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金融市場局がどんどん当座預金を減らすと…=金融機構局が手作業で当座預金をどんどん積む
 ということになる。こうなってしまうのは、ロンバートがかなり低い水準に設定されているため。現実問題として、日銀は金利(無担保コール翌日物)が上がってしまったため、これ以上当座預金を減らすのには慎重になると思われる。時間をかけながら、時には当座預金は増えたりし、徐々に慎重に自然体で減らしていくだろう。結果的にどこまで下がるかはわからないが、10兆円を割るとも割れないとも今の段階では言えない。
 では、日銀が再びどんどん当座預金を引き下げていくとどうなるのか。金利は上昇し、すぐにロンバートにぶつかる。資金が必要な金融機関は日銀に差し入れている担保の範囲内でロンバート借り入れを行う。このお金の流れを日銀部局の機能によって見てみると、①金融市場局が当座預金を減らす②金融機関は金融機構局に電話してロンバート借り入れを申し込む③ロンバート経由で出たお金はめぐりめぐって当座預金に積まれる-という構図になる。
 金融市場局の調節で不足になったお金がそっくりロンバート経由で市場に還流してくるわけではないが、当座預金を減らし過ぎると金融機構局が代替的にお金を出さざるを得ない。なお、金融機構局が対応するロンバート貸し出しは人海戦術である。人が電話で受け、端末をたたいて貸し出しを実行する。しかもミスが生じないようにクロスチェックをかけているはずだから、それなりに人手がかかる。また、貸し出し実行権限は一定以上の役職者が担っているので、役職者を常時待機させる必要がある。
 一件当たりの実行の手間は、金額の多寡に関わらず同じ。一兆円も一万円も同じ(桁入力の手間ぐらいの差はある)。従って、金融市場局の調節のせいでロンバート申し込みが多くの金融機関から殺到すると、金融機構局は超忙殺状態となる。日銀マンの事務能力は恐ろしく高いので、多分ミスはないだろうが、何事も絶対はないので、振り込みミスなどの可能性はあると言える。
 以上は、極端な事例であり、現実的には金利がロンバートにごつごつ当たるような調節はしない。一部でロンバートの基準となる公定歩合の先行引き上げ論が浮上するのは、ロンバート水準が低過ぎて市場調達がロンバートにすぐに切り替わってしまうためだ。ただ、「公定歩合」引き上げは技術的な調整ながらも、公定歩合という名称自体が有名なので大々的な利上げと受け止められ、そのように報道されるだろう。従って、公定歩合引き上げは無担保コール翌日物の引き上げと同時と考える次第だ。日銀も怒られることは二回でなく一回で済ませるはず。怒られるのが気持ちいいと思うマゾなら別だが…。
by bank.of.japan | 2006-05-31 23:52 | 日銀 | Comments(17)
『三〇兆円高地』攻防のエピローグ=やや速過ぎた撤退
 5年かけて築いた山を、兵士達は黙々と崩した。途中、必死に守った防衛線を幾つか通過した。30兆円、27兆円、22兆円…。いずれも御前会議がにわかに信じがたい大義を掲げて防衛を命じた地点であった。戦塵にまみれた将校に聞いた、「虚しくはないか」と。将校は「命じられたことをやるだけだ。思考は兵を臆病にする」とかすかな怒りを見せて答えた。
 撤退戦は現場指揮官の判断に委ねられた。作戦要綱はすでに「金利戦」に書き換えられ、軍事理論上も「山の高さ」が言及されるのはあり得なかった。作戦参謀らも撤退戦への興味は無くしていた。だが、不思議なことが起きた。天の声が響いたのである。「10兆円割れは確実」、「6兆-7兆円まで下げる」。現場に混乱が走った。
 陸軍法が改正される前、軍内では勝手に天の声を語る将校、勝手に天の意思をおもんばかる将校らが幅をきかせていた。下士官・兵から『御殿女中将校団』と揶揄されていたが、逆らうと辺境に飛ばされるリスクがあった。法改正により、御殿女中将校らは駆逐されたはずだったが、残党がいないとは限らなかった。「天」またはその「声」に自動反応する狂信的将校が撤退戦を混乱させる恐れがあった。
 その不安は杞憂だったが、別なところで撤退戦は混乱した。撤退速度が結果的に速かったため、まだ下の方だと思われた岩盤に衝突。インタバンク住民らは不安におののき、金利は上昇。ロンバートが発動されるに至った。金利が上がる標高に到達するのは時間の問題だったとは言え、「撤退戦の失敗ではないのか」との声が住民から挙がった。即日砲が打たれ、山は再び高くなった。天の声も実は虚報であったことが今になって分かった。
 作戦参謀らはそれでもなお撤退戦への興味は示さなかった。「フォワードルッキング」の理論に魅了され、天は「インフレクションポイント」と海外の赤い新聞から流用した難解なスローガンを発し、ひたすら金利を高くする作戦で頭は一杯だった。後方の混乱を問うと、「現場の話だ」と素っ気無い反応しかなかった。(続くかも)

以上は、創作である。念のため。
by bank.of.japan | 2006-05-30 22:05 | 日銀 | Comments(3)
岩盤掘り過ぎましたか?=埋め戻しオペは「タッチ&ゴー」
 日銀、本日はなんと1兆5000億円の即日供給であった。一発の即日としては恐らく過去最高である。記憶は定かでないが、9.11のテロのときに1兆円二発、イラク戦争勃発の時に1兆円という即日供給があったと思う。それを上回るオペであった。先日付でもオペを打ちまくり、この結果、当座預金残高は増えた。岩盤掘削のスピードがやや速くて掘り過ぎたもんだから、埋め戻しのオペをやった格好である。運用されないヘドロ状の当座預金や“動く郵政預金”の存在など複雑な地層を誰も掘ったことがないので、下手糞なオペと言うのは可哀想かもしれない。
 航空機の操縦に例えると、意図せざるして「タッチ&ゴー」になったのかも。着陸の進入角度がやや深く、着地の衝撃が強かったために機体(金利)がバウンド(跳ねる)してしまった感じだ。埋め戻しのオペで当座預金が増えたのは、高度を上げた操縦に戻ったように思える。
 昔、飛行機で帰郷したときのことを思い出した。低く垂れ込めた雲と強い雨で視界が悪い中、私の乗った飛行機は着陸態勢を取ったが、着地寸前でジェットを猛然と吹かして上昇。これを何度も繰り返した。知り合いのパイロットによると、視界が悪い時は計器飛行しつつも、着陸時は有視界になるのだそうだ(空港が高地にあり、雲がかかりやすく、近くに高い山があるので、着陸進入コースが制限される、とも聞いた)。滑走路が目視できるまで何度も着陸を試みたのだろうが、私は生きた心地がしなかった。スチュワーデスらもやや緊張気味で、私の経験上、着陸時に本気で拍手が巻き起こったのはこのときだけである。
 本当の岩盤(郵政含む準備預金)に接触せず、埋め戻しに入ったという意味では、上記のような操縦であったのかもしれない。金利バウンドは結果的に「岩盤圏」への到達を告知する“目覚まし効果”はあったのだが、狙ったというよりは胴体着陸によるたまたまの副次的な効果だったのかもしれない。ロンバード水準が低過ぎて金利のバウンド余地が乏しく、ヘドロ化した当座預金が流動化しにくいことも調節を難しくしているのだが、これについては別途機会があれば詳述したい。当座預金、利上げされるまで10兆円を割らんかもしれん。
by bank.of.japan | 2006-05-29 21:23 | 日銀 | Comments(9)
バーナンキ発言問題の日銀版を考えてみる
 「Economics, Technology & Media」さんのエントリーによると、バーナンキ議長への批判はかなり強いようだ。なお、学者時代の印象はともかく、日銀マンらも含めて私もそうなんだが、周囲では議長に同情する向きが多い。
 それはともかく、政策運営の信認を考えるうえで、批判のきっかけとなった問題発言を日銀に置き換えてみたい。グリーンスパン議長の下、メジャードペースの利上げを行ってきたFRBを引き継いだ新議長は先般、「利上げ中断」を示唆した。これを受けインフレ懸念が台頭して米長期金利は上昇。その他もろもろの悪いことが新議長にせいにされた感がある。
 さて、発言と金利の関係を見ると、「利上げ中断」→「インフレ懸念の台頭」→「金利上昇」となったのであろう。この構図において、米債券市場はFRBのメジャードペースの利上げがインフレを抑制するものだと信頼していた格好となる。
 では、量的緩和を解除して今度はゼロ金利解除を視野に入れている日銀の福井総裁が、ゼロ金利解除の中断を示唆したらどうなるだろう。少なくとも私の知り合いの債券ディーラー&エコノミストは「長期金利は下がるだろう」との感想だった(逆の人もいるかもしれないが)。ゼロ金利解除は中長期的な物価の安定(インフレ抑制)が狙いだとしても、それを十分信頼するには至っていないことがうかがえる。
 まとめると、バーナンキ議長の発言を嫌気した米債券市場はFRBがやってきた政策運営は信頼しており、その信頼が発言で揺らいだのだろう。一方、日銀が同じような発言をすると、債券市場は好感。政策運営の目的に共感していないことが露わになる構図であろうか。
 日銀が信頼を得るには、やはりシナリオ通りに景気が長期にわたって拡大し、物価もほどよく上がっていき、その間のゼロ金利解除、追加利上げなどの政策運営が正しかったことを証明するしかないと思う。やっぱり「グッドラック」である。
by bank.of.japan | 2006-05-26 22:31 | 日銀 | Comments(2)
金利上昇・即日オペ、“岩盤”に確信犯のハードな着陸?=市場局のパイロット諸君、「グッドラック!」
 本日のインタバンク市場では、無担保コール翌日物が急ピッチで上昇。日銀は即日資金供給オペを実施(昨年3月以来)し、金利上昇の抑制に努めた。どうやら当座預金残高の岩盤に衝突したもよう。さて、岩盤に到達する際の金融調節を旅客機の操縦に例えてみたい(蛇足ながらパイロットは前田課長、コパイロットは熊谷調査役としようか。この辺はご自由に想像を。なお課長・調査役の肩書きは今はない)。
 古いセンスだが、金融調節の美学で岩盤接地を考えると、最も美しいのはほとんど無衝撃で接地することであろう。当座預金の岩盤に接地する際、金利がほとんど動かない状況である。ベテランパイロットの着陸が超スムーズで、寝ている人を起こさないようなものである。
 金利が上がって即日オペを打ったのを見て、私は「ちょっと下手だな」と思った。即日オペを打つ必要がないぐらいの金利上昇にとどめるのが金融調節の美学にかなうからだ。着陸としては、ややハードランディングの感があり、オファーに群がったビッド集団は慌てた乗客というわけだ。と、ここまで考えて、待てよと思った。金融市場局のパイロットらは、決して無能ではない。金利が上がってオペを打つという格好悪い様は避けるはずで、もしかしたら確信犯ではないかと考えたわけである。
 当座預金残高の岩盤構造は、われわれには見えないが、日銀は郵政公社や銀行などにヒアリングしており、かなりの程度は把握している。銀行券・財政要因の資金需給の振れも掴んでおり、先日付のオペを駆使すればフェザータッチの着陸は楽勝であったはずだ。では、なぜハードランディングしたのか。私が考えたのは“目覚まし効果”である。
 当座預金残高には金利がゼロだと運用されない“ブタ積み”が固着している。これらのマネーは眠った状態にあり、「概ねゼロ%」という調節方針が続く限り、目覚める可能性はない。目覚めるのはゼロ金利解除の時であり、それまでは睡眠状態が続く。これでは比較的高い水準で当座預金残高が続くことになり、ショック療法によって目覚めさせ、可能な限り岩盤の高さを低くしようとしたのではないか、と推測したわけである。
 オファーがどんどんビッドされる状況を目の当たりにすれば、“ブタ積み”は眠りから目覚めてインタバンク市場に流れると期待される。もしかしたら、ゼロ金利解除前に当座預金残高は「所要準備プラス郵政公社預金」という最低位の岩盤になる可能性もある(もちろん郵政要因で上下動するが)。金融市場局のパイロット達は、“目覚まし効果”を狙ってハードランディングの着陸を行ったのではないか、と思う次第である。
 うまく効果が出ることを祈りたい。パイロット諸君、「グッドラック!」。

 えっ?、過大評価ですって、いやーなんとも(笑)。みなさん、乗り心地はいかがだったでしょうか。胴体着陸で火花が散ってましたか? だとすると調節の失敗スかねえ。キムタクのようにはいかないかなあ。でも、「動く岩盤」への着陸は、どこの中銀もやったことのない操縦。墜落しなかったのは腕がいい証拠かも。やっぱりキムタク?

追記 即日の資金供給オペは、岩盤接地を告知するアナウンスメント効果も狙ったのではないかとも思うのですが。どうでしょう。

ps 内容の展開に合わせ、最初のアップしたときとは見出しを変えております。あしからず。
by bank.of.japan | 2006-05-25 17:37 | 日銀 | Comments(8)
日銀、郵政預金を「準備預金残高」から除外=邪魔だから出ろ、と言われた改革の象徴
 日銀は本日、日本郵政公社の預け金を資金需給項目の「準備預金残高」から除外することを決定した。場所はこちら。地質学的には「動く基盤岩」の構造を明示し、資金需給の不透明感を払しょくするもの。これにより、何度か取り上げた郵政「ブタ預金」問題は一応解決したわけだ(注)。ただ、3年前に準備預金に準する預金を持たせた日銀の判断の甘さが問われよう。資金需給の集計上、最初の時点から「準備預金残高」に入れていなければ、今回のような隔離措置をする必要はなかった。
 大人用プールに入れと言われ、まともに泳げないので出て行け、と言われた郵政。日銀から民間待遇で迎え入れられたものの、みんなの迷惑になるので出てもらう、と手のひらを返されたわけだ。もっとも、郵政はしたたかであるし、この仕打ちも逆手にとって「だから運用多角化が必要だ」という主張につなげるだろう。同情論は郵政を利するだけ、と日銀マンらは思うかもしれないが、「構造改革の象徴」に奉られた郵政民営化の実像がインタバンクの邪魔者であったというのは、改革路線が建前的であることをうかがわせる(これからはまともになるかもしれないが)。この論点については、機会があれば別途エントリーで述べたいと思う。
 さて、これから当座預金を削減する上で、準備預金から弾かれた郵政預金の動きはどう見えるのか。6月の積み期間が始まる6月16日以降、郵政預金は「(準備預金制度)非適用先の日銀当座預金残高」に組み込まれる。ただし、この項目は「その他の日銀当座預金残高」と名称を変える。6月15日から6月16日にかけては、「準備預金残高」がガクッと落ちて、「その他…」がガクッと増えるはず。そして「その他…」は兆円単位の変動を見せると思われる。この項目には短資会社や証券会社などの当座預金が含まれており、ゼロ金利解除までは郵政預金とごった煮で上下動。解除後は、短資会社や証券会社の当座預金はほぼ抜け落ち、ほぼ郵政単独要因で「その他…」は構造運動を展開する。振れ方がどんなもんか、ちょっと楽しみである。

注) 来年秋に郵貯銀行が発足する。これはまさに民間銀行であり、準備預金制度の対象となるため、今度は本物の準備預金を持つ。資金繰りがまともに出来るなら、準備預金残高に含まれる。出来ないならどうするのか。未定である。これまたどうするのか楽しみである。
by bank.of.japan | 2006-05-24 12:36 | 日銀 | Comments(2)
「ICU」、言葉のデジャブー=速水さんを思い出した
 経済紙に福井日銀総裁のインタビューが掲載されていた。内容はみなさんご覧になって頂くとして、私の印象に残ったのは(内容を別にすると)言葉のデジャブーであった。具体的には「ICU(集中治療室)」という表現である。これを見た瞬間、私は速水前総裁を思い出した。ゼロ金利解除を目前に控えた速水さんである。
 2000年春の講演。速水総裁は「ゼロ金利を解除する条件というのは、いわば患者が集中治療室から出られるかどうか、ということだ」、「景気の回復が持続して需給バランスの改善が続く、というシナリオにある程度展望が持てるようになれば、デフレ懸念はほぼ払拭された、と考えられ、日本経済は、集中治療室から出られる」と述べていた。
 日銀マンの使いそうな表現である以上、別な場面で別な人物が使う可能性は高いのだが、ICUの見出しが目に飛び込んできたとき、あの春に舞い戻ったような錯覚を覚えた。言葉に触発されたデジャブー。ただそれだけの話に過ぎないのだが、最近のエマージング市場の調整、東証株価の続落、ドル相場の不安定性などもあって、何となく嫌な感じを覚えた。
 経済ファンダメンタルズと市場の関係において、前者が強固であるなら、市場の不安定性はいずれ収まるはずである。ただし、ファンダメンタルズの判断を間違っており、市場の不安定性は将来の景気変調を先取りしている、という可能性もある。ぐっちーさんのエントリー「予測不可能」を読むと不安になる。私は意図的に日銀と逆張りしているが、デジャブーが現実になるのは勘弁願いたいという心境だ。

ps ICUとの比較で常々思うのは、金融・財政両面のカンフル剤を打たれていた患者が本当に元気になるのは、両方のカンフル剤が不要になったときであろう。金融政策のカンフルを止め、財政のカンフルを止める、それでも歩けるなら健康体である。問題は、カンフル停止のレベル。金融政策が中立金利であるとした場合、財政はプライマリーバランスの黒字化水準であろう。前者はまだしも、後者の目指すべき水準は絶望的に遠い。浮きは当分動きそうもない気がするのだが…。
by bank.of.japan | 2006-05-23 22:02 | 日銀 | Comments(0)
ネガティブサム競争の影響=「経済教室」より
 先週末の日経「経済教室」で藻谷浩介氏(日本政策投資銀行参事役)が、人口減の影響を論じている。藻谷氏と面識はないが、以前不動産動向について調べていたとき、ネット上で偶然に講演録を拝見する機会があり、鋭い洞察力に感銘を受けたことがあった。ただ、そのときは藻谷氏の背景をよく知らず、この経済教室を読んで改めて思い出した次第だった。
 地価動向は金融政策上も非常に重要なファクターだが、あくまでもマクロ的な観点で捉えられるもので、現状はバブルになるかならないかが論点だ。日銀の中長期的なリスク点検(政策運営の枠組みにおける第二の柱)では、低金利を続ける→実質マイナス金利の上昇→バブルのリスク、という(アップサイド)リスクシナリオの一つとなっており、これについては本当にそうなのか、と個人的には疑問を抱いていた。マクロのリスクシナリオとしてあり得なくはないものの、例えば人口問題の影響などを考えると、大都市圏の地価反転がバブルに至るようには思えないからだ。
 この点について、藻谷氏の「経済教室」はうなずける内容で、さっそく切り抜き対象となった(笑)。地価形成において人口動態の変化は言うまでもなく重要だ。大都市圏で上昇に転じたとは言え、語られる地価は「点」の総体感であり、一つ一つの価値は形状や立地によって千差万別のはずで、本当に「面」として上がっているのか良く分からない。私は、都市と地方の格差、首都圏内での格差は人口集積の度合いによるもので、価格差が生じても全体としては「ゼロサム」の構図であろうと想像していたが、藻谷氏は「ネガティブサム」(縮小均衡内での潰し合い)とより厳しく見ている。
 詳しくは経済教室を見ていただくとして、目先は団塊退職に伴う若年層の雇用改善などで景気情勢は好転するとしても、①総人口減少で可処分総所得も減少し、首都圏を主戦場とする消費関連企業は影響を受ける②都心の一部活性化もネガティブサム競争に過ぎない③首都圏のオフィス・住宅供給量の抑制を図らないと不稼動資産が大量に生まれる-などの指摘は、傾聴に値すると思った。日銀として第二の柱のリスク分析にダウンサイドの一つとして取り入れるわけにはいかいのだろうなあ。
by bank.of.japan | 2006-05-22 22:06 | 経済 | Comments(4)
“ミラーマン”の魚釣り=浮き(金先)がピクピク動くのは…
 19日の福井総裁会見。まず「6-7兆円」が当座預金減額のターゲットではないことはやはり否定(想定通り)。「(当預残高という)数字は忘れろ」とのことでした。ただ、変動性“ブタ”預金が短期金利にはさざ波程度の影響はもたらす恐れがあるので、インタバンク関係者は忘れるわけにはいかない。あと1-2週間で「動く基盤岩」の最頂点に到達する可能性があるので、金融調節を学術的に観察するうえでは非常に興味深い。
 ところで、総裁は「市場との対話」で面白い喩えを披露した。日銀の情報発信に対して市場金利が正しく形成され、それを踏まえて正しい政策判断の時期を究明する考えを示したうえで、「市場金利、現物も先物金利も挟みつつ、ちょうど魚釣りの浮きのように、それはピクピク動くのだが、浮きの下に魚がいるわけでもないので、正確なタイミングをわれわれも探るし、市場も浮きの位置を自らの経済情勢判断、先行きの金利観にピタリと合うところに調整してください」と述べた。
 この喩えは、日銀マンらとも話題になったのだが、日銀と市場の役割分担がちょっと掴みにくい。私の解釈では、日銀が「釣り人」、市場(現物・先物金利=ユーロ円金利先物が「浮き」となる。問題は「ピクピク動く」のはなぜか、である。金先を鏡にして円環性の問題を発生させやすい日銀の対話(ミラーマン現象)を考えると、ピクピクは市場独自の判断ではなく、日銀が動かしているからであろう(わざとか、知らずにかはどちらでもいい)。
 知り合いのディーラーらはこう思うに違いない。この釣り人は、浮きを激しく動かし、「魚だ!」と叫んで竿を上げる、しかし魚が本当に釣れたのか良く分からない、長靴だったような、水草だったような、何もいなかったような、しかし釣り人は「釣れたよ」と言い張り、そして次の獲物(追加利上げ)を狙って糸を垂らすのだろう、と。
 日銀マン&ウーマン、good fishing!

ps 私は釣りをしないので分からないのだが、浮きを動かして釣る手法も魚種によってはアリですか?
by bank.of.japan | 2006-05-19 21:29 | 日銀 | Comments(11)
金融政策と株安・円高の関係=特に為替は鬼門
 株安・円高が進んできた。その背景については色々報じられているので、ここでは割愛するとして、金融政策にはどういう影響があるのか。日銀の基本スタンスは景気実体の重視であり、金融市場の動向によって金融政策を変えることはない。市場は短期的には上下にオーバーシュートするものであり、中長期的には経済のファンダメンタルズに沿っていく、とみているため。現状、日銀は「景気は今後拡大していく」と判断しており、株価は上下動しながら堅調に推移していく、と判断しているはずだ(内心はビビッている審議委員もいるかもしれないが)。
 とは言うものの、金融政策が市場動向にかなり左右されてきたのが事実だ。もっとも顕著だったのが、プラザ合意後の円高に対して緩和政策を続け、バブルを発生させたことであろう。1998年新法導入後も、99年は円高と長期金利の上昇に対応してゼロ金利政策を導入(このときの景気判断は上方修正)した。株価急落を受けた2002年の株買い取りもプルーデンス政策を隠れ蓑にした金融政策の側面があったと言えなくもない。「福井体制」下でも、2003年秋の当座預金目標の上限引き上げ、04年初めの目標引き上げは円高に対応したもの(景気は回復判断だった)。
 80年代後半のバブルは、金融政策が為替に振り回されていはいけないという教訓を日銀は学んでいるものの、やはり影響されることが多いことをこれまでの政策運営の軌跡は示している。株安・円高の動きに対し、要注意なのはやはり為替動向であるかもしれない。円高→輸出製造業への打撃→株価下落、という見方が広がるほど自己実現しやすい。もともと円高アレルギーが強い風土であるだけに、円高の進行は利上げをうかがう日銀を縛る可能性がある。この点は通貨政策を担う財務省も同じであり、政財界が円高懸念を強めると、介入実施に向けた圧力が高まる。介入が実行されてしまったら、(円高につながる)利上げは見送らざるを得ないだろう。為替は鬼門である。
by bank.of.japan | 2006-05-18 22:21 | 日銀 | Comments(4)


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