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これは何だかホッとする答弁です=一万田総裁の精神的なゆとり論
 金融経済はもとより政治&社会などの様々なメディア報道を眺めると暗くなる(報道の仕方も首を傾げるものが多い)この頃だが、まあ世の中はいつも先行き不透明なもので、これは恐らくは終戦直後の方が不安が大きかったのだろうと推測される。引き続き一万田総裁のシリーズだが、当時の困難な時期に訪米した総裁が国会で述べたことが妙に心に染みた。昭和26年3月14日の参院予算委員会より。

○高良とみ君 一民間人として一万田総裁がアメリカを見ておいでなつたという御趣旨に非常に共鳴いたすのでありますが、一つ率直に国内の融和を阻害しないという御見識の点を伺いたいのでありますが、一体アメリカの財界にお立寄になりまして、曾ての日本のようでなく、日本の財力或いは日本の経済的国力というものが、曾つての日本の二円が一ドルであつたというようなことはなく、非常に下つておるということを御痛感になつただろうと思うのであます。その点で、私ども国民としても過去の戰争の破壊を思うのであますが、その点日本は今日戰後五年の復活を以てしましても、よほど世界各国の財力からいつて低いところにあるというふうに御覧になつたのか、或いは私ども日本から一方的に考えておますように、アメリカが非常に好意をもつてくれておつて、回復も早い、又国力においても国内輿論のごとく、対米ドルの為替レートさえも上げてもいいんじやないかというような気構えのある状態からいいましても、その国際市場における日本の財力の見通しを、四等国と見られるか、七等国と見られるか、その辺についてのお感じだけで結構でありますが、先ずお聞かせ願いたいと思います。
○参考人(一萬田尚登君) 無論物質力の比較になると問題にならない。私、丁度デトロイドに行つて、そうしてクライスラーのプリムス、あの自動車を見たのですが、これはまあ五十六秒で初めから終いまでの自動車の検査もやり、ガラスも張り、何もして五十六秒で一台できる、もう実にプラニングと言いますか、或いはメカニズムと言いますか、或いはエフエシエンシイと言いますか、実に見事なものである。併し、それを日本に持つて来て、仮にやつたら、一日やつたら翌日から原料がなくなりはしないかというふうにまあ感ずる。これはまあ物質力の比較の一つの問題で、必ずしもそういうことは日本ではやれないということで、そこまでは行かないが、併し一面これは精神でしよう、精神的には……実はこれは甚だ時間がないので、おしやべりをして漫談になりまして恐縮でありますが、実は私は関東大震災の頃にアメリカに行きました。そうしたらもうハワイに着いた頃から、これは大変な国に来た、サンフランシスコに着けば又感心する、ニューヨークに行けばいよいよ以て大変だ。その当時ウールウオースが五十七階で一番高く、その上に登つてニーヨークを見渡し、どうも足や尻が上つて来るようで、何だか下に飛んで見ると気持がよさそうなそういう感懐である。併し、今度それで自分としてもアメリカがどういうように自分に映るだろうかという興味を持つて行つたのです。だが併し、行つて見たら何も驚くことはない、ニユーヨークに行つて見るが少し家が高いというふうにも思わないし、エンパイヤステートというと百何階だが、私から言うとクラッチの芯が立つておるような感じ、そこで私はどういうわけかと非常に疑問にした。これは自分が飛行機に乗つて太平洋を、地球の上から見た、そうして地球の廻転と競争して見た、それで自分の気持が大きくなつて、此細なアヌリカどうでもよろしいという気持、そこでそういうふうな感じを私は持つたと思うのです。そんならば同じようにもう一遍地球を上から見て、今度は地球と追駈けつこをして日本に帰つて来る、日本が如何に小さく見えるかと、それで私が羽田が見えたその瞬間において私の胸間において起つた感懐でありますが、何にも小さく見えない、日本はそれでよろしい、何もそういうような点について大小の気持は起らない、形態は違つておるが大小の気持は起らない、これは一体何であろうか、これはまだ私は解決をいたしておりません。だが併し、物質的にさように相違するにかかわらずそういう感懐が湧くということは、これは日本の精神的の成長ではなかろうか、こういうふうにまあ考える、その精神的な成長が具体的にどういうふうに何を意味し、今後においてどういうふうにこれが発展するかということは、私は今宿題としてじつと考えております。

 物質的な豊かさを比較すれば圧倒的な差があったにも関わらず、羽田に降り立った一万田総裁が物質的な大小の気持ちは起きなかったはなぜか。普通なら戦勝国に追いつき追い越せの檄を飛ばすor額に汗して頑張ろう的なスローガンを発するようなもので、一万田総裁はそういうタイプのようにも思えるが、意外に精神的なゆとりを大事にしているのではないかなと思った(違うかもしれないが)。面白い人ですね。
 最近のメディア報道は、疲れるというかなんというか、そんなに騒ぐことか、ということが多く、そういう中で昔の国会論戦を読むと新鮮ですね(様々な意味で)。

野村証券の田淵さんが亡くなった。ご冥福をお祈りしたい。「私の履歴書」は貴重な証言でありました。ありがとうございます。
by bank.of.japan | 2008-06-30 22:07 | 一万田総裁 | Comments(7)
国会議員に「不勉強だ」と言い放つ一万田総裁=痛快爽快な国会論戦
 マーケットがややきな臭い動きだが、終わりの始まりではなく、軽度の調整であることを願いつつ、本日も一万田総裁シリーズといきたい。面白いやりとりを幾つか見つけたので。まずは、国会議員に「不勉強である」と反論した痛快な場面である。今だったら、先生方怒って委員会が止まるだろうが、どうでもいい質問をする国会議員が多いのは事実である。霞が関の官僚の方々もうなずかれると思うが、議員が空虚な質問をしたら大臣なり総裁なりが「時間の無駄だ」と突っぱねて欲しいものだ。では一万田総裁である。昭和25年07月26日、参院の予算・大蔵委員会連合審議会より。

○佐多忠隆君 …日本銀行は依然としてこれを金融で調整する方策をお採りになつていると思うのですが、その後六月に至りまして、私達に言わせればむしろ突如として金融政策を変更になつたように考えるのですが、こういうふうに突如と変更されたのじやないか。これが若し突如とされたならば、どういう理由によつてそういうふうに突如と変更をなされたのか…
○説明員(一萬田尚登君) 実は私は安本時代から佐多君が非常な勉強家であるということを承知いたしております。(笑声)その佐多さんから今のような御質問を受けることは私は非常に意外に思う。こういうことを言うのは惡いのですが、それは突如とおつしやる。突如というようなことは絶体にない。それは今日国際情勢が如何に激しく日々変化しつつあるかということを御勉強なさつておれば、日一日或る意味において政策が変つても決してこれを不思議に思うことはないのであります。それ程かように違うのです。二十四年度はああいう政策、二十五年度はそういうふうに行くべきでないということは私は勉強が少し足りないと思う。むしろ日本銀行は遅過ぎたのではないかというふうに考えて行くのが当然じやないか、私はそういうふうに答弁をして……。決して突如じやない。二十四年度はああいうふうな財政……、そういうふうに行くのであります。二十五年度はそういうふうなことを繰返してはいけないということは少し深く考える人は当然思いを及ぼさなければならんと私は思う、突如というのはおかしい。それは要するに自分の不勉強でただ日本銀行のすることだけをいろいろ見たり聞いたりするからそういうふうに突如……。自分が勉強しておれば決してそういうことはない。

なかなかに激しいですね、一万田総裁。これで議場が荒れたかというとそうでもなくて、委員長はこう続ける。

○委員長(波多野鼎君) ちよつと質問の方に申上げますが、時間が余りありませんのに質疑通告者が非常に多いですから、どうぞ簡單に御質問願います。

で、勉強が足りないと言われた佐多議員はこんな感じである。

○佐多忠隆君 日銀総裁から不勉強を指摘されまして誠に恐縮なんですが、併し私が突如と申しますのは、私はしつかりした数字を以てお話しておるので、四月、五月には少くともそういう方向でなかつたかと私は数字的に説明ができると思いますが、これらの点になりますと見解の相違でございますから…

冷静ですね。

私はこんな場面を見てみたい。

○某党某君 日本銀行総裁に伺いたい。199×年の預金金利が一定であったとして、今日までに失われた預金利息はいくらであるか?
○説明員(日銀総裁) その質問は意味がない。経済は変化するものであり、それに応じて預金の金利も変化するものである。変化しなかった場合の、しかも預金の部分だけを取り出して計算することには何の意味もない。私は、そういう意味のない、しかも1足す1はいくらかというような計算に答えるためにこの場に来たつもりはありません。
○某党某君 総裁、申し訳ありません。二度とこのような浅はかな質問はしません。

まあ、激昂するでしょうね、某党某君は。でも、激昂してもいいから、総裁が冷たくあしらうところを見てみたいな。
by bank.of.japan | 2008-06-27 22:04 | 一万田総裁 | Comments(12)
日銀外貨資産の起源を紐解く国会議事録=大変興味深い
 総裁人事以降、(金融経済系の)国会論議にほとんど興味をなくし(池尾氏拒否には絶望感)、エントリーのネタにする気もうせたこの頃、久しぶりに昔の国会議事録でも読んで憂さ晴らしようかと思った。昔の論戦は面白い(&専門的)ですから。検索システムで適当に選んだのが昭和27年3月3日の参院予算委員会。読んでいくうちに引き込まれ、日銀が外貨資産を持つに至った経緯に関連するやり取りにぶち当たった。鉱脈の発見である。プチ感動した。やり取り、ざっと紹介します。

○木村禧八郎君 …それは二十七年三月末、今年度末において外貨ポジシヨンがどのくらいになつて、そのために円資金はどれくらい必要なのであるか。そうしてその手当はどういうふうな内容の手当ですることになつているか。例えば外為で幾ら、或いは平和回復費の流用が幾らかとか、或いは日銀のスワツプが幾らとか、こういう内容的に一つ御説明を願いたいのです。それと最初二十六年度予算で予定しておりました、その二十六年度予算の基礎になつておる外貨ポジシヨンと、その円手当の金額、これをお伺いしておきたいのです。
○政府委員(石田正君) …従つて外為会計といたしましては、七百億の借入は全部しておるという状況でございます。なお且つそれによつて足りませんと、これはスワツプ取引と申しまするか、日本銀行に外貨を先売りし、あと買いをすることによりまして、現在におきまして七百億程度のスワツプを行なつておる、かような状況でございます。
○木村禧八郎君 日本銀行総裁に簡單に一つお伺いしたいのですが、このスワツプの場合に、外為の外貨を日本銀行に売つた場合、若しポンドの切下げなんかの起つた場合の損失関係はどうなるのですか。日本銀行が外貨を持つというような場合ですね。
○参考人(一萬田尚登君) 日本銀行で最近委員会に言つてありますから……。
○木村禧八郎君 日銀の負担ですか。
○参考人(一萬田尚登君) 委員会の負担です。スワツプの現買先売になつております。

 まず、外貨資産の起源についてはこちらのエントリーを参照して頂くとして、日銀の説明は「外国為替会計における資金繰り調節のために、政府との間で外貨資金売買取引を行ったことがある。昭和26年(1951年)に戦後初めて行われて以来…」となっている。つまり議事録は日銀が外為特会とのスワップ取引をやった直後の国会論戦を記録したものだ。
 さて、日銀外貨資産の謎である。約5兆円の通貨構成(昨年)はドルが65%、ユーロ30%、ポンド5%だが、なぜユーロやポンドを持っているか、である。日銀は為替売買は法律的には可能だが、実行は難しいと思われる。ドル売り・ユーロ買いorドル売り・ポンド買いをやるにしても、どうやってやるのか。日銀が外為市場に出たという話は(少なくとも私は)聞いたことがない。BISを使う? 市中銀行とやって秘密にさせる?
 当時の国際通貨&貿易情勢は良く分からないが、この議事録の前後のやり取りからはポンド余剰が問題視され、わが国保有外貨の大半がポンドであったように思われる。この推測が正しいとすれば、外為特会と日銀のスワップ取引はポンド・円であったはずで、つまり日銀が今なおポンドを持っていることにつながるのである。700億円のスワップ取引で得た利息分(これがポンド建て資産の根っこ)が今の2500億円(5兆円の5%)となったのですね(多分)。この想定に沿うと、ユーロ建て資産の前身はマルク建てで、これはマルク・円のスワップ取引だったのかなあ。それとも何らかの手段でドル売り・ユーロ買いしたの?
 それにしても木村委員の突っ込みは好きだなあ、全体の議論もレベル高い(というか相当に専門的)感じである。それに引き換え、低利息だから消費が出ない、という議論の何というレベルの低さよ…。

ps 一萬田総裁の言う「委員会」は外国為替管理委員会のことだと思われる。最初は「政策委員会」かと思っちゃいましたが(苦笑)。それにしても当時の国際金融情勢に疎いので専門用語が分からないですね。「ドル・クローズの撤廃」とか、「スターリング・ブロツクヘの輸出を制限する」とか、「日英両国間の支沸協定」とか。何となく想像は付きますが…。今のドル余剰問題と通じるところがあるような印象もあって、全体として非常に興味深い議事録であります。
by bank.of.japan | 2008-06-26 21:48 | 日銀 | Comments(2)
大機小機の「欧州人」は誤解している
 本日の「大機小機」は剣が峰氏。「欧州人はかく語りき」と題し、欧州人の弁を借りて内需主導の経済成長を果たせ、という主張だった(と私は受け止めた)。まあ、欧州人が言うように内需主導の経済成長によって生活が豊かになればいい、とは思うが、問題は欧州人の語る内容が甚だ怪しい、ということである。以下、欧州人さんの語りき主なポイント。
①財務省は巨額介入し、円安の決意を表明。金融機関は海外与信を増やし、日銀も歩調を合わせて異常に低い水準まで金利を下げ、資金の海外運用を奨励した。
②おかげで円安基調が維持され、長期の回復が今日まで続いた。
③しかし、国内の回復実感は乏しい。これは資金(資本)が海外に流れたからで、金融機関は流動性を失い、貸し出しに消極的になった。
 まだおかしいところはいくつもあるのだが、この辺で止める。
 まず、①は基本的にはデフレだったので、財務省は巨額介入したわけで、日銀も低金利を続けた。それだけのことだ。円安になるかどうかは時々の外為市場の美人・不美人投票の結果次第であり、たまたま金利差を材料にするのがブームになったに過ぎない。
 ②は一義的には海外経済が非常に堅調であり、日本の輸出製造業が潤ったため。円安はその追い風になったに過ぎない。回復のけん引は海外需要であり、円安は側面的な支援材料である。いくら円安でも海外需要が低迷したら外需主導の成長にならないでしょ。
③は誤解も甚だしい。金融機関はジャブジャブの流動性を抱えている。流動性なくて貸し出しに消極的なのではなく、資金需要が乏しいから貸出が増えないのである。

 欧州人の弁を借りて内需主導経済の必要性を説いても、そのロジックが怪しいと説得力が乏しいのではないか、と思った。ところで、この欧州人。「ロンドンを拠点に活躍する欧州のジャーナリスト」とのこと。もしかして時々日本に関して変なこと書くあの赤い新聞の記者であろうか。こだとすると困ったものである。
by bank.of.japan | 2008-06-25 22:40 | 大機小機 | Comments(8)
お知らせ=連絡先について(追記あり)
 当ブログに連絡先を入れることにしました。画面の右上のところです。長い間、ブログをやってきたのに、メールアドレスを入れなかったのは、①やり方が良く分からなかった(右側メニュー欄の構成など)②文章で書くとスパムが殺到しそうでためらっていた③入れようと思いつつ、忘れてしまった-といった理由のためであります。まあ、連絡が必要な方々はコメント欄を非公開にしてコンタクトされてきたので、特に不便も感じなかった、という面もあります。
 今回、アドレスを画像ファイル化する方法を何気に見つけたので、試しに貼り付けてみました。少し分かりにくいですが、@の前はhongokuchoで、後ろはgmail.comです。よろしくお願いします。

追記 ある読者のご好意により、アドレス画像を見やすいロゴに変えました。ありがとうございます。
by bank.of.japan | 2008-06-24 20:20 | 連絡先について | Comments(2)
議事要旨の「ある委員」が気になる件について=この方はやっぱり…
 4月30日と5月19、20日の金融政策決定会合の議事要旨を読んでいて、「ある委員」が何となく気になった。最初、斜め読みした感じではちょっと気になり、もう少し読み込んでみたらかなり気になった。いったん「気になる感」が強まると、ますます気になるもので、この「ある委員」の発言の前後関係、議論における登場の仕方など考察が深まってしまうのですね。で、思ったのは、この「ある委員」はやっぱり白川さんじゃないかと。気になった発言の幾つかは以下の通り。
4月分
・ある委員は、日本のバブル崩壊後の長期的な景気低迷の経験を踏まえれば、金融システムが安定しないと、金融緩和や減税の効果も限定的になる可能性があると付け加えた。
・ある委員は、物価の安定とは中長期的に考えるべき概念であり、物価が安定しているかどうかの判断では、短期的なインフレ率の変動というよりも、基調的な動きが重要と付け加えた。
・ある委員は「中長期的な物価安定の理解」に対するいくつかの批判について言及した。(以下略)
5月分
・ある委員は、現在生じている一次産品価格の上昇は、需要ショックと供給ショックの2 つの面で日本経済に影響を及ぼしており、これらのショックが持続的に続いていることに特徴があると述べた。この委員は、一次的な供給ショックについては、インフレ予想の変化を通じて二次的な影響が生じないのであれば、必ずしも金融政策で対応する必要はないというのが教科書的な回答であるが、現在は持続的で複合的なショックが生じているため、政策対応は難しくなっていると述べた。
・ある委員は、一次産品価格の上昇は相対価格の変化をもたらし、資源配分の調整を促すが、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動次第では、一般物価水準の大きな変動につながるリスクもあるので、これらの動向に注意しながら金融政策運営を行う必要があると述べた。

 ほかにも気になる「委員」の発言はあるのだが、上記はどうも白川さんの感じがある(「一人の委員」と表現されている中にも白川さんらしき方がいる)。その理由を考えてみたのだが、①登場の仕方に新鮮味がある(新しい人が入ったときにありがち)②いつか聞いたことがあるような、ある種の懐かしい感じがして白川さんの顔が浮かぶ③マクロ的な観点で、問題を整理し、かつ政策論に言及している④物価の説明が非常にオーソドックスなBOJビューである-といったところか。
 物価に詳しい委員として西村副総裁が挙げられるが、西村さんはどちらかと言えば「物価統計」を精密機械的に捉え、それこそ「物価統計の神は細部に宿る」という哲学をお持ちであると私は見ており、それとあまり政策論にまで踏み込むタイプではない。典型的には以下の発言が西村副総裁ではないかと推測される。
「別の委員は、そうした中長期的な消費者物価のトレンドをみる上では、生鮮食品を除く消費者物価指数や刈り込み平均指数が有益であると述べた」(5月分)。

 白川総裁、会見はもとより、会合でも、そして恐らくはG7とかバーゼルとかの国際会議でも、語り口はある意味でゼミ的なのかもしれない。これは一つの特徴として分かりやすいです。
by bank.of.japan | 2008-06-19 21:26 | 日銀 | Comments(8)
下の続き=エネルギー白書はお勧めです
 害債さんと連動したエントリーが続いて恐縮ながら、「セミナーに触発されてエネルギー問題を考える」で紹介されていた資源エネルギー庁のエネルギー白書(2008年)はお勧めです。最近の原油市場をめぐる情勢(含む金融面)がコンパクトにまとめられており、これは金融関係者にとっても良い白書です。場所はこちら
 特に、第一章、第一節の「原油価格高騰の要因分析」(4.5MBあります)は状況把握として優れものです。この部分だけでも読む価値あります(既にご覧になっている方もいらっしゃるかもしれませんが)。
 お知らせまで。
by bank.of.japan | 2008-06-19 00:45 | マーケット | Comments(0)
年金マネーが生み出す錯覚的インフレ期待の下での金融政策は…
 基本的には(日銀のように)様子見が正しいのだろうと思われる。原油先物市場への介入を考察したエントリーで、ゴム3号さんがコメントされていたように、近年の原油を中心とした商品市場の高騰は年金など長期投資のマネーが流入しているためだ。金融政策でバブルをコントロールするのは難しい。商品高騰がバブル的な要素が強いとした場合、これで生じるインフレ期待は錯覚的な側面が強く、金融引き締めで強い押さえ込みを図ると経済のオーバーキルを招く恐れがあるだろう。
 年金マネーの商品投資が妥当かどうかについては既に害債さんが「資源価格高騰と長期投資」で詳しく論じており、私も概ね同感である。個々の年金にとっては合理的投資でも、全体として商品に流れ込むマネーの総量は市場規模に対して大きい。この結果、インフレ期待を高めているとするなら、年金は自分で自分の首を絞める皮肉な事態に陥っている。これに気が付いて投資を引き上げる年金が増えればいいが、そうでない場合は何らかの規制を受けざるを得ないだろう(まあ、自業自得ですね)。
 欧米で証券化バブルが崩壊し、その副産物として商品がバブル化し、商品価格の高騰は物価指数(ヘッドライン)を押し上げ、錯覚的にインフレ期待を高める。一方、世界経済は減速傾向が強まっている。金融政策でバブルを制御しようとすると過剰な引き締めによって経済は打撃を受ける。商品バブルに起因するインフレ期待を叩くための引き締めは、マクロ経済を悪化させて商品バブルを退治するという本末転倒な感じである。
 まあ、中央銀行が市場と対話する上で、インフレ放置の姿勢を取るとマーケットが動揺するもの。従って、中央銀行はポーズとしてインフレを警戒する姿勢は必要なのだが、かと言って利上げがどんどん織り込まれるのも困る。欧米中銀がここにきて過度に利上げを織り込む市場をけん制しているのはやっぱり景気を心配しているからであろう。
 私は、なお最終的にはデフレに陥るリスクもあるのではないかと思っている…。日本のCPIはコアコアでゼロ近傍。原油&穀物関係だけが上がっている。コモディティバブルが崩壊したら、CPIはヘッドラインでゼロ近傍に落ち込み、成長率が悪化していればまたマイナスになるリスクがある。日銀の金融政策は利上げよりも利下げの可能性の方が高い、という見立てです。外したらすいません。
by bank.of.japan | 2008-06-17 22:02 | マーケット | Comments(5)
「日銀タカに豹変」説は空振り=取り合えず日米欧で一番安定感ある中銀です
 本日の金融政策決定会合、全員一致で現状維持。月報は景気判断がやや弱め、物価判断は変わらず、でありました。白川総裁の会見、これまでの景気(下振れ)&物価(上振れ)の両リスクを注意深く見るというスタンスを堅持(印象としては景気下振れにやや軸足がある感じ)。つまり、金融市場で台頭していた「日銀はタカ派に豹変する」という説は空振ってしまった。まあ、とりあえずマーケットボラという観点において、日米欧で一番安定感のある中央銀行であります。「サービス精神旺盛・福井さん」だと何言うか分からないリスクがあったが、この点、「ゼミ的白川さん」で良かった良かった、というところでしょう。
 このところ日銀の景気判断・政策スタンスにはほとんど変化はなくて、でも欧米に連動して金利がどんどん上がったマーケットでは「日銀もインフレ懸念を強める」とか、一部レポートの余波で「日米欧協調利上げ」とかいった観測が台頭。心配になったマーケット関係者からいろいろと問い合わせがきていた。「日銀のスタンスは変わらないですよ」とは答えていたが、まあいろいろと言われると私も多少不安にはなるのですね。でも、定点観測ではやっぱり変化はなくて、蓋を開けてみれば景気を心配するトーンがちょっと強まったという感じ(違和感全然なし)。
 会見では、案の定「日銀もインフレ懸念」という見出しを書きたい質問が湧いてしまい、それでも白川総裁はゼミ的答弁で無難にかわしておりました。rinban短期化の件もゲリラー状態を認めた(これは意外だった)うえでゼミ的に答弁しておりました(すぐには見直せないが、中長期的には銀行券動向を踏まえて見直す可能性を示唆)。
 これが福井さんであったなら、トリシェ“フレンチ・ブンデスバンカー”総裁と盟友であるだけに、サービス精神あふれたアドリブ発言が弾んじゃって「欧米のインフレ懸念共有」というヘッドラインが飛び出す可能性はなくはなかった。この局面でゼミ的白川さんが総裁であったのは、まあラッキーであったということでありましょう。
 幾つかの質問に答える形でポイントを解説したい(あくまで取材を踏まえた私見)。
Q1 景気下振れは明快に答えていたが、物価上振れの部分はやや明瞭でなかった感じだ。本当はインフレを心配しているのではないか?
→マーケットがボラタイルになっているので、物価面の答弁はノイズが出ないように非常に気を使ったように思われる。事務方も最近の乱高下を受けて会見への注目度が異常に高まっているのは承知しており、総裁に対して入念なブリーフィングが行われた可能性が高い。
Q2 今でも金利正常化をしたいのではないか?
→とっくに放棄している公算が大きい。

 日銀も神の予知能力は持たないので、予期せぬ形でインフレ圧力が強まり、それに懸念を表明する事態が到来。結果的にマーケットのインフレ懸念が正しい可能性はあるが、今の日銀は「各国それぞれ経済物価情勢は違い、各国それぞれが置かれた状況において適切な金融政策を行う」という認識の下で、当面現状維持でありましょう。
by bank.of.japan | 2008-06-13 19:33 | 日銀 | Comments(12)
思考実験=原油先物市場への介入は…(追記あり)
 米政府の為替介入。一般論として介入はやらない方がいいとは思うが、どうせやるなら勝算のある方法がよいのではないか。そんな発想から思考実験として原油先物市場への介入なるものを考えてみた。まあ、個人的には介入はしなくても、相場の高騰自体が世界経済を悪化させ、原油需要を落とし、結果的に原油価格は下落するだろうとは思っているのだが…。
 為替市場を介入で操作するのは容易ではない。世界で最も規模が大きく、介入でどうこうなるようなものではない。下でも述べたように、特に基軸通貨国の防衛介入は、基軸通貨であること、すなわちドルが世界中にたくさん行き渡っているがゆえに、想像を絶する売りが殺到しかねない。ドルを持っている国・組織・人々が「ドルは危ない」と思えば、その瞬間にドル売りの津波が発生しよう。
 米政府がドル安をけん制したのは、原油など商品相場の高騰によるインフレ圧力の増大を警戒しているため。だったら、為替を相手にせず、インフレ圧力をもたらす商品相場の代表である原油市場に介入した方がまだ勝算があるのではないか、という気がする。
 なぜなら、①マーケット規模は為替市場よりもかなり小さいので、戦線を集中できる②原油などに流れる投機マネーの大半が短期筋であるなら、まとまった売り介入で相場を崩せばロスカットの売りが自動走行する③この間、原油反落を眺めて金融市場が回復すれば投機マネーはそちらに招きよせられる-といったことが考えられる(もっともうまくいくケース)。
 技術的な詰めのない思考実験なので、現実に介入がうまくいくかどうかは分からないが、この辺はコモディティ関係の方々の専門的なご意見頂くとありがたい。

 日経新聞(10日付)の「経済教室」(減反政策やめ増産目指せ=山下一仁氏)で知ったのだが、1973年に穀物が数倍に急騰して食糧危機が叫ばれたとき、世界の穀物生産量は3%減少しただけだった、という。もともと穀物生産の限られた量が国際貿易され、わずかな需給変動が相場を大きくさせやすいためだ。あと、人間の生存本能として飢餓への恐怖感が価格を必要以上に押し上げる面もあるのだろう。介入による価格沈静化で恐怖感が和らぐなら、緊急手段として考えてもいいのかもしれない。

追記 あるマーケット関係者のご指摘ですが、先物をどんどん売っても、決済において(有限の)現物を手当てできないので、結局は介入しても踏み上げられるリスクがあります。やはりうまくいかないですね。
by bank.of.japan | 2008-06-12 22:19 | マーケット | Comments(18)


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