人気ブログランキング |
下のエントリーの続き=若干の技術的解説
 下のエントリーでkamakuraさんなどから以下の質問を頂いた。若干の技術的解説を行います。
「政策金利を変えないままの量的緩和ってどの程度の意味があるものなのでしょうか」
→金融政策的には意味はないです。ただ、準備預金に付利して資金吸収の機能を担わせ、これで潤沢に資金を供給すると、売手で吸収しきれない余剰資金は付利された準備預金に流れ込み、「銀行券」と「当座預金(準備預金が大半)」の合計であるマネタリーベースは増大する。潤沢供給するとマネタリーベースが増大するので、(金利はプラスなのに)量的緩和をやっているように見える、というだけの話。付利部分の準備預金はマネタリーベースの定義から外す、というのが正しい統計処理かもしれない。
 本物の量的緩和はゼロ金利下で付利のない準備預金が増えること。ちなみに当座預金は「準備預金」と「その他」の合計。ちょっと分かりにくいが、これは日銀に当座預金を持つ金融機関が幅広いため。本当は、準備預金制度の対象となる金融機関(=銀行)だけが当座預金を持てば、準備預金残高=当座預金残高となるのだが、実際には同制度対象外の証券会社や短資会社などが当座預金を持っている。日銀が量的緩和で準備預金でなく当座預金の残高をターゲットにしたのは、短資会社要因など特殊な事情もあって準備預金のみの残高を操作するのが難しかったため。

route138さんからは以下の質問があった。
「準備預金に付利することで当座預金にお金が集まり、それを元手に資金の不足している外銀などへの資金供給がしやすくなるーーといった説は正しいのか」
 結論から言えば、正しくはないです。正確には、金が不足する外銀にも十分に行き渡るようにバンバン資金を供給したい。でも、あんまりバンバンやると、売手でも吸収しきれずに金利が過度に下がる可能性がある。そこで準備預金に付利して吸収機能を持たせ、付利した金利水準が自動的に下限金利になるようにした。これによって金利が過度に下がることを気にせずに、資金が不足する外銀にも十分に金が回るようにバンバン資金を出せるようになった、というのが実際のところであろうと思います。新聞向けにはこの説明、難しいですね。まあ、金融に興味ない何百万人の読者には知らなくても済む話ではあります。
by bank.of.japan | 2008-10-20 21:43 | 日銀 | Comments(16)
Commented by kamakura at 2008-10-20 22:47 x
(1)ご回答ありがとうございました。ただ私のお尋ねの仕方が良くなかったようで申しわけありません。私がお聞きしたかったのは政策金利を下げないで日銀当預だけを拡大した場合のマクロ経済に与える影響でした。
 銀行も当座預金が潤沢にあれば当面は資金ショートを心配しなくて済むので心丈夫、という程度の話なのでしょうか。

(2)日銀が誘導目標としている無担保コールレートは加重平均のはずです。預金に付利することでコール市場の下限の金利が決まるため、ロンバートぎりぎりでしか資金を調達できない外銀にとっては逆に金融緩和になる→だからたとえ日銀当預を拡大しなくても下限の設定に意味はあるという理解は正しいのでしょうか。現場を知らない無知な人間の質問ですみません。
Commented by 植田日銀総裁 at 2008-10-21 00:12 x
もしかすると、これから実現するであろう準預付利が量的緩和かどうかについて議論してもあまり意味がないかもしれません。そもそも量的緩和というのはその効果の評価がまだきちんと定まっていないものと思うからです。日銀の準預付利はFedのそれとは明らかに実質的な内容が違うものになるでしょうし、ゼロ金利時のいわゆる量的緩和とも違います。結局は中央銀行がB/Sの左側でどんな施策をしているかが政策効果上は重要なのではないでしょうか。
おそらく歴史は浅いものの、量的緩和なるものは金融危機で資本不足、信用乗数が極めて低いような状況で実現するものであるように思われます。そういう時、ベースマネーの増加は金融政策的にはあまり重要なことではないように思います。これは量的緩和中に短期金融市場における実務を通じて得た実感です。ゼロ金利の量的緩和は効果があったかどうか不明です。もし通常の金融状況(定義が難しいですが)の時に準備預金に付利した状況で政策金利を変えずにグロスの供給量を“単純に”増やした時、どのような効果が出るかがポイントかと思います。ただ、残念ながらそれは未知数です。
Commented by bank.of.japan at 2008-10-21 00:29 x
kamakuraさん、どうもです。ちょっと舌足らずでした。①は、金融政策的に意味はない=マクロ効果はない、との解釈です。②は、多少は調達金利が下がる効果はあるだろう、と考えられます。ただし、個別金融機関によってクレジットラインの設定は異なる面があり、みんなからこいつはダメだと思われた外銀はあまり恩恵ないかもしれません。

植田日銀総裁さん、どうもです。量的緩和に関する見方は私も同じであります。B/S左側の施策でかなり効果を左右するのは担保基準かもしれません。グレードを落とせばクレジットスプレッドに劇的効果を与えると考えられます。ただし、日銀は不健全な政策と位置づけるでしょうが(苦笑)。後はバンクのCDやCPの適格化でしょうか。特融オペで、これなら資金繰り不安は雲散霧消です。平時の準預付利での潤沢供給は、下限金利で張り付いたまま、意味もなく日銀B/Sが両建てで膨らむイメージです。どうなんでしょう。貸し出し増えますかね。
Commented by kamakura at 2008-10-21 00:38 x
お二人ともありがとうございました。植田和男氏の『ゼロ金利との闘い』は私もナナメ読みしましたが、いわゆる時間軸政策については分析していても量の拡大についての分析はなかったような・・・。量の拡大についてはわからないことが多いようですね。
Commented by PK at 2008-10-21 07:08 x
ここの議論は精神衛生上とっても良い。頭がすっきりする。
それに比べて苺ときたら・・・・
ケインズの一般理論では第15章三の記述に関係していると見た。かなり逸脱しているが。
Commented by 初心者 at 2008-10-21 14:03 x
ここでのやり取りは本当に勉強になります。
自分が新聞や雑誌なんかを読んで、一旦分かったつもりになっていても、実は全然分かっていなかった事が良く分かります。
じゃあ、お前は何が分かってるんだ?と問われると、大変困るんですが(苦笑)
今後もこういった質疑応答をよろしくお願いします。
Commented by dell at 2008-10-21 21:07 x
>植田日銀総裁氏 bank.of.japan 氏 

もし量的緩和に全く効果がないとすると、日銀が全ての国債を買い切ってもインフレにならないことになります。日本は原理的に無税国家で良いことになりますが、本当でしょうか?
Commented by かるぱーす at 2008-10-21 23:31 x
ハイ量的緩和して金があまっても、会計基準が変わらんと融資できません。それにKユウ庁様が、資産査定うるさくするから、金があっても融資できないです。ハイで時価会計とかやめんと、総量規制ですとか全て非常時に制度を変えないと金融政策はどうしようもないのです。そんなこと欧米はすぐにやってんのに、対応遅いです。
まー少なくとも経済政策の基本は期待形成です。それをやる前からバカマスコミとばか政党に関係ない足を引っ張られる前に政治家が動かせんとね。少なくとも、アメリカは非常にやばいでも、国民と議会に対し国民に対し「希望と断固たる態度」を示し、その時に足を引っ張る奴はいないのですよ。だからアメリカ経済は2年で必ず復活する。そのときで遅れないようにしないといけないよね。
Commented by PK at 2008-10-21 23:41 x
日本の株を上げたきゃ、先物に行ってるカネを現物に戻すことだよ。
そうすれば外人に操作される程度も少なくなる。
本来は、プロ同士が、リスクを取引しあうべきだよ。
Commented by 植田日銀総裁 at 2008-10-22 00:42 x
dell様。私の表現が未熟なのかもしれませんが「量的緩和に全く効果がない」とは申しておりません。要はB/Sの左側施策が重要と申し上げておりまして、例えば同じ量を供給するのでも期間1週間の共通担保オペをX額行うのと、同額の国債を買い切るのとでは効果は違うでしょうし、さらには同額の企業CPを買い切りや株の買い切りでもその効果は違うでしょう。つまり状況に応じた政策かどうかがポイントだと申しております。念のために申し上げますと、かつてのゼロ金利+量的緩和政策についても①銀行が十分な資本を有しており②国内に投資先(融資先)があり=資金需要があり③マネーサプライが増加する状況であれば日本国内に違う効果をもたらしたと考えております。つまりそのような状況になるまで継続していれば効果は違ったと思うのです。ただ敢えて言えば、「量的緩和下における低金利で資金調達がしやすい環境」が、「資本の充実していた外銀」を通じて「資金需要のある海外」に向けレバレッジドマネーを供給する“一助”になり、その一部が世界経済の高成長につながり外需増加を通じて日本に恩恵をもたらした可能性はあったと考えております。(単なる実感であり仮説の粋を出ませんが)
Commented by カトー at 2008-10-22 13:25 x
植田日銀総裁らのここの人は日銀・マーケット関係者だろうから、量的緩和を、流動性対策くらいにしか考えていないので、効果がないというのでしょう。
マクロ経済効果は、政策ラグが半年1年なので、マーケット関係者のメモリーでは無理です。マスコミ・マーケットの人の特徴は昔を忘れというか、覚えられないので、金融政策としての量的緩和の効果がわからないのです。
Commented by bank.of.japan at 2008-10-22 21:42
PKさん、どうもです。いつも難しいコメント頂き、まともにお答えできないのですが、ありがとうございます。

初心者さん、どうもです。こちらこそよろしくお願いします。ご質問は歓迎ですので、いつでもどうぞ。

dellさん、どうもです。量的緩和+時間軸の効果は、植田日銀総裁さんがご指摘の点について私も大体同じ感想持ちます。それと中長期の金利低下を後押しする面はあったと思います。この金利の低下が経済には緩和的だったと思います。

カトーさん、どうもです。ご本人であれば光栄です。流動性対策を強調したのは日銀で、私はそれはおかしいと指摘しておりました。もともと日銀は期待への働きかけ、ポートフォリオリバランスの二つの効果を狙っており、これを後から流動性対策に摩り替えた面があります。
Commented by bank.of.japan at 2008-10-22 21:46
続き。まあ日銀がこれから量的緩和をやるのかやらないのか、どうするのか知りませんが、もしやるなら前回の量的緩和のように途中でロジックの切り替えなどせずに一貫性をもってやって欲しいと思います。
Commented by dell at 2008-10-22 22:18 x
>植田日銀総裁氏 bank.of.japan 氏

了解です。
だとしたら、量的緩和の効果が不十分なうちに量的緩和を解除してしまった日銀の判断にこそ問題があり、早急に改められるべきと思われます。
Commented by PK at 2008-10-23 00:30 x
デフレというのは、米国の時価会計とリスク市場の拡大という金融戦略がもたらした必然的な現象で、資産価値を振り回すから、経済社会のあらゆるB/S主体が拡張方向に動けなくなってしまうということです。日本は特に米国に目の敵にされましたから、一番早く強烈に現象が現れたということですし、アジア諸国も外貨準備を増大させつつ、成長率が下に屈折した。トラウマが残るんですね。
従って、固定相場にするか、世代が変わるまで状況は変わらないと思います。特にアメリカが変わらないとダメですね。
アメリカがああなったのは、軍事国家としての成功体験ですね。大型車へのこだわりも、ITも皆、攻撃に強い分散構造から来ています。ところが、生産性は集中しなくてはいけません。経済と軍事の二律背反がアメリカの弱点なんですね。国民を社会インフラでカバーしないでほったらかしにするのも経済的に衰退が宿命なのに軍事に資源を割いているからです。アメリカがもし立ち直ろうとするなら欧州型に経済を変えるしかないですね。
Commented by bank.of.japan at 2008-10-23 01:21 x
かるぱーすさん、どうもです。ご指摘の内容、うなずくところ大ですね(苦笑)。厳しい検査やめるとか。期待形成の面もそうですね。

dellさん、どうもです。ご指摘の件は分かります。

PKさん、どうもです。振り回した資産価格が自壊してデフレ圧力に転じつつあるのはその通りですね。
<< 売手仲間が増えた=スウェーデン... 準備預金付利の論点整理=個人的... >>


無料アクセス解析