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ECB緊急・無制限オペの考察
 前日のECB緊急・無制限オペ(本日も10兆円供給、足切りあり)は、日銀&資金関係者の間では「本当に必要だったのか」という疑問も出ている。マネーマーケットを沈静化するためのオペレーションながらも、「突然・大量」であったことが不安を増幅した感もあるため。増長された不安が収まらず、クレジットマーケットの過剰反応が実体経済に悪影響を及ぼせば、歴史に残る「オペ」となるかもしれない。
 銀行間の資金取引は相互信頼によって成り立っており、「出したお金が返ってこない」との懸念が少しでも広がると、一気にシステミックリスクに発展する恐れがある。従って、「不安」があるなら、まずはそれを広げないことが重要となる。この点、中央銀行がどのような流動性供給をすべきかは簡単ではなく、不安のステージによって異なると考えられる。
 まず、一部銀行の資金繰りがひっ迫し、「不安」が局所的にとどまっている場合、中央銀行は目立たぬように流動性を供給し、不安の沈静化を図るのが望ましいと言われる。これは、中央銀行が動いていること自体が不安を招くためで、すべては極秘のうちに済ませてしまうのが理想的だ(もちろん、対象行が債務超過なら金融システムから切り離した処理が必要)。
 一方、不安がかなり広がり、資金の取り上がりを余儀なくされる銀行が増えた場合には、中央銀行が表舞台に姿を現し、見せ金効果を狙って大量の資金供給を行う、という方法が効果的であると言えよう。これは1997年秋の金融恐慌時に、日銀が積み上3兆8千円(記憶に頼った数字で不確かです)をやったのが典型的な事例。
 この点、ECBの15兆円オペは、不安がなんとなく漂う程度の状態でいきなり表舞台に出てきた感が強い。緊急オペでしかも無制限となると、「何か大変なことが起きている」という印象を与え、さほど問題を感じていなかった銀行も不安になって応札するから、巨額のオペになってしまったのではないか。そして、その巨額さが周辺市場に不安をもたらし、キャッシュ需要を高めた可能性もある。
 ECBの調節体系は多くの国を束ねる為に大雑把な仕組みに見える。マクロ調節で流動性対策をやろうとすれば、あの方法しかなかったのかもしれないが、日銀&資金関係者と議論した中では、「オペは打たず、本当に不安があった銀行にはロンバートに駆け込ませる方法も取れたのではないか」というアイデアもあった。
 まあ、今となっては歴史の評価に委ねるしかないが、「中央銀行の流動性対応」というマニアックな視点においては興味深い事例であるのは間違いない。このまま不安が徐々に収まって欲しいと思うが、どうなんでしょう。
by bank.of.japan | 2007-08-10 22:58 | マーケット | Comments(15)
Commented by walrus at 2007-08-10 23:08 x
8/2の「利上げ予告」から一週間後の対応であり、かなりボラの高い中央銀行と映ってしまいますね。日本人と欧米人のきめ細かさの差でしょうか、それとも異常時経験の多寡の差でしょうか。いずれにしろ、日銀が神々しく感じられる稀有なケースです。日米欧協調利下げだったら、またゼロが見えてきちゃったとこですね。日銀としては「世界的インフレ懸念に感謝」でしょうか。
Commented by 椿ライン at 2007-08-11 01:49 x
 毎度お疲れ様です。世間は夏休みモードですが、今週はマーケットの怖さを思い知らされる日々でしたね。
 ご存じかと思いますが、日銀レポートで日米欧英の金融調節の仕組みをまとめたものがありました。ユーロ圏では、普段の金融調節を各国中銀が事務代行しているということを考えると、今般はアナウンスメント効果が重視されたのでしょうか。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/data/ron0606c.pdf

 本石町さんが仰る通り、「不安」が局所的にとどまっている場合は目立たぬように流動性を供給するのが望ましいですね。2002年に日銀が即日オペを導入した時は、某メガバンクへの資金供給が目的だったわけですし。
 しかし、2003年3月11・12日に日銀が1兆円規模の即日オペをやった時、日銀事務方は「株価指数だけでなく、大手銀行株の動向を見ながら予防的に行った」--と説明していました。個別行の流動性対応より、アナウンスメント効果が重視された局面です。
 本石町さんの仰るとおり、不安の度合いで対応は違うと思いますが、FEDが10日、NY連銀のオペと一緒に緊急声明を出しました。歴史の評価が必要な局面になってきたようで・・・。
Commented by three-hyphens at 2007-08-11 03:27 x
BOJがこれで利上げしたら,むしろ大したものだと思いますけど,「そごう」程度で尻込みした体質(ボードは変わっておりますが…)からすると,無理なのでしょう.

結局,「第二の柱」に基づく利上げって何だったのでしょうか….バブル予防のつもりで最近まで張り切っていたのに,認識違いで,実はバブル崩壊はもう目の前だったという,またBOJならではの「間の悪さ」のオチになりそうな気がしてなりません.
Commented by PK at 2007-08-11 07:35 x
今回の危機は、市場型経済で商品の値がつかない点に特異性があるので、中央銀行のファイナンスは、その値を計算するまでの時間を提供することに目的がある。
それで済まなければ、値がつかない商品を仮の値段で公的機関が買い取ることにして流動性を回復させた後に、後日清算するとか。
Commented by 幻の8月利上げ・・・ at 2007-08-11 08:18 x
こんな事なら、7月に利上げをしてバッファー?を持っておけば良かったと日銀は思っているのでしょうか。選挙なんてどうせ与党大敗で決まっていた訳だし。10月の展望レポートで現在のシナリオをどの程度維持できるか、が焦点かと。消費者マインドも悪いし、物価も依然マイナス、世界的にマネー市場が混乱しているようでは、利上げなんて普通では考えられないですが。。。
Commented by うさこ at 2007-08-11 11:15 x
ECBの無制限とはいえ担保が必要である事を考えれば、日銀のロンバートはいつでもウエルカムで常に無制限オペに近い存在のはずですね。
といっても、日銀のロンバートは敷居が高いという人が沢山いるみたいなんですよね。
Commented at 2007-08-11 11:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2007-08-11 15:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 鴨おじ at 2007-08-12 00:47 x
週明けは円安ドル高ユーロ高へ

先日ブッシュ大統領はブルームバーグTVの記者会見で「米国へのあらゆる投資を歓迎する。金利の問題について対応しない(利下げしない)。」と明言しました。これは次のFOMCでFRBが利上げすることをほのめかしていると思います。サブプライム問題に関連して米国債までもがリスク資産視されると、中国や日本の投資家が米国債を大量売却するでしょう。そうすると世界経済の破綻しかありえません。これを防ぐにはサブプライム問題への対応はFRBが金利を引き上げるしか手がありません。当然日本には金利の据え置きを要求してくるでしょう。そうするとマネーの流れは米国に戻り、米国債が買われ米国は破綻を逃れます。ただし、この対応で米国株や日本株をはじめとするリスク資産の価値は回復しますが、激しい円安とドル高になるでしょう。恐らくドルは130円を目指すでしょう。ユーロは200円かも。
Commented by くま at 2007-08-12 10:32 x
EUでは銀行のsupervisionは依然として各国の「職掌」で、しかも国によって管轄当局もシステムも違いますから、こういう「デパートのバーゲン」形式ではないと、今回のようなサージの場合には難しいんじゃないかと思われます。それを考えると、なかなか良い仕事だったという評価もあり得るような気もします。
Commented by bank.of.japan at 2007-08-12 15:31 x
walrusさん、どうもです。ECB、確かに対応が利上げ路線も含めて騒々しいですね(笑)。こういうとき、日銀はおとなしくしておいた方がいいと思うのですが…。

椿ラインさん、どうもです。興味深いことを指摘する事務方ですね。オペでアナウンス効果を狙うのは、新法以降の日銀としては基本的にはない(例外はVARショック時)のですが、まあ福井さんになってからは、嘘でもいいから演技しよ、または、演技するために事件を作り出す風潮もありましたので…。困ったもんです。

hree-hyphensさん、どうもです。第二の柱では、そのオチに私も共感するところです。けっこう気にしている日銀マンも多いですよね(笑)。

PKさん、どうもです。紙くずかもしれない商品を公的が買う事態になると、大変ですね。そうならないことを祈りたいです。
Commented by bank.of.japan at 2007-08-12 15:41
幻の8月利上げ・・・さん、どうもです。7月に利上げしていたら、クレジットマーケットの混乱は日銀のせいである、と非難する声もあったかもしれません。やらなくて良かった、という面もあるかも。今月はどうですかね。来週以降の相場次第ですかね…。

うさこさん、どうもです。ロンバートの敷居が高いという向きはまだいるんですね。気兼ねする必要ないんですが…。まじめな人が多いのでしょうか。使わないと日銀が困ることもあるような。

非公開さん、どうもです。アナウンスメント効果を狙う局面であったかどうかの判断が興味深いです。

鴨おじさん、どうもです。ドル防衛の利上げという側面が強まると、逆に不安心理が広がって逆効果の面もあるのですが、そこまで考えての利上げかどうかは判断が分かれそうです。技術論として、実弾として効くのは、円売り・ドル買い介入ですが。
Commented by bank.of.japan at 2007-08-12 15:49
くまさん、どうもです。組織構成上は、日銀の局内調整が、各国調整になるような大掛かりな形なので、小技を使えないのでしょう。従って、不安のディテールがつかみにくいときは、大砲を撃つ感じでしょうか。不安を局地で殲滅する迫撃砲が使えないため、大砲一斉射撃に頼る構図ですね。でも、音響がでかいので、世界的なヘッドラインになり、安心させたのか、それとも各国中銀が流動性供給しないといけないほど大変になったとの認識を広めたのか、個人的には疑問です。まあ、受け止め方の問題でしょうけど。
Commented at 2007-08-13 13:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2007-08-13 18:29
↑さん、どうもです。この混乱がどういう収束の仕方になるのか分かりませんが、後世のためにいろいろ検証が必要になると思います。
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