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「資金供給総額」という報道の意味は…
 下のエントリーで「金融調節」に触れたついでのネタです。中央銀行が金融調節で大量に資金を供給する場合、その「供給総額」が記事になる場合が多い。例えば、「ニューヨーク連銀の資金供給は総額…百億ドル」とかいうニュースである。この「総額」は、供給量を足していく計算として間違ってはいないが、それはマーケット的に何か意味があるのか、と言えば、何もない。強いて言えば、マーケット的にほとんど意味のない計算(単純な足し算)をやってくれている、であろうか。
 「供給総額」と聞くと、その金額がマーケットに放出されて、お金がじゃぶじゃぶになった印象を与えるが、実はそうではない。分かりやすい例として、「銀行券」と「財政等要因」による資金需給が中立だとし、銀行の予備的な資金需要が通常よりも1兆円多い状態が続いたとしよう。この期間が1ヶ月続いたとする。1兆円を期間1カ月のオペで打ち込めば1回で供給は終わりである。
 では、一泊二日(24時間)の供給だったらどうなるのか。これは今日1兆円出し、明日にはエンドが来て1兆円が吸収されるパターンである。中央銀行は毎日1兆円のオペを打ち続けることになる。土日もなく毎日が営業日だと供給総額は30兆円となる。1兆円の供給を日々つないでいるだけだが、「供給総額」という概念ではどんどん足し算されていく。これは、中央銀行が頑張っているね、という印象を与えるけれども、それ以外の意味はほとんどない。
 一般的に年末という特定時点だけで強い資金需要がある場合、中央銀行は早めに年末越えのオペを打ち始める。だが、ピークに合わせた供給を行うと、その手前の資金需給が超余剰になって金利が下がる(利下げするなら別だが、その場合は利下げが事前で決まる)ので、一方で吸収オペも合わせて実行していく。供給はしていても実は吸収もやって、資金需要が強い年末のみ、それに見合った供給があるような状態にする。
 実際は銀行券・財政要因はいろいろな動きをし、供給・吸収オペの組み合わせはかなり複雑なのだが、超簡単にまとめると上記のようなイメージになる。じゃあ、「供給総額」という見出しが間違いかと言えば、ある期日からある期日までの供給オペを合計したこうなるじゃないか、と言われたら「そうですね」となってしまい、そういう記事を見るたびに悩ましいのである。
 まあ、中央銀行への教訓としては、オペが注目されるような状態(流動性危機)に陥ってはいかん、ということですね。細かい話であるだけに、いろいろなことが針小棒大に伝えられやすく、騒ぎが大きくなりやすいですから。恐らく、長めの供給やると、吸収も必要となり、結果的に中銀バランスシートは両建てで膨らみやすいので、そのうちそれに着目した報道が出て、資産劣化懸念がブームになるんじゃないないかと思うのだが…。
 バランスシート拡大は事実だし、「拡大(肥大)は悪である」との観点に立つ人には資産劣化と映るだろうし。まあ、しようがないね。
by bank.of.japan | 2007-12-18 22:32 | マスコミ | Comments(7)
Commented by 椿ライン at 2007-12-19 00:03 x
 毎度ご苦労様です。
 見出しの数字は新聞社ならデスクがつけるでしょうから、現場の知識に乏しい経済新聞の管理職だと単純合計でインパクトのある数字を出すかも知れませんね。酷い記事では、FED、ECBの流動性供給でも、分かりやすさ重視で円建てにしている時もありますし・・・。
 却って分かりにくいです。

 数字の牽強付会と言えば、量的緩和時が思い出されますね。政府・日銀の円売り介入の総額と、日銀当預残の上限がたまたま30兆円くらいになったので、「実質的な非不胎化介入だ」と仰っていた内閣府幹部がいたような気が(^^
Commented at 2007-12-19 02:34 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 正論 at 2007-12-19 16:08 x
90年代後半の本邦金融システム危機時には、マスメディアの方々も「(ネット)信用供与残高」ときちんと書いていたようなうっすらとした記憶がありますが・・・。あるいは、そういうことをきちんと知っているメディアの人はもう本石町日記さんだけになってしまった・・・・てことでしょうか
Commented by bank.of.japan at 2007-12-19 18:07
椿ラインさん、どうもです。何か事が起きると「数字」はインパクトのあるものがヘッドラインになる、というパターンは多いですね。意味のある数字ならいいのですが、そうじゃないのは何だかなあ、です。

非公開さん、どうもです。確かに8月のときはつなぎ部分が多かったように思います。ネットではそうでもなかった感じですね。吸収は調べときます。

正論さん、どうもです。さすがにそういうことはないと思いますが、恐らくはインパクトのある数字が出る、それが目を引く、横並びになる、というパターンでしょうか。マス向けで専門的に書いていくのは難しいし、専門的に書くとインパクトもないことも多いですので。
Commented by 椿ライン at 2007-12-19 23:46 x
 レスありがとうございました。人様のヘッドラインをとやかく言える立場ではありませんが、18日のECBのオペを見ても、各社の表現はだいぶ違いますね。全部円建てなのは、新聞だから仕方がないところでしょうか・・・。

■読売
欧州中銀が57兆円の資金供給、定例オペでは過去最大
■朝日
欧州中銀、市場に56兆円 年末に向け無制限供給
■日経
欧州中銀、ユーロ資金57兆円を供給・サブプライム対策
■毎日
底なしサブプライム:欧州中銀、57兆円を供給
Commented at 2007-12-19 23:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2007-12-20 19:38
椿ラインさん、どうもです。供給の巨額さを事態の深刻さに最も強く結びつけた、すなわちマスコミ的という意味では毎日が一番であった、でしょうか。その後、巨額の吸収もやっているようですが…。


非公開さん、どうもです。貴重な情報提供、ありがとうございます。
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