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ところで介入すると米債市場は…=影響大?、それとも無風?
 円安が仮に問題であるとした場合、まずは円買い・ドル売り介入をすればよい、というのが私の考えであるのは以前のエントリーで述べたとおり。ただ、このケースで未知数なのは米債市場への影響だ。もちろん、介入の仕方次第であり、隠密介入で小額の規模を散発的にやるのであれば、影響は軽微であろうと思われる。一方、アナウンス効果を狙って財務省が大々的に介入を喧伝し、ドカンとぶちかますと米債市場は動揺するかもしれない。
 心配なのは、「介入」とのニュースが世界を駆け回ったとき、外為特会保有の百数十兆円の米国債のかたまりが決壊するようなイメージが勝手に広まってしまうことだ。多分、そうなるリスクは非常に小さいとは思うのだが、市場心理がどう動くのかは不透明であり、群集心理で米債市場が崩れる可能性が絶対にないとは言えない。
 私は米債市場の専門家ではないので、何ともいえないのだが、仮に米債券関係者が需給要因にかなり敏感であるなら、介入するときにはかなり気を使わないといけないかもしれない。この辺の事情は、どなたかトレジャリーのプロにご意見を伺いたいものです。

 ところで、日本が対米ドルで介入(売り・買い双方)すると、それ自体は日米資金需給に影響を与える。円買い・ドル売り介入は、日本サイドで円資金の不足、米国サイドでドル資金の余剰となる。資金需給が仮に介入要因(=財政要因です)のみだとすると、資金需給をならすために日米インタバンク市場では、日銀が供給オペで資金を放出、NY連銀は吸収オペで資金を吸収。それぞれが介入を不胎化することになる。
 ちなみに、何年か前の大量の円売り介入(約30兆円)の際、日本は量的緩和時代であったのでインタバンクに介入で放出された資金をほっとけば良かったのだが、NY連銀は日本が介入で吸い上げたドル資金の不足を埋めるためにせこせこ資金供給したはず。オペにはそれなりの負担がかかったのではないか、と想像される。
by bank.of.japan | 2007-01-31 00:44 | マーケット | Comments(10)
日銀にとって国債購入(買い入れ)はただのオペに過ぎない
 bewaadさんのところで、齊藤誠先生の主張をめぐり「国債買い入れ」がネタの一つになっていたので、改めて解説をしてみたい。
 ざっくり言えば、表題にように「国債買い入れ」は金融調節の実務上は「ただのオペ」に過ぎない。資金供給の一つの手段でしかなく、強いて言えば「長めの資金を供給できる」というのが特徴として挙げられる程度だ。
 にも関わらず、「国債買い入れ」は、その残高が銀行券の上限を超えない(いわゆる銀行券ルール)ことが条件付けられ、月間買い入れ額の増減も政策委員会が決定する仕組みになっている。ただのオペが大げさに扱われるのは、いろいろ注目されやすいからで、日銀もやや自意識過剰なあまりに大げさに扱ってしまった、という経緯がある。
 注目のされ方は、いろいろである。債券市場からは主として需給要因の観点から注目され、その増減は長期金利に影響を与える可能性がある。また、世間的(含むマスコミ)には、買い入れを増やすと財政ファイナンスを支援しているかのような印象を与えるかねないので、日銀も気を使う、というわけだ。
 これまで何度か触れたように、国債買い入れの規模が柔軟に決められるなら、現状では増やした方がいい、と言える。銀行券(負債側=70兆円以上)に対して国債買い入れの残高(資産側=50兆円強)が少なくなっており(去年は財務省の国債買い入れ償却に応じた)、その分、短期オペへの負担が高まっているからだ。
 日銀のオペは、突き詰めると負債(銀行券や準備預金)に対して受け身(注)の下で、資産側に何を持つか(orどう構成するか)、に集約される。これは預金に対して受け身の銀行が、資産構成をどうするのか、に似ている。
 理屈上、もっともオペ負担が軽いのは、銀行券をそっくり長期債で見合わせることだが、これだと銀行券が減ったときに下手すると国債売り切りをやらざるを得ず、需給に敏感な債券市場に大きな影響をもたらす恐れがある。従って、銀行券残高まである程度の余裕を持ち、銀行券のトレンドに合わせて国債買い入れを増減させ、短期オペの負担を調整するのが理想的だ。
 なお、国債の持ち方だが、市場買い入れでも、直接引き受けでも、負債に対する資産構成上の問題としては、実はどちらでもいい。ただ、後者は国債引き受けを連想させ、見栄えが悪いだけ。要は、引き受け額の決定権が日銀側にあればいい。
 ところで、日銀は数年前に保有国債の償還ルールを変えた。それまでは満期が来た国債は新発債に乗り換えていたが、ルール変更後はまず短期国債に乗り換え、次に現金償還することにした。これにより何が起きたかだが、保有国債のデュレーションが短くなったわけだ。
 現在の銀行券残高が一定という前提で、調節上は、昔の方法だと、長期資産が少しずつ積み上がるので、市場買い入れが少なくて済む(楽である)。今の方法だと、満期が到来すると、どっと抜けるので、市場買い入れは減らせない(今は抜ける額と買う額がほぼマッチングしている)。

注 マネタリスト的な立場では能動的となる。銀行券(プラス準備預金=マネタリーベース)に対して受動的か能動的かは、日銀とマネタリストの議論がかみ合わない大きな理由でもある。私は「受動的」(従ってリフレ派でない)との立場である。ただし、能動的になれないこともない。そのためには担保政策をかえる必要がある、と私は思う。

ps 金融正常化の観点で、国債買い入れを減らせ、という主張があるが、これは上記説明したように実務的には合理的ではない。量的緩和時の札割れ対策として増やしたものは、金利政策(札割れはない)では減らせ、というわけだ。ところが、償還ルールを変えたことで、実は負債との兼ね合い上、国債買い入れを増やすのが合理的であったのだ。この点は、実は日銀も増やすときには気がついていなかったのではないか、と私は見ている。
by bank.of.japan | 2007-01-29 21:48 | 日銀 | Comments(12)
CPI、0.1%かあ=2月利上げ見送ると時間軸効果が出そう
 昨年12月のCPI、全国コア(除く生鮮食品)で上昇率は0.1%に鈍化。超短期の金利は、ほぼ完全に2月利上げなしとの水準に低下したようである。これは「日銀政策委の現状維持派は物価を心配している」→「物価が再び上がらないと利上げできないでしょ」という見方が強いため。従って、日銀が2月の利上げを見送ると、市場の“見方”は(日銀に)追認された格好となり、「物価が上がるまで利上げはない」との相場形成が定着する。すなわち、金融政策運営が物価にペッグする「時間軸効果」が発揮されるわけだ。
 現状、原油価格横ばいとの前提では、場合によっては物価は小幅ながらマイナス圏に転落。夏ぐらいまでその状態が続き、その後も上昇は鈍いかもしれない。2月の利上げ見送り時にこういう物価観が根強いと、短期イールドカーブはベタベタに寝てしまうことになりそう。長期金利がどう動くかだが、海外金利の影響も大きいので、素直に短期ゾーンのフラット化が波及するかはなんとも言えない。この辺は専門家の方々のご意見を伺いたいところ。
 時間軸効果の発生を嫌って日銀が利上げしたら? びっくり利上げになって金利市場を動揺させる予想される。市場との対話を通じて円滑な金利水準の調整を行う、というのは形骸化する。これを避けるには「市場との対話」としては禁じ手であるが、総裁・副総裁・審議委員の講演や会見の場を利用して、“地均し”をするしかない。

ps 時間軸政策を暗黙の形で導入し、投融資環境をサポート。円安・資産価格の上昇を促して経済を活性化させるという手もありかも。もっとも、この手法(立派なポートフォリオリバランス効果=低金利ルート)を使う場合には、シナリオの下方修正、政策運営の枠組みをハト派的にするなどの措置が必要。
by bank.of.japan | 2007-01-26 21:08 | 日銀 | Comments(42)
原油安の好影響を強調すると…=量的緩和の解除は
時期尚早であったかもしれない、とも考えられる。
 最近の原油安はCPIをマイナスに落ち込ませるリスクがあるが、日銀の回答は「経済にはプラスの効果もある」というもの。原材料価格の低下で交易条件が良くなるためで、福井総裁もロイターとのインタビューではそういう答えをされているようだ。
 だが、原油安=経済に好影響とのロジックで昨年前半を振り返ると、当時は原油高の局面。日銀は原油高=経済に悪影響をもたらす局面で量的緩和を解除した格好である。一方、原油高はCPIの押し上げに寄与しており、日銀関係者は原油高は需要の強さを受けたものとのポジティブな評価を与えていたように記憶する。
 個人的には、原油需要が強いとは言え、それはあくまでも「世界的な需要」であり、内需が低迷する日本の国内セクターには原油高はマイナスであり、物価がプラスになってもスタグフレーション的な影響をもたらすのではないかとの印象であった。特に投機マネーの流入で需要要因以上に原油価格は上がった面もあり、日本経済にはネガティブな面が大きかったと思う。
 つまるところ、量的緩和はコアCPIにペッグしていたのだが、解除はコアコアベースで判断した方が良かったということかもしれない。なお、追加利上げを見送った主因がCPIのマイナス転落のリスクであるなら、CPI時間軸をもう一回導入して利上げ判断をした方がいい。もっとも、CPIがマイナスになり、プラス復活を待つ間に景気が悪化したら…。これはアウトである。
 CPIがマイナスになりませんように、景気が悪化しませんように。祈るしかない。

ps ところで総裁がインタビューで使った「恐怖心」というワーディングが気になる。物価のマイナス転化に恐怖心を持った誰かが念頭にあるのだろうか。興味深い。
by bank.of.japan | 2007-01-24 20:52 | 日銀 | Comments(37)
円キャリー(円安)が本当に問題ならまずは介入(外為特会)であろう
 日銀が利上げを見送ったことで円キャリーの増大(円安)を“懸念”する声もある。問題は、本当に“懸念”すべきことか、“懸念”すべき場合はどうすればよいのか、といったことであろう。前者に関して、個人的には“懸念”することには違和感も覚える。なお物価が上がらない(むしろ下がるリスクもある=デフレ色が根強い)経済情勢において、マクロ的には円安は金融緩和的な効果をもたらすためだ。理屈の面でも、日銀が低金利を続けたのは、緩和政策を続ける→その効果が為替面で発揮された、と解釈され、懸念ではなく、やはり“効果”と受け止められる。
 そもそも成長率が高い国と低い国があり、両国間の格差が為替で調整されるのは、変動相場制の下では自然な動きではないだろうか。市場原理に委ねるならば「低金利政策の継続によって円安基調が維持され、その緩和効果がデフレ脱却を後押しする要因となる、日本のインフレ期待が高まって市場金利は上昇、海外との金利差は縮小傾向となり、円安は終息する」という流れになるのが理想的だ。
 問題になるのは、格差調整の領域を明らかに超えて円安が短期間で加速するような事態、または欧米各国で保護主義的な動きが強まり、現行水準でも日本政府が円安是正を余儀なくされる場合だ。ここでいきなり国内経済・物価の安定を目的とする金融政策を引っ張り出すのは話が飛び過ぎであり、そもそも円安は通貨の話であるので、まずは通貨政策を担う財務省の出番であろう。
 ここで思い出して欲しいのは「外為特会」は恐らくは世界最大の「円キャリーファンド」である、ということだ。その規模は日銀のバランスシート(113兆円)よりもでっかいのである。この馬鹿でかい円キャリーポジションを放置して、円キャリー抑止のために利上げするというのは順番からしておかしい。財務省が円買い・ドル売り介入してスムージングオペをまず実行する、というのが正しい順番であろう。ちなみに120円以上でやったらかなり儲かるのではないか。
 真の問題は、部分的にせよ懸念の声が上がるほどの円安基調であるにも関わらず、景気がパッとせずに、物価も上がりにくく、中長期金利がびくとも上昇しそうにない国内経済の情勢にある。経済に何か問題があるとき、円安は結果であって、原因は経済そのものにある。円キャリー抑止の利上げに踏み切ると、円高対策で低金利を続けてバブルになった逆バージョン(不況に陥る)が起きるリスクがある。金融政策を為替に割り当てて失敗した歴史を繰り返してはならないと思うのだが…。

ps このエントリーは、為替関連をめぐるコメントでのやりとりで細切れにお答えした私の考えを取り合えずまとめたものです。なお、日銀内で円キャリーを(金融政策で対処すべき)マクロ的な問題として懸念する声はほとんどない、です。
by bank.of.japan | 2007-01-23 18:29 | マーケット | Comments(16)
大勢派はシックス・チキンズ?=臆病であることは悪いことではないが…
 利上げを提案した3人がタカ(ホーク)派であるのに対し、現状維持の大勢派6人は何なのかを考えてみた。政策運営の枠組みはタカ派的であり、これは全員支持しているので、大勢派はハト(ダブ)派ではない。では、弱気のタカ派か。何だかパッとしないネーミングである、と思っていたところ、藤原前副総裁の昔の会見を思い出した。以下のやりとりである(以前に紹介したことがあるかもしれない)。

(問) マーケットは藤原副総裁を決定会合のメンバーの中ではかなり「hawkish」な、つまり引き締めに積極的なメンバーであるとみているようだが、それについてはどうお考えか。

(答) 「hawkish」とは英語の「hawk」、タカ派ということ、引き締め派ということかと思う。「タカ」とか「ハト」とかと言うのは、欧米で金融政策を占うことから言われたものらしく、私も外国の人と話していたら「あなたは『hawkish』」と言われた。自分が鳥獣図鑑の中のどの鳥かということを自ら点検したことはないので、おやと思ったが、その時、その外国人の方に、「能ある鷹は爪を隠す」と説明してもわかるかな、と思いながら、「『タカ』とか『ハト』とかの分類でみると、自分で自分の姿を見たことがないからわからないが、私は強いて言えば『チキン』かな」と言ったことがある。「チキン」というのは鶏だが、英語ではご承知のとおり、「臆病者」、「小心者」という意味がある。

平成12年 6月22日・福岡市における金融経済懇談会終了後の記者会見要旨より。

 そう、今回現状維持を決めた大勢派は「チキン」なんであろう。これは決して悪いことではない。利上げに臆病であることは、二度目の失敗を犯さないことを重視するなら、必要な資質であるからだ。ただし、チキンであるなら、タカ派的政策運営の枠組みをチキンらしいものに組み替える必要がある。タカ派の衣を着たチキンとの対話はかみ合わず、やたら混乱を招くことになるためだ。
チキンの衣(金融政策の運営方針)とは、①フォワードルッキングを止める(消費・物価統計にペッグした時間軸政策の導入が理想)②メーンシナリオの下方修正-などを取り入れることである。中立金利は0.25%前後である、と言ってしまってもいいかもしれない。執行部が消費と物価の下振れを懸念して利上げに踏み切れないのであれば、それは先行き見通しが事実上下方修正されている、ということではないのか、と私は思うのだが…。
by bank.of.japan | 2007-01-22 19:09 | 日銀 | Comments(5)
賛成6、反対3で利上げ見送り=とりあえず簡単な感想
 まず、私のべき論(利上げは慎重)には沿った結果であり、はからずしも先般のセミナーで話した内容(利上げする可能性高いが、議決延期請求の動きがあれば見送る)になっちゃいました。私個人としては今回の結果を評価すべきなんであろう(笑)。

 以下、感想を幾つか。
①全員が先行きの景気拡大、見通し通りにいく、とのシナリオを支持
②にも関わらず3人が利上げ提案し、残り6人が現状維持となった「差」が不明
③利上げ判断に到達する気分or心理的な差なのか
④3対6はフォワードルッキング対バックワードルッキングということか
⑤執行部3人(総裁・2副総裁)が利上げに賛成すれば可決なのにそうできなかったのはなぜ
⑥一番のタカ派は総裁(と私は見ている)だが、副総裁二人が慎重→執行部は割れている?
⑦2月利上げとの見方が多いが、その場合に利上げ判断を合理的に説明できるか
⑧政府はまた反対するのではないか=消費・物価が弱いじゃないか、と言い続ける→常に議決延期請求が振りかざされ、全面対決の様相を呈す→ずーっと利上げできない
etc 挙げるときりがない疑問点である。

マスコミ報道については、別途触れる予定。

利上げを提案した3人は、水野、須田、野田の各委員と思う(違ったらすいません)。
by bank.of.japan | 2007-01-18 20:17 | 日銀 | Comments(36)
インドでも円キャリー的な取引があるようです
 アジア方面で活動中の知り合いの金融関係者から聞いた話だが、インドでも円キャリー的な取引が活発のようである。具体的には、ルピー建て借り入れの金利部分を円と交換するもの(“クーポンスワップ”と言われるらしい。
 調べたところ、ルピーはドルペッグ制を取っており、(対ドルでの)円安基調はそのままルピー高・円安基調となる。従って、上記のクーポンスワップを行うと、借り入れの金利負担は軽くなる構図である(円高リスクは残ったまま=金利負担の増加リスク)。
 知り合いによると、この取引は「大はやり」らしいが、どの程度の規模かは不明(この手の取引は得てして統計がないので実態は不明)。まあ、色んなところで色んなパターンがある、のだろう。

 なお、私自身は市場ウォッチのテクニカルな側面として「円キャリー」に関心はあるが、金融政策でそれを阻止するのには反対である、ということを改めて断わっておきたい。興味のある方向けにお知らせまで紹介した次第である。
by bank.of.japan | 2007-01-15 23:37 | マーケット | Comments(24)
コモディティ関係のブログを紹介
 コモディティ関係のブログとして注目していた「Alternative Times」さんが再び活動を開始されたのでお知らせいたします。しばらくお休みされていたのだが、今年からエントリーの更新を始められた。うれしい限りであります。
 原油・金属・非鉄など商品市況は金融政策運営上も重要な材料であり、日銀も注視している。特に最近の市況調整が単なる投機剥落なのか、それとも経済変調の予兆なのか注目されるところ。もちろん国内物価への影響も無視できず、金融政策運営にも微妙な影響を与える可能性がある。
 Alternative Timesさん、さすがプロだけあって最近の原油反落では詳細な分析をされている。非常に参考になるのでお勧めのブログです。みなさん、ご閲覧を。
by bank.of.japan | 2007-01-14 00:54 | ブログ紹介・お知らせなど | Comments(6)
投資利回りが低いのは…=『大機小機』悠憂氏への違和感
 11日付の日経新聞『大機小機』で、悠憂氏が「日本版ビッグバンの矛盾」と題し、投資立国への取り組みを訴えていた。肯けるところもあるのだが、市場動向の解釈には違和感を持った。具体的には、国民が受け取る金融収益の低さを「政府・日銀の長年の低金利政策」に求め、さらに投資利回りの低さを「日本の機関投資家の投資対象がTBを中心にした債券に偏っているため」と分析していた点である。
 低金利の因果関係において、投資行動(TB・債券買い)を原因に、結果(低金利)を導き出すのは正確ではない。投資行動も実は結果であり、TB・債券買いが強まる原因が別にあるわけだ。つまり、「金利が低い」ことの根本原因は「景気が冴えない」ことが大きい。機関投資家(銀行含む)の投融資行動にリスク回避性がないわけではないが、基本的には「景気が冴えない=民間資金需要が弱い」ために運用難に陥り、消去法的にTB・債券を買わざるを得ない。
 コラムの内容によると、日本の金融機関はあたかも金融技術が乏しく、市場理論に疎いために安易にTB・債券買いに走っている、という印象を受ける。金融機関の中には該当する例もあるかもしれないが、事実としては、上記述べたように景気回復が力強さに欠けるために民間資金需要が弱い(マネーはデフレ的)ことに尽きる。言い換えれば、インフレになれば金利は上がるのである。
 もし、民間資金需要が弱いのにTBや債券を買うのを止めたら…。機関投資家は、運用資金を現金として持つか、強引に民間向け投融資を強めるしかない。そうなると、強烈な官民金利の逆転が起きて、わが国経済の資金循環は狂った状態になる。
 なお、「投資立国」を目指す手段として、金融技術に通じた人材養成の必要性を訴えているが、私はちょっと違う考えだ。日本の金融が劣後している原因は、「技術不足」ではなくて「リスク回避(サラリーマン)的な風土」であろうと思う。いくら技術や理論を向上しても、それが生かされない風土なら、総偏差値収益率の低下を招くだけだろう(日銀のように?)。
 この点は、はからずしもコラムの一文が証明している。「リスクはあるが利幅の大きい内外M&A、MBO、PE案件は、ほとんど外資が扱っている」と。外資で働いている人の大半は日本人である。彼&彼女らは、日系金融機関の彼&彼女らに比べて圧倒的に理論と技術で優れているのか。そうではなくて、理論と技術よりもむしろインセンティブの違いであろう。リスク・リターンに応じた報酬体系(その分従業員は厳しい選別にさらされる)が、リスク性の案件確保につながっていると思われる。
 私は、投資立国を目指す際、外資の力を頼ってもいいと思う(英シティー)のように。それから「拝金思想の一掃」とかあまり言わない方がいい。収益追求=拝金。単に言い方の違いでしかない。「収益は追求するが、拝金はいけない」とは何だろう。仮に「金さえ儲かればいい(ぼったくり)=拝金」とした場合、ビジネスモデルとして継続性がなく、拝金一掃と言うまでもなく自然淘汰されると思うが。
 なんだかこのコラム、うなずけるところがどんどんなくなってきたなあ。

ps 知り合いの日銀若手が辞めた。外資系投資銀行への転進である。彼の活躍を祈っている。彼が見事成功したら、もともと持っていた能力が日銀よりも外資の下で発揮されたことになる。要は技術や理論ではなく、人材の使い方の問題なのでないか。
by bank.of.japan | 2007-01-12 22:38 | 大機小機 | Comments(16)


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