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日銀外貨資産の起源を紐解く国会議事録=大変興味深い
 総裁人事以降、(金融経済系の)国会論議にほとんど興味をなくし(池尾氏拒否には絶望感)、エントリーのネタにする気もうせたこの頃、久しぶりに昔の国会議事録でも読んで憂さ晴らしようかと思った。昔の論戦は面白い(&専門的)ですから。検索システムで適当に選んだのが昭和27年3月3日の参院予算委員会。読んでいくうちに引き込まれ、日銀が外貨資産を持つに至った経緯に関連するやり取りにぶち当たった。鉱脈の発見である。プチ感動した。やり取り、ざっと紹介します。

○木村禧八郎君 …それは二十七年三月末、今年度末において外貨ポジシヨンがどのくらいになつて、そのために円資金はどれくらい必要なのであるか。そうしてその手当はどういうふうな内容の手当ですることになつているか。例えば外為で幾ら、或いは平和回復費の流用が幾らかとか、或いは日銀のスワツプが幾らとか、こういう内容的に一つ御説明を願いたいのです。それと最初二十六年度予算で予定しておりました、その二十六年度予算の基礎になつておる外貨ポジシヨンと、その円手当の金額、これをお伺いしておきたいのです。
○政府委員(石田正君) …従つて外為会計といたしましては、七百億の借入は全部しておるという状況でございます。なお且つそれによつて足りませんと、これはスワツプ取引と申しまするか、日本銀行に外貨を先売りし、あと買いをすることによりまして、現在におきまして七百億程度のスワツプを行なつておる、かような状況でございます。
○木村禧八郎君 日本銀行総裁に簡單に一つお伺いしたいのですが、このスワツプの場合に、外為の外貨を日本銀行に売つた場合、若しポンドの切下げなんかの起つた場合の損失関係はどうなるのですか。日本銀行が外貨を持つというような場合ですね。
○参考人(一萬田尚登君) 日本銀行で最近委員会に言つてありますから……。
○木村禧八郎君 日銀の負担ですか。
○参考人(一萬田尚登君) 委員会の負担です。スワツプの現買先売になつております。

 まず、外貨資産の起源についてはこちらのエントリーを参照して頂くとして、日銀の説明は「外国為替会計における資金繰り調節のために、政府との間で外貨資金売買取引を行ったことがある。昭和26年(1951年)に戦後初めて行われて以来…」となっている。つまり議事録は日銀が外為特会とのスワップ取引をやった直後の国会論戦を記録したものだ。
 さて、日銀外貨資産の謎である。約5兆円の通貨構成(昨年)はドルが65%、ユーロ30%、ポンド5%だが、なぜユーロやポンドを持っているか、である。日銀は為替売買は法律的には可能だが、実行は難しいと思われる。ドル売り・ユーロ買いorドル売り・ポンド買いをやるにしても、どうやってやるのか。日銀が外為市場に出たという話は(少なくとも私は)聞いたことがない。BISを使う? 市中銀行とやって秘密にさせる?
 当時の国際通貨&貿易情勢は良く分からないが、この議事録の前後のやり取りからはポンド余剰が問題視され、わが国保有外貨の大半がポンドであったように思われる。この推測が正しいとすれば、外為特会と日銀のスワップ取引はポンド・円であったはずで、つまり日銀が今なおポンドを持っていることにつながるのである。700億円のスワップ取引で得た利息分(これがポンド建て資産の根っこ)が今の2500億円(5兆円の5%)となったのですね(多分)。この想定に沿うと、ユーロ建て資産の前身はマルク建てで、これはマルク・円のスワップ取引だったのかなあ。それとも何らかの手段でドル売り・ユーロ買いしたの?
 それにしても木村委員の突っ込みは好きだなあ、全体の議論もレベル高い(というか相当に専門的)感じである。それに引き換え、低利息だから消費が出ない、という議論の何というレベルの低さよ…。

ps 一萬田総裁の言う「委員会」は外国為替管理委員会のことだと思われる。最初は「政策委員会」かと思っちゃいましたが(苦笑)。それにしても当時の国際金融情勢に疎いので専門用語が分からないですね。「ドル・クローズの撤廃」とか、「スターリング・ブロツクヘの輸出を制限する」とか、「日英両国間の支沸協定」とか。何となく想像は付きますが…。今のドル余剰問題と通じるところがあるような印象もあって、全体として非常に興味深い議事録であります。
by bank.of.japan | 2008-06-26 21:48 | 日銀 | Comments(2)
Commented by 椿ライン at 2008-06-27 01:16
 久々の一萬田総裁ネタありがとうございます~。
 二次大戦後、ポンドが切り下げを経て基軸通貨の地位を失った後の議論でしょうか。通貨の歴史は世界経済の歴史そのもので興味ありますぅ。

 さて「日銀外貨資産の謎」という通貨構成については2000年に正式な公表文が出ています。
○「本行保有外貨資産の運用基本要領」の制定等に関する件
http://www.boj.or.jp/type/pub/pb_geppo/kako02/giji00028.htm

 ブラックボックスの財務省国際局為替市場課の外準運用と違って、日銀の外貨資産は現在、収益性にも配慮してインデックス運用となっています(そもそも外為特会と根拠法が違いますから外貨を持つ理由・目的も違います)。とはいえ、根っこのポンド建て資産がいまも残っていたら面白いですね(^^
Commented by bank.of.japan at 2008-06-27 21:04
椿ラインさん、どうもです。通貨構成(の比率)という意味でした。失礼しました。まあ、日銀外貨の比率も公式には明らかにされていない状況ではあります。外貨準備はドルインタバンクの郵貯みたいなもので、情報公開するとインパクトが大き過ぎるのかもしれません。ただし、インパクトは最初だけで、いったんガラス張りにすれば後は米債市場も慣れるでしょう。
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