何人かの方から連絡を頂いたのだが、総裁らの国会答弁で、国会議員から「『願望リポート』と呼ばれている」との質問があったようですね。そのやり取りのところは残念ながら見ておりませんでした。総裁は語気を荒げて反論した、との報道もあったやに聞きました。いずれにせよ、引用(?)されたこと自体については、ありがとうございました。
多少補足するなら、「(来年度が)成長率は2%台になると確信を持ったわけだ」(福井総裁)と言うのであれば、やはり利上げしないとシナリオの信ぴょう性が疑われる。日銀はシナリオを作り、それを金融市場に売り込んでいる(メッセージを伝えている)のだが、金融市場には「だってシナリオを作った日銀がシナリオ通りに政策を運営してない(食っていない)」と映る。つまり、賞味期限の切れたシナリオを押し付けられているわけで、これじゃあ信用しないと思うな。 “願望リポート”では日銀内でもいくつか面白い反応があったので紹介したい。 その1 第1と第2の柱の切り分けが曖昧である。サブプライム問題のダウンサイドリスクは足元の話なので、第一の柱に入れ込むべきではないか。そのうえで、第一の柱の見通しが実現するい然性がやや下がった、という風に書くのが自然。その方が分かりやすいであろう。利上げしなかった理由をすべて第二の押し込むから分かりにくくなる。 その2 リポートの量が再び増え始めた。去年の増加は、丁寧に説明したい、という前向きなものだった。その後、簡素化されて、今回から文章量の増加が顕著になったが、この増加はヘッジニーズ(or弁明)の増大という後ろ向きのものであろう。 その3 その2の解説を別な人に教えたら、「意図的在庫の積み増し」が「意図せざる在庫の積み増し」になったようなもんだな、との反応であった。 その4 7階(企画局)に電話したら、何だか慌しい雰囲気であった。「余裕があるんじゃないの?」と言ったら、「いやあ…、ないんです」とのこと。こういうとき、日銀は得てして国会答弁の想定問答作りに追われていることが多い。明日も呼ばれるのかな…。みなさん、ヘッドラインに注意しましょう(まあ、かなり出尽くし感ありますが)。 ところで、総裁は第1と第2の柱と右目、左目に例えてましたね(どっちがどっちか忘れた)。同じ高さ→同じ比重→右目・左目。第1と第2のタイムスパンは違うので、右目と左目に映る風景は倍率の異なる望遠鏡を同時に見るような感じである。頭が痛くなりそう…。普通、右目と左目で同じ物を見るから焦点が合うのではなかったか。そうかあ、合ってないのか。
by bank.of.japan
| 2007-11-01 19:40
| 日銀
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Comments(17)
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北の書生もどき
at 2007-11-01 21:15
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こんばんは。
国会での”願望レポート”発言、ヘッドラインで見ましたが、 出所はこのブログなんですね。びっくり。
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飛車
at 2007-11-02 02:21
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願望レポートが国会で取り上げられましたか。
もっとはっきりと、「デフレ脱却していないじゃん」という突っ込みがほしいところだけど、今言うと庶民感覚との乖離が議員さん側の致命傷になっちゃうかなぁ。 個人的には、「判断停止状態」に見えます。利上げしたい。利上げする前提で市場にも色々言っていた。でも足元利上げどころか、下手したら前回ゼロ金利解除の悪夢がチラついてきた。本当は下げといた方がリスクヘッジできるんだけど、自分たちのこれまでの発言と整合性が取れない→純文学で時間稼ぎしている間に問題解決してくれないかなぁみたいな。兵は拙速を好むんですがね。
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元日銀マン
at 2007-11-02 05:54
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日銀内には(昔は)上司の方向性に会うような材料を一生懸命探せた人を評価するような風土が多少あったように思います。
現場でリサーチしているまじめな部下もその方向性を頭に描いて情報収集したりレポートを書くことがある(もしくは複数の人の筆が入る段階でその方向に流れていく・・)ので自分たちの方向性と同じ流れが続くときはいいのですが、環境が変化するときは事実がつたわりにくくなってしまいます。
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元日銀マン
at 2007-11-02 05:54
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だから、環境が変化するときや、従来の主張とあわない材料が出始めたことには「やわらかく」表現するようにつとめたり、その部分を削除したりします。
中央銀行業務には中長期的な一貫性が重視されるので、客観的な数字や(記者会見に耐えうる)説得力あるものでないと、従来の主張をかえることはなかなかできないという背景もあります。 もちろん、世間の現実と自分たちの方向性にはっきりとズレが出てきたとき(記者会見に「耐えうる材料」が揃ったとき)には、その材料を並べていきます。
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元日銀マン
at 2007-11-02 05:55
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記者会見をする立場の方も「記者会見は美しく」という意識もあるので、やっぱり説得力、理論、継続性なんですよね。
もちろん、マスコミ側の記事取り上げ方や質問のしかたに影響を受けてきたことへのリスクヘッジも含まれていると思いますが。。 ps 数年前のごく限られた部署を経験した者の個人的な意見です
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通行人
at 2007-11-02 11:47
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>中央銀行業務には中長期的な一貫性が重視されるので
サブプライムに対する欧米の反応のどこに一貫性があったのか。 本当に一貫性なんて必要なのか。「判断誤ったことを認めたくない」 という気持ちの言い訳が、一貫性云々じゃないのか。 金融政策に求められているのは、一貫性じゃなくて機動性だし、 必要とされる一貫性は、機敏かつ断固たる行動という点だと思う。 >「記者会見は美しく」 そうか。日銀の仕事は、記者会見をすることなのか・・・
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PK
at 2007-11-02 12:23
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これからいろんな意味で方向性が失われてくるので、インタゲ派を黙らせる効果も鼻くそくらいに考慮して、インフレターゲット努力宣言をすべき。
同時に、不動産市場を整備することに留意する
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bank.of.japan at 2007-11-02 17:57
北の書生もどきさん、どうもです。先週、本業でも書いているので、そちらの可能性もあります。まあ、ちょっと驚きましたが…。
飛車さん、どうもです。本日の国会答弁では、民主党の小沢鋭仁議員が鋭い質問をしておりました。まさに「景気は減速、物価もマイナス。政策判断間違えたのではないか」と。こういう質問が多いといいのですが。私も日銀が時間稼ぎしているように思えます。
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bank.of.japan at 2007-11-02 18:10
元日銀マンさん、どうもです。ご指摘のような風潮がかつては確かに感じられたように思います。統計の出方がやや方向からずれてきたとき、「均してみれば」という表現でとりあえずかわすのは、まあそのズレが一過性かもしれず、均して見るのが正解かもしれませんが、結果的に判断の誤りに気づくのが遅れるリスクもあります。植田元審議委員が「(振り返ってみて日銀は)景気の転換点をうまく当てていないことがわかる」と述べたことがありました。政策スタンスである方向感があるとき、知らず知らずそれになびくありがちなことだと思います。
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はじめましてではないですけど
at 2007-11-03 19:41
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景気は減速、物価もマイナスですが、政策は間違えてるかもしれませんが、日銀だけの問題ですかね。
この記事とはまったく関係ありませんが、 日銀さん面白いことやってらっしゃいましたので(半分いやみ) http://www.kinco.info/index.html http://sankei.jp.msn.com/culture/arts/071103/art0711031626000-n1.htm
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一読者
at 2007-11-04 00:16
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小沢鋭仁議員と福井総裁のやりとりですが、ロイターのニュース「下振れリスクにかまけて将来バブルの発生・崩壊があってはならない=福井日銀総裁」に出ていますね。結局、福井さん的には、「ダウンサイドリスクなんて大したことない、バブル阻止のためには利上げは当然である」ということなんでしょうね。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities/idJPnTK004466820071102
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osome
at 2007-11-04 16:59
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ロイターのニュース、ご紹介有難うございます。
福井総裁の発言「・・・・、これから厳しい少子高齢化、人口減少、財政再建という長いプロセス・・・・」 少子高齢化と人口減少は、かなり深刻なデフレのリスクファクターじゃないのでしょうか? そのデフレ懸念が大きい中で、財政再建を進めるには名目GDPを高めに持っていく政策が必要、と訴えていたのが中川元幹事長と竹中さんの路線だったのに、端から「そんなこと無理でしょ」みたいな顔をして非協力だった福井総裁が、こういう答弁をするなんてね。 政府も、次こそはまともな総裁を選んで欲しいです。
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bank.of.japan at 2007-11-04 19:27
はじめましてではないですけどさん、どうもです。何でもかんでも日銀のせいというわけではないですが、そうみられてしまう存在でもありますので。これはいかんともしがたいです。ご指摘のイベント、面白そうですよ。
一読者さん、どうもです。小沢議員の質問はなかなか良かったと思います。日銀のロジックをよく理解している印象でした。こういう鋭い質問は聞いていて気持ちがいいです。 osomeさん、どうもです。総裁の答弁をひっくり返すと、「将来のバブル発生・崩壊にかまけて足元の下振れリスクの実現があってはならない」でしょうか(笑)。次は誰が総裁になるんでしょうかね。こればっかりは読めません。
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飛車
at 2007-11-04 22:43
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デフレファクターが色々あるのはわかりますが、インフレ・デフレは
貨幣と財の相対価格問題なので、通貨供給量のコントロールが適切 に行えれば、基本的に金融政策でオーバーライド可能だと思います。 「インフレになったからといって、失業率が下がらない」などの別の問題 が発生する可能性はありますが、そういうのは切り分けて考えましょう。
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Teddy
at 2007-11-06 14:27
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サブプライムがらみネタなんですが、向こうの会計でいうLevel 2、Level 3資産について、G○とM○はそのLevel 3資産、つまりはmark-to-model資産の比率が相対的に多いとしばらく前のMarketwatchにあるようです。メリルはその比率が非常に低い、したがって、巨額のwriteoffが必要になったんじゃないか、と向こうのbearの本尊みたいな人がいってます。この通りなら昨晩の両者の30億ドル損失の話もまんざら嘘でないような(でも、middle office部門とかあるしなぁ・・・)。でも、G社のあまりの好決算ぶりからはありうる話?!
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Teddy
at 2007-11-06 15:11
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その関連では、Merr○社にしたところでABXでインプライされているよりは甘々の評価、UBSはそれでいけばまだmid qualityが90セントで評価しており、80億ドルの追加損失が出るはず、と4日付FTが。BOJさんも存在しない、借入れブームがない中で発生しようのない日本発の資産バブルの幽霊に怯えた(ふりを)するんでなくて、海外発のバブル崩壊のデフレ・インパクトにこそおびえたほうがいいんですが・・・
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bank.of.japan at 2007-11-07 17:57
Teddyさん、どうもです。日銀の「第二の柱」においては、アップサイドリスク(バブル発生など)よりもダウンサイドの方が心配であると、私も思います。
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