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日本電産・永守社長の精神注入棒論
 何気にネットを検索して、今ごろ知ったのであるが、日本電産・永守社長は「休みたければ辞めればいい」と発言されたようで。批判を受けて日本電産は釈明しているけれども、「世迷言、なれど本人至って真面目」さんのエントリーで知った永守社長のウェッブマガジンを読む限り、発言は本音なのではないかと思った。
 面白いので一部を簡略して紹介します。
「モータメーカーとしては後発組で、実績も信用もない。こんな、ないないずくめの会社が、大手の同業他社と競争して1つでも勝てるものはないかと考えたときに、思い浮かんだのが時間であった。つまり、他社が8時間働いているのなら、わが社は倍の16時間働く。そうすれば、他社のセールスマンが得意先を1回訪問する間に、われわれは2回訪問できる」
「『ウサギとカメ』の話がある。足の速いウサギとのろまなカメが駆けっこをして、油断したウサギが途中で眠ってしまい、休みなく歩み続けたカメが追い抜いて勝利したという誰でもご存知の物語だが、現実にはウサギが眠っているときに同じように眠ってしまうカメが大多数なのだ。だから、人を動かすにしても、動かす前に『怠けるカメ』を『怠けないカメ』にしておかなければ徒労に終わってしまう」
「仕事が残っていてもさっさと帰ってしまっていたような者でも、『もう5分』、『あと5分』を続けていると、半年ぐらいで自主的に残業をやるようになる」
「最もすばらしい人生とは、来る日来る日が過去の人生の中で最もよい日であると実感できることだ。同じ所に止まっていては、それは感じることはできない。少なくとも一歩ずつでも前進しなければならない。そのための手段となるものが仕事である。だから、仕事に対して自信と誇りを持てない人間が、”マイホームパパ”などと形容されるのである」
①精神注入棒で打たれるのが好き②日本電産の仕事が好き③仕事は何でもいいからとにかく馬車馬のように働くのがうれしい-という人々が一定数存在し、そういう人たちが永守社長を慕って集まった会社であるなら、別にいいと思う。
 ただ、どうだろう。こういった社員超人化路線は、何度か指摘したように持続性がないと思う。社員を使いまくる路線は、方法としては単純であり、他社もまねしやすい。別な会社が「日本電産が16時間働くなら、うちは18時間だ」といった方法で対抗したら、電産は20時間働かせるのだろうか。電産的勝負をしてしまうと、最後は全員倒れるだけである。
 境屋太一氏が日経で連載した「ジンギスカン」によると、確か「百人隊」の隊長役には体力が一番優れた者は選ばなかったと記憶する。体力が優れた者は、自分が普通だと思って部下の兵を酷使してしまい、兵がどんどん倒れて隊として機能しなくなるからだ。
 兵はスーパーマンではない、あくまで普通の人間であり、そんなに活躍できない。そういう兵でいかに勝つかを考えるのが、マネジメントではないかと思う。「無能な怠け者」をいかに使えば楽に戦いに勝てるのか。経営者は「有能な怠け者」であるべきなのだろう。
 労働関係はまだ続けたいと思う。
by bank.of.japan | 2008-05-09 01:10 | 経済 | Comments(28)
Commented by linate at 2008-05-09 02:07
日本電産はブラック企業として従来より就職・転職掲示板では有名な会社だったようです。この件で、一気にこの会社の暗部が世間的に広がってしまった感じのようで。
金融のように馬車馬のように働いた見返りに人並み外れた報酬があるわけではなく、この会社の給与水準は他の在京都の優良企業より劣るようです。
Commented by 外資 at 2008-05-09 02:59
1.最近は「経営力」の差が、邦銀と外資系金融機関の競争力の差を分けているという印象論が流行っていますが、双方を経験したものとして全くそうは思いません。
2.邦銀と外資の収益力に差があるのは、端的に言えば、①労働法にとらわれない働き方をしているか、②株主のリスク許容度に差があるからです。
3.例えば、邦銀も1日16時間~18時間という、外資系の投資銀行並の労働時間を課す事ができれば、収益力は今の1.5倍位までなら易々と上がるでしょう。
4.もう一点、邦銀の収益力がイマイチなのは、邦銀の経営力に問題があるというよりも、株主がリスクとリターンの兼ね合いにおいて、経営陣に対して「ハイリスク・ハイリターン」を許容しているかどうかという点が非常に効いています。
逆に言えば、外資の収益力が高いのは「リスクを取っているから」に他ならず、崩れる時は昨今のサブプライム騒動を見ればわかるように、壊滅的な打撃を受ける事になります(リスクを取っているのだから、当然ですね)
5.その意味で、ハイリスク・ハイリターンで行くか、ローリスク・ローリターンで行くかの価値判断の差ということに過ぎないと思います。
Commented by PK at 2008-05-09 06:52
今の日本のように人間の価値が高まってしまった経済圏では、スタートの遅れた企業が成長しようとする時の選択としてありえる道だと思います。
彼は非常に論理的な判断をして、正しい結果を得ていると思います。
今の日本人が過去の蓄積の優位性を失った時には、必ず選択しなければならない方法でしょう。

現実に、日本の資本市場が開放されて円高になった時に、日本人の価値は国際水準に引き上げられて、これまでの20年間日本電産と同じことをやってきたわけですから。
Commented by 害債 at 2008-05-09 09:26
アジア危機のちょっと前にクルーグマン教授が「アジアの成長は生産性の向上ではなく投入量の増大によってのみ達成されている」といったことを思い出しました。
Commented by 飛車 at 2008-05-09 10:39
このニュースぜんぜんフォローする気にならなかったので、こちらで拝見した情報だけで、思いっきり空想を働かせて感想を書いてみると。

時間かけるのは投入量の増加ですからね。資本生産性は上がりますが、労働生産性は落ちるんですよね。製造設備持ってるメーカーならそれで良いのかな。

この人は労働力を固定的に考えていそう。時間外の方が時間単価高いわけで、それを払ってでも同じ人にやってもらいたいと考えているという事は、現在の従業員の質は高くて、追加的に1名安い単価で雇用するより得だと判断しているわけですから。まさか、サービス残業をこんなに公に公言するわけないだろうし。
後発のあるいは小さな企業は得てして企業内の分業体制とかできていませんので、個人の資質に頼るところが大きくなります。でも、資質なんてのはそれほど変わらないので、投入量で頑張れと。退職願いだした社員を延々引き止めるスタイルだと思う。そのうちに、少数精鋭とかエリート主義とか言い出すんじゃないかなぁ。

あと、こういう労働規制はしっかりかけておいてくれないと、やったもの勝ちになっちゃう傾向が強いのが日本の労働市場ですね。
Commented by 飛車 at 2008-05-09 10:40
>>外資さん
4.ですが。仮に期待値が一緒(リスクプレミアムは要るけど)なら、どちらを選択しようと株主的にはOKですよね。経営陣の敗者復活の場所が用意されていないどころか社会的に抹殺されてしまうので、経営側がローリスクを選択してしまう傾向とか無いでしょうか?
Commented by osome at 2008-05-09 11:55
永守さんを取り上げた記事で印象に残っていることは、京セラの稲盛さんから、「(会社が)倒れてから拾えばいいじゃないか」と言われたのに対して、「それでは人が散ってしまうので、私は倒れる前に拾います」と反論した話です。

よく考えてみると、社員さんの「会社が倒産する恐怖」を質にとって、余分に働かせる手法だったのでしょうか。会社と社員の関係が、江戸時代の藩と藩士の関係に近い感覚の中でのみ有効なのかも知れません。

ただ、永守さんの経営の本質は、そんなことじゃないと思います。製造現場をよく見ているし、顧客のニーズの把握もあるでしょう。でなきゃ、闇雲にたくさん作った製品の在庫を抱えるだけですから。
Commented by EURO SELLER at 2008-05-09 18:05
どこかで「ノウハウは人に貯まる。後は人の意識改革のみ」といっていたような気がします。つまり,経験のある人材は宝だとは考えているわけなので倒れる前に拾うという考え方も出てくるのでしょう。ですが,そこに永守流の意識改革だけを注入するので,従えないものは去れと言う軍隊式になるのだと思います。
Commented at 2008-05-09 21:34
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by A- at 2008-05-10 10:34
社長がS的な公言をすることによって、M社員が集まってくるようにしているんだろうか。

社長は馬鹿でも楽に良い仕事が出来るように「カイゼン」を引っ張り上げるようにする用務員のような仕事だと思うのですけど。

※ ちなみにSはサービス精神の略で、Mは真心精神の略です。
Commented by べっちゃん at 2008-05-10 17:33
 残業すればするほど生産性が伸びるかのような言動をするのは、残業代を出していないと公言しているに等しいことにこの社長さんは気がついているのでしょうか(^ ^;

 ファーストフーチェーンの経営者はわかっているからこういう尻尾を掴まれるようなことは言いません。日本電産の社長さんは嘘がつけない根は善人なのでしょうね。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-10 23:30
linateさん、どうもです。就職版では有名な会社だったのですね。逆説的には、ハードワークで有名になっていれば、覚悟して入社する人も多いので、ある意味ハードワークを強調するのは親切かもしれません。

外資さん、どうもです。突き詰めると、リスクのとり方の違いかもしれません。経営力に差がなく、風土の差によってローリスク・リーリターン型になっているなら、そんなものだとして割り切り、あまり欧米型を目指さないというのも生き方であるとは思います。

PKさん、どうもです。一つの手法としてはアリだと思います。ただ、首相として普及していくものでもないような気もします。

害債さん、どうもです。まさに労働投入量の増大ですね。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-10 23:41
飛車さん、どうもです。「ハードワーク」こそが「労働」である、という方法が蔓延していくのは困りますね。労働基準法という法律があるので、それはやはり守るのが筋なのだと思います。

osomeさん、どうもです。さすがにハードワーク至上主義のみでは経営は成り立たないので、色々目配りはされているとは思います。パフォーマンスもちょっと入っているのかもしれません。

非公開さん、どうもです。確かに良いこともおっしゃっておられて。もう少し、ハードワーク論のところをトーンダウンさせるといい感じかもしれません。

A-さん、どうもです。社風のアピールだと思えば、まあ覚悟して入る人も多いので、(ハードワークを)黙っているよりは前もって言ってもらった方が透明性は高いです。

べっちゃんさん、どうもです。嘘がつけない分、善人なのだとは思います。狡猾な人なら、黙っているでしょうし。
Commented by 通行人 at 2008-05-11 00:29
「嘘がつけない分、善人」と聞いて、「無能な働き者」を思い出しましたが何か?
Commented by PK at 2008-05-11 07:00
通貨が変動している経済では、人間を平等にする方向に関心を持たないと社会が崩壊します。通貨が固定している経済では、日本の労組のように個別に関心を持っていてもインフレで全体の調節がなされるのでやっていけますが、今の時代は労働組合が同一賃金同一労働・平等を意識しないとダメです。
バグワティが言ってるようにグローバル化は人間を平等な方向にもっていく力が強烈に働き、為替がそう動きます。そういう時代に、こういう認識が生まれるのは現実的です。語られなかった部分では、おろらく日本電産では平等性が強く意識されているはずです。
Commented by べっちゃん at 2008-05-11 10:49
ただその社長さんが、技術者ではなくて営業マンのことを想定しているのならば、歩けば歩くほど販路が広がるという面もあるとは思います。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-11 20:20
通行人さん、どうもです。会社が持続発展すれば有能であって、その秘訣としてはハードワーク以外にも何かがあったということかもしれません。

PKさん、どうもです。ハードワークを余儀なくされる面は確かにあります。ただ、限界もあって、限界に耐えられないなら、緩やかに衰退or生活水準を落としていく、という方向でしょうか。

べっちゃんさん、どうもです。そういう発想もおありなのかもしれません。ただ、そのハードワークは永続性がやはり期待できないです。
Commented by 鰻谷。 at 2008-05-13 18:35
まぁ、投資銀行のように過度な労働の末に成り立っているビジネスモデルも存在する以上、
永守社長のおっしゃるようなビジネスモデルもありなんだと思います。
例え、賃金が投資銀行の数十分の一であろうが、なんらかのインセンティブがあるから、
電産は企業として成り立っているわけで。
そういう意味で、ハードワークが永続する企業もある、というのが正確なのではないでしょうか?

ただ、それがスタンダードかといわれれば、Noですよね。
> 別な会社が「日本電産が16時間働くなら、うちは18時間だ」といった方法で対抗
しだせば、社会は成り立たないですから。

単に、永守社長の付加価値の創造手法がハードワークだった、とういことに過ぎないのだと思います。
Commented by 飛車 at 2008-05-13 23:25
けど、こういう「脳みそ筋肉な人の根性論」ってのは、伝染力が強いだけじゃなくて、批判的立場の人を村八分にしがちなので・・・ちと怖い。

と、コウゾウカイカクブームのトラウマがいまだ覚めやらぬのでありました。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-14 00:48
鰻谷。さん、どうもです。投資銀行も相当なハードワークですね。ただ、給料のアップサイドが大きい(逆も大きい)のは、重要なインセンティブなのでしょう。一方、給料のアップサイドがさほど見込めない(逆の振れも限定的)ときのハードワークは、ハードワークそのものが好まれると考えられ、そういう人が一定数存在すると、まあかなり永続するかもしれません。スタンダードにはなって欲しくはないすね。

飛車さん、どうもです。まあ、根性論の好まれる風土でもありますので…。困ったものです。

Commented by ぽんた at 2008-05-14 11:12
2回目の投稿です。長いので半分に分けます。
再びピントがずれているようで恐縮ですが、私がおりました某大使館の商務部(今は別称)で、ある時、日本の大手企業の重役方がお見えになるというので、担当の一等書記官をはじめ、スタッフは資料作成や打ち合わせに追われておりました。その一等書記官も、夜遅くまで残業をする日が続きましたが、当日の朝、彼の奥さんが高熱を出したので病院へ連れていく連絡がありました。

「私の妻が病気なのだ。私が病院へ付き添わなければ誰が行くのです。」という彼のコメントを聞いて、同じ女性として納得しフォロー体制に入りました。

かつて「明日できることを今日やってはいけない。」と、夕方からはお茶の時間だった大使館も今では企業に負けない残業をします。それでも家族は一番ということを誰もが認める国なので、仕事を逃したとしても責任は問われません。外交官だけかもしれませんが。この国はこれでいいと嬉しい気持でした。
Commented by ぽんた at 2008-05-14 11:13
私の兄は「企業戦士」と呼ばれる時代の人で、全く逆の人生でした。熱があっても会社を休まない37年間の末、昨年突然食道ガンで亡くなりました。その会社中心の生活に反発して、若い頃はよく喧嘩をしました。しかし兄には数ヶ月の入院中毎日10人以上の見舞い客があり、葬儀にも「よくかばってもらった。嫌なことを1人で引き受けてくれた。」という部下のかたや、「下請け会社の生活まで心配してくれた。」という関係会社のかたがたが、続々と葬儀につめかけて下さいました。兄の仕事ぶり、築いてきた人間関係に頭が下がりました。

経済を語るこの欄に、ふさわしくない話題でごめんなさい。今日5月14日は兄の命日です。亡くなるまで半年間、毎日のようにメールを交換してこれまでの人生分以上に話をしました。今日は兄とまた向かい合って過ごそうと思います。
Commented by ぽんたさんのお兄さんに at 2008-05-14 20:40
日本電産の会社の中で、何がおこっているのかわかりませんが、外から見ても何もわかない。少なくともこんな発言をしても、労働争議が起きない(今起こそうとしているプロが入りつつあるかもしれませんが)のであれば、それだけこの会社が従業員に何かをしているからでしょう。表面だけで会社はわかりません。だからがんばれた人が居て、それに支えられた人が居たのではないでしょうか。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-15 00:37
ぽんたさん、どうもです。某国大使館の事例は欧米的には普通の労働感覚なのだと思います。仕事に意義(やりがい、楽しみ、興味)を見出してのハードワークは、本人にはむしろ必然的なもので、お兄さんは職業人としては幸福であったのではないか、と思います。ご冥福をお祈りいたします。

ぽんたさんのお兄さんにさん、どうもです。従業員が疲弊して、うつ病になりそうな方々が多いのなら、会社としての永続性は望みにくい一方、そうではないのにハードワークが受け入れられているなら、ご指摘のようにがんばれた方々によって支えられているのでしょう。

Commented by 石井孝明 at 2008-05-15 13:20
 はじめまして。本石町日記を引用させていただきました。
お礼がてら、初コメントさせていただきます。ありがとうございました。
おそらく、私が大変お世話になった方が、本石町日記作者様と思いますが、また改めて、実社会でごあいさつさせていただきます。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-16 00:49
石井孝明さん、ご無沙汰です。頑張ってますか。リアルに会う機会があれば是非よろしく。
Commented by K at 2010-06-02 14:55
賃金が安いかつハードワークが受け入れられてるのは
日本電産以外に行きばがないからでは

私もそうですし
Commented by 通りすがりの名無しさん at 2010-06-21 11:55
今電凸してきましたが
これは「ニュアンスとしての表現であり、現在は残業をなるべくなくす経営体制をしいている」
「他社の倍の密度で仕事をするべきである」という事だそうです
問題の発言は著書の中で書かれている物だそうですが
出版物には気をつけないといけませんね
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