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クルーグマン教授の疑問をめぐる考察=一つのポイントは突いている
 下のエントリーのコメント欄で、stupid-marketさんからクルーグマン教授の興味深い疑問を紹介していたので、これについて簡単な考察を行ってみたい。マネーマーケットのマニアなネタですので、興味ない方はスルーを。ある意味、金融調節上の極めてテクニカル、すなわち日銀病的?(苦笑)なネタです。でも、クルーグマン先生、結構鋭いところに目を付けてくるなあ(感想)。
 クルーグマン教授がニューヨークタイムズのコラムで示した疑問点はこちら。興味ある方はご参照ください。ちょっと乱暴にまとめると以下の通りであろうか。
・TB金利がメチャ下がった。FFよりも凄く低い。TB3ヶ月は0.5%以下?(詳しい方、ご指摘を)
・FRBはFF金利(現在2.25%)を1%まで下げるとか予想されている。でも、TBの売買を通じてFF金利を誘導するのだろうが、こんなにFFとTBにギャップあったらFF下げられるのだろうか。
・フェデラルファンド(FF)っていう資金は無担保なんだが、オーバーナイト物もこんなプレミアムが付いたらFRBはFFの誘導できないの?
 結論から言えば、クルーグマン教授の疑問は根拠がないわけではなく、FFを誘導できない可能性はある。「possibly dumb」ではない。まず、現状のTB金利の急低下である。この背景については、ある方から非公開コメントの形で概略を頂いたので、箇条書きにて紹介します。ある方さん、多謝です。
・かなり強烈な「質への逃避」が起きている
・株安を眺めた買いも入っている
・決算要因の買いもある(バランスシートにTBを入れ、資産の安全性をアピール?)
・NY連銀は保有TBの満期償還を進め、TB需給の緩和に努めているが、追いつかない。
このほか、休場日にフェドワイヤーが稼動し、連銀から債券借りた向きが返却しなければならない状態だったことも、TB需給をひっ迫させたもよう。
 こうした「質への逃避」が継続し、一方で無担保資金にプレミアムが発生する状態が続くと、FFの誘導は困難になる可能性はある。日本だと1997年秋の金融恐慌でこれに近い状態が発生し、日銀は猛烈なる積み上を行って何とか乗り切った。また、若干状況は違うが、日銀内でも誘導金利は無担保資金でよいのか、という問題意識はある。例えば、都銀が預金超過に転じ、もっぱら外銀が取り手に回ると、無担保コール金利はプレミアムが付きやすい。このプレミアムを解消しようとすると調節に付加がかかりやすい。このため、有担保の短期金利(例えばレポ翌日物とか)を誘導目標にすべきではないか、というわけだ。
 クルーグマン教授の疑問点は、誘導金利が果たして無担保資金でよいのか、それとも有担保(国債裏づけ)が良いのか、という中央銀行の問題意識に重なる。まあ、無担保資金でも翌日物だったらプレミアムはほとんど付かないのが平時の姿だが、米インタバンクは信用不安によって誘導金利のあり方を改めて浮き彫りにしたと言えるだろう。
by bank.of.japan | 2008-03-24 00:28 | マーケット | Comments(9)
Commented by ポカチ at 2008-03-24 18:40 x
日銀の誘導目標をレポ翌日物金利にっていうのは面白いですね。ただ、レポだと資金の出し手が限られており調節にまた別の負荷がかかっちゃうかもしれませんね。勉強になりました。
Commented by bank.of.japan at 2008-03-24 20:20
ポカチさん、どうもです。国債などを担保とする資金取引の「金利」はクレジットリスクを排除できますが、一方でご指摘のようにレポ取引の場合には参加者が限られたり、国債の流通性が諸事情によって低下したりして、別な側面で金利が振れやすく、調節に負荷がかかります。今もレポは荒れ気味のようで即日供給が続いており、この問題はなかなかうまい解決策がなくて難しいです。
Commented by 短資会社 at 2008-03-25 00:08 x
ということで、その矛盾を埋める為に機動的に、働くのが我々ですよ。欧米のブローカーとは一味違う違う味を出して、お役に立つのですよ。いわゆる外部的なマシンの影武者としてね。
これって欧米からは村社会って批判されたような気がするけど、結局どっちの資金効率がいいかとか、金融市場の安定性とか考えれば答えは明白でしょう。
Commented by bank.of.japan at 2008-03-25 01:07 x
短資会社さん、どうもです。英米のインタバンクも、例えばシティーのディスカウントハウスとか、村的なところがあるように思えます。日本は批判されやすいのでしょう。ところで、短資会社がBONYのように決済インフラになればいいと思うのですが、やはり投資負担がかなり重いのでしょうか。
Commented by PK at 2008-03-25 07:29 x
今回のような経験は天才を刺激するね
米国の多くの経済学者がケインズに近づくことになると思う
Commented by EURO SELLER at 2008-03-25 14:30 x
話は変わりますが,副総裁就任会見のスクリプトを見ましたら,お二人とも質問を煙に巻くのは前総裁よりなかなかな気がします。感性の前総裁とは違って学究肌の人はみんなこんな感じですかね。でも,あとから総裁に方言癖の方がくると水の泡なんですが…
Commented by bank.of.japan at 2008-03-25 21:10
PKさん、どうもです。まあ、今回の事態は刺激的であるのは間違いないです。多くの経済学者がケインズに近づくかどうかは分らないですが…。

EURO SELLERさん、どうもです。煙に巻くというよりは想定問答に沿って答弁している=オーソドックスな答弁という感じです。逆説的には、福井前総裁はオーソドックスでなかった、ということでしょうか。放言は面白いし、ネタ提供として貴重ですけど、マーケットには不毛なノイズにもなるので、個人的には避けて欲しい、という気持ちが強いです。
Commented by 短資会社 at 2008-03-27 00:40 x
ご返信ありがとうございます。BONYになる機会は本邦RTGS導入時等にあったような気がしますが、いかんせんおっしゃるようにコストがかかりすぎてしまうのです。でそのうち官業鳴り物入りの、JGBCCだの、今は無きJBNETだのできてしえばね。その後は、日本版401Kなんてまやかしに乗って、カストディー専門信託なんてできましたんで、我々の出る幕はなかったわけです。
Commented by bank.of.japan at 2008-03-27 01:09 x
短資会社さん、どうもです。やはり官業が民業を圧迫する弊害は大きいですね。日銀も決済には力を入れておりますので、その分、民間の出番がなくなる、ということでしょうか。市場機能(含む決済)の充実を呼びかけつつ、自らが頑張るから、官業依存が深まる面があるのは、日銀も否定しないですね。
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