockmarket Cycles 20.8%
3. Elliott Wave Financial Forecast 18.9%
4. Doug Fabian's ETF Trader 13.2%
5. Yamamoto Forecast 7.7%
6. Lowry On-Demand Investor 7.6%
7. Investment Models Newsletter 5.6%
8. P.Q. Wall Forecast 5.4%
9. Stealth Stocks Daily Alert 5.3%
10. On the Money 2.1% End of Story
marketwatchによると、1位の方は占星術を駆使したテクニカル予想のベテラン。ずーっと不調だったが、今年は大当たりらしい。まぐれなのか、それとも天変地異級の事態には有効なのかだろうか。ところで7位がどなたかご存知ならご教示ください。

・前田参事役の講義
 にちぎん☆NIGHTの市民講座「景気の見方」に参加されたブロガーのochame-coolさんからトラックバックを頂いた。講師は調査統計局の前田栄治参事役。私は白川総裁の講演よりも前田参事役の講義に行きたかったが、こちらはプレス傍聴はなし。ochame-coolさんのエントリー(詳細な報告・多謝です)によると、面白そうであったようだ。エントリー最後に、前田さんイケメン、と報告されていた。フム。
by bank.of.japan | 2008-12-26 18:35 | マーケット | Comments(14)
新聞販売所との正直な取引を通じて推察する業界事情=学生Aさんのコメントで思ったこと
 下のエントリーで学生Aさんから以下のようなコメントを頂いた。
「前から思っていたのですが、『極めて限られた文字量で分かりやすく書け、と教育されている。しかし、物事には限界があって、実際は簡潔に書くと、誤解されやすくなる。』という事ですが、紙媒体だから紙面の制約があるのであって、制約の無いweb版ではそれこそ(小生意気な)小・中学生くらいが読んでも理解できるような物にすればよいのになぁと日々思っているのですが(例えば、wikiのようなイメージ)、どうしてそうならないのでしょうか?中学生並みの金融・政治リテラシーの大人なんて山ほどいるように思いますので、大変需要はあると思うんですが。下手な学校の授業や政策なんかより、断然日本人の各種リテラシーの向上に寄与するんじゃないかと思いますし、月額だとかの有料にすれば収益にも貢献しますし」
 既に他の方の解説的なコメントも頂いているのだが、改めて端的にお答えすると、現在の紙メディアの経営的な観点では、学生Aさんのような存在は読者像として認識されていない、ということである。もう少し詳しく言えば、現在の数百万の読者に置き換わるほどのマスターゲットではない、それゆえにサービス対応する必要がない、したくても方法が分からない、といった事情があるのだと思う。これは既にマスに立脚したビジネスモデルが出来上がってしまったシステムの宿命であり、マスなビジネスはマスしか念頭にない、ということかもしれない。学生Aさんのようなニーズは潜在的にはあると個人的には思うが、経営的にも業務的にも編集的にもマスビジネスに過度に適応してしまった我々は、他のやり方に切り替えができなくなくなっている。
 個人的な話だが、新聞配達所とのやりとりを通じても新聞媒体が既存読者の確保に血眼になっていることがうかがえる。私は商売柄、日経新聞しか取っていない(一時浮気したが)。日経はご存知のように専売所を持たないので、他新聞に相乗りしている。従って、よくある選択肢はA新聞かY新聞から日経を取ることになる。
 私は現在、Y新聞に配達してもらっているが、これは織り込み広告が多い、と言われるため。織り込みはゴミになるが、織り込み量の変化とかチラシの内容とか、これはこれで身近な景気診断の一つになるかもしれないので、Y新聞にしている。
 配達所には、正直に以下のことを通告している。①商売柄日経しか取れない②二紙取る余裕はない③ただし、お互いにメリットがあるなら二紙取ってもよい-である。③の例はないと思っていたが、最近は事情が変化してきた。数ヶ月前、配達員がほとほと困った顔をしてY紙を取ってくれ、と頼んできた。対応の良い配達員なので、ついうっかり「条件次第で取ってもいいかな」とボロッと言ってしまったのだが、驚いたことに景品の合計が契約額を上回ったうえに半分冗談で言ったことも受け入れたので、一時的に二紙契約とした。ライバル紙との対抗上、どうしても販売部数を伸ばす必要があり、そのためには出血サービス?も辞さない、ということであった。
 新聞はマスビジネスとして完成しきったモデルであり、顧客のマス層が縮小するときは、そのマスを余計に大事にする方向になる。実際は、新聞を必要としない人が増えているのだが、まだまだ既存マス層がでかいので、そのつなぎ止めに必死となるわけだ。これは縮小が確定的になったマーケットに対してコストをかけてサービスを強化する構図(出血サービスの契約確保)であり、ビジネスモデルとしては自ら縮小均衡に拍車をかけている。
 このほか、裏目のサービス強化の典型例は、「読みやすくする」と称して、文字を大きくしたことである。ただでさえ制約のある文字量がさらに少なくなり、情報量の低下を招いたのではないかと思う。これは書く側にとってはかなり辛いことであるし、学生Aさんのような読者をさらに遠ざける行為でもあろう。確かに団塊世代は購読者層としてデカイが、文字を大きくして心中体制を強化する必要はないだろう。
 余談だが、YでもAでもない新聞の配達員が勧誘に来たことがあった。私は冗談で「日経をただにしてくれたらとってもいい」と言ってみた。驚いたことに「OK」であった。ただし、これは配達員の独断でやったことが後から分かった。惜しい、何年でも取るつもりだったのに。

 今回の景気悪化は、既に広告料の急減を招いており、上記のような事情もあって、マスコミの再編・淘汰をかなり促すだろう、と個人的には覚悟している。この津波のような景気悪化の波が去った後、一体何社のマスコミが自力で立っているのか。マスコミ業界も一変している公算が大きい。その中で私&このブログがどうなるのかは神のみぞ知る、です。
by bank.of.japan | 2008-12-24 22:34 | マスコミ | Comments(27)
付利を下回るコール取引=日銀NIGHTの雑感
 利下げ決定後で最初の営業日となった本日、無担保コール取引の最低は0.08%。準備預金の付利(0.10%)を下回る取引があった。日銀の当座預金口座を持たない向きのコール運用があったのだろう。米国のFF加重平均を押し下げていたGSEと似た存在と言えば、生損保ですね。
 生損保の超短期運用はコールか普通預金。銀行によっては生損保と握って0.10%で取ってやるところもあるかと思ったが、手数料などはしっかり引かれた、ということか。後は短資会社の手数料がどこまで薄くなるか、であろう。短資会社はこれからかなり厳しい経営環境になりそうだ。前のゼロ金利時代には少なくとも外資系は元気だったので、デリバティブ仲介とかインタバンク以外でいろいろ手数料ビジネスはあったので…。

 久々に調節課の知り合いとコンタクトが取れた。これまでは基本的に連絡取れない状態で、元気かどうかが不明。少なくとも売手地獄から解放されて良かった良かった、である。まあ、新年も新型オペとかCP買いきりとか詰めの作業あるので、忙しいであろう。しかも、日銀は無菌豚作戦は取らないようなので、これからは二課&調節課が緩和攻撃の主軸になりそうだ。

 日銀NIGHTで総裁講演。参加者からの質問で雑感を幾つか。
・「ICPOと今でも情報交換しているのか」 いきなりICPOから始まったので、面食らう。総裁もキョトンとした感じであった。残念ながら前提抜きの質問であったので、恐らくは偽札からみを念頭に置いた質問であったとは思うが、かなり興味深い。質問した方(年配の方)がディテール語ってくれたら、と思った。
・「ネクタイにこだわりあるのか」 質問した方は「今日の新聞記事によると…」と前置きしていたが、私はその記事がどれか分からなかった。後でチェックしたら朝日新聞の真ん中にある特集ページ(見落としていた)のことで、セントラルバンクを大々的に取り上げておった。しげしげ見たが、かなりお金かかっている特集ページである。レイアウトは何だかお洒落系な雑誌風。総裁が旧館廊下と思しき場所でモデル風に撮られているのには驚き。中央銀行をお洒落的なビジュアルにすると、こういう感じになるのね…。
・「ドルを買い支えているのに、ユーロはしないの」 これはドル資金供給の話。われわれマスコミは、基本的には何も知らない人を前提に専門的な記事を極めて限られた文字量で分かりやすく書け、と教育されている。しかし、物事には限界があって、実際は簡潔に書くと、誤解されやすくなる。その中でも、各国中銀の協調ドル供給は説明するにはかなり難易度の高いものに入る。「ドルの買い支え」という為替介入的な理解をしている人は多いのだろう、と思う。

 講演内容で興味深かった点など。
・銀行券還流の地域別チャート。これはかなり面白い。特に九州管内の払い出されたお金が福岡が集中する様子は興味深い。これは銀行券の物流管理状況を浮き彫りにする。
・さりげに生産性の高さをプチ自慢。
by bank.of.japan | 2008-12-22 21:35 | 日銀 | Comments(14)
利下げや輪番増額やらCP買いきりやら…
 年末バーゲンセールの結果となりました。
 利下げ、輪番増額、CP買いきりは満額回答。これにオンされたのが、30年や変な物の国債を対象にしたこと。あとゾーニングでの買い入れですな。技術的買い切り増額の必要性は当ブログではかねており指摘していたこともあり、実現できて良かった良かった、であります。
 まあ、もっと早くやればよかったじゃないか、という批判もありましょう。実際は追い込まれて、やらなきゃいけない策がたまってしまったのだろうが、まあクリスマスも近いことでもあり、意図的に策をためて一気にプレゼントをぶちまけた、とでも解釈しましょう。
 やっぱり無菌豚の意味なし演技は嫌であるらしい。多少イベリコ風味が付き始めたということか。

QE(quantitative easening)ではなくQE(quality easening)に力点を置いたもの。買うものを選別(select)するので、SQE(Selective Quality Easening)とでも名づけようかな。ゼロ制約に直面した中央銀行の緩和操作が負債から資産に移行することについてはまた機会があれば取り上げたい。
by bank.of.japan | 2008-12-19 14:39 | 日銀 | Comments(33)
また思い付いた=超簡単なB/Sターゲット政策(別名・無菌豚作戦)
 まあほとんどジョークだが。FRBの「漠たる量的緩和」で中央銀行のB/S規模が緩和度合いの尺度として比較されかねない事態となってきた。そこで、また思い付いたのだが、まさに「B/Sターゲット政策」をやったらどうか。とりあえず簡単にメリット・デメリットなどを整理してみた。
<メリット>
・日銀は簡単にB/S拡大が出来る
・ツイストを重ねるだけ
・エグジットも比較的容易
・資産は傷まない(きれいに太る無菌豚作戦=FRBはイベリコ豚)
・福井前総裁はまさにこれに近いことやったじゃないか
・ターゲット金額がデカイ(今は130兆円弱)ので、マスコミがはしゃぐ。政界も喜ぶ
・金額が注目されれば効くかもしれない
<技術的ポイント>
・ツイスト機動性or能力を高めるために売手レートの上限を撤廃(つまり気に食わないからと言って足きりしない)
<デメリット>
・バカじゃないか、と言われる
・調節課は当座預金残高操作と同様に虚しい。
・規模から中味(質)が注目されたら無菌豚の化けの皮が剥がれる

 バカじゃないか、と言うのはもっぱら調節の分かるインタバンク関係者。ただし、売手指し放題にしたら、大喜びするので「バカとは言わない。喜んで協力させていただく」(資金ディーラー)そうだ。私は、一回だけ言うが、後は言わない。

「豚は太るか死ぬしかない」という小説の題名を思い出した。
by bank.of.japan | 2008-12-18 18:04 | 日銀 | Comments(7)
FRBのバンド誘導&量的緩和のポイント
 下のエントリーで思いつきで書いたバンド誘導は日銀を想定したものだったが、いきなりFRBがやったのでちょっと驚き。日銀にもお勧めです。で、FRBのバンド誘導と量的緩和のポイントを幾つか簡単にまとめたい。
<金利誘導>
・誘導目標は0-0.25%、準備預金に0.25%の付利、ロンバートは0.5%。普通だと誘導目標は0.25%から0.5%の間にピンポイントで設定されるが、吸収能力問題やGSEが付利されないなどで金利誘導は難しく、既にFFはゼロに近かった。従って、現状追認の大幅利下げ。
・ゼロ金利ターゲットにしなったのは、まあFRBも市場機能論を意識したということか。だとすると、個人的にはやや意外である。準備預金の付利は補助金の意味合いが強いのかもしれない。
<量的緩和>
・ターゲットはない。膨張B/Sの堅持ないしさらなる膨張という漠たる量的緩和。
・漠たる量的緩和の手段は、いろいろな物を買う。選別的質的緩和を通じた緩和効果が狙い?
・準備預金付利(吸収手段)でベースマネーの定義が形骸化。これをいくら増やしても、それは吸収を増やす格好にもなり、結果的に信用乗数の劇低下を招く。
<さりげに時間軸>
・まだ言い方は変化していくかもしれない。もっと強い方向と思われるが…。

おまけの考察
<金利付き量的緩和>
 これは宿題でもあったが、私はもともと量的緩和自体のマクロ効果には懐疑的で、強いて効果があるなら、やっぱり①ポートフォリオリバランス(染み出し)効果②期待への働きかけ-が中心であったと思う。もう一つは、CPIコミットメントも含めた時間軸効果(長短金利の低下)。
 この観点で、付利したままの量的緩和を考えると、①の効果は金利分減殺される②期待に働くかどうかは受け止める人による(インタバンクには効かない、私も)-といったところか。時間軸効果は多少あるかもしれない。これはむしろコミットメントの有無、その強さの方が大きいと思う。

日銀のやった量的緩和は一番ピュアだと思うが、これは日銀オンリーの芸で、これからはFRB的漠たる量的緩和を選別的買い入れでやっていくのが主流になるのだろう。そのときの鍵は為替ですね。多分、日銀の将来は「TOKYO連銀」であろうか。白川総裁、FOMCに行った方が手っ取り早いかもしれない。政策委は事務的決定会合になります。まあ、こういった将来像はまた別の機会に。
by bank.of.japan | 2008-12-17 18:25 | 日銀 | Comments(16)
半期報告雑感&思いつきの案&内定取り消しと国会会議録
 本日は参院で日銀半期報告。ブラックアウト中の開催となり、目先の金融政策で突っ込んだやりとりはあまりなかった。以下、雑感を幾つか。
・総裁、市場機能論はほとんど触れなかった。これは戦略的には正しいと思う。これを唱えてしまうと現行政策が「絶対国防圏」になり、緩和圧力に玉砕戦を展開することになる。
・果敢な流動性対応でB/Sが急膨張するFRBが実はリスク遮断に関して政府のバックアップなどがあることや、CP買いきりでもトリプルAに限定していることなどの解説が良かった。これは総裁も言うようにもっと報じられるべき。ドルの信認を維持するためにも必要。わが国財務省も国難の時期なので日銀が突っ込むときのバックアップ体制が必要ではないか。日銀は梯子外されたくないのですよ。
・ゼロ金利や量的緩和の可能性を排除せず。
・余談 当ブログがちょっと言及されて赤面。総裁、配慮した答弁ありがとうございました。

政策論で思いついたこと。
・スイス型のバンド誘導はどうだろう。ロンバートを少し下げる(これは利用期間の延長を強調すればターム物金利の上昇抑制効果ある・市場安定に寄与)、それで誘導目標をナローバンドにする。金利は狭いバンドで上下動できるので市場機能が生きる余地あり。年末越えは潤沢供給で下限に張り付かせる形となるが。吸収で頑張る必要もないので、金融市場局も楽になるはず。
デメリット→年明けからの新型オペの金利が決まらない(バンドの真ん中に設定?)。

内定取り消しが大々的に報じられている。さっき見たNHKニュースでは高卒・大卒の内定率は去年とほぼ同じ(大卒はやや上昇)。報道だけだとあたかも就職戦線崩壊の印象だが、内定率は意外な堅調ぶり(今後は不透明)。で、過去はどうだったか。昔の国会答弁を紹介したい。
 「不況は一層深刻の度を増し、戦後その比を見ない不況状態に陥っているのであります。生産活動は減産強化など低迷を続け、企業の設備投資意欲は依然として後退を続け、景気の下支えをしてきた輸出は成約激減などで大幅減退が予想されるに至り、ついに新規雇用の抑制、明年採用予定の取り消し、企業倒産、人員整理の段階に突入するに至ったのであります」
 これは昭和46年11月11日の衆院本会議。ニクソンショック(同年8月)の直後の状況である。ちなみに発言者は社会党の広瀬秀吉議員である。
 
当時の会議録検索中に興味深い答弁を見つけた。ショック後も為替市場を閉鎖しなかったのはまずい判断だと思っていたが、これを読んで考えさせられた。ブレトンウッズ体制の崩壊。相当な衝撃があったはずだ。そのときの詳細、長いが紹介します。水田大臣の答弁である(昭和46年10月21日、衆院本会議)。
「○国務大臣(水田三喜男君) ニクソンの声明に対応して、もう少し早く機敏に対応のしかたがなかったかというお尋ねでございますが、これについて、あらためて御答弁申し上げます。
 この声明が出たときは、ちょうど日本ではもう為替市場が開かれておったときでございますので、そのまま閉鎖しないで過ごしました。欧州の諸国におきましては、この声明の出た直後市場が開かれる番になっておりましたので、ここでは全部市場の閉鎖をいたしました。したがって、翌日わが国はどうすべきかという問題は、当然問題でございましたが、御承知のように、欧州の諸国は自国の通貨建ての取引の部分が非常に多い。したがって、為替市場を閉鎖しても対外取引にそう大きい支障を来たさないということでございますが、わが国におきましては、全く違って、ほとんど全部の輸出入取引が外貨建てになっておるということでございますので、したがって、市場を閉鎖することは対外取引に対して非常に大きい支障を与える。そのことがいろいろ経済の混乱を招く危険が十分にございましたので、非常に慎重に考えて、日本はそのまま続行することにいたしました。と申しますのは、もしそのまま市場を閉鎖しないでおいたために、投機的な短資が入り込んできてだれかをもうけさせる、そういう不当なことが起こる可能性がございましたら問題でございますが、日本の為替管理は非常に行き届いておりますので、そういう危険が見られなかった。したがって、これをこのままにしておいても、国内の経済混乱を来たすよりは非常にいいという判断で、日本は市場を閉鎖しないことにしました。もし、あの場合に、海外の例にならって何らかの形で変動為替制度に日本が移行したとしましても、ドルに対する不安が非常に強かったということと、初めての経験でございますので、それに対する戸惑いから、やはり大きい経済混乱を起こしたんじゃないか、この可能性が非常にございましたので、すぐにこういう変動制に移行するということに追随することもしないで、そのままにした次第でございます。
 しかし、そうやっておりますというと、外国の市場レートに比べて円が事実上切り下げられたことになってきましたので、これは今後の国際協調の上から見て非常に大きい支障になるということが一つと、さらに、この問題を解決するために国際会議が開かれるということになって、日程まで、日取りまできまったという事態になりましたので、そういたしますというと、日本も同じ基盤に立たないと交渉について非常な不利な立場に立つということから、二十八日になって初めて日本は、欧州と同じような変動為替制に移行する、こういう決心をした次第でございまして、まあ、あとから考えることでございますが、あの場合には、これくらいの慎重な態度であってやむを得なかったんじゃないかと私は考えます。(拍手)
 そこで、延びたことが、メーカーやあるいは特殊な商社、為替銀行を擁護するためにやったんじゃないかというお尋ねもございましたが、いま申しましたように、国民経済全体の動向を見ましてとった処置でございまして、そういうことではございません。
 その期間にドルが非常に流入して、この差額だけ国民全体の損失になったというお話でございましたが、これもまた問題でございまして、買い取り資産が減価したということは確かにございますが、しかし、もしああしないで国民経済が混乱した場合の損失に比べてどういうことであるかということと、円を切り上げたということは、円の国際購買力を全体としてそれだけ増大させておるということを考えますと、国民経済的に見て、広い視野から国損であるかどうかの判断は、そう簡単には私はつかないものではないかというふうに考えております。続く」
 これは衝撃を受けた金融市場の安定を取り戻すための中央銀行の流動性供給と似ている。我々はその後の歴史を知っているので、先人の誤りは指摘しやすいが、当時のその状況に置かれたら、これはやむなしということであろうか。会議録、勉強になります。これは本当に良いデータベースである。

ブッシュ大統領の反射神経は凄い。元ナスダック会長の詐欺事件、プリンストン債事件を思い出した。
by bank.of.japan | 2008-12-16 22:42 | 日銀 | Comments(5)
短観でした=中小・自動車の先行き▲84!&風景の話
 短観が出ました。マーケットは超悪化は織り込み済みで、むしろ株は買い戻しとなったようです。米株が上がったのも大きいでしょうか。短観は劇悪化でしたね。DIは理論上は最悪で「▲100」もあるのだが、業種別で表題のように中小企業の自動車部門で最悪に近いのが出たのは驚き。先行きの数字だが、恐らくは実現しそうな雲行きである。全体としても、電力など一部を除いてほぼ全滅。需給ギャップも拡大、言葉で表現すれば「急激な悪化」といったとこでありましょう。
 既に株が何千円も落っこちた衝撃を受けたあとなので、マクロ統計や短観の劇悪化というのはマーケット的には「そんなもんだろう」という感じであるが、経済分析を生業にしている方々は「職業人生においてこんな数字を見ることになろうとは…」という感想を抱くのではないかと思う。マクロ統計は遅行的に出てくるので、これからも「こんな数字が出るとは…」ということが続くのではなかろうか。大恐慌の二の舞にはならずとも、相当に酷い事態になるのではないか、と個人的には覚悟しております。
 しばらく前、米国のどのブログが忘れしまったが、「こんなに悪い数字が出ているのに、人々の様子は普段通りで、ショッピングセンターは混んでるし…。配給のスープに人が並ぶような恐慌の感じなんてない。恐慌は人々の頭の中にあるだけじゃないのか」という内容のコラムがあった。
 恐慌的な場面を想像したくなる気持ちは分かるが、数字と風景が直結しているわけではなく、例えば大恐慌時の失業率は凄まじい(30%近い)が、裏を返せば7割の人は職があったわけで、そこらじゅうに配給の列ができるわけでもないだろう。このコラムを書いた人は都市部のエリートとだったと記憶するが、まあそういう人の周りの風景はそうすぐには変わらない気がする。
 変化は日々少しずつ、弱い地域(地方など)・弱い業種や労働者では場合によってはスピードが早くなって変わっていく。半年後、一年後、風景がどう変わっているのか。想像すればきりがないが、バブル崩壊後もゴールデンリセッションとか言われた日本の風景もかなり変わるんじゃないか、と不安である。
 
 金融政策はいろいろ考えているが、FOMCと日銀決定会合も直前でもあり、いろいろ考えてもこれだ、というものも両中銀から透けてこないので、取りあえず結果が出てから考察します。どうも日銀が前にやった「量的緩和」という風には(日銀も含めて)ならない気がするなあ。私は個人的にはあの量的緩和が「戦略的に」素直でいいと思うが…。
by bank.of.japan | 2008-12-15 23:04 | 経済 | Comments(12)
「私の履歴書」の雑感・小宮隆太郎氏&ビッグスリー
 小宮隆太郎先生が登場している。これまでのところで幾つか雑感を。
・経済学を選んだのは偶然。人生、どうなるか分からない。
・戦時中、勉学への逆風から受けた中学?の競争率がかなり低下。だから受かったというわけではないが、戦時中のエピソードとしては興味深い。学徒出陣ばかりが目立つので。
・昭和30年ごろ、日本の所得は米国の10分の1から15分の1ぐらい。
・キンドルバーガー、ティンバーゲン、シャウプといった著名人らとの交流も興味深い。

その他
・小宮先生のことは白川さん(現総裁)から何度も聞いたことがある。恩師ですね。
・日銀にも小宮ゼミ門下生は多い。須田さんとか。
・国会議員では山本幸三氏。
・金融政策をめぐって、例えば山本氏が日銀と対立する構図が、経済学徒ではない私にはなかなか分かりにくいところである。

ビッグスリー救済法案は廃案。
感想は一点。労組が日本車メーカー並みへの給与引き下げを拒否したのには驚いた。日本車メーカーの待遇があまり悲惨ならまだしも、米国民の平均に比べてまあ妥当なものなら、労組への同情はないような気がする。
by bank.of.japan | 2008-12-14 13:23 | 経済 | Comments(13)


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