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展望リポート、簡単なまとめ=『人生はバラ色』
 日銀が展望リポートを発表。とりあえず簡単なまとめを(各種の論点は追って随時掲載)
・潜在成長率は上昇。しかし、需給ギャップはゼロ
・景気は拡大中。今後も息の長い拡大が続く
人生に例えるとバラ色といった感
→インプリケーション。低金利を続けるほど、先々の景気過熱orバブルのリスクが増大

<びっくりポイント>
06-07年度の物価・経済見通しが「政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考に作成した」という点。地ならしをする中央銀行がこれをやっていいのか、と…。市場は経済を映す鏡、いやいや日銀を映す日銀の手『鏡』。一番美しく映し出すのは「金先」(ユーロ円金利先物)?

総評 バラ色の将来が広がる中、数次の利上げを織り込んだとみられる市場金利を前提としてもなお、展望リポート掲載数値の経済・物価が見通される形になっている。この理屈においては、市場金利はすでに引き締め的になっており、それでもなお息の長い拡大が続く格好である。市場が織り込んだ水準までの利上げはテクニカルな調整に過ぎず、すなわちいつでもゼロ解除OKというシナリオなんだろう。企画スーパー参謀、考えたものである。政策運営ロジックの企画立案における神業、ですかね。

以上、ざっとした感想まで。追って別途エントリーで取り上げたいと思う。
by bank.of.japan | 2006-04-28 19:26 | 日銀 | Comments(15)
当座預金、20兆円割れの先=どこかで岩盤に衝突するかも
 28日のインタバンク市場は、日銀ノーオペなら当座預金残高は恐らく20兆円を割れる見込みだ。そこから先の展開だが、来月に入ってからも、過去にやった供給オペの期落ちやら、銀行券・財政等要因の不足などを経て淡々と減っていく見通し。あまり細かく見ていないが、来月末には10兆円前後まで落ちていくようだ。ただ、その過程で岩盤みたいなものに衝突し、誘導対象となっている無担保コール翌日物金利が上がる場面があるかもしれない。金融調節上、岩盤を無視して当座預金を減らすと翌日物金利が上がる、すなわちゼロ金利政策を維持できなくなるので、当座預金の減少は岩盤付近で停止することになる。
 なぜこうなるのか。これは①運用を断念した超過準備の存在②準備預金制度非適用先の滞留資金③郵政公社の『ブタ預金』-などが存在するため。量的緩和を解除して利上げに至る際、当座預金が所要準備(郵政公社含めて約6兆円)まで減り、それから利上げ、という風に普通は考えられる。ところが、そうはいかないのが難しいところである。例えば、①のような状態になった超過準備は、ゼロ金利の下では、当座預金に置いても、市場で短期運用してもほぼ同じことなので、滞留し続ける可能性が高い。運用すると事務など手間がかかり、しかもほとんど益も出ないわけで、資金部門をリストラしたところは当座預金に超過準備を置きっぱなしにする。
 ②のケースでも似た状況ではあるが、まあ額的にはそれほどでもないと思われる。③は結構厄介な事情もあって簡単には説明しにくいが、日銀預け金は2兆円で済むのだけど、公社特有の要因もあって、それ以上の金額を預けざるを得ない状況にある。従って、①、②、③の合計は場合によっては10兆円以上に上る可能性もあり、仮に合計が12兆円とすると、そこが当座預金の岩盤となる。これをぶち抜こうとして強引に吸収していくと、①~③以外の金融機関が資金不足となり、市場調達を強めるので金利が上がる、という構図になると思われる。
 結論としては、当座預金は所要まで落ちない、落ちないままゼロ金利は解除される。逆説的には、解除して金利が上がることによって、少なくとも①、②のお金は市場に出て行くわけだ。③の複雑な事情は別途エントリーで取り上げたい。
by bank.of.japan | 2006-04-27 21:35 | マーケット | Comments(6)
「興銀ALM」の回顧&検証=マクロヘッジの多面的真実の教材
 今回は前回エントリーに続くALMシリーズの第二弾である。前回は具体例として「さくら銀行」を紹介したが、今回は「興銀ALM」を取り上げたい。ある意味、市場的にも会計的にも当局的にも非常に興味深い事例であり、できることなら「マクロヘッジの多面的真実」を物語る教材として、どこかの大学院のファイナンス学科が取り上げたらいいのではないかと思ったりする。
 さて、私の手元に「2000年 興銀ディスクロージャー誌」がある。この中から、ある数字を時系列で紹介してみたい。具体的には、バンキング勘定の金利関連デリバティブ取引の評価損益(143ページ)の推移だ。97年度、▲431億8900万円。98年度、▲771億8600万円。99年度、▲1670億200万円。同じくバンキング勘定債券関連デリバティブ取引(147ページ)は、順に▲428億8800万円、▲1003億3400万円、▲1449億4200万円となっている。
 評価損発生の主要項目は、前者では金利スワップのペイ(固定払い・変動受け)であり、後者では債券先物の売り建である。ちなみに97年3月から2000年3月までの長期金利の動向を簡単に説明すると、2%台前半から低下して98年後半は1%前後。その後運用部ショックで2%前後に急上昇し、99年はゼロ金利導入で低下に転じて1%台後半での推移となった(詳しくはネット検索してグラフなど参照)。
 私が評価損拡大を不思議に思ったのは、興銀のバランスシート構造の特殊性による。負債側をみると、都市銀行が流動性預金という短期負債を抱えるのとは違って、興銀は主として長期負債の金融債を持つ。私は当時、一般的に長期債務を発行する銀行は、ALM上はそのヘッジとしてスワップをレシーブすると聞かされていた。従って、金利が低下すると、興銀はスワップポジションはネットで評価益が拡大するはずで、そうなっていなかったのに頭をひねった。
 一方、債券先物の推移は謎である。特に売建・買建の想定元本推移は、大雑把に6兆・4兆、9兆・8兆、14兆・13兆と両サイド膨張の一途をたどり、そのうえでロスが拡大する構図が描かれていた。ポジションを落とさずにロールオーバーを繰り返しつつ、主として売建サイドで損失が拡大する合理性は見出せなかった。唯一考え出したのは、同じ水準で売りと買いを出し、儲かった方を利食っていく手法だが、それはあり得ないであろう。
 ALM操作は一般的に経営中枢の極秘オペレーションなので、行内ですら一部にしか知られていない。私も含めてALM関係者の多くは、金利が上がると思ってそちらに賭けたけど、見込みが外れた結果ではないかとの見方が多かった。一方、興銀側の説明は「当行では多用なヘッジ手段を活用しており、その中でデリバティブだけを取り上げると含み損が生じる。ただ、ヘッジ対象であるオンバランスの資産・負債でデリバティブの含み損を上回る含み益を保有しており、将来的に含み損が実現すれば資産・負債の含み益も実現し相殺される」であった。
 この説明は一見合理的だが、一般的なALMの実態には沿わない。多くの銀行は「金利の動きをうまく予想して収益の極大化を図っていた(今でもそうだと思う)」わけで、興銀の説明ではオンバランスの含み益を消すためにALMで損失を発生させた構図になる。逆説的にはALMで何もしなければ、オンバランスの含み益が実現していくはずで、やっぱり金利の読みが外れたように私には思えた。
 真実はどちらにあるのだろうか。リスクのヘッジを究極化すれば、リスク・リターンはチャラになり、「マクロヘッジ」は100%ヘッジであるなら、興銀の説明は筋が通る。監査法人も納得したのではないだろうか。だが、投機の失敗とも見えなくもない。2001年12月29日、日経新聞は、みずほグループがデリバティブの含み損3000億円を合併差益を利用して処理する、との方針を伝えた。オンバランスにあったはずの含み益はどうなったのだろう。実際にあれば、合併差益でオフバラの含み損が処理された後に実現していったことになる。
 ALMの損益をオンバランスとの関係で想像すると、日が差せば影が生じるような錯覚を覚える。益が出れば損がある、損が出れば益がある、逆側の損益は存在が掴みにくい。あるとき、マクロヘッジはシャドーヘッジングという言葉を思いついた。

ps 上記の考察は、あくまでも市場取材を通じた理解に基づいたものであり、専門家の方から解説・感想等を頂ければ幸いです。ところで、例えばオンバランス(資産)の大半である貸出は時価評価してないはずで、どうして含み益があるのだろう。うーん、銀行会計は難しい。

もう一つps ある銀行アナリストと議論した際、その方は興銀の説明に納得しており、議論は物別れに終わった。が、しばらく後に、欧米で邦銀マクロヘッジの在り方が問題視されたとき、私にヘッジ会計適用のデリバティブポジション(主としてスワップ)の読み方を教えて欲しいと言ってきた。これには多少のコツがあるのだが、想定元本は巨額であっても、期間区分の意味を考慮しないと、実態を超過大視するリスクがあると伝え、一般的なALMのあり方を私なりの解釈で説明した。アナリストの方は、今度は私の説明に深くうなずいてくれた。ホッとした。なお、欧米勢は、もっぱら想定元本の巨額さに着目して騒ぎ立てた感があり、恐らくはマクロヘッジを問題視して邦銀のロスカット的なオペレーションでスワップ・国債スプレッドの拡大を誘おうとしたのではないと思われる。ヘッジファンドの幾つかは目論見が外れ、討ち死にした模様。
by bank.of.japan | 2006-04-26 21:31 | ALM | Comments(6)
旅費過払いの経済的意味=返却すれば「現先オペ」
 日銀が出張旅費を過払いしていた不祥事で、どこかの新聞が面白い川柳を載せていた。正確に覚えていないが、「旅費過払い、これも量的緩和だったか」という内容(ご存知ならご指摘を)だったと思う。これを見て過払いが経済的に量的緩和になるのか、ちょっと考えてしまった。これは職業病というか、理屈に合うかどうかが気になるわけで…。
 最初は「量的緩和じゃない」と思ったが、よくよく考えるとそうなのが分かった。鍵は「過払い分を返すかどうか」である。まず過払いを回収しない場合。日銀の経費は通貨発行益(シニョリッジ)から払われる。過払い分はいくらか不明だが、仮に一億円とすると、職員給与を通じたシニョリッジ一億円の消費刺激みたいな効果があったと考えられる。本来、この分は国庫納付され、国が使う流れになる。過払い放置は日銀が直接一億円の財政出動したようなもの。
 一方、過払いが職員から返還されたらどうなるか。一億円は一時貸しただけで、金融調節に例えると、現先の資金供給オペ(例・売り戻し条件付き国債買いオペ)みたいなものになる(有担保でなく無担保だが)。量的緩和は潤沢な資金供給オペによって実施されていたのだが、この間にシニョリッジ経由で一億円分の限先オペが打たれていた格好となる。その意味では川柳は正しい。作者は偉いですね。
 なお、後者の例で、職員給与を通じたシニョリッジの景気対策を考えてみたのだが、例えば給与を二倍にしても、増えた分を返すのが分かっているなら、貯金されるだろうと思われる。返金を秘密(渡し切りのフリする)にして、二倍になった給与を使えと命じ、後になって返せと言えば、職員支出が激減する。または借金する職員がいれば、景気に貢献しそう。
 ところで、テクニカルな問題だが、返金する際に利息を払うのかなあ。ゼロ金利だったからなしになるのか、または公定歩合(ロンバートの0.10%)を適用? 官庁の過払いとは違って中央銀行の場合はシニョリッジが絡むので考察点は多い。

ps 通貨発行益は、ほぼ金利コストゼロの負債(銀行券等)に対し、国債が大半の資産から発生する金利収入が相当する。
by bank.of.japan | 2006-04-25 21:20 | 日銀 | Comments(2)
isologue(イソログ)さん、多謝です=アエラに紹介の件
 isologue(イソログ)さんこと磯崎哲也さんが『アエラ』で、お勧めブログの一つに「本石町日記」を取り上げてくださいました。大変光栄なことで、感謝しております。この場を借りて御礼申し上げます。面識もありませんのに恐縮であります。
 ブログをやって良かったと思うのは、やっぱり読者の存在を実感できるときで、ここ数カ月の感触では、周辺での認知度が上がってきた気がします。先日も、ある金融機関主催のセミナーで、アナリストの方と名刺交換したときに「ブログ読んでますよ」と言われてありがたかったです。隣にいた別のアナリストの方に「本石町日記のあの人」と紹介されたのには、本業劣後の感もありましたが(笑)。まあ、いいです。
 磯崎さん始め読者の方々のご期待に沿えるよう今後も頑張りたいと思います。なお、スタイルは今さら変えようもないので、このまま続行ということで。

ps 最近、一時の忙しさにかまけて会社版の表ブログの更新が滞っておりますが、使い分けについては現在、改めて検討中であります。このブログは取材先を念頭に専門的な内容となっているので、表ブログでは別途一般向けの解説的なものにしようかなと考えております。いずれによ、こちらのブログにないものをアップした場合にはお知らせいたします。
by bank.of.japan | 2006-04-24 20:31 | ブログ紹介・お知らせなど | Comments(2)
「人民元」と「人民円」=外貨準備、世界一のシーソーゲーム
 中国の外貨準備高がしばらく前に日本を抜いて世界一になった。日本も中国も当然ながら外貨準備が世界一になるために「自国通貨売り・ドル買い」をやっているわけではなく、それぞれ自国経済にとって介入が必要な状況に迫られた結果として、“世界一”級の外貨準備を保有するに至ったわけだ。
 ご存知のように、中国は体制移行の原動力として輸出を武器にしている。人件費などコストの安さをウリにするには人民元の上昇は好ましくないため、超緩慢にしか切り上げは行わないだろう。その間の人民元上昇圧力は、介入でかわし外貨準備はなお増加基調をたどりそう。一方、資源を持たない日本も輸出は経済成長の大切な糧であり、円相場安定の介入は盛んに行われた。中国と日本は体制は違うものの、欧米諸国からみれば、為替に関してはともに「相場操縦国」であり、日本は“成功した社会主義”とも言われるから、人民元&人民円のコンビ通貨のようなものであろうと思う。
 為替についてはいろいろ論点はあるが、ここではぐっちーさんがエントリーで触れていた「中国がドルを脅しの武器にする可能性」について、日中外貨準備の動向を考察してみたい。仮に中国がドルを脅しの武器に使う(保有米国債の売却をちらつかせる)と、外為市場ではドル安が進行する公算が大きい。その余波で円高が進むわけだが、そのとき日本の景気の足取りがしっかりしていないと、恐らくは円売り・ドル買い介入せざるを得ないだろう。
 もとより、中国は脅しに使うぐらいだから、ドルが超スローで下がる(米証券市場への影響は軽微)ようだと武器としての威力はないわけで、それなりのインパクトが米証券市場に及ぶほどのドル安(かなり大きい下げ幅)が予想され、まあわが財務省としては介入せざるを得ないであろう。このとき円高(ドル安)を本気で止めようとすると、相当な規模の介入になると考えられ、日本の外貨準備は増加ペースが速まる。この結果、外貨準備は世界一の座に返り咲くわけだ。外準世界一の中国が米国を脅すと日本の外準が増えるというシーソーゲームとなる。
 なお、わが国外貨準備(3月末、8520億3000万ドル)は円換算で100兆円前後で日銀券(70兆円台前半)を大幅に上回っている。いつでもドル化できそうな感じだ。円高への警戒感が強い国であるなら、いっそそうしたらいいのではないかと思うこともある。そうなると本石町的には、①金融政策はなくなる②バーナンキ議長率いるFRBの管轄下に入る③日銀は「TOKYO地区連銀」となる④福井連銀総裁はもしかしたらFOMCに参加できるかもしれない(G7には行けない、BIS総裁会議は微妙)⑤日銀FED派はコーン理事の同僚になれる-。うーん、意外にメリットが多い感じだなあ。
 私の仕事はTOKYOドルインタバンク市場の取材?
by bank.of.japan | 2006-04-23 23:25 | 経済 | Comments(7)
今ごろ気が付いた表現修正=日銀、中立金利の臭い消す
 今ごろ気が付いた私がちょっとマヌケなのだが、日銀は量的緩和の解除プロセスに関する表現を変えていた。具体的には、中立金利を目指すイメージを巧妙に消し去ったわけだ。
 昨年秋の展墓リポートでは、解除プロセスについて「極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していく、という順序をたどる」と説明していた。
 ところが、量的緩和を解除した際の声明では「無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間を経た後、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に調整を行う」となっていた。
 私が見落としたのは、恐らくは中立金利への調整イメージが強く印象に残っており、解除の声明文に目を通したときに、表現が変化した部分に脳が感応しなかったのだろう。お恥ずかしい限りである。
 もともと企画局は想定問答のプロであり、特に今は作戦要綱の名手がいるだけに、突っ込まれないための表現工夫が一段と凝らされているのは当然であった。昨年秋の展望リポートが、中立金利への調整をイメージさせたのはマズイと思ったのだろう。突っ込まれても、いかようにでもかわせる表現にしやがったわけだ。
 「情勢の変化に応じて」。うーん、考えたものである。水野委員は知ってか知らずか解除直後の講演・会見で中立金利論に踏み込む発言をしてしまったが、日銀公式の作戦要綱上からは「中立目指し」の概念は消し去られているわけである。

教訓その① 日銀文章は常時進化する。言質を取られず、やりたいことをやれる表現へ
   その② そのための参謀を常時養成・選抜している
   その③ 進化前の文章については「その時点では完璧であった」と言い張る(多分)
   その④ 従って日銀参謀辞書に「失敗」という概念はない
   その⑤ 故に彼らは(傷のつかない)テフロンマンである

市場インプリケーション でも水野委員が言っちゃったので「中立金利」の概念は当面は残るであろう
by bank.of.japan | 2006-04-21 21:51 | 日銀 | Comments(0)
『アウトライヤー』初期案とALMについての所見
 日銀周りの話題としては、出張航空旅費の過払い問題だが、運用不備のお粗末さを会計検査院に指摘され、格好悪い姿をさらしてしまった。悪いことは悪いことなので、以後こういうことはないのように気をつけるべし、と言うしかない。この話題でエントリーを埋めると、前から書こうと思っていたことがまた書けないので、表題のテーマに戻りたい。
 このエントリーはシリーズを考えている。最近、注目されるようになってきたバーゼルⅡの「アウトライヤー」規制に絡めて、過去の邦銀ALMの実態やそれがイールドカーブ形成に与えた影響、マクロヘッジ会計上の考察点などに触れていきたいと思う。全体として、規制と実態の差、それが金利形成に与えた影響などが浮き彫りになればいいと思う(手におえず、脈絡なくなるかもしれないが)。なお、私は金融実務の専門家ではないので、記述が不正確になる恐れがあります。その場合はご指摘を。適宜修正していきます。
 さて、「アウトライヤー」だが、現在は割り当て資本をベースにして金利リスクを管理する概念となっているが、最初の案は違った。「各銀行の平均よりも突出した金利リスクを取っている銀行」がアウトライヤーとされていた。平均を突破した存在、という意味ではまさにアウトライヤー(ならず者、外れ者、突破者)である。
 だが、この概念は弱点があった。①「平均」をいかに導き出すかが困難②平均が出せないなら突破者も検出し得ない-のだ。なぜそうなるかだが、それは銀行ALMの実態が把握しにくいため。ALMとは「資産・負債の総合管理」と訳されるが、これだけでは良く分からない。多少噛み砕くと、金利リスクを適切に管理しつつ、収益の極大化を目指す、となる。分かるようで分からない。ぶっちゃけ言えば、うまく金利動向を当てて可能な限り儲ける、であろう。
 アウトライヤー概念が登場した6-7年前は、今は単体としてはもはや存在しない銀行が多くあった。その中からまず「さくら銀行」の例を紹介しよう。同行はスワップ市場の中期ゾーンで積極的なレシーブを行っており、ペイポジションとの比較ではネットで10兆円もレシーブポジションが多いことがあった。レシーブすると、同期間の国債を買うのと等しい。単純にレシーブするのは金利リスクを積み上げるだけだが、ある負債を念等に置けばヘッジとみなせる。推測するに、さくら銀行は流動性預金の長期滞留分を「長期負債」と認識して、それにマッチングする形でレシーブポジションを作ったのではないかと思われる。そう。まさに「コア預金」の概念である。
 当時の私は、ALM関係者らの取材を通じて、この概念にたどり着いたとき、ちょっと感動した覚えがある。話を戻すと、もちろん流動性預金は短期債務と認識できる(それが一般的)。この点について、当時の日銀考査局は「負債期間の認識は経営判断」と言っていた。ところが、流動性預金の期間認定が自在だとすると、バンキング勘定で保有する国債、それにALMのスワップも含めた金利リスクが多いのか少ないのかが特定しにくくなる。
 コア預金概念を導入してALMで金利リスクを取る銀行、そうはしない銀行がほぼ同列になると何が平均的かあいまいになる。それにみんなが一斉に金利リスクを取れば、全員が会うトライヤー化することによってアウトライヤーがいなくなることにもなる。こういった事象を当時、バーゼルⅡに関わっていた日銀マンと議論したのだが、「アウトライヤー認定は無理かな」という感想であった。

追記 
・銀行のリスクの取り方はオンバランスの資産・負債だけではなく、オフバランスも見ないとよく分からない。さらにオフを含めても実はよく分からない面もある。
・ある銀行は業務純益の半分を「市場・ALM部門」が稼いだが、決算短信からは収益のトラッキングができなかった(私の能力不足による面もある)
・個人的には当時のさくら銀行のALMは何か悟りきったフシがあり、「明日なきALM」との声もあったが、結構好きであった。
10兆円のレシーブポジションは「マクロヘッジ会計適用分の概要」から算出した想定元本ベースのものだが、この概要がざっくりしたものなので、実際の金利リスクがどの程度であったかは不明。特に期間の区切りが大雑把なので、IMMスワップという短期物が中期ゾーンに入れ込まれた格好であったので、10兆円という数字に驚いてはいけないかも。
・なお、最近のALMは金融不安の収束、景気回復などでそれほど積極的に動いていないように思われる。
 
 
by bank.of.japan | 2006-04-20 22:40 | ALM | Comments(2)
日銀『さくらリポート』で見る各地貸出事情
 貸出動向が各地でどうなっているのか。日銀の「地域経済報告」(さくらリポート)から抜き出して比較することを思いついた。以下の通りである。

・北海道
個人&法人向けが増加。
貸出金利は緩やかに低下。
・東北
個人向け住宅ローンが堅調。地公体向けも増加。法人向けは前年割れだが、不動産向けは増加。製造業の一部で持ち直しの動き。
・北陸
個人&地公体向けは引き続き増加ながらも、法人向けは前年下回る。法人向けの資金需要は幾分持ち直す。
・関東甲信越
個人向けは堅調な動き。法人向けは下げ止まり。
・東海
設備・運転資金需要が緩やかに増加。金融機関が貸出増加に注力し、中堅・中小向けが緩やかに増加。
貸出金利は低下傾向にある。
・近畿
小幅な減少続く。地元金融機関が金利面で弾力的な運用しつつ、住宅ローンや不動産関連融資を中心に貸出を増加させる一方、都市銀行は大企業の調達多様化・効率化の動きもあって貸出減少が続く。
・中国
前年並みで推移。法人向けは低調。個人向けは住宅ローンを中心に堅調。
・四国
一部地域で前年を上回るほか、増加の兆しがある地域も。住宅が堅調。海運、不動産向けが宇上向く。
・九州・沖縄
ほぼ前年並み。運転資金は依然低調。設備資金は、自動車関連の一部のほか、アパート・マンション向けやサービス業で動意。

総評 企業向けは総じて低調な中、住宅ローンや不動産関連の融資が伸びている構図。ただし、貸出競争が厳しいため、貸出金利は低下傾向となっている。金融システムからみると、景気回復とは言っても、市場金利が織り込む「数次の利上げ」など別世界の話で、貸出増加に努力するほど金利は下がり気味になる状態だ。これから住宅ローンを借りるなら、銀行は基本的には貸出難のはずなので、いろいろショッピングすべし。ライバル行を競わせるのも手かもしれない。「市場金利の上昇」を理由に貸出金利を上げる銀行もあるだろうが、実際に当該銀行の資金調達コストが上がっているわけではないので、やはり各行比較は怠りなく。

追記 銀行界の業務純益はさほど伸びそうもない。
    景況感も良くない北海道の融資が堅調なのはなぜだろう。
    近畿の記述がやけに長い。支店長要因?
    太字は金利低下を強調したものだが、金利面の弾力的な運用も同義ではないのか。
    
    
by bank.of.japan | 2006-04-19 22:03 | 経済 | Comments(3)
長期金利の上昇に対して日銀は何もしない
と思い込んではいけないのではないか、と逆バリ的に考えることがある。具体的にはシグナルオペ(注)を打って金利上昇をけん制したり、国債買い切り(輪番オペorRIMBAN)を増額して長期金利の上昇を抑制しようとする行為である。常識的にはあり得ないのだが、「福井日銀」に限っては、可能性を完全に解除しない方がいいのではないか、という感じがする。
 「福井日銀」の政策運営の軌跡を追うと、論理の一貫性はない。「三〇兆円高地」の攻防戦でも記したように、大儀はころころ変わった。時間軸政策に手足を縛られる中で、量的緩和政策をパフォーマンス的に使っただけで、あくまでも異常な政策下での演技だった、金利政策に復帰すればオーソドックスな政策運営になる、これからは突拍子もないことはしない、というのがコンセンサスであろう。私も一応はそう思っているが、一抹の不安がないわけではない。
 福井日銀は量的緩和の解除に際し、インフレターゲットと受け止められかねない「物価安定の理解」を数値として出した。普通の日銀マンでは出てこない発想だ。長期金利の上昇に対しても、日銀マンの一般的な反応は「景気は回復している。金利が上がるのは自然だ。上昇ピッチ速過ぎるなら調整が入ってブレーキがかかるだろう」というもので、様子見を決め込む。だが、「福井日銀」の場合、世論(主に政財界)に敏感であり、金利上昇に世論が不安を抱き始めたら、平気で論理を超越して予期せぬ行動を取る可能性があると思う。
 シグナルオペや輪番の増額。場合によっては、意外に平気でやっちゃうのではないか。こんなこと日銀マンは「あり得ない」と一笑に付すのだが、本当にそうなの、と私は思う。だって、量を増やすたびに、「マジっすか!」と日銀マンは驚いていたのである。解除後は驚きはないと思うのは、お人好しの気がする。「福井日銀」、何するか分からないと多少は警戒した方がいいように思う。意表を突かれたくない私としては、無警戒でいるわけにはいかないのだ。それが、これまでの「福井日銀」の政策運営の教訓だと思うのだが…。気にし過ぎですかね。

注) 想定外の長めの期間の資金供給オペを行い、金利上昇をけん制する意図を送る行為。政策委員会が情報発信する仕組みにおいて、事務方がオペで何らかのメッセージを送るのは禁じ手とされる。新法下では、2003年に市場金利が上昇した際に一回だけシグナルオペをやったことがある。内部でもいろいろ軋轢のあったオペであり、もう二度とやらないだろうと思われている。
by bank.of.japan | 2006-04-19 00:59 | 日銀 | Comments(3)


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