気を取り直して書きます。文章は当初予定よりも短めですが、冗長な部分(かつての金本位制からの離脱や管理通貨制度の説明など)がなくなり、論点が絞ることができた、と思うことにします(笑)。それと、励ましのコメントも頂き、ありがとうございました。気力が出ました。
さて、田淵氏の指摘したドルが原油や金、穀物など実物資産を裏づけとした通貨体制に移行する可能性についてである。可能性の高さ・低さ、またドルの信認が崩壊する要因・ルートなどの分析は別にして、ここでは田淵氏の指摘に沿って、軍事力の衰退、そしてこれに伴うペーパーマネーのドルが価値を失うことについて考えてみたい。もとより、私は国際通貨制度ないし軍事の専門家ではなく、以下は私見であります。 今たまたま「戦争請負会社」(P・W・シンカー)を読んでいる。途中であるが、戦争請負業の拡大・法人化の動きと、ドルの信認問題はつながりがあるんじゃないか、と思った。ざっと思い浮かんだ要旨は以下の通りである。 ・多発する民族紛争・宗教紛争、テロ行為は各国政府、国際機関による戦争請負会社への発注を増大させている→もはやこうした会社なしに戦争は成り立たない ・法人化した戦争請負会社は国際企業として洗練化され、総合的な戦争遂行能力を高めつつ、かつ市場原理で動く様相を強めている ・戦争遂行能力を持った民間会社は、取引相手としての国家を経済的に選別する可能性が高い ドルの信認は、サブプライム問題の混迷によって揺らぐ可能性はあるのだが、理由は何であれ、経済的な苦境によってドルの信頼が崩れるリスクが高まる場合、戦争請負会社は経済原理に沿って取引相手である米政府をある種格下げする可能性があろう。これは企業間取引において、相手先(米政府)の信用リスクを厳しく見るという当然の経済行為であり、米政府の戦争遂行能力(軍事力)は支障をきたす公算が大きい。 つまり、戦争が民営化された結果、ドルの信認低下は軍事力の面で米政府を自動的に市場原理にさらすわけだ。これは米国の軍事力衰退に拍車をかけ、それがまたドルの信認低下を加速させる、というスパイラル的な状況に陥ることを意味する。 いったん損なわれた通貨の信認を回復するのは容易ではない。金融財政の緊縮という伝統的な手段が有効でない場合、劇的な手段として一気に実物資産を裏付けとする本位制への移行は十分に考えられる。「信じる、信じない」という管理通貨制度が崩れる場合、価値の絶対的なアンカーとしては「実物」しかないからだ。 ただ、あれですね、本位制の裏付けが「金・原油・穀物」などによるハイブリッド型であるなら、これらを産出・生産できる国家は信用創造力&軍事力を持つわけですな。戦略資源国ないし主要穀物生産国は管理通貨制度がリセットされる場合には、金融資産のラストリゾートとなる。問題は、そのとき日本はどうなるのか、である。「金・原油・穀物」と同等の価値を持つ高付加価値商品を生み出す「超職人国家」となるしかないのですかね。うーん、厳しい道のりである。 やはり海の色は変わらない方がいい。 ps1 この他、興味深い論点は幾つかある。現在の管理通貨制度がリセットされる場合、資源価格の高騰によって世界経済はスタグフレーションに見舞われるのか。一方で、サブプライム問題が深刻化した場合、世界的な信用収縮によってデフレに陥る可能性も考えられる。どっちしろ、苦しい状況に変わりはないが。 ps2 管理通貨制度における各通貨の変動が「絶対的美人」を欠いた中での相対性美人・不美人投票の結果でしかない場合、全通貨が膨張(通貨の相対価格は変わらない)して気が付けば全通貨不美人となって実物資産に対して全通貨が切り下がる、ということはあり得るのか。各切り下げ合戦の究極として、実物に対して全通貨の価値がなくなる、というケースなのだが…。
by bank.of.japan
| 2007-12-06 00:44
| マーケット
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Comments(15)
こんばんは、心中お察しいたします。
金準備を見てもまるっきり通貨っぽい実物がない日本は確かに厳しいのですが、道筋を良く作ればしっかり働いてくれる人とインフラがあるので買い叩かれますが田淵氏は上手い事言ったな感があります、他に排他的経済水域もありますし。 通貨が絶望的に下がるのは仕方なしではありますが、紙幣も電子マネーも資源なので限度は有るかと思います。物が無い北斗の拳的・マッドマックス的な世界ならその可能性はありますが物の動きを止める停滞は資源価格を落とし、悲惨でも均衡するとは思います。金本位も運べるポンドが無ければ世界的に広がらなかったように。金融商品はおおむね流通ですもんね。 「戦争請負会社」ですか、私も持ってますが数年前に買ったものの恥ずかしながら積読しております。軍事は外部性のあるものですが、市場化可能と仮定するとそれも考察できます、そして実際経済的力に比例してる感はあります、軍事会社については特にノウハウがない中小国家・集団には。傭兵の場合地位問題が大きいです、義勇兵や革命戦士なども含め。 それにしても壮大な爆弾投下ですね!!分からない事だらけです。
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書き直しご苦労さまです。でも一度ご破算にして再度書き直すと、綺麗にまとまったりするんですよね。
前回の田淵氏のエントリーで違和感あった箇所への言及ありがとうございます。多分割愛されたところに書かれていたのだと思いますが、ドルはニクソンショック・スミソニアン体制・変動相場制への移行を経て、今は理屈の上ではワンノブゼムの存在です。けど、市場の参加者はなかなかそれを認めていませんでした。曰く有事のドル、曰くドル基軸通貨論、曰く1ドルが為替表示の基準などなど。今は、それが徐々に改められユーロ(かつてのマルクやフラン)、円その他のハードカレンシーの中の一つに過ぎないという理解が浸透しつつある時期なのではないでしょうか。この話にサブプライムを絡めるから変なことになるのかなぁと。むしろ、海の色が変わっていた事に気づき始めただけじゃないかと。 それと、実物資産が価値を持つのは、それが稀少な財だからです。そして稀少な財を通貨の裏づけにすると、通貨が稀少な存在となってデフレや恐慌が発生します。この事は絶対に忘れてはならない教訓だと思います。
連投失礼します。文字制限に引っかかったので。
ところで、PMCがどんなに大きくなっても一国の正規軍には匹敵できず、下請け業が主体なわけで、その上仮にPMCが高い値段吹っかけて、それがドル価値の下落によるものであっても、というかドル価値の下落によるものであるならば、むしろ、アメリカはPMCに委託せずに自分でやった方が安上がりという元の姿に戻るだけではありませんか?
通貨というのは、誰かの負債です。その負債を他者が持つことを良しとするのかどうかが信認の問題だと思いますが、ドルは永久に下がるわけではないので、いずれ安定します。アングロサクソンが米国と豪州の二つの大陸を単独で押さえていることはとても大きい。ドル覇権が完全に崩れるのは、この二つの大陸で人種構成が変わった後でしょう。
現在のドル覇権の状況に近いのは、江戸時代の金銀藩札の三通貨が並存した状況ではないかと思います。金はドル、銀はユーロ、藩札は各国通貨。この時代に商人がどう振舞ったか?が日本の将来に知恵を与えてくれるかもしれません。 江戸時代に対比させて考えるなら、ドルは購買力を巡って周期的な改革を繰り返す通貨になり、また大名貸しや参勤交代などの出費命令を各国に出すような存在になるのでしょう。そして経済取引の中心はユーロに移るのではないでしょうか?日本は、米国の出費命令受けやすく、経済取引の中心から遠いという立場に置かれるでしょう。
>現在の管理通貨制度がリセットされる場合、資源価格の高騰によって世界経済はスタグフレーションに見舞われるのか。
全通貨が弱くなったら,需要も減る方向な力(買い控え・代替エネルギーや代替資源の利用)が働いてどこかで均衡すると思います。現在の資源高も実需増というよりものさしのドルが弱くなっているからですし… また,資源自身に通貨の機能は無いので結局通貨交換しないといけません。全部弱くなるのではなく,どの通貨も景気循環して強い時と弱い時が現れるのではないでしょうか。
私が一番心配しているのは、ユーロ圏がルールで日本を縛り痛めつけることです。本来なら、東アジア圏でまとまって対抗しないといけないけれども、韓国は伝統的に勝手な行動で地域全体の足を引っ張るし、台湾は中国が面子で縛り付けるでしょう。
日本として、米国と強調してユーロ圏のルールに対抗するか、あるいは中国の広東・上海・北京・大連の都市圏を20年単位で巻き込んで、日本・韓国・台湾・香港・中国大都市圏をまたぐの労働力移動を含んだ共通市場を作ることでしょう。中国大都市圏は1万ドル経済までもう少しですので10年後ぐらいには格差が縮み、中国本土内よりも経済的に再t系通貨圏に近づくでしょう。
abekojiさん、どうもです。通貨調整のオーバーシュートがかなり激しくなるリスクは全く無いとは言えないですが、各国とも無策のまま呆然とするわけでもないですし、一方で実物j資産もご指摘のように需要低迷というショックを受けるので、新たな均衡点の発見は早いかもしれません。ただ、来年の経済がどうなるか…。見通すのは至難の業です。
飛車さん、どうもです。希少性の高い実物資産を裏付けとした本位制はデフレになりやすいですね。希少物は、希少であるがゆえに、過度に選好されやすい面がありますので…。 今後の展開ですが、恐らくはオーソドックスな調整をたどるのだろうと基本的には見てます。ある程度のドル安、米国の輸出増大、経済の立ち直り、ドルの回復でしょうか。個人的にはユーロは高過ぎる感じがあり、こちらも逆の調整が必要な気がします。 PMCについては、まあ彼らとて、国際関係の中で認知されながら活動していかないと、規制対象となりかねない面もありますので、大人の対応も取るのでしょうね。あと、ドル安になって米国が自前で軍事力を回復する場合、有能な人材は有力なPMCに流れ、質の確保に苦労するのかもしれません。
PKさん、どうもです。「ドルは購買力を巡って周期的な改革を繰り返す通貨になる」と言うのは、その通りかもしれません。今回、調整が起き、それを潜り抜けても、米国の過剰消費体質はそう簡単には変わらないかもしれませんので。ユーロ圏がルールで縛る、というところが少し分かりにくかったです。
EURO SELLERさん、どうもです。私も基本的には、実物資産は需要減退の影響を受けて、一方的な高騰にはならないだろうとみております。供給ショックは、いずれ実物に跳ね返りますので。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
下記はとても分かりやす一般人への啓蒙活動ですね。
こういうのが出るってことは今の状態から脱しようという考えがあるのかもしれませんね。 一応今の紙と負債だけの問題点や資源や鉱山や金(金はローマ帝国の末路)本位体制の問題点をあげてますし。 MONEY AS DEBT http://video.google.com/videoplay?docid=-446781510928242771&hl=en
はじめましてではないですけどさん、どうもです。個人的には、色が変わる可能性は低いとは思っておりますが、金本位制と管理通貨制度の基本的な構図は押さえていた方がよいでしょう。ただ、この手の話は啓蒙=不安を煽る、という感じにもなりやすく、難しいですね。
非公開さん、どうもです。ベルリンの壁崩壊以降、国家の枠組みが様々な面で薄まる中で、今後の安全保障がどうなるかは、かなり気になるところです。中央銀行とてグリップ力は弱まりつつあり、先行き不透明は強まっているのでしょう。乱気流が激しくならないよう祈るしかないです。
Kさん、どうもです。今回のバブルは、米国の発注が大きい要因で、その意味ではバブルが終わる可能性はあります。一方、国際的な安全保障の変化や、世界的な紛争の起こりぐあいがどうなっているかも無視できない要因で、なかなか予測は難しいと思っています。まあ、この辺は専門家ではないので、なんとも言いがたいです。
現在私が思い描けるのは基軸通貨と証券化商品はセットになっていると考えていることです。ただそこには一国の通貨と違って基軸通貨という名の世界通貨は無尽蔵に刷れるということです(当然市場での取引となる財務省証券に替えないいとならないが)
また通貨を分からなくしているのが為替という関係かと思われます。 世界中にばら撒かれた基軸通貨がアメリカに帰っていったとしたら、しかしそこには労働によって作られた製品(富)をアメリカは既に手にしているのですから、それに見合う労働によって作られた富を返さなくてはならないことになります。そこで結論となりますと世界にばら撒かれた何兆ドルもの資金がイラク戦争に使われ、アフガンのテロ退治という名目で使われたと考えています。 まだ完全な考えが纏まっていませんが、やがて纏められると考えています。
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