米政府の為替介入。一般論として介入はやらない方がいいとは思うが、どうせやるなら勝算のある方法がよいのではないか。そんな発想から思考実験として原油先物市場への介入なるものを考えてみた。まあ、個人的には介入はしなくても、相場の高騰自体が世界経済を悪化させ、原油需要を落とし、結果的に原油価格は下落するだろうとは思っているのだが…。
為替市場を介入で操作するのは容易ではない。世界で最も規模が大きく、介入でどうこうなるようなものではない。下でも述べたように、特に基軸通貨国の防衛介入は、基軸通貨であること、すなわちドルが世界中にたくさん行き渡っているがゆえに、想像を絶する売りが殺到しかねない。ドルを持っている国・組織・人々が「ドルは危ない」と思えば、その瞬間にドル売りの津波が発生しよう。 米政府がドル安をけん制したのは、原油など商品相場の高騰によるインフレ圧力の増大を警戒しているため。だったら、為替を相手にせず、インフレ圧力をもたらす商品相場の代表である原油市場に介入した方がまだ勝算があるのではないか、という気がする。 なぜなら、①マーケット規模は為替市場よりもかなり小さいので、戦線を集中できる②原油などに流れる投機マネーの大半が短期筋であるなら、まとまった売り介入で相場を崩せばロスカットの売りが自動走行する③この間、原油反落を眺めて金融市場が回復すれば投機マネーはそちらに招きよせられる-といったことが考えられる(もっともうまくいくケース)。 技術的な詰めのない思考実験なので、現実に介入がうまくいくかどうかは分からないが、この辺はコモディティ関係の方々の専門的なご意見頂くとありがたい。 日経新聞(10日付)の「経済教室」(減反政策やめ増産目指せ=山下一仁氏)で知ったのだが、1973年に穀物が数倍に急騰して食糧危機が叫ばれたとき、世界の穀物生産量は3%減少しただけだった、という。もともと穀物生産の限られた量が国際貿易され、わずかな需給変動が相場を大きくさせやすいためだ。あと、人間の生存本能として飢餓への恐怖感が価格を必要以上に押し上げる面もあるのだろう。介入による価格沈静化で恐怖感が和らぐなら、緊急手段として考えてもいいのかもしれない。 追記 あるマーケット関係者のご指摘ですが、先物をどんどん売っても、決済において(有限の)現物を手当てできないので、結局は介入しても踏み上げられるリスクがあります。やはりうまくいかないですね。
by bank.of.japan
| 2008-06-12 22:19
| マーケット
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Comments(18)
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多角的テロとしての介入
at 2008-06-12 22:56
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まず金融引き締めによって投機筋である元凶のヘッジ(ファンド)の資金供給を断つ。(これはクレジットクランチでもわかるように一気に効果がでるはず)。同時に為替介入の確固たる意思の表示により、こいつらの意思をくじく。最後のとどめは制度変更もしくは国家的暴力手段の発動によりとどめをさす。てなことなので、今後はバラバラな政策発動でないという認識でいかないと、あんたら痛い目にあうよ。
後はロシアと中国を含めたところで、どっかでとめないと。国内騒乱はみんないやでしょうから。
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害債
at 2008-06-12 22:57
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原油とドルの逆相関が極めて強まっているこのごろにおいては、最近のドル高誘導も口先介入の一種と言えるかもしれません。
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える
at 2008-06-12 23:14
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みんなが130ドルの価値があると思っている原油が、
介入によって、例えば110ドルや100ドルで買えるようになったら、 割安感から押し目買いが殺到するように思います。 そうすると急反発が起こり、ボラティリティの高い状況になりますが、 VaR等のリスク管理の観点からポジションを落とさざるを得なくなり、 結果的に沈静化に向かう可能性も考えられます。 しかし、そうこうしてる間にも新興国の需要増が止まらなければ、 長期的な上昇トレンドは終わらないように思います。
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u-nそうはならない。
at 2008-06-12 23:20
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VARなんて信じてポジション張ってるアホはみんな踏まれて死んでます。相場とか市場は常に暴力的に動くのです。89回債しかり、バブルの不動産しかり、原油しかりどっかで国家は動くのです。
ちなみに新興国の需要なんて、レバレッジの聴いた相場では、ノミの運子でしかないのです。この場合実需は極めて無力なのです。
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u-nそうはならない。
at 2008-06-12 23:41
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すみません。言葉足らずでこういったレバレッジを利かせた暴力的な相場の中で、市場のゆがみ見つけて、かなりの確立でかてる裁定を狙って
ポジションメークするのが、ヘッジファンドでしたっけって。昔は。 最近はそんなわけなくて、国家間の制度のゆがみを利用して一気に儲けるということがヘッジファンドという意味では、国家意思との協業と敵対関係の関数でしかないのですかね。ただこれが戦争屋と一緒になっていることが問題なのよ。まー左翼新聞はECOなんてオブラートで包んでいるけどな、でもこいつらこれまで商売ネタよ。だから今のポジションは原油ショートのCO2は排出権ロングでしょうか。
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osome
at 2008-06-13 00:31
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米政府にその気があれば、現在の暴騰油価は沈静化させられると思いますが、ブッシュは石油業界の利益代表ですから、それはやらないでしょう。でも、大統領の任期もあと半年ですから、今が最後のババ抜き大会かも知れません。
90年以降のアメリカは、一般の株、IT株バブル、住宅バブル、そして現在の資源バブルと、次々に矛先を変えてはバブルを膨らませ、国民に不労所得を与えて無駄遣いを助長し(やはり不労所得でないと、そうそうバカ騒ぎはできませんから)、個人消費に基づく景気拡大を続けてきましたので、次のターゲットを見つけることが一番良いのでしょうね。今は未だ思いつかないので、しばらく資源で行くのでしょうか?
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K
at 2008-06-13 00:37
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不意をついて、各国政府が備蓄を一気に売りに出したら、沈静化しそうだね。
でもここで言っているのは、空売りの事?
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u-nそうはならない
at 2008-06-13 00:42
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だから、実需じゃないからさー。どこの政府が売りに出すのよ。頼むよ自衛隊の補給じゃねーんだからさー。それともうアメリカもだめだって資源でいって儲かるのは誰よ。アメ公の車ははしれないでしょう。みんなメジャーの株をもってるのかね。
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盾艦
at 2008-06-13 00:43
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グレゴリー・キングの法則とやらを聞いたことがあります。
いずれにせよ。触らぬ神に祟りなしではないでしょうか? 原油を下げれば世界景気に貢献できるかもしれませんが、温暖化問題はどうなるでしょう?また新興国の成長に拍車がかかれば結果的に他の商品不足にならないでしょうか?
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u-nそうはならない
at 2008-06-13 00:45
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で穀物相場でいえば、福田様が備蓄タイ米放出するっていったけど、穀物相場下がったか。
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PK
at 2008-06-13 00:45
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世界市場をマーケットメイクしているのはアングロサクソンなんだから逆らってもダメで、待つこととポジションのサイズに気をつけるだけ。
メディアも連中の支配下で、「蟹工船」だし。日本のような心の純真な途上国にはいまだにマルクス主義が効く。 隣の国では、馬がさっそくアングロサクソンの忠犬ぶりを発揮しているし
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u-nそうはならない
at 2008-06-13 00:46
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だからさー、そういうことは成長の限界の話でしょ。急激な市場経済の変化の話と一緒にすんじゃねーよ。
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u-nそうはならない
at 2008-06-13 00:48
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アングロサクソンじゃないでしょ。今の相場はさー。何年前の話してるのかね。
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bank.of.japan
at 2008-06-13 01:00
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みなさん、いろいろコメントがありがとうございます。幾つかのご指摘を頂いて思ったのは、根っこの需要が相当に強い場合は、先物で押し下げてもそこは無限の買いが入る可能性があります。もっとも、米外貨準備が貧弱なことを思えばドル買いよりも原油先物売りの方がまだ戦う時間は稼げそうです。
もちろん、断固たる姿勢で利上げも辞さない、双子の赤字の是正で緊縮財政も辞さないとなればいいのですが、これは米経済が持たないようにも思います。 原油先物売り介入するにしても、最初の一発で投機筋がビビッて原油市場から退散する、というのがやはり理想的なシナリオなのでしょう。当面は現在の米政府の口先介入が奏功するのを期待するしかないですが…。
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u-nそうはならない
at 2008-06-13 01:07
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貴重なコメントありがとうございます。いずれにせよ。極めて難しい政策運営に入ったことは事実のようですね。双子の赤字、スタグフレーション、為替介入なんて言葉に懐かしさを覚える今日この頃ですが、過去の経験をもとに、今回は有事の政策運営の成功を祈るばかりです。
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アングロサクソン
at 2008-06-13 05:00
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原油下がってもいいけど、株上がればいいという思考自体であんた負け組。
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ゴム3号
at 2008-06-13 06:58
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投機筋といいますが、問題なのは長期で買いポジションを持つ商品インデックスファンドなのであり、マネージド・フューチャーズはあまり問題ないと思います。
たとえば年金基金の商品インデックス投資(投機)を禁止するような規制をすれば確実に効果はあります。アメリカ上院でヘッジファンド関係者(マスターズ氏)が証言して、この提言をしています。 元々商品インデックス投資などというものは商品先物市場では邪道であり、旧来の投機家や当業者は迷惑をしております。
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bank.of.japan at 2008-06-13 21:14
u-nそうはならないさん、どうもです。同感です。
アングロサクソンさん、どうもです。負け組の意味がよくつかめませんが、ご指摘たまわりました。 ゴム3号さん、どうもです。長期運用の年金マネーが商品に流れ込むのは、かなり影響が大きいですね。もともと現物供給にかなり制約がある市場ですので…。規制論が出る背景は理解できます。
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