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経済のデュアル化とデュアルカレンシー論=そして解決策は…
 日本総研から「忍び寄る経済『デュアル化』の危機とその阻止に向けた戦略」というリポートが出ていた。こちらです。「デュアル化」とは、前から何度か触れているように「経済構造の分断」の言い換えだ。でも、デュアル化はそのまま「デュアルカレンシー」と言えるので、うまい表現だなと思った。「経済構造の分断に際し通貨分離を考える」と表現するより、「経済のデュアル化に際しデュアルカレンシーを考える」の方がカッコよい(笑)。
 ところで、デュアルカレンシー論は考えるのは面白いが、解決策としてはあまりにも非現実的。地域を通貨圏で区切れば、優等国民・劣等国民のような差別意識が生じる恐れもある。将来、格差が縮小してめでたく通貨統一となっても、統一ドイツで旧東ドイツ国民が微妙に蔑視されたのと似た状況が再現されないとも限らない。
 同リポートによれば、このままデゥアル化を放置すると「『成長産業セクター』での賃金増が限られ富の海外流出が続く一方、『停滞産業セクター』に属する低所得層が増えていく結果、家計活動が低迷して社会全体の活力が失われ、一段と国内低迷・海外シフトの流れに拍車がかかるいう、『産業部門デュアル化と所得分配デュアル化の悪循環』が生じる恐れがある」という。
 ではどうすればよいのか。このリポートでも訴えているように、人材の有効活用(再教育など質の向上)、労働市場の流動化促進などの改革が必要なのだろう。ただ、これは相当に長期的な取り組みとなり、速効性は期待できない。企業の前向きな対応を期待したいが、手間暇掛けて人材を育成するにはコストがかかり、また人材を育成しても流出するリスクもある。あまり期待はできない。
 同リポートは「景気回復が見込まれる2007~2008年度にこそ改革を断行すべき」と訴えていたが、肝心の景気は先行きが怪しくなった。政局も混沌とし、デュアル化の阻止に本腰が入るような情勢でもない。なるようにしかならん、のだろうか…。
 ちなみに地域間(内)格差の解消は、求人倍率の低いところから高いところへの人口移動が有効だと思われるが、どうなのだろう。人が減るところはもっと求人が落ち、最後は人がいなくなることになるのだろうか。この問題、なかなかうまい解決策は見当たらないなあ。
by bank.of.japan | 2007-09-10 21:54 | 経済 | Comments(12)
Commented by 通行人 at 2007-09-10 23:08 x
要旨だけ見たのですが、「格差社会」同様に、単なるネーミングの妙ではないでしょうか?デフレでは非効率部門が温存されるというだけではないでしょうか。グローバル化に対応できない産業は、そもそも比較優位にない産業です。それなりの名目成長を維持していれば、企業は勝手に姿を変えてより儲かる仕事にシフトしていきます。太陽の恵みと水があれば、一々手を加えなくても植物は育ち、勝手に植生を変えていくものです。
こういうのを見るにつけ、民間経済活動に口を挟まないと儲からない人がいるんだなぁと思わざるを得ないですね。
Commented by すなふきん at 2007-09-11 07:24 x
地方の駅前通りや下町の商店街の疲弊は限界状況のように思われます。本来なら戦後何度かの高成長期にこれらの部門が淘汰されより高成長な部門へシフトを終えておくのが理想的なのですが、現実はそうではなかったことが問題をややこしくしている要因のひとつだと思います。デフレはその問題をより鮮明にあぶりだしたというところでしょうか。残酷な言い方かも知れないですが、本当に見込みがないところはいかにショックを少なく安楽死させていくかということの方が、「町興し」などと言って結局は後々後悔につながるような政策を煽るよりマシなのではないかと考えるのですが。人材をはじめあらゆるリソースが不足している地方で「自立」とか言われてもなんだかなあ・・・というところではないですかね。あと、金融面から景気を後押しする政策にいまだに消極的なところは限りなく不安ですね。
Commented by 飛車 at 2007-09-11 15:33 x
デフレが非効率部門を温存しているのか、それともインフレ(好景気)が非効率部門を温存するのか。そこの見解が割れているのでしょうか。細かい事はわからないですが、良くある実証の成果では慎重に言葉を選んで、「不景気のときには生産性の成長が停滞している」「景気回復期には生産性が上昇していく」とだけしか言っていないように思います。この場合、どちらの解釈も当てはまるように思います。
個人的にはケインズとシュンペータだったら、断然ケインズな人なので、前者なんですが。あくまで素人談義レベルの話。

ところで、駅前商店街はどのように高成長な部門にシフトすればよい(良かった)のでしょうか?何が高成長になるのか、どうやって予測したらよいでしょうか?その回答示された方を見たことがありません。残念なことに。
Commented by 人材 at 2007-09-11 20:12 x
経済の分断を防ぐには、お金だけではとても事足りません。ここはマーケットに任せておいては実現されない世界なのでまさに政府の出番なのですが、政府が経済的インセンティブをつけるなりして、ヒトを回してあげないとどうにもならないと思います。
Commented by bank.of.japan at 2007-09-11 20:19
通行人さん、どうもです。私も基本的には民間の特にミクロレベルにはあまり政府は関与しない方がいいと思います。ただし、民間の経済活動を阻害している制度・規制などがあれば、なるべくなくしていく「改革」は必要かもしれません。

すなふきんさん、どうもです。私の郷里でも限界集落があちらこちらあり、寂しいながらも、これらの集落が消えていくのは時間の問題でしょう。厳しいかもしれませんが、ご指摘のように不自然な延命を図るよりも、自然の淘汰に委ねるしかないと思います。
Commented by bank.of.japan at 2007-09-11 21:08 x
飛車さん、どうもです。デフレ(不況)は非効率部門を強く浮き彫りにする一方、インフレ(好況)は覆い隠すのだと思われます。生産性の観点でみれば、ご指摘のようなことかと…。
 駅前商店街の活性化は、月並みですが、人口集積を高める工夫しかないでしょう。バブル期は、地方都市でも機能分散(私の田舎では、国立大学を学部別に郊外に離散させ、県庁も都市の中心から離れたところに移動させました)し、人の流れが散漫になった感があります。もっとも、これとて地域内の人の奪い合いなので、ゼロサム的ですが…。画期的な策はなかなか考え付かないです。
 この点については、政投銀の藻谷浩介氏がいろいろ意見を述べていたように記憶しています。
Commented by bank.of.japan at 2007-09-11 21:18 x
人材さん、どうもです。経済構造の分断化を和らげる簡単な方法は、財政出動なのでしょう。知恵を絞って地域の活性化と言っても限界があるので、衰退を放置するのか、それとも財政的にサポートを続けるかの選択をしないといけないでしょう。田舎は、田舎が好きな人でないと暮らし続けるのは難しいので、インセンティブで人を回せるかどうか、結構厳しいかもしれません。
Commented by PK at 2007-09-11 22:14 x
日本でマルクス主義の影響が大きくなければ、情報の移動の面で意図的に分断させることができるのですが、とにかく道州制などの分権化では共産主義の土壌がネックです。宗教や思想や民族を通じて外国の介入があるので、それを防ぐ仕組みを作らないといけないが、日本ではマルクス主義が強力に根を張っていて、そういうことができない。アイデアは幾つかあるけれども、それがネックです。
Commented by 飛車 at 2007-09-11 23:04 x
>>本石町日記さん
覆い隠されて見えなくても、産業シフトが起きていればいいと思うんですがね。
Commented by bank.of.japan at 2007-09-12 19:48
飛車さん、どうもです。自然にシフトが起きるのが望ましいと思います。

PKさん、どうもです。マルクス主義が強力に根を張っているかはちょっと疑問ですが、全般に社会主義的な風潮が強いのはそうかなと思います。
Commented by Kunif3 at 2007-09-13 00:24 x
初めまして、「駅前商店街の対策」みたいな話ならば、増田 悦佐氏がいくつか書いていますね。
ここに来る人にはトンデモ本的なものかもしれませんが、以下のようなのがあります。
「高度経済成長は復活できる」文春新書
「東京圏これから伸びる街―街を選べば会社も人生も変わる」講談社SOPHIA BOOKS
「国家破綻はありえない」PHP研究所
「地価は下がる・日本は再生する」フォレスト出版
Commented by bank.of.japan at 2007-09-13 01:27
Kunif3さん、どうもです。情報提供、ありがとうございます。参考にさせてもらいます。
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