仏大手銀行ソシエテ・ゼネラルの巨額損失のニュースが出たのは、昨日午後の遅い時間であった。このニュースに接したときの最初の印象は「たった一人のトレーダーでこんだけのロスが出せるのか?」であった。本当に一人でロスが出せたのなら「リスク管理は一体どうなっていたのか?」という疑問も湧いた。マーケット関係者の第一印象も似たものではなかったと思う。
一般的に巨大なポジションを張って、どでかいロスが生じていると、その取引のカウンターパーティは何らかの異変を感じ取るものであろうと思う。これは関係市場にはある程度伝わるもので、当該商品が上場物だったりすれば、建て玉などから異常なポジションの存在がにじむようことがある。住友商事やベアリングズ、大和銀行などの損失事件でも異変は指摘されていたと記憶する。 今日、あるディーラーと話していたら、「ソシエテは公表前にポジションをクローズしており、それが最近の株価急落の一因だったらしい。FRBはそれに煽られて緊急利下げした格好だ」ということを聞いた。最初は、単なるマーケットルーマーだと思ったが、害債さんのところで、FTの報道があったことを知った。 巨額損失では害債さんも同じ感想を抱いたようで、興味ある方はそちらをご覧頂きたい(害債さんの方が専門的です)が、巨額損失の公表前にポジションを切っていくのはどんなものかなという感じを持った。まあ、処理が合法的で、情報管理を厳重にしたとしても、巨大なポジションの反対売買を執行していけば、先に述べたように異変を薄々分っていた向きには「ロスカット、キター!」という感じであろう。それに確信的に乗っかっていく向きもいないわけではない。 大分前にALMに関して旧IBJのことを書いたことがある(こちら)。このポジションは損失ではなく、建前上はALM上のヘッジだが、まあ実態は限りなくロスに近かった(と思う、そして多くのALM関係者も。みずほ統合時に合併差益を使った損失処理がされた)。当時、IBJの払いが多いのはスワップ市場では周知の事実で、債券先物の建て玉も異常だとみんな思っており、バンキング勘定でのALM操作の一貫とは言え、「ALMディーリング(懐かしい言葉)の失敗」と認識され、いつかロスカットの嵐が来るとの見方もあった(具体的な処理は未確認です)。 FTによれば「“It is now clear that the Fed was panicked into a 75 basis point rate cut by the actions of a rogue trader and the bank’s unwinding of his positions,” said one London-based hedge fund manager」との指摘もあるという。 ソシエテのロスカットがなかったら、緊急利下げはなかったのだろうか。まあ、なかったにしても定例のFOMCでの大幅利下げはあったかもしれないが…。 市場取引における巨額損失が発生した場合の公表&損失処理の在り方はいろいろ考えさせられる。損失が発覚した時点で即時公表しても、これからロスカットが出るのが分れば追随する動きで相場の動きが加速しかねない…。難しい問題である。 ps ロンドン時代(キダー・ピーボディの損失事件があった頃)に聞いた不正取引の一手法。A銀行のA氏とB銀行のB氏が、意図的かつ結託して相対で大きな取引をする。相場がどちらかに振れるとどちらかに巨額の利益が出る。損を出した方はクビになるが、儲かった方から利益を半分もらう(事前の約束)。実例があるのか不明ですが、ホホウと思った。今じゃリスク管理が厳しくて無理でしょうが。
by bank.of.japan
| 2008-01-25 22:05
| マーケット
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Comments(14)
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
毎度ご苦労さまです~。
2007年のカリヨンの件では、2.5億ユーロの損失を出したRichard Bierbaum氏が「会社には毎日報告していた」と話し、スケープゴートにされた観がありました。しかし今回は、会社の意向もあるのでしょうが、FTやNYタイムズが顔写真入りで報道。後者の報道によればJerome Kerviel氏は逃亡もせずに当局に供述したいと仰っているそうです。複雑な取引が可能な真相も次第に明らかになるのではないでしょうか。 一方で25日は、EDINETでテラメントなる法人が、アステラス製薬やソニーなど6社の株式51%を保有したという報告が掲載されましたね。EDINETは掲載前の確認ができないとは知りませんでしたが、リスク管理の甘さは日本の当局においても他人事ではありませんね(^^
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いつも拝読しています。
木曜後場寄り前の東京株式の気配が「SQかよ!」ってくらいにおかしかったんですが この件と関係あるんですかねえ。 ちなみに、私が見た範囲で「オカシイ!」と感じたのは、 いわゆる「グローバル経済発展の恩恵を受ける企業」いくつかと、シリコンウェハーで有名な某社とか。 225先物も「???」な安値で寄り付いて、普通に戻したし。。。。。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
おそらくいつの時代にもこういった不正取引はあり、皆が儲けている時は発覚せず、内部でわかっても公表せずに済むのだが、大きな相場の転換点に入ると損失という形で公表せざるを得ない状況になるのだと思います。しかし21日の株安はセリングクライマックスという感がまったくなかったのでグローバルメルトダウンが現実化したと思ってしまいましたが、ソシエテだったのかと理由がわかると、まあまだ世界はそこまでひどくはなっていないのかなあと思いました。しかし20年来のクレジット創造過程が終了したのはほぼ間違いないと思います。
それは金融工学を使ったリスク軽減手法による金融加工商品の提供と、その原資産である銀行信用創造(貸出)の組み合わせというビジネスモデルの終焉であり、本質的にはリスクは軽減されていなかったのだと思います。本来リスク回避のために銀行家は貸出先を十分に調査モニタリングし信用状況を人・物・金で把握するという根本作業するべきですが、証券化、分散化、保証、格付、といった手法でリスク回避が出来たという認識が強く広がりすぎた結果だと思います。そしてこういう転換点だからこそ巨額損失が発覚したのでしょう。景気悪化のサインととらえて良いと思います。まあしばらく欧米金融システムは回復不能でしょう。また安易に回復させてはいけないと思います。それにしてもソシエテという組織がこの不正を発見しわずか3~4営業日で処理できたとはとても考えられず、またJPモルガンチェースとモルガンスタンレーという両モルガン家もなぜこんな短期間に増資関連で関与しているのか非常に不可解です。
植田日銀総裁さん、どうもです。ご指摘のように不可解なところが目に付く損失事件で、公表前から何らかの動きがあったような印象を受けます。一方、マーケットの方は、仮にソシエテ要因が大きいなら、そんなに実体は悪くはないという見方も可能でしょう。
金融工学と言えども、リスク総量を減らすのは難しく、リスクを細切れにする道具に過ぎないのかもしれません。同時に、リスクの分散によって、リスクの所在が分かりにくくなり、疑心暗鬼からリスクがばら撒かれてどれもが危ないように見えてしまう面もあります。金融工学を駆使する各段階できちんとリスクを把握すればよいのでしょうが、利益確保の渦が逆巻く中では、チェーンリアクション的に審査・格付けが甘くなるのかもしれません。しょせん、判断は人間がやるものですから。
椿ラインさん、どうもです。今後の詳報で経緯がより明らかになるでしょう。場合によっては暴露系の話も飛び出すかもしれません。
naoさん、どうもです。変な動きの背後には何らかの強制的なポジションの処理がありがちで、この件と関係あるのかどうか分かりませんが、まあ勘ぐりたくなりますね。 非公開さん、どうもです。私もそういう印象を受けます。でないと、こんなデカイ損失は出せないだろうと…。
どうやら同僚の端末にログインしてトレーディングを繰り返していた
なんて話もBloombergに出てましたね。でも、そうすると余計にソジェン全体のポジション管理はどうなっていたんだと不思議に思います。 全トレーダーが同じポジションを取ってたら、まったく同じことが起こりうるわけですからね。。
「おれはクレジット取引の申し子だった」という見出しで、Bbgがあるrogue traderと(クビにした仏系証券会社からは)されている人の話をのせていました。「プロップ・トレーダーになりたい人への教訓は、決してフランス系の銀行で働いてはいけない。なんも分かっとらへん」で結んでいました。
武藤敦司さん、どうもです。考えれば考えるほど、管理体制のお粗末さが浮き彫りになる不正事件で、マネジメントの能力が問われる面があります。
Teddyさん、どうもです。情報ありがとうございます。逆説的には、管理が甘いならばプロップディーラーにはやりやすいのかも(笑)。 うしろさん、どうもです。両建てが突出して目立つのは要注意ですね。利益の付け替え、そういうのがありましたねえ。
resolさん、どうもです。そんなことが可能だとは…。何でもアリの状態だったんですかねえ。
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