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米SF連銀サイトの『FRB議長ゲーム』を試してみたら…
 東短リサーチ・加藤さんのメールで知ったサンフランシスコ連銀のサイトにある『FRB議長ゲーム』を試してみた。場所はこちらです。説明をあまり読まず、適当に3回やってみたのだが、いずれも解雇されてしまいましたよ(苦笑)。みなさん試してみてください。
 3回やってみての感想は以下の通り。
1回目 最初は利上げ過程から入るのだが、私は(ハト派なので)グリーンスパン流にメジャードペースで小幅な利上げを繰り返した。そしたらインフレが加速しちゃいました(反グリーンスパン的プログラムなのだろうか?)
2回目 1回目の教訓を基にタカ派路線で臨む。途中までは良かったが、ハト派への果敢な転換が遅れてデフレ突入(トホホ)。クビです。
3回目 多少トラッキングレコードは良くなったが、失業率はややオーバーシュート、物価はややアンダーシュートでこれまたクビ。
 このゲーム、もちろんフォワードルッキングに金利を操作する必要があるのだが、金利変更幅とそのタイムラグの長さ、効果の度合いをいかに見極めるかがポイントですね。
 ある日銀マン(いわゆる“企画の人”、つまり『企画士』です)はこのゲームを試してみたいと言っていた。私のヒントがあるのだから、『企画士』らは簡単に『再任』を勝ち取らないとね。3回続けてクビだと、『企画士』失格ではないのかな。政策委の方々もいかがですか。

ps 1回目で成功した方はご報告を。失敗の報告も歓迎です。また、成功の秘訣を掴んだ方はぜひご教授を。

その他 金融緩和方向に「量的緩和」ゾーンを作ったら面白いと思った。
by bank.of.japan | 2008-05-29 20:52 | マーケット | Comments(33)
「コモフレーション」下の長期金利は…
 日経新聞(27日付)に景気討論会の模様が出ており、その中で門間日銀調査統計局長の物価動向に関する発言が印象に残った。具体的には「『アグフレーション』、『コモフレーション』と表現されるように値上がりが目立つのは第一次産品。その中に本当のインフレが紛れ込まないか注視する必要がある」というところ。『アグフレーション』、『コモフレーション』と言われているのですね、初めて知りました。
 このところ長期金利が上がっており(今日はちょっと低下)、ヘッドライン的には「インフレ」がテーマになっているようだ。もちろん、「インフレ」とは言っても景気過熱を伴った「本当のインフレ」ではなく、国内経済的には典型的な供給ショックで交易条件は悪化しつつある。で、長期金利が「インフレ」をテーマに上昇する、というのはどうもしっくりこない感じで、改めて「コモフレーション」下の長期金利の動向を考えてみた。
 まず資金需給の観点では、企業収益&家計所得はコモフレーションに圧迫されて資金需要は低迷する方向となり、国内金融機関は運用難が強まる構図となる。この場合、一般的には債券運用に傾斜するはずで、長期金利は低下するのが自然な流れであろう。
 次に長期金利の国際的な連動性だが、連動がファンダメンタルズで正当化されるのは、世界経済が概ね同じ循環を形成するとき。「コモフレーション」のときは、第一次産品を消費する国から生産する国に所得が移転しており、生産国は潤った資金で景気が過熱化する一方、消費国は貧しくなるので景気は低迷。少なくとも産消国間では金利動向は異なると考えられる。
 長期金利の1.7%台は、まあ達観するとレンジ内の動きで「上がっている」と言えるほどの動きではないかもしれないが、個人的にはここからさらに上昇傾向を強めていくとは思いにくい。機関投資家が資産運用の大半を「円建て」で行う限りにおいてはいずれ買い戻しが強まるのではないか、というのが個人的な相場観です。
 外れたらすいません。

ps ここもとの長期金利の上昇について、テクニカルにはドラめもんさんが先週末に解説されていたように先物のシステム変更とか、流動性の低下とか、ボラが上がってリスク管理上あまりポジションを取れないといったことなどが影響しているようだ。
by bank.of.japan | 2008-05-28 23:10 | マーケット | Comments(4)
「あるMBAの憂鬱」を「アリとキリギリス」で考察してみる、の巻
 あるところで、ある人と知り合いになった。民間大手に務めるその人は、厳しい社内選抜を経て米国へMBA留学し、帰国後は本部で働いている。最も脂の乗った働き盛りの(私から見れば)若い世代なのだが、ちょっと疲れて、ややブルー(憂鬱)な感じがあり、いろいろと話す中で「どっか良いところないすかね」とボソッと呟いた…。
 その人の仕事内容は以下のようなもの。
・偉い人に対する各種ブリーフィング(初歩的なものから難しいものまでレベルは雑多)
・偉い人が対外的に何か発言するときの問答作り(ありとあらゆる場面を想定)
・いろいろなところとの調整(対内的)
・いろいろなところとの調整(対外的)
 これを聞いて私は言った、「それって日銀で言えば企画局の仕事だよ」と。日銀の「金融士」、じゃないや(苦笑)、「企画士」らは上記の内容を日々黙々(多分)とこなしている。多くがMBAorロースクールor海外当局(機関)への留学を経験しており、まあ全員どうかは分らないが、ブルーな感じはない。でも、知り合った人はブルーであった。なぜなのか。ちなみに、早速コメントを頂いたので、その人のタイプだが、前向き&誠実&気配りよしのさわやか系の好青年(=私から見て若い)である。
 さて、アリとキリギリスである。限りなく同業?の匂いがするにしてはややハイブローの「奇奇怪怪さん」が「現代版アリとキリギリス」というエントリーをアップされている。詳しくはそちらを参照して頂くとして、「日本人はいつまでもキリギリスに貢いで余計に働く羽目になるアリであり続ける」ことを前提にMBA(orロースクールorPhdなど)留学を考えてみたい。
 アリ帝国の某アリ組織(官民含む)がキリギリス帝国に要員を留学させるのは普通に考えると「キリギリス帝国の手法を学び、社会・組織を改革する」ためであるように思われる。しかし、現実には留学後、辞めるケースが多い(日銀でも霞ヶ関でも民間でも)ようである。何人かに聞いたら以下のような感想があった。
・ある種のご褒美ではないか
・社員の見聞を広める、知識を高める
・リクルート対策かもしれない
・組織的な箔付け(優秀な人材を抱えることの誇示)
・行った人間はどんどん辞めるので、行かせなきゃいいのに、と思う
 私は留学の実情をよく知らず、間違えているかもしれないが(ご指摘を)、多くの感想を聞いた印象としては、留学後辞めるケースが多いのは、留学は「組織を改革する」ためではなく、留学で得た知識はともかくとりあえず何でもいいから文句も言わずに再びアリの一人として働いてもらい、としか思っていないのではないかと感じた(違う事例があればご指摘を)。
 ハーバード留学記で有名な岩瀬さんによればMBAは「資本主義の士官学校」であり、その洗礼を受けたアリさんらは「士官」としての能力を発揮したい、と思うのだろう。でも、アリさんの社会・組織はアリ的であり続ける(orキリギリス的になる意思はない)なら、アリさんのインセンティブは低下し、辞めてしまう例が後を絶たないのかもしれない。
 うがった見方をすれば、キリギリス帝国に留学しても再びアリ族の一員としてアリ的な労働に割り切って従事できる人材を養成しているようにも思える。何というか、限りない可能性を一度味合わせた後、どん底に落としてもくじけない精神を持つアリさんの育成である。だったら、アリさんの人生しか知らないまま過ごさせてあげた方が幸せな気がする。
 「さよなら絶望官僚」さんのプロフィールには「平成10年に某省に入省、一度の他省庁出向を経て、某国に留学。留学して外の空気に触れたことに加え、このところのバッシングの中で仕事を続け、帰国以後、絶望してばかり」という一文がある。戻ったところが「霞ヶ関ゲットー」と化しているなら、まあ普通は絶望する。「ガレー船の奴隷」と言った人もいた。いったん(留学という名目で)解放され、再び奴隷に戻る人生である。
 私は、知り合った人に日銀を辞めたケースを紹介した。その人に「辞めた方は後悔してませんか」と聞かれ、「していないよ」と答えたのだが、ちょっと失敗したかなと思っている。留学後も黙々と働いている「企画士」のことをよく話してあげた方が良かったかな。あっ、これも逆効果かもしれない。
 キリギリス帝国とアリ帝国の関係は当面変わらないと思う。だとすると、留学で目覚めたアリさんはキリギリス帝国の風土が合っているので、その世界での活躍を目指すのがやはり幸福かもしれない。後悔もないだろう。相次いで辞めるのにも関わらず留学を続ける組織は、キリギリス帝国(orその風土を持つアリ国の組織)に人材を提供している、ということだろうか。うーん、合理性がないような感じだ。
 
by bank.of.japan | 2008-05-23 21:52 | マーケット | Comments(33)
巨鯨が泳ぐと色々波紋が起きますな=嗚呼、郵貯よ、哀れなる存在よ
 財政等要因に組み込まれ、インタバンクの資金需給では民間から隔離された存在であった郵貯は、いきなり出て行けと言われ、泳ぐ気もなかったのに、民間の海で泳げと言われ、「えぇーーー」と内心思いつつ、泳ぎ始めてしばらくが経った。世間的には窓口の風景とかが民営化の象徴として報道されたが、マネーマーケットでは巨鯨の泳ぎがいろいろ波紋を巻き起こしている。まあ、テクニカルには非常に興味深い現象が見られ、職業的には「とても面白いものを見せてもらっている」と感謝しているのだが、嗚呼、巨鯨よ、哀れなる存在ではないかと同情する。
 何が起きたか、箇条書きに並べてみたい。
・まず、予兆があったのは、日銀輪番オペ。やたら残存期間の短い債券が打ち込まれ、長期資金を供給するはずの輪番が短期オペ化した。
・最初は、何が起きたか不明だったが、誰かが必要に迫られて残存の短い債券を打ち込んでいるのが判明してきた。
・その誰かは、どうやら郵貯であった。しかし、その理由は最初は不明だった。
・徐々に理由が明らかになった。手元資金が大きく振れないように、保有国債の償還のこぶをならしているらしかった。
・これは郵貯的には合理的であった。それしか方法がないからであった。
・だが、残存期間の短い債券を打ち込まれた証券会社はその処理に困った。
・目をつけたのは銘柄は何でもokの日銀輪番だった。
・これをゴミ箱に使えばいいじゃないか、となった。輪番は短期化し、入札結果が甘くなって債券相場の売り材料になった。
・郵貯って邪魔じゃねえか、という批判が起きた。「泳ぐな」という声も挙がった。「寝てればいい、俺たちがよけるから」という指摘もあった。
・郵貯系の偉い人にこの辺の事情を聞いてみた。「だってちゃんと泳げといったじゃないか。泳ごうとしてるんだよ。何言っているんだよー」的な答えだった。私は「そうですよね」と思わず同調した。
・日銀はこの件であまり物を言いたくないみたいだった。
・私は言った、「おたく、郵貯のゲロ袋でしょ」と。
・ゲロ袋になった日銀国債ポートは短期化した。食ったものがすぐに出ちゃう「ゲリラー」症状が悪化しちゃったのであった。

結論 国債のメチャでかい塊りの巨鯨を民営化すると、ばちゃばちゃ泳いでしぶきが上がり、中央銀行のオペがゲロ袋になって、当該中銀はゲリラー化する。

雑感 ちゃんと泳げよな、泳げるよな、と言われ、いざ泳ぎだしたら、やっぱ邪魔だよな、泳ぐなよ、といわれた巨鯨は悲哀に満ちた存在である。ロバート・デ・ニーロの「フランケンシュタイン」をなぜか思い出す。
by bank.of.japan | 2008-05-21 22:15 | 日銀 | Comments(30)
「(特定の)利害に配慮した金融政策運営は自殺行為だ」=白川総裁、良くぞ言った
 本日の会見、一つだけ感想を。
 ネタなのか、本気なのか、それとも(日銀を貶めるための)罠なのか、良くは分からんのだが、「主婦の体感物価は非常に高い、それでいいのか!」、「年金生活者が低利息で厳しい、それでいいのか!」みたいな質問が突然飛び出て、おや、衆愚的金融政策論のお好きな民主党(与党にもいるね)の先生でもいらっしゃるのかと思ったのだが、白川総裁の答弁は良かったです。以下の感じでした。
・世の中の人々、苦しい人々の状況を理解するのは大事である
・年金生活者の苦しみは分るが、一方で景気が悪くなれば職を失う人の苦しみもある
・世の中には(金利面では)利害関係でいろいろなグループがある
・しかし、金融政策を狭い意味での(特定の)利害に配慮して運営するのは自殺行為だ
・(それゆえに)金融政策は独立性を持って(物価安定下の)持続的な成長を目指すしかない
 パチパチ…。

 この発言は、報道する側としては、編集or演出の仕方によって日銀に批判の矛先を向けるのは容易である。低金利で苦しむ人々の声を紹介する、買い物する主婦に物価が上がって大変ですねと誘い水の質問を向けて「物価高いわよ、何とかしてよ」という悲鳴を拾う。そのあとに「利害に配慮した金融政策は自殺行為である」(白川総裁)という利上げに消極的なコメントをくっ付ける。弱者を省みない中央銀行の出来上がりである。まあ、何と言うか、こういう報道が出たら、出ないと思うが、何ともやりきれないものである。

 「主婦」で思い出した。先輩から聞いた昔話である。バブルの頃であろうか。当時、日銀上層部で「主婦の声を反映した金融政策」というアイデアが浮上したらしい。幹部らは困惑した。だって、地価高騰で家を買えなくなった主婦の声は「利上げ」となり、それはそれで利上げはやりやすいだろうが、いったん金融政策に「主婦の声」を反映すると、外せなくなるでしょ。その時のやりたい金融政策を実行するために都合よく世論を取り入れるのは余りにもご都合主義で、政策ロジックもあったものではない。このアイデア、何とか潰したらしいが…。だれのアイデアかって? こういうサービス精神旺盛なことを考えるのはまあ一人しかいないでしょう(苦笑)。お察しください。

白川総裁の会見は(丁寧にロジカルに説明しようとするので)眠いです。つまりノイズがないです。つまり良い会見です。
by bank.of.japan | 2008-05-20 22:08 | 日銀 | Comments(45)
日銀ドクター・リサーチャーの有効活用論=調査統計局TK氏に賛同です
 しばらく前のエントリーで、「ある経済学者」さんから「日銀の内部での研究の位置づけ、及び経済学系の人々の扱いがどうなっているのかに興味があります。私は在米なのですが、ご存知のようにFRBやBank of Canada、ECB、Bank of Englandと比べると、本当に経済学理解してるのかなという局面が多いので。。。(研究のアウトプットは言わずもがなですが。。。。)」というコメントを頂いた。関連ではかなり前にこちらのエントリーがあるが、ここではさらなる人材の活用論について簡単に触れてみたい。
 日銀と経済学会の距離が他国に比べて遠いように見える一因には、上記コメントでも指摘されるように①経済関係のアウトプットが相対的に少ない②リサーチ関係の人的資源(例えばドクター)が少ない-といったことが挙げられよう。もちろん、日銀は昔に比べるとドクターはなるべく増やそうとしているが、恐らく先進各国の中銀に比べると少ないのだろうと推測される(数字がないので、具体的は比較は難しいが)。
 私は日銀と学会の距離は近いほうが良いと思うし、そうなるように人材がよりうまく活用されるのが望ましいと願っている。この間、日銀のホームページ(採用関係)で以下ようなメッセージが紹介されていた。
 「自分の将来を方向づけるうえで節目になったと思うのは、米国留学時代です。『君のような若い人が日本銀行の新しい1ページを開くべきだ』。ある高名な経済学者からの言葉に、私は改めて自分の目標をより高いレベルで捉え直すことができたのです。すなわち、かねてより私が抱いていた「科学的な経済学に基づいた政策形成ができれば」という思いが、この一言で更に強くなったのです。
 米国では多くの学者がFRB (米連邦準備制度理事会)に進み、高度な経済学を駆使して活躍しています。FRBの現議長もプリンストンで教鞭をとった人ですし、その専門性を政策形成に活かしています。一方、日本ではアカデミズムと政策との間に架け橋が弱いと思います。金融政策と経済学との融合を実現し、日本銀行の新しい1ページを開く。それが今の私の目標です」
 調査統計局でリサーチを担当している方(TK氏)の“抱負”だが、激しく同意でありますね。こういう方が増えて欲しいと期待したい。略歴を拝見するにドクターを取得されたのだろう。この方の同期か、その前後かちょっと年次は分らないが、例えば加藤涼氏とか活躍されていると聞くし、取材でも優秀なリサーチャーは何人か知っている。
 では、どうやったら例えばアウトプットが増えて、「ある経済学者」さんの疑問が解消されるのか。現状、何人かに聞いた感じでは、研究・リサーチは業務に関連するものが多いようだ。まあ、経済研究機関ではないので、仕方ないが。ただ、研究・リサーチに興味ある人は、それぞれやりたい研究・リサーチがあり、それが結果的に中央銀行の各業務に合っていればよいが、そうではない人も多いだろう。
 間接的に聞いた話だが、FRBはドクターの有効活用策として、就業時間の半分は業務上の研究・リサーチをやってもらうが、残りは自由にやってよろしい、という仕組みにしているという(詳しい方がいればご教授を)。研究者は、自らの研究をやることが一番の生きがいであり、それが職を確保された状態(別にそんなに高給でなくてもよい)でやれるなら理想に近いだろう。
 日銀はこれをやった場合、①同一職種(総合職)で採用されているため、非研究系の総合職から『なんでドクターだけ遊んでいるのだ』という批判を招きかねない②本当に自由な研究ができないかもしれない(日銀に都合の悪い研究は認められない恐れ)③核融合とかスペースシャトルとか関係ないテーマが研究される-といったことが考えられる。
 ①はまあ杞憂かしれない。法律系の何人か聞いたら、「研究は研究が向いている人がやるべき」と言っていた。「自由な時間をやるから研究しろ」と言われても、「研究が苦手な人間には拷問だからだ」というわけだ。この点は、私の知っている日銀マン(バリバリの理論経済系)ですら、金研(金融研究所)の1課(研究の巣窟=恐ろしいところ)に配属され、先輩ドクターの千本ノックに根を上げたそうなので、まあ自ら金研に行って喜び勇んで研究する人材というのは貴重なのではないか。
 ②は、日銀の度量のみせどころであろう。私なら「わが日銀はなぜ間違うのか=2000年8月の失敗の本質」とか、「インフレターゲットは有効である=特に日銀の場合には」とか、わざと研究させてみたい、という気持ちを持ったりする。組織論的に有効な研究成果が得られたら、組織を矯正すればよいでしょ。
 ③は、理系的なものでも、場合によっては金融工学に寄与するかもしれない。数年前、某幹部があるペーパー(そんなに大変なものではなかった。というか、結論先にありきの印象があった)に関して「わが行のロケットサイエンティスト達が世界的に評価される論文を書いた」と豪語していて、それって何?とか、ロケットサイエンティストって死語じゃね、その科学者って誰よ、とか思ったものだが、本物のロケットサイエンティストをたくさん輩出すべきであろう。
 白川方明氏は最近の歴代総裁の中では、研究・リサーチに最も理解があるトップなので、人材のさらなる活用面ではかなり期待できると思っている。日銀がドクター増強・有効活用する一環で人材の回転ドア化を図れば、経済系ポスドク問題の緩和なども多少ながら役立つのではなかろうか。
by bank.of.japan | 2008-05-19 22:03 | 日銀 | Comments(43)
「金融政策」と「金融調節」と「FRBの大量供給」の関係&国債の買いや売りなど
 下のエントリーで、maconnさんからコメントとトラックバックを頂いた件で、補足的な意味も兼ねて「FRBの大量供給」をどう捉えるべきかを説明してみたい。中央銀行のやっていることは普段も分りにくいが、金融危機が起きて大量の資金供給がマスコミで大々的に取り上げられると、それ自体が政策的に重要な印象をもたらす。もちろん、大量供給は「重要なこと」だが、政策運営でどういう位置づけにあるのかはあまり整理されては伝えられない。この件は何度か取り上げたが、おさらいの意味で改めてざっと解説を試みたい。
 まず、中央銀行のマーケットオペレーションで最も重要なのは「金融政策」である。FRBはFF金利を今だと2%で推移させることが「金融政策」で、これは次のFOMCまで変わらない。FRBの傘下で、金融政策を実行するNY連銀は「FFを2%で維持する」ことが最重要の任務となる。そのうえで、日々いろいろなオペレーションを行う。大量の資金供給は、日々のいろいろなオペレーションの一つで、「金融政策」を実現するための「金融調節」の一つと位置づけられる。
 米金融システムで起きた流動性危機は、サブプライムローンの焦げ付きに端を発して、これらを裏づけにした証券化商品の信頼が揺らいだこと。この延長線上で、MBSとかエージェンシー債が信用されなくなり、これらを大量に持っている金融機関は(これらを担保に使った市中での)資金繰りが苦しくなる、という状況に陥った。
 FRBがやっているのは、(FRBが適格としている)MBSやエージェンシー債を積極的に買い入れる(買い取りではなく、期限付きでの買い=売り戻し条件付き)ことで、そのために「TAF」とか「TSLF」(MBSやエージェンシー債など広範な証券を担保にFRBが保有国債を貸す)という仕組みまで作った。FRBが「大量供給」しているのは、これらの仕組みを利用したものであり、これは金融機関側から見れば、市場で使いにくかった担保をFRBが一時買い取って資金を供給してくれたので、流動性ひっ迫を和らげるのに大いに効果があった、と言える。
 で、FRBのバランスシートがなぜ拡大しないか、である。これは下でも触れたように、機動的に資金を吸収できる「売手」のような便利な手段がないためだ。なぜないかは下のエントリーで植田日銀総裁さんがコメントされている点も絡めて深遠な議論になるので、ここでは省くが、大量に供給した資金を放置すると、金余りが強まって金利が下がる(利下げになり、NY連銀はFOMCの決定を無視することになる)ため、何とかして吸収しないといけない。そこで、保有国債を売却(アウトライト・クーポン・セールス)を行うに至った。このとき、資産側では国債が消えてTAFなどが増加する、という変化が生じる。
 日銀のように「売手」があれば、資産側では国債はそのままでTAFなどがそれにオンされる形で増加し、反対の負債側では「売手」がほぼ同額のペースで増加し、TAFなどで出した金は売手でそのまま吸収される、という循環を続けながら、バランスシートは両建てで膨らんでいく。
 まとめると以下のようになる。
・金融政策が変わらない(政策金利が一定)前提条件で、流動性対策を行うと、①「売手」がないFRBはバランスシートがほぼ一定の下、資産内容が変化する(国債→TAF等で取得したMBSやエージェンシー債などに置き換わる)②「売手」がある日銀はバランスシートが両建てで増大する

 次に国債を売却する意味だが、上記述べたように「資金を吸収する」ためのテクニカルなオペレーションに過ぎない。コメント欄がにぎわった大学入試センター問題のエントリーでは、「国債を買う=金融緩和」みたいな位置づけでセンター問題が出ていたが、日米中銀のオペレーション上では、状況に応じて国債を売るときもあれば日銀のように買うときもあるわけで、中央銀行の国債売買はそれ自体として政策的な意味合いは持たないのが一般的である。
 なお、大量供給が金融政策として意味を持つのは、金利がゼロになり、それでもなお金融緩和が必要になって「量的緩和」を実行するときであろう。大量に出した資金が準備預金(or当座預金)を増大させる構図となれば金融緩和の強化(もちろん政策決定において量のターゲット引き上げがなされる)となる。バランスシートはこの場合は増大する(買った資産が増え、負債側では準備預金が増大)。
 この手の話はなかなか分かりやすく書くのは難しいですね。

PS FRBの流動性対策は、資産内容が激変しており、かなり思い切ったことをやった、というのが中銀関係者の受け止め方だと思う。伝統的なセントラルバンカーであれば、やり過ぎという見方をするはずで、私は発言内容はまだチェックしていないが、ボルカー元FRB議長が批判しているというのは分かる気がする。バーナンキ議長、利下げは2%で止めているけど、金融不安対策はかなり踏み込んだ、という印象である。
by bank.of.japan | 2008-05-16 22:05 | マーケット | Comments(8)
FRBの資産変化は急速ですね=売手が打てたら…
 東短リサーチの加藤さんのリポート(7日付)を見ていたら、FRBの資産内容が激しく変化していて驚いた(オペを細かくウォッチしたら分かるのだが、そこまでチェックしておりませんでした)。具体的には、国債がどんどん減って、TAFとかMBSレポとかTSLFとか、流動性対策見合いの資産がどんどん増えている。加藤さんの数字をお借りすると、バランスシート全体に占める流動性対策系の資産比率は44%で、これは6月末には60%前後に達する可能性があるらしい。
 流動性対策見合いの資産のうち、ECBやSNB向けの為替スワップに伴うドル供給は、裏側にユーロやスイスフランがあるので、まあ安全資産だが、残りは各種資産担保証券やエージェンシー債などが多いので、ドルを裏打ちする資産の質がリスキー度合いを強めていると言えなくもない。私自身は、これを見て「ドルの信認が揺らいでいる」とは思わないのだが、中にはこの変化を見て騒ぐ人がいるかもしれないので、FX系の方はちょっと念頭に置いていた方がいいかも。
 ドルの信認に直結しないのは、次のような事情による。FRBがやっているのは、官民適格担保間で発生した資金の偏在の解消である。まず、金融危機で「質への逃避」が強力に起きて国債人気が高まった。一方で、非国債系の適格担保はマーケットで不人気となり、それを使ったファンディングが円滑にいかなくなった。仕方がないので、FRBは人気のないものを買い、人気のあるものを放出して資金が回るようにした。FRB資産は劣化しているかもしれないが、米国債人気は高いので、ドルは大丈夫でしょう(と思う)。
 ところで、流動性対策の資金供給すると、なぜ米債が減るのかは疑問に思うかもしれない。減らさずにどんどんTAFとか打ち込めばいいじゃねえか、というわけだ。これはややテクニカルだが、「売手」という機動性の高い資金の吸収手段がないためだ。中央銀行が一方的に資金を供給すると、金融システムでは金が余り、結果的に準備預金が増える。金利は下がってしまう、つまり利下げ状態になってしまう。
 FRBは金融システム不安の沈静化で金は出すけど、一方でインフレを警戒したいので利下げはしたくない。でも、売手という便利な吸収手段はない。そこで、持っている国債を減らす(事実上の吸収)ことで、供給する枠を作っているわけだ。たくさん食いたいけど、腹の大きさは変わらない。そこで、腹に入っている国債を減らし、空いたスペースに食いたい物を入れている感じであろうか。
 日銀は1997-8年の金融危機の際、資金供給する一方で、売手を打ちまくった。この結果、バランスシートは膨張した。既存のバランスシートはそのままに、資産側に追加供給がどんどんのっかり、反対側の負債では売手が増える感じであろうか。「売手」があると、別腹ができちゃうのですね。そんなことを思わせた「売手」なきFRBの資産変化でした。調節マニアとしては非常に興味深いです。

ps 日銀は気のせいかもしれないが、「売手」という手段にちょっと恥ずかしさを覚えている感じだ。ダサいとか、後進国の手段とか、そういったもんなんだろうか。この辺の事情はいろいろ調べてみたい。
 加藤さんによると、米国では中央銀行が負債(売手)を発行するのは制度上はグレーゾーンのようで、これもどういう哲学があるのか興味深いなあ。
by bank.of.japan | 2008-05-16 00:30 | マーケット | Comments(11)
文化を変えてまで東京を国際金融センター化する必要性=「大機小機」より
 久々の「大機小機」である。13日付の日経で、童氏が「道遠し東京市場の国際化」と題してわが国の金融センターとしての将来を憂いている。まあ、概ね同感である。「何とかしなきゃいけない」という思いを込めて結んでおられるが、全体を流れる悲観的なトーンは私も共有するものであって、恐らくは先行きも悲観されているのだろうと感じた。主な論点は以下の通り。
・96年の金融ビックバンとその後の為替管理撤廃は、大蔵省の危機感が政治を動かして実現したものだが、省令により競合市場に例を見ない過剰な報告義務を残した
・企業は今もCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を海外に持ち出している
・CMSをシンガポールに移した企業は、不利な税制、貸金業法適用の恐れ、煩雑な報告義務が残る東京など念頭になかった
・邦銀も時差1時間のアジアのCMSを東京で請け負う気はなさそうである
・ビッグバンで東京は法制面では改善したが、ロンドン・ニューヨークには程遠い
・重大な法制上の欠陥があるわけでないので、金融庁の「金融・資本市場競争力強化プラン」をすべて法制化してもビッグバンの二の舞になろう
 そこで、童氏は改革のヒントは経済産業省の報告「グローバル財務戦略の高度化に向けて」にあると指摘しているのだが、どうなんだろうか。ここら辺の切り口は、昔の大蔵省、今の金融庁が主導じゃダメで、経産省がリードすべし論という感じで、ちょっと違和感を覚えた。だって次官が「デイトレは馬鹿だ」と言っちゃったし…。まあ、私はこの報告書を読んでいないので、もしかしたら改革のヒントがあるのかもしれない。この辺、事情に詳しい方ご指摘を。
 私が、童氏のコラムで印象深かったのは、わが国市場を30年近く見続けた英バンカーの話。
「日本の自由化は本物ではない。英国では、経営者も金融マンも国籍を問わないが、日本はオールジャパンにこだわり、この期に及んで(ドメの)人材育成が急務と言う。問題は法制度ではなく文化だ。文化を変えてまで東京を国際金融センター化する必要があるのか」
 私は、文化は急に変えられるものでない、風土に根付いた文化は上からの指示で変わるものでもない、無理に変えようとすると現場に不毛な負担がかかり、不毛に疲弊するだけ、と思う。なので、英バンカーの問いかけには「文化を変えてまで金融センター化する必要はない」と答える。自然に変わっていくのを辛抱強く待つしかないのだろうと思う。
 文化の問題で金融センター化が難しいなら、経産省の報告内容が良くてもうまくいかないんじゃないか。「デイトレは馬鹿だ」って言っちゃあ、やっぱりイカンよ。

童氏さん、もしかして経産省の方ですかね?
by bank.of.japan | 2008-05-14 22:38 | 大機小機 | Comments(11)
業務連絡です=本日の日銀人事は…
 もっぱら当座預金取引先や関係省庁など日銀事務方の人事に関心が高い方々向けの業務連絡みたいなものですが、本日の人事(一部の局長・審議役)はかなりサプライズでありました。あらゆる事前予想を裏切った人事であり、これが出た瞬間、日銀全行的にどよめきの声が挙がったようであります。いろいろ予想は聞かれたが、全然かすりもしなかったです(苦笑)。
 サプライズの一つは、金融機構局長の大幅な若返り。理事になった前局長の山本謙三氏(理事昇格は予想通り)は51年組だが、後任の田中洋樹局長は56年組。年次重視の発想では、日銀も他省庁と同様に上が詰まってポスト不足に悩んでいるので、51-52年前後でゆっくり回していくと思われたのが…。良い意味で裏切られた。
 白川体制、金融政策はノイズなく、現実的にやり、人事も基本的には予定調和的(年次重視ではこれが現実的)にいくと思っていたのだが、本日の人事は日銀にしては珍しく、不意打ちを食らわせたなあ。中の人達もそうだったと思うが…。
 今回の人事が予想を裏切ったことで、今後の人事もサプライズがあるのではないかと期待される。まあ、いろいろ予想されておるのだが、その通りになるのかどうか。楽しみであります。その他、この人事で思ったこと。
・少なくとも二人の局長は続投なのだろうか。
・ウィング体制は事実上消滅ですね(山本理事が金融市場、金融機構の両局を担当)
・局体制の見直しがあるのではないか
・サプライズの根本分析は興味深い
・理事の分担はこのままで行くの?
by bank.of.japan | 2008-05-12 22:03 | 日銀 | Comments(7)


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