日銀がオペレーションの際に取る担保をめぐる議論は、現在ではもっぱら企画二課(オペ企画担当)や金融市場局に限定されるか、外部ではせいぜい全銀協・短取研でテーマになるぐらいで、かなり超専門的な話でありましょう。まあ公衆の面前で議論されることはない。で、半世紀前の国会だが、普通に議論されている。昭和25年10月13日、参院・大蔵委員会より。
○参考人(一萬田尚登君) …(略)。例えば従来貿手は單名手形が多かつたのですが、輸出業者がなかなかメーカーに代金を支拂わないというような不平を従来しばしば耳にしますので先般来貿易手形は成るべく複名手形にして、割引かれた金は確実にメーカーの手に渡るような措置をとつたのもこの趣旨からであります。 ○木内四郎君 工業手形の割引は再割はとめておられるですか。 ○参考人(一萬田尚登君) これは再割はしませんが、担保にとつて一銭五厘で貸出す。一銭五厘でスタンプを捺して無條件に出しております。ただ再割にすると一厘安くなりますけれども、私のところは一銭五厘で出しましても市中銀行は大体二銭四厘から二銭五厘で出しますから大体一銭の利鞘ということになる。 ○木内四郎君 今言われるように工業の方面、生産方面に行くには工業手形を再割されたほうがいいじやないかと思うのですが……。 ○参考人(一萬田尚登君) それは工業家から見ればいいですけれども、中央銀行から見れば再割手形というのはいけない。これは支拂が保証されないですから、工業手形というのは。 この手の議論を国会で目撃するという事態は、オペレーションの裏側まで興味持つ私のようなオタッキーな人間にとってはシビレるのだが、現在の国会では絶望的でありましょう。これは国会議員のレベルが落ちた(超劣化した質問も多いが)というよりも、当時のように金融がかなりひっ迫した経済情勢では、中央銀行の担保政策が業界的に死活問題となっていた、という背景があるからだと思われる。国会議員も各業界からの陳情を受ける中で、日銀が何を担保に取る、取らないの重要性を認識していたはずで、だから「担保」を普通に議論することになる。 担保政策はしかし、ある程度理解していれば、金融が何らかの事情でひっ迫したときにその重要性が認識できる。最近の事例では、サブプライムローン問題で金融がひっ迫した米インタバンクの情勢とNY連銀の対応である。担保範囲の拡大、新型オペの導入、資産内容の激変など、これらは適格担保を軸にいかに中銀からスムーズに金を流すかの工夫の積み重ねである。逆説的に担保政策が前面に出るような局面とは、基本的には不幸な情勢であるとも言えるが…。劣化質問は平和であることの証左かも。またはただの鈍感?
by bank.of.japan
| 2008-07-10 21:05
| 一万田総裁
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Comments(11)
NYT.comによれば、米政府はファニーとフレディーを政府管理下に置くことを検討しているようです。金融有事でついに、という感が。しかし、対策を出すのが早い(cf.バブル崩壊後の日本)。ここからは、米政府の財政リスクにも焦点が当たっていきそうですね・・・米国がトリプルAを失ってもそれをざまぁみろという感覚では小生は思えませんが。
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株式市場ではFNM, FREが本当の大底を計る物差しになるかもしれませんね。しかし,為替はそれに比べればほとんど動きません。(苦笑)
昔の国会議員の方々は、今のように生まれつき代々の議員ではなくて、自らが会社を立ち上げ、事業がうまくいったので社会の為に政治家になった方が多かったからではないでしょうか。
近いうちにそういう状態になるんじゃないですか?
外交的にも最悪、経済も最悪、どうしようもないので、統制・規制に走り、やがて全体主義でしょ。 東大マルクス脳では、全体主義しか解答がないと思う。 外交的に最悪な状態は避けられたはず。小泉時代のまま、周辺国の反発を買った状態でいけば、折れるのは相手だった。 そして、大変な時代に日本がリーダーシップをとれたはずだった。 ところが、馬鹿なアジア主義のために、こちらが譲歩したので、日本がリーダーシップを取れなくなった。 最も能力のある国が、ダメな国に調子を合わせていれば、どういう結果になるか分かるはず。 アジア中が不平不満に溢れる時に、格好のスケープゴードの立場に自らを追い込んでいる。 狂ってるよ、この国は
PKさんの言うとおり,今の日本は波風を立てないように変な方向に向かっている。モノ作り立国であれば商品の高騰にはもっと毅然とした態度で臨むべきであるし,中国には環境の議論のときだけ発展途上国ぶって,政治的にはG8に加えろなどと調子のいいことを言うなとサミットの間中思っていました。何はともあれ,国益のために政治家が動けないなんて…議員自身は本業が別にある人のほうが,その本業が発展することを願うだろうからもっと国益のことを考えるでしょうね。
Teddyさん、どうもです。暗黙の政府保証があり、しかも巨大な存在なので、公的サポートは必然であろうと思います。対応は早いですね。財政悪化懸念が浮上したら、日本の打撃も大きいでしょう。笑えないです。
EURO SELLERさん、どうもです。願わくば、これで大底をつけて欲しいです。大底つけると、為替はドル高なのでしょうか。いい方向になるよう祈りたいです。 A-さん、どうもです。確かにやりとりにはリアルなものがあり、空論が少ない感じがあるのは、実業の経験ないし実業との距離が近い、ということかもしれません。 PKさん、どうもです。狂ってるかどうかはともかく、方向感ははっきりしない感じです。
あの、全く今回アップされている内容とは関係なくて申し訳ないのですが、バブル崩壊時の北海道拓殖銀行破綻にまつわる連載記事を見つけました。
tp://www.hokkaido-np.co.jp/cont/report/ この連載は第5部まであるようですが、コンテンツの構成がいまいち不明なため、どれが最初で最後か分かりにくいです。昨年の記事のようですので、既にご存じでしたら宥恕願いますm(__)m まだ途中までしか読んでいませんが、非常に読み応えがある記事だと思いましたのでお知らせさせていただいた次第です。 よく○○省が悪いとか官僚が○○といったステレオタイプの記事を見つけますが、誰しも時代の空気には逆らえず、また時代の空気に逆らうためには非常に勇気がいるものだと思います。 「人間は自らが見たいと思う現実しか見ようとしない」 カエサル(だったっけ?)の言葉は重いですね。
いつも本石町日記を楽しく拝読させて頂いているのですが、bank.of.japanさんはマネタリーには興味があってもプルーデンスにはあまりご興味がないですか。
以前、日銀の金融緩和効果に疑問を呈して、お叱りを受けたものです。
近日のFRBによる果敢な利下げに関してどのような感想をお持ちかエントリーを立てていただけると幸いです。まだ、判断は時期尚早でしょうか。
一国民さん、どうもです。記事紹介ありがとうございます。参考にさせてもらいます。武井さん、吼えてますね(苦笑)。面識はないですが、拓銀道内事業を継承したころを思い出しました。バブル生成・崩壊は、誰のせいといったシロモノではなく、市場経済に付き物の現象であろうと思います。
ある種の銀行関係者さん、どうもです。プルーデンスはもちろん興味あります。ただ、読者が限定されがちなので、取り上げる比率は少ないですが、ときどきは取り上げます。 傍観者さん、どうもです。不動産の崩壊&マクロ経済の減速への対応としては、果敢であったと思います。より難しいのは資源価格高騰に直面してしまった、ということでしょうか。それとドルの信認です。世界中で持たれている通貨ですので。いずれエントリーで取り上げることにします。
今の米国の危機は、金利を減免しても貧乏人が住宅ローンを払い続けるようにすることで貯蓄率が上がることと、ガソリン高が車に依存した社会を変化させること、ドル安が漸進的に進むことが期待できれば、危機でもなんでもない。米国の日本化であって、良いことだ。
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