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金利が上がると日銀は儲かる=結果論ですが
 日銀はまだ当座預金残高を減らしていないが、いずれ所要に向けて減額し、経済・物価情勢に見合った水準に利上げして、量的緩和の解除を完了させる。利上げはもちろん物価安定・持続的成長を確保するためだが、資産・負債の在り方によって各経済主体はメリット・デメリットを被る。では、日銀の場合は自らの利上げでどのような影響を受けるのか。
 銀行券残高があまり変わらないとの前提で、利上げによって市場金利が上がると、日銀は儲かる(シニョリッジが増える)構図にある。負債の大半である銀行券の金利コストはもともとゼロ。一方、資産側では利回りの高い国債が徐々に増えていくため、金利収入が増大していくわけだ。時価会計的な考え方では、保有していた国債に含み損が発生するが、日銀は買い切りオペで保有した国債を原則売却しないので、含み損は実現しない。
 もちろん、日銀はシニョリッジを増やすのを主目的に利上げするわけではないので、儲かるというのはあくまでも結果論に過ぎない。また、増えたシニョリッジは国庫に納付されるので、日銀が好き勝手に使うことはできない。

補足 この観点で日銀の民営化を考えると、なかなか興味深いことが浮かび上がる。日銀のリストラを促す目的で民営化は良いアイデアのように思えるが、「民間企業」である以上、収益増大がレゾンデートルになる。金融政策は「物価安定・持続的成長」を義務付け、収益増大はリストラ努力によって達成させるとしても、金融政策が収益増大に使われるリスク(儲けるために利上げする)は避けられない。そうしないように政府が強力に監視すると、経営介入の側面が強まり「民間企業」ではなくなる。民営化は取りあえずはしない方がいい、ということだろう。
by bank.of.japan | 2006-03-31 23:12 | 日銀 | Comments(9)
「預超銀行」の貸出金利引き上げは合理的か(追記あり)
 複数の銀行関係者によると、貸出金利が上がっているようだ。「市場金利が上がっているため」とのことで、金利設定が市場連動するなら上がらざるを得ないのだろう。ただ、よく考えると、必ずも貸出金利が市場連動する必要はないのではないか、と思った。なぜなら、銀行の大半は預金超過であり、市場から資金を取り入れて融資に回しているわけではない。市場から金を調達しており、そのコスト(金利)が上がったから貸出金利に転嫁するならまだ話は分かるが、預金でほぼ貸出が賄えているなら、貸出金利を市場金利に追随させる必然性は乏しいように思われる。
 原油高に直面した製造業と比較してみよう。原材料価格が上昇した場合、製造業は合理化努力によって製品価格への転嫁を可能な限り避けようとしている。これは卸売物価の上昇が消費者物価にダイレクトに波及していないことにもうかがえる。日銀の量的緩和解除によって足元金利を除いて市場金利は上昇しているが、個別の銀行は市場性調達にほとんど依存しておらず、貸出に回す資金の調達コストはほとんど上がっていないのが実情だと思われる。預金金利が完全に市場金利に連動しているなら、貸出金利がスライドして上がるのは筋が通るが、そうはなっていない以上、貸出金利が単純に市場金利に連動する必要はないのではないか。
 銀行業も製造業と同様に、調達費用と販売価格のスプレッドで採算を取っている。貸出に対して預金超過となっている場合、市場金利が上がろうとも預金金利はわずかしか上がっていないのだから、貸出金利が市場金利に追随する必要はない。日銀の量的緩和解除に便乗して貸出金利を“利上げ”することはないのではないかと思った。
 多くの銀行が市場連動で貸出金利を引き上げているとき、ある聡明な頭取が「わが行は預金超過であり、市場金利が上がっても資金の調達コストは上がっていない。従って貸出金利を上げない」と宣言すれば、融資の申し込みが殺到するのではないだろうか。また、「資金需要が増大しているわけではないのに、量的緩和を解除して市場金利を上げた日銀の判断がおかしい。わが行は貸出金利を据え置く」と宣言する銀行頭取がいたりしたら、英雄扱いされるだろう。
 私が住宅ローンを借りているメーンバンクの渉外担当が「市場金利が上がって貸出金利も上がっている」と言ったので、①おたくは預金超過のはずで、市場金利の上昇はあまり影響を受けないのではないか②そもそも貸出金利は資金の調達コストに一定の利ザヤを乗せて決まるのであろう③預金コストが顕著に上がったわけでもないのに貸出金利が上がるのはおかしい④それともALM操作でフルヘッジしちゃったのか、だったらその証拠を見せて欲しい⑤原油高に直面した製造業は合理化努力によって販売価格への転嫁を避けようとしているではないか④資金需要が目に見えて増えていないのだから貸出金利が上がるのはおかしいと思わないのか⑤定期預金の金利をわずかに上げているようだが、それぐらいは合理化努力で吸収できないのか-などと畳み掛けたが、彼自身は真面目で誠実な人間で、とても困った顔を見せたので途中で追求をやめた。
 市場金利が上がって困るのは、短期固定の住宅ローンを借りてまもなくロールオーバーを迎える家計、莫大な借金を背負った政府、スプレッド貸しを利用している企業など。一方、メリットを受けるのは資産超過の家計、資金余剰の企業や生損保などの運用機関であろう。では、日銀はどうなのか。これについては次回エントリーで。
 
追記 足元資金需要が増大しており、需給関係から価格(金利)が上がっているなら別です。なお、銀行関係者の方々を困らせるつもりはありません。特に前線で融資業務をやっている方々としては、如何ともし難い状況だと察します。市場金利の動向と銀行の実際のバランスシート構造の相関性が乏しいように思われることから疑問点を書いたつもりです。景気回復の動きが貸出に顕著に波及するまで量的緩和の解除を先送った方がいいのではないか、というのが私の根本的な問題意識であります。住宅ローンを背負っているという個人的な事情も多少は影響しております、ハイ。

追記(3月31日) 本日の日経新聞(最終面)に「住宅ローン 夢の金利キャンペーン」との広告あり。頑張っている銀行もあるんですね。応援したい。
by bank.of.japan | 2006-03-30 00:25 | マーケット | Comments(10)
恐怖の4年サイクル=量的緩和解除は…
 前から書こうと思っていながら、解除騒ぎで書けなかったネタを一つ。それは4年周期で到来する金融市場の危機のことである。このネタ、最初に目にしたのはブログ巡回先の「投資銀行家への道」さんのところで、それから「Economics, Technology & Media」さんも取り上げられた。この4年周期をサッカーW杯に重ねるか、米大統領選挙のサイクルに関連付けるかは、人それぞれであろうが、1990年以降は確かに金融市場はろくなことが起きていない。個人的に思い起こすと、90年バブル崩壊の始まり、94年米利上げに端を達した債券市場の動揺、98年は金融危機、2002年は株価急落などである。いずれも取材当時のことが思い起こされ、それぞれ大変な目に遭ったなあ、と感慨にふけったりした。
 そして2006年である。日銀は5年も続けた量的緩和を解除した。もちろんデフレ脱却&持続的な景気回復を見越した措置であり、“低金利によるバブル発生を懸念する”政策委員会メンバーらの念頭には「恐怖の4年サイクル」など存在しないであろう(解除に反対したとみられる中原真さん除く=意思貫徹でしたね)。メディアも総じて楽観論に傾斜し、先行きはノープロブレムといった感が強い。
 私は天の邪鬼というか、バブル崩壊以降のマーケットに長らく接したせいか、日銀のビューとは逆張りしたいせいか、恐怖のサイクルが気なって仕方がない。総強気の中で次の悲観が生まれつつあるのではないか、米国を中心とする世界の成長サイクルが狂うのではないか、主要国の金融引締めがオーバーキルにつながるのではないか。
 職業上、逆張りが当たるのは結構だが、実生活への打撃はでかい。日銀の量的緩和解除が凶兆に見えて仕方がない私としては、「福井日銀」の運勢が恐怖のサイクルを断ち切るほどの強運であって欲しいと願う次第である。心配し過ぎですかね。
by bank.of.japan | 2006-03-28 20:54 | マーケット | Comments(5)
“ミラーマン”②=公示地価は…
 日銀“ミラーマン”②の前に量的緩和解除の声明より。
「企業の収益率が改善し、物価情勢も一頃に比べ好転している状況下、金融政策面からの刺激効果が一段と強まり、中長期的にみると経済活動の振幅が大きくなるリスクには、留意する必要がある」
 これはフォワードルッキングの金融政策運営に転じた日銀が、最大のリスクとして挙げたもの。具体的には「ぶっちゃけ言うと、低金利による緩和効果が強過ぎてバブル(or景気過熱)が心配なのよ」ということ。これを日銀が本気で心配しているかどうかだが、私が知る日銀マンの多くはそうではない。だが、政策委員会のミラーマン達は、声明のこれを旗印に中立水準に向けた利上げの“地ならし”を行っていくだろう、と予想される。
 私が心配しているのは、政策委メンバーらは先々の政策運営を具体的にしゃべりたがる癖があること。中立金利など機械的な算出は可能だが、それが正しいかどうかは誰にも分からない。従って、その水準は口にはできないはずだが、いずれ誰かが不用意に漏らす(既にその兆候はある)のではないかと思う。
 ミラーマンの対話は前のエントリーで述べたように、市場を鏡にして自分を語るもの。これは“地ならし”とも言うが、その過程で中立水準が不用意に語られると、金融市場はその織り込みを始め、ミラーマンは「市場が利上げを催促している」と納得し、メジャードペースの利上げ局面になだれ込んでいくわけだ。
 本日夕、公示地価が公表された。三大商業地の15年ぶりの上昇、局地的にはバブルを思わせる急上昇だが、全体としてはバブルではない。個人的には、バブルかどうかは分からぬのだし、金融政策でバブルをコントロールする手法は確立していないのだから、仮にバブル対応の金融政策を運営するなら、少なくとも三大商業・住宅地の上昇定着および地方圏の下げ止まりを確認した後に、徐々に金利水準を調整し、弾けたら一気に利下げするのがいいのではないか、と思う。このままメジャードペースの利上げに向かうと、単にオーバーキルしておしまい、という悪夢に陥りかねない。
 公示地価のこの動き。大事に育てた方がいいと思うのだが…。日銀の方々、まさか上がる地価をみると叩き潰したくなる、とか?

ps 適正金利って2-3%もあるんですかねえ。成層圏の水準に見えてしまう私はゼロ金利に慣れすぎですか、そうですか。
 
by bank.of.japan | 2006-03-23 21:14 | 日銀 | Comments(27)
“ミラーマン”のバブル警戒型金融政策運営論①
 “ミラーマン”とは例のアレではなくて、日本銀行のこと。すなわち、利上げを匂わす情報発信(本人は対話のつもり)を行い、びびって利上げを織り込む(当然ですね、日銀は金利を動かせるから)金利市場を眺めて、「おぉ、市場は自律的にインフレ期待を高めて利上げを催促し始めたぞ」と認識してしまう中央銀行である。アラン・ブラインダーの名著『金融政策の理論と実践』(何度も引用してすみません)によるところの、「自分の尾を追う犬」となりやすい中央銀行と言ってもいい。市場は日銀の姿を映しているだけだが、それに気付かず対話を続ける日銀はまるでミラーマン、というわけだ。
 そういう中央銀行がバブル警戒型の金融政策を運営するとどうなりやすいかを論じる前に、個人的なバブル考察を簡単に行ってみたい。あくまでも感覚的なものだが、1980年代後半のバブルを参考にすると、資産価格の上昇が一般物価に跳ねるかどうかは実は限られるのではないか、と思う次第だ。あれだけのバブル(数年間に貸出が約100兆円増大する、株価が約3倍になる、マネーサプライが激増する、etc)が起きても、一般物価が上がったのは1990年代初頭で、3%程度であった。
 ここでまず思ったのは、当時の物価統計精度が今よりも劣っていたと仮定すると、上方バイアスはかなり大きいはず(1%前後?)で、実勢物価は2%程度であったかもしれない、ということだ。あの壮大なバブルでさえも、物価の上方バイアスを考慮すると、2%程度のインフレしかもたらさなかったとすれば、今の資産動向がどの程度物価に跳ねるかと言えば、実は大したことはないのではないか、とも考えられる。
 あくまでも感覚論なので、経済学的な考察との比較では違っている面があるのかもしれないが、一般物価の安定を念頭に(発生し得る)バブルを意識した金融政策の舵取りは、特にミラーマンと化しやすい日銀の場合は非常に難しい、と私は思っている。続きは次回のエントリーで。

ps 関係ないけどリニューアルされた日銀ホームページ、見慣れないので何だか違和感あり。ブルー系のあっさりしたデザインも慣れると見やすいかもしれないが、赤っぽいギラギラ感があるデザインなんて、利上げ方向のフリーハンドを握った日銀の心情を映して似合っているのに、と思った。解除してアドレナリン出まくりの政策委員会。どんな色でしょうね。

追記 ちなみに“ミラーマン”は、walrusさんのコメントから頂きました。あしからず。
by bank.of.japan | 2006-03-20 18:41 | 日銀 | Comments(12)
世界に広がる『理解』の輪?=植田教授の理解は…
福井俊彦日銀総裁の発言。
「先週末から昨日までBIS総裁会議に出席し、日本の新しい考え方を説明するとともに意見交換した。日本銀行の新しい考え方は、新しい知識として各国中銀総裁が今、頭の中で咀嚼している段階で、今後の意見交換の中で各国の中央銀行が新しい考え方を出してくるかもしれない。そういう前向きの政策発展に我われも積極的に取り組んでいきたいと考えている」
 本日の日本商工会議所会員総会(帝国ホテル)での講演で述べたものだが、アドリブであったので、講演テキストにはない。日銀マン&ウーマンも含め、興味ある方々にご参考まで。
日銀オリジナルの『物価安定の理解』。各国中央銀行の総裁らは理解し、その採用が広がるのだろうか。興味深い。

一方、植田和男東大教授(前日銀審議委員)は日経『経済教室』で、量的緩和政策の解除と物価安定の目安を論評している。
植田教授は新たな枠組みは「目標インフレ率1%の柔らかなインフレターゲットである」と理解している。日銀にとっては受け入れ難い“理解”であり、恐らくは何らかの反論が行われたのではないかと推測する次第だ。もとより、植田教授は「これをインフレターゲティングを呼ぶ、呼ばないは水掛け論だろう」としているので、日銀が仮に反論しても水掛け論に終わる。
 興味深いのは以下の評価である。
 「日銀にとって、量的緩和解除を急ぐために、目標インフレ率をやや低めに設定し、インフレ加速のリスクを強調した感が無いとは言えない。結果として、逆サイドのデフレリスクが顕在化した場合にはぜい弱な立場に身をおいたことになる」→激しく同意である

日銀が説明する「理解」よりも、植田教授の「理解」の方がとても分かりやすい。また戻ってきてくれないもんだろうか。惜しい…
by bank.of.japan | 2006-03-16 19:29 | 日銀 | Comments(11)
解除の論点整理②=日銀史上初めてフリーハンドを握ってまとな対話できるのか
 論点整理というよりも今後の課題として日銀の対話手法を考察してみたい。
 何人かの日銀マン&ウーマンと議論してみて、気が付いたことがあった。それは表題にもあるように、日銀は生まれて初めて金融政策のフリーハンドを握った、ということである。どういうことかと言えば、以下の通りである。
①1998年まで法的な独立性はなかった
②同年、法的に独立したが、金融政策は緩和圧力にさらされ続けた
③1999年、ゼロ金利に追い込まれ、「デフレ懸念払拭できるまで」という“第一次時間軸”に手足を軽く縛られる
④2000年、縛りを勝手に解いてゼロ金利解除するも失敗
⑤2001年、量的緩和に追い込まれ、CPIペッグの強力な“第二次時間軸”によって手足をがちがちに縛られる
⑥2006年、縛りをやや強引に解き、量的緩和を解除
 この結果、日銀は法的に独立した状態で、利上げ方向へのフリーハンドを握った、わけだ。金融市場にとって、こんな日銀と対峙するのは初めての事態である。どういう風に対話していけばいいのか、これは難題である。なぜなら、法的に独立するまでの日銀は、シグナルオペを通じて対話していた。これは多分に営業局調節担当審議役の趣味性も混じった今にして思えば極めて不透明な対話であり、私はかろうじて末期の営業局を知っているが、調節関係幹部の言い分は意味不明であった。
 過去5年は日銀が対話で何を言おうがCPIの足かせがあるので、まあ期待安定化のアンカー役はあった。そして今、時間軸のアンカーはない。政策委員会メンバーの発言が主たる対話チャンネルとなる。ご存知のようにメンバーらは対話ではなく、“地ならし”をやってしまう。利上げも“地ならし”をやるだろう。しかも、適正金利がどこか曖昧にしたままなので、“地ならし”におびえる市場は最大限の利上げ幅を織り込んでいく恐れもある。なぜなら、縛りの取れた日銀の“地ならし”は凶器を振り回すような存在と映るはずで、市場は可能な限り逃げる(最大限の金利ヘッジする)からだ。
 そこで提案。景況感だけを語れ、そして金融政策については「経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと考えている」と馬鹿の一つ覚えで言うことだ。本日の武藤副総裁の答弁が模範となる。
 史上初、利上げ方向へのフリーハンドを握り、“地ならし”が得意な日銀は、市場から恐怖の対象とみなされやすいことに気を付けた方がいい。

ps このエントリーは、経済・物価見通しが日銀のシナリオ通りに動くことを前提にしている。日銀内部の声を代弁する側面もある。
by bank.of.japan | 2006-03-16 00:47 | 日銀 | Comments(5)
金融政策“糊しろ”論の陥穽
 水野委員の講演で気になった点が一つ。以下の部分である。
 「将来の景気減速局面で機動的に対応できるマクロ経済政策として金融政策を位置付けるのであれば、『政策金利の糊しろ』は不可欠です」
 論評する前にまず量的緩和解除の際の日銀声明を見てみよう。
 「先行きの経済・物価情勢については、物価安定のもとでの持続的成長を実現していく可能性が高い。ただ、企業の収益率が改善し、物価情勢も一頃に比べ好転している状況下、金融政策面からの刺激効果が一段と強まり、中長期的にみると経済活動の振幅が大きくなるリスクには留意する必要がある」 
 明らかにアップサイドリスクを警戒した解除であり、「物価安定の下での持続的成長がより息の長いものなる」ための措置だと受け止められる。
 さて、ここで疑問なのは、「将来の後退(減速)局面」がどの局面で来る恐れがあるのか、ということだ。声明で描いた景気シナリオが実現した後の話であるなら、その間にある程度の糊しろはできているだろうから、糊しろ論を今言う必要はない。そもそも、物価安定下の持続的成長が長く長く続くかどうかも分からぬうちから、長く続いた景気回復の後の減速・後退を今から心配するのは意味のある話ではない。
 では、目先の後退局面を心配して糊しろが必要なのだろうか。これは論理矛盾であろう。非常に近い将来の後退ないし減速局面の到来に備えるぐらいなら、そうならないようにしっかりと量的緩和を継続して持続的な景気回復を確かなものにすることが先決であるからだ。
 6年前のゼロ金利解除の際に日銀は一時糊しろ論を唱えたことがある。私はこの解除が景気を失速させたとは思っていない(失速しそうなのに解除した)が、構図としては、糊しろを作るための解除で景気は失速し、それによって糊代を使い果たすどころが量的緩和に追い込まれたようなものだ。水野委員の言う糊しろ論は、あの当時の構図を思い起こしてしまう。
 次の後退に備えた糊しろ作りは、マッチポンプ的でどうもおかしい。少なくとも解除から一年以内の後退は、解除の失敗であって、糊しろがあって良かったね、とはならない。糊しろ論は日銀の隠れた本音かもしれないが、それ自体はよくよく考えると、矛盾だらけであまり口外しない方がいいように思う。

ps 委員の講演では論評したい点(プルーデンス政策としての量的緩和論やバブル懸念など)が数多くあったが、すでに過去のエントリーで何度もしつこく取り上げたので割愛した。
by bank.of.japan | 2006-03-14 21:16 | 日銀 | Comments(17)
BOJ understand, but nobody.......=物価安定の理解は超難解
 今回の量的緩和解除で最も争点になりそうなのは「道しるべ」として出した「物価安定の理解」としての数値(0-2%、中心は概ね1%)であろう。この数値の位置付けは超難解であり、日銀に「Dou you understand?」と問われても、私としては「Never」である。

総裁会見では以下の回答であった。
「これは金融政策の透明性と機動性の両立を真剣に考えて出てきた新しい知恵のようなもの。“理解”というものの概念を、皆さん方からもきちんと報道して頂きたい。“参照値”と同じようなものだと報道されると、世の中に混乱をおこすと思われる。“理解”については、英語で言えばunderstandingという言葉を私どもは使用していく。そういうunderstandingを政策委員会のメンバーでbroadly shared(広く共有)するというものである」

私が聞いた日銀マン&ウーマンの多くは理解していなかったですね、現時点では。

数値は多分、一人歩きするだろうし、それによって金融政策は縛れるだろうと思う。経済・物価見通しが大きく上ブレするなら利上げ正当化のテコになるが、逆に景気が悪化し、物価が下がり始めたときには、日銀をインフレターゲットに追い込む“道しるべ”になる恐れがある。後者の場合、日銀にとっては髑髏マークの道標というわけであろうか。どちらに転んでいくのかは半年、一年後の経済・物価次第である。
by bank.of.japan | 2006-03-13 17:45 | 日銀 | Comments(20)
解除の論点整理①=縛りを解いた日銀は不安、だよネ
 量的緩和政策の解除で思いつくことを論点整理してみた。
・解除のテクニカルな側面はほぼ予想通り。
 即日金利誘導(ゼロ金利)に復帰
 量の削減は概ね自然体(3-5カ月)
 rinban(国債買い切り)は継続(銀行券が減ると減額→時期は不透明)
 ロンバート活用を促進&利用無期限の臨時措置を継続
・今後の課題
 ゼロ金利解除(利上げ)がいつになるのか(夏場に向けて一回?)
 その際のコールレートの誘導目標(0.25%?)
 公定歩合(ロンバート適用金利)の引き上げ幅(0.40%?)
・評価
 解除はそれ自体は瞬間芸に過ぎない。気合さえあればいい。問題は、成功かどうかは今後の経済・物価情勢次第である、ということ。向こう1年内に景気が失速ないしは物価がマイナスになると、二度目の失敗。シベリア送りとなってしまう。私はまだ先行きには懐疑的である。祈るしかない。
・報道面の感想
 いろんな記事が出るものだ、とある意味感動
 国営放送にICBMを打ち込まれた…(特殊法人による特殊法人の…)

それにしてもマーケットのみなさん、
「時間軸からの縛りを解いた日銀は不安、ですよね?」
今までは日銀が何を言ってもCPI時間軸が期待安定のアンカーとなっていたが、これからは何もない。スーパーVaRショック、起きませんように。


追記 総裁は会見で「月内は30兆円」と言っていたので、年度内は事実上のダブルターゲットとなるわけだ。とにかくコインの裏を表にしたかった、といわけだろう。かと言って日銀が期待するほど利上げが早くできるかどうかは分からないと思うのだが…。
by bank.of.japan | 2006-03-10 19:51 | 日銀 | Comments(17)


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