人気ブログランキング | 話題のタグを見る
日本の低金利とサブプライム問題を関連付けると…=戦犯容疑のリスクあり
 本日は、政策委員会でたった一人の正常化ピューリタンである水野審議委員の講演&会見があった。私は、利上げには反対だが、水野委員の心意気は買いたい。現在のサブプライム発の市場混乱が経済にあまり影響を与えず、近い将来に利上げできた場合、そのときの賞賛は水野委員一人に与えられるべきであろう。そうなるといいですね。
 それはさておき、水野委員の講演で一つ気になったのは、サブプライム問題の背景要因の一つに日本の低金利を挙げたこと。これは「過剰流動性」を招いた一因という位置付けであったが、間接的にせよ日本の低金利とサププライム問題をつなげてしまうと、これから起きる悪いことの責任は日銀に押し付けられてしまうリスクがある。その意味では、戦犯容疑になる一文であるかもしれない。
 水野委員としては、市場混乱が世界経済にダメージを与えることはない、との判断があるのだろうが、利上げを正当化するとしてもあまり多く要因を盛り込まない方が無難ではないかと思った。シンプルに「景気は良くなる、だから利上げだ」とのスタイルでいいのではないか。その方が失敗したときに背負わされる容疑は少なくなるでしょ(笑)。
 クレジットバブルが崩壊し、世界経済が悪化していく。そうなったとき、昨年来の日銀の利上げが引き金だったと言われると、「バブルつぶしは日銀のお家芸」との評判がワールドクラスになってしまう。低金利は日本経済に見合ったものだった、世界の過剰流動性など知らんよ、景気は良くなる、だからそれに見合って利上げしていく。シンプル イズ ベストでしょう。
 私は景気見通しには弱気なので、お勧めは「経済・物価情勢が明確に良いと多くの国民が思うまで利上げは見送る」という方針を打ち出すこと。時間軸効果が発揮されると思うが、いかが。
by bank.of.japan | 2007-08-30 21:57 | 日銀 | Comments(16)
Commented by パットメセニー at 2007-08-30 23:03 x
水野委員と同じく、このロジック=世界の過剰流動性は日本の低金利が原因、を唱えているのは、元大蔵財務官のU氏、千葉商大大学院のS教授、N前研究所のN前氏など、その界隈ではトンデモ扱いされている方々である。そのうち先の参院選で大勝した某党からも同様の発言が出てきそうだ。1ヶ月ほど後に、この主の発言を行った人物をリストアップすれば、面白いかもしれない。リトマス試験紙のようなものか。
Commented by 良心と発言 at 2007-08-31 00:51 x
1.私自身は水野氏の利上げ論には全く賛成できない
2.しかしながら、日本の低金利が国際的な資金移動をいびつにしたこと自体は否定できない。少なくとも、「主因」「惹起」ではないが、「一因」「助長」というレベルでの過剰流動性への関与は否定できない
3.ただし、政策決定は総合的な観点からなされるべきである
4.利上げによるマクロのダメージと、利上げをしないことによる国際的な資金移動の不安定化を比較考量すると、少なくともデフレに沈んでいる状況下での利上げは主流派経済学の立場からは肯定しょうがない
5.水野氏が自己の信念に忠実で良心を持った人であることは間違いないが、利上げは肯定できない。
6.国際的な金利格差が今般の問題の「一因」になっていることは否定できない。ただし、サブプライム問題に関しては「遠因」とすら言えないレベルである。
Commented by 良心と発言 at 2007-08-31 00:54 x
7.日本の為政者にはどうしようもない人がいる反面、良心の塊のような人がいる。自己の良心からした、ポジション・トークゼロの誠実で真面目な日本人の発言が拡大解釈され、東洋への偏見と一体化することで、いつの間にか戦犯として血祭りに上げられる可能性がこの問題に関しても否定できない
8.「一因」「助長」という話に尾ひれがついて、いつの間にか「主因」「惹起」にされたら適わない。日本という国は、必ずしもそこまで信用されていないことに留意した発言が必要である。とかく、大惨事では人々は「戦犯」を見つけたがる、それも自分とはできるだけ離れたところに「戦犯」を見つけたがるものなのだから。
Commented by どうだろう at 2007-08-31 08:17 x
そもそも日本はまきこまれただけで、
どっかの投資銀行やらヘッジファンドの額からみたら日本の円なんてびびたるもんでしょう。
Commented by 日本の将来を憂う一国民 at 2007-08-31 10:42 x
水野先生が野村でレポートを書き始めたとき、よく参考にしていましたが、そのころのキレを考えると、日銀に入ってからの発言は同一人物のものとは思えません。サブプライムの原因が日銀の低金利政策のせいって、風と桶やの関係と同じようなものだと思うが、、、
そんな理由で金融政策を運営されたら、数年前のアルゼンチンになってしまうのではないだろうか、と本気で心配になります。
同一人物とは思えないってことは、何かほかの力が働いているのではないか(どっかのスパイとして日本を破滅に追いやろうとしているのではないか)と本気で思いますが、そういううわさはないのですか?
Commented by 日本の将来を憂う一国民 at 2007-08-31 11:20 x
>お勧めは「経済・物価情勢が明確に良いと多くの国民が思うまで利上げは見送る」という方針を打ち出すこと。時間軸効果が発揮されると思うが、いかが。

ゼロ金利じゃないのに時間軸効果なんて邪道じゃないでしょうか。シンプルに利下げすべきと思います。
ちなみに、利上げしておいて5ヶ月連続で物価マイナスなんて、他国だったら総裁更迭もんだと思います。
Commented by PK at 2007-08-31 12:36 x
アメリカが主犯に決まってるじゃん
中国製品を買い捲り、イラク戦争で原油価格を政治的に引き上げたんだから
Commented by 日本の将来を憂う一国民 at 2007-08-31 16:04 x
>アメリカが主犯に決まってるじゃん

そう。そんなこと小学生でも分かるのに、その責任を日銀で負ってしまおうって、まともな考えではない。審議委員になってからの水野先生はどう考えてもおかしい。
Commented at 2007-08-31 17:39 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2007-08-31 20:51
パットメセニーさん、どうもです。日本の低金利と世界的な過剰流動性の関係はゼロと言い切るつもりはないですが、問題になるほどの規模でもないだろうと思います。円安バブル論に乗って利上げしていたら大変なことになっていましたね(笑)。良かった、良かった。

良心と発言さん、どうもです。詳しい解説、ありがとうございます。同感であります。特に8については、マスコミが「主因」みたいな形でヘッドラインを作ってしまう面もありますので、そういうマスコミ風土の中では「エサ」となるような物言いは避けた方がいいと思います。

どうだろうさん、どうもです。私もそう思います。
Commented by bank.of.japan at 2007-08-31 20:58
日本の将来を憂う一国民さん、どうもです。民間で自由に論評する立場と、政策担当者になった立場では、やはり違う感じになると思います。なお、水野さん自身は素直に正常化路線を追求しているだけだと思います。私自身はゼロと0.5%とではマクロ経済には大きな差はないと思いますので、今のまま時間軸やれば足元0.5%を起点に中長期金利が低下する圧力が働くと思います。

PKさん、どうもです。米国が意図して現在の事態を招いたというより、こうなっちゃったという印象ですが。

非公開さん、どうもです。ご参考、ありがとうございます。
Commented by EURO SELLER at 2007-09-02 05:53 x
息抜きに・・・

(より現実的な)勝者と敗者の違いというのが,
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50902029.html
ここに出ています。

FEDと日銀向けにアレンジすると・・・

1.勝者には負ける余地があるが、敗者には、ない。
→FEDには利下げの余地があるが,日銀にはない。
2.勝者は幸運を勝因にあげるが、敗者には運そのものがない。
→FEDはインフレを利上げの理由に挙げるが,日銀にはインフレそのものがない。
3.勝者の特典はより働く事。敗者の特典はそれにケチを付ける事。
→FEDの特典はマーケットと対話すること。日銀の特典はマーケットにケチを付ける事。
4.勝者は問題を勝ち取り、敗者は問題を与えられる。
→FEDは問題を他国に押し付け,日銀は問題を与えられる。
5.勝者は敗者を作り上げることで償う。
→FEDは日銀を犠牲にして償う。

(続く)
Commented by EURO SELLER at 2007-09-02 05:54 x
(続き)

6.勝者は勝者と妥協し、敗者に戦いをしかける。
→FEDはECBと妥協し,日銀に戦いをしかける。
7.勝者は下を向くべきときに上を向き、敗者は上を向くべきときに下を向く。
→FEDは利下げすべきときに据え置き,日銀は利上げすべきときに据え置く。
8.勝者は自らを押し上げ、敗者は互いを引っ張り合う。
→FEDは政府と政策を共有し,日銀は政府と足を引っ張り合う。
9.勝者は過小に約束し過大に成果を上げる。敗者は過大に約束し過小に成果を上げる。
→FEDは過小に約束し大胆に行動する。日銀は過大に約束し結局は何もしない。
10.勝者はいずれ敗者となる。その逆は真ならず。
→FEDはいずれ不況を経験する。日銀はその逆(好況)を経験しない。

無理やりこじつけたので本当はそうでないところもあり,自虐的でもありますが・・・
Commented by harry_g at 2007-09-02 17:00
全く的外れかもしれませんが、日本の低金利がアメリカの過剰流動性にどの程度の影響を与えたかは、国際収支の資本勘定を分析しても分からないのでしょうか?(「円キャリー」の定義が様々で、そう単純ではないのでしょうか。)サブプライムのファンディングへの直接的影響は、ALMの観点から国内の金融機関が外貨建投資に積極的でないことを考えると大きくないのではと想像しますが、実際のところはどうなのでしょう。
Commented by bank.of.japan at 2007-09-03 19:34
EURO SELLERさん、どうもです。比喩がなかなか当てはまりますね(笑)。自虐的ではありますが、結構当たっている面もあり、楽しめました。ありがとうございます。
Commented by bank.of.japan at 2007-09-03 19:43
harry_gさん、どうもです。私も個人的には、邦銀のサブプライムへの関与は全体としては軽微ではないかと感じております。グローバルな過剰流動性への影響は、もっぱら(外貨建ての)投信ルートが中心であり、これも取り立てて問題視するものでもないような気がします。ご指摘のように円キャリーの定義は曖昧で、「本当に円を借りて外貨を買い、レバレッジを効かした投機」がどの程度あるのかはナゾ。一番大きいのは「外為特会」なのは間違いないですが。個人で流行る「為替証拠金取引」も円キャリー型ですが、短期売買が中心で、過剰流動性との関係は薄いとも思われます。
<< 最強の資金供給策は「いわゆるC... 日銀通りの騒ぎは何だったのか… >>


無料アクセス解析