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NY連銀の前触れ声明と今回の新型供給=資料編&若干の説明
 このエントリーは、欧米中銀の協調資金供給に関し、中心的な存在となるNY連銀の金融調節について、個人的なメモ(資料)を兼ねて若干の説明を行いたい。まず、NY連銀は今月3日に以下の声明を出した。アドレスはこちら。短いので引用します。
「December 3, 2007
 On Thursday, December 6, 2007, the Federal Reserve’s System Open Market Account will redeem $5 billion of Treasury bill holdings. This action is designed to give the Federal Reserve Open Market Trading Desk (the “Desk”) greater flexibility in the day-to-day management of reserve levels.
 The Desk will continue to evaluate the need for the use of other tools to add flexibility to its open market operations. These may include further Treasury bill redemptions, reverse repurchase agreements and Treasury bill sales.」
以下、ポイントを列記
・TB償還&売却を検討するのはB/Sをいったん縮小させるため
・これは年末の資金需要増大に応じたターム物供給&吸収という両建てオペの体制に入るため(B/S拡大に備えたB/Sの縮小→腹一杯食うため、ちょっと腹をへらす)
・米インタバンクは“質への逃避”からTB需要が強いので、連銀がTb保有を減らしても短国金利は上がりにくい
個人的メモ
・この声明をみたときに両建ての体制に入るのは分かった。
・ターム物供給はレポを活用すると思った。吸収はリバースレポで。
・予想外だったのは、わざわざ資金供給手段としてディスカウントウィンドウの代替オペを打ち出したこと(日銀の全店共通担保貸付に近い)
・もう一つの予想外は協調体制をアピールしたこと

 下のエントリーのコメント欄で、通りすがり@USAさんが「今回の計画を見ると、とても一晩でまとめたとは思えないので、11日は『知ってて知らんぷり』してたんでしょうな」と指摘されていたが、両建て体制を示唆するこの声明を見たときに何かやりそうだ、という勘を働かせるべきだったのかもしれない。これは今後の教訓である。

ps なぜ両建てになるのかの説明が必要であるなら、書きます。それと、必ずしも両建てにはならないかもしれない。代替オペを打つと同時にTB償還・売却を行うと、連銀資産サイドではTBが代替オペに振り代わっていくので。資産構成の変化ですね。これはこれで資金を循環させる意味があるのだが、この説明はやや長くなるので、これも要望に応じて書きます。

ちなみに日銀は両建てオペは普通にやります。97-98年の金融危機時には能動的にやり、B/Sはスゲェ膨らみました。「海外中銀の非常時は日銀の平時」なんですよね。凄いというか、ある意味悲しいというか、複雑です(笑)。調節は凄いが金融政策は…、現場は優秀だが、経営は…、の象徴みたいな…、何というか。
by bank.of.japan | 2007-12-14 23:51 | 日銀 | Comments(7)
Commented at 2007-12-15 01:45
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by うーぱー日記 at 2007-12-15 19:35 x
いつも、貴重な情報をありがとうございます。
今回のFRBの施策は、利下げと同じ効果を持つかなり強力な手段だと思います。
なにせ、5.1%を超えていたLIBORをこれだけで5%以下に下げたのですから。
入札結果発表日である19日が楽しみです。
金額が少ないのが少し気になりますが、株式・債券・為替マーケットが久しぶりに短期マーケットに注目する季節が来るかもしれません!
Commented by 植田日銀総裁 at 2007-12-16 21:00 x
今回の政策で一番スゴイところは、海外中銀とスワップ協定を結んで海外銀行にドルを供給するスキームを作ったことだと思います。これが可能になったのは①そもそもアメリカがダメ②他国の銀行がその影響を受けている。③その他国の銀行にも救いの手を差し延べないと結局アメリカがダメという構図があるからで、今回日銀が参加しないのは日本の銀行があまり影響を受けていない証なのだと思います。でも個人的には日銀-Fed間でこのようなスキームがあると面白いだろうなとも思います。いずれにしてもこれでFedのB/Sの左側はTreasuryからDiscount Windowで認められている幅広い担保や外貨に変わっていくのですね。(買切りではないのであくまで担保ですが・・・。もし買切りならすごいことです。)古今東西こういう非常時には、中銀のB/Sは徐々に“汚く”なっていくのだなあとしみじみ思います。
Commented by 通りすがり@USA at 2007-12-17 12:40 x
なるほど、伏線だっわけですね。12月に入って年末年始を越えた長いオペを始めたので、これで行くのかなと思っておりました。

ただ今回のFedの入札資金供給。リリースを読むと、「応札はお電話で各地区連銀担当者まで」となっていて、ちょっと笑いました。システム的な準備はなかったのだと思います。電話でさばけるのか、ちょっと心配です。参加資格ある金融機関は8000くらいでしょうか。

ECBとのスワップは8月からうわさされていましたが、ECBにとってちょいとカッコ悪いので、なかなか始動できなかったのでしょう。しかし、ジャパンプレミアムの時代は、Fedは邦銀のドル資金繰りまで面倒みてはくれませんでしたね。





Commented by bank.of.japan at 2007-12-17 18:24
非公開さん、どうもです。ご指摘の件、関係があるような、ないような。微妙ですね。憶測の域を出ないですが、関係があった可能性はあると思います。

うーぱー日記さん、どうもです。ファンディングが楽になるのは、金融機関には劇的な緩和効果でしょう。後は毀損した資産の処理と自己資本の充実ですね。これにメドが立てば問題はほぼ終結となりましょう。どの時期かは読みにくいですが。

植田日銀総裁さん、どうもです。金融危機が起きて資金が回りにくいと中央銀行が資金ディーリングをやらないといけない羽目になります。結果として、B/Sの拡大ないし資産構成の変化が起こり得るのでしょう。汚くなる、というのが適切かどうかはなんとも言えないですが、そういう印象は与えがちですね。

通りすがり@USAさん、どうもです。振り返ると伏線だったわけですが、私は普通に両建てやると思い込んでいました(甘い)。事務的な負担がかかるリスクがあるのは、日銀でも関心が示されておりますね。興味深いです。邦銀は「問題があるなら、出てけ」という仕打ちを受けましたね。大和銀行とか…。哀しい存在です。
Commented by 通りすがり@USA at 2007-12-20 12:22 x
遅くなってすみませんが、この両建てオペのところ、お手すきの時で結構ですので詳しくお願いします。まだ役に立つかも・・・。
Commented by bank.of.japan at 2007-12-20 19:34
通りすがり@USAさん、どうもです。了解です。近いうちに取り上げます。しばしお待ちを。
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