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中国のバブル対策と「特別国債」=資金需給は中立に見える
 日経金融新聞に「中国のバブル対策、迷走」という記事があった。ご存知の方もいらっしゃるだろうが、話をまとめると、①中国政府は人民銀行から「外貨準備」を買う②購入資金は「特別国債」を発行して調達③買った外貨準備は投資会社の資本金になる-というもの。私が記事でよく理解できなかったのは、「特別国債」(25兆円規模)が市場で余ったマネーを吸収するというバブル対策と位置付けられていたことだった。
 ここで、政府が中銀保有の外貨準備を保有するお金の流れを整理してみたい。まず政府の資金調達25兆円を起点とする。①特別国債25兆円を発行(市場からは25兆円吸収)②中銀に25兆円を支払い、資産から25兆円規模の外貨準備を購入(資金は政府・中銀間のやりとりで、市場には中立)③中銀は受け取った25兆円で負債を減らす(25兆円規模の手形を消却→市場に25兆円が放出)-ということになろうか。
 上記の構図から、対市場の資金需給は、結果的には中立になることが分かる。これは、政府と中銀間で「外貨資産」が移動し、政府が購入財源を市場調達(国債発行)する形を取れば、中銀負債(手形)が国債に振り替わるに過ぎないことを意味する。従って、人民日報が「特別国債の発行はマクロ経済に中立」と報じたのは正しいわけで、むしろ過剰流動性の吸収が強調されるに至ったことがおかしいと感じた。
 また、記事では、人民日報はマクロ的に中立になる理由として「人民銀の持つ国債が増える」ことを挙げていたが、これも意味がつかみにくかった。なぜなら、上記のマネーフローでは、人民銀は単にバランスシートが25兆円縮小するだけで、国債を増やす理由がないからだ。記事を読む限り、他にも疑問点が多いのだが、細かくフォローしていないので、この辺で止めときます。
ps 中銀保有の外貨準備を政府が買うだけの話がどうしてこんなに混迷しているのか。詳しい方がいらっしゃれば補足して頂くと助かります。①財政当局がマネーフローをよく考えずに意味付けを意図的に膨らました②マネーフローは分かっていたけど、政策的に余計な意図を込めた③市場が勝手に誤解した-のいずれかでしょうかね。
by bank.of.japan | 2007-07-09 22:19 | マーケット | Comments(13)
Commented by 嫌な予感 at 2007-07-10 03:48 x
少しテーマがずれるのをお許し下さい。本当にマジメではあるけれど、間の悪さにかけては、先進国の中銀で世界最高レベルを誇る我が日本銀行が動き出してるだけに何か嫌な予感がします。日本が少なくともトレンドとしてはデフレから脱却しかけているのは、あまり恩恵には与れなかったとはいえ、世界的な金余り、景気拡大が大いに助けてくれたことは間違いありません。
金融政策により三度目の逆噴射をかけている今、これらのバックアップがなくなったその後何が起こるかを考えると、どうか、どうか神様と願わずにはいられません。何か、ここのところマーケットに変化への予感が生じつつあるような気がするのです。
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冷静に見れば、世界的な金利上昇基調や競争の激化で、ファンドも以前ほど高いリターンを期待しにくくなってきた。それならば、今のうちに売り抜ける方が得策だ。ファンドの公開は、彼らの謳歌した宴が終わりに入ったというサインなのかもしれない。そう考える私はやはり天の邪鬼なのだろうか。
ファンド上場、M&Aブームは終わりの始まり
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20070619/127770/?P=2
Commented by 害債 at 2007-07-10 07:10 x
ワタクシは介入時に手形なりBillなりを出しておらず単なる人民銀行券の増刷ではないかと思ってましたので、今回の処置でそれを回収するだけなのでは、と思ってました。つまり中銀負債は手形ではなく銀行券だったのでは?と思っていたわけです。ちょっと勘違いでしたかね。もうちょっと勉強してみます。
Commented by 害債 at 2007-07-10 09:05 x
補足ですが、すでにご存知と思いますが、2007年5月の日銀ワーキングペーパー「中国における金融市場調節:金融政策か為替政策か」では人民銀行が流動性吸収オペレーションの結果BS上の手形残高のつみあがりに懸念をもっているとされ、最近の介入オペレーションのかなりの部分が不胎化されていない、という記述がありました
Commented by bank.of.japan at 2007-07-10 13:06
嫌な予感さん、どうもです。私は昨年ぐらいから世界的な投資ブームの終えんに嫌な予感を持っておりました。幸い、予感はこれまでのところ外れており、ホッとしておりますが、これからどうなるのかは神のみぞ知るですね。調整が入っても、健全なもので終わればいい、と願っております。
Commented by bank.of.japan at 2007-07-10 13:11
害債さん、どうもです。私もあのワーキングペーパーの「外貨準備の増加分が不胎化されていない」との記述が念頭にあり、「特別国債」は純粋な吸収なのかなと思ったのですが、「不胎化されない分」は単に手形で吸収されていないという意味で、実際には準備預金率の引き上げが代替手段になっていたと思われます。ただ、あの国のインタバンクの詳細はまだ良く分からないので、私も引き続き勉強してみたいと思います。
Commented by 椿ライン at 2007-07-10 22:41 x
 毎度興味深いエントリーご苦労様です。
 6月に出たHSBCのレポート「政策のトリレンマ」で、不胎化に関して詳しく書かれています(特別国債、投資公司の件には詳しく触れていませんが)。
 要点は下記の通りです。
・人民銀は手形発行を通じ、流動性の実に70%を吸収してきた。
・1年物人民銀手形の利回り(約3%)は、銀行の平均預金金利(2.8%)より高いが、1年物貸出金利(6.4%)は大幅に下回っている。
・しかし、人民銀手形に投資すれば20bpの無リスクリターンが獲得できる。

 自己資本比率規制や貸出抑制の行政指導もあって、中国の商業銀行の手形需要は高いとのこと。手形による不胎化を早急に見直す状況ではないようです。
 ちなみにレポートでは、「発行済み人民銀行手形の4兆元は巨額に思えるが、実際は銀行資産の27%に過ぎない」との指摘も。個人的には、27%はかなり多いような気がしますが・・・。(続く)
Commented by 椿ライン at 2007-07-10 22:42 x
 不胎化のもう1つの手段である預金準備率についても、前出のレポートは興味深い指摘をしています。
 要点は下記の通りです。
・2006年2Q以降で、預金準備率の引き上げは計8回行われた。
・引き上げ幅は累計4%、これだけでも1.2兆元が吸収されたことになる。
・最近は5%近い過剰準備を確保している銀行もあり、準備金の調整効果は弱まる傾向にある。しかし準備率引き上げによる不胎化効果は大きい。

 レポートによれば、人民銀は預金準備に対して利息(約1.98%)を払いますが、これは銀行の平均預金金利より低いため、銀行からすれば税金を取られているようなものとの由。
 特に中国の場合、国有銀行のシェアが高いことも問題です。銀行業監督管理委員会(CBRC)によれば、中国の銀行業界の資産は45兆9288億元。うち国有銀行分は25兆3470億元です(注;上場したBOCなどの分も含む)。
 前出のレポートでは、「準備率の引き上げによって銀行セクターが負うコストは、準財政支出とも捉えられる」としています。資金需給的には中立でしょうが、マクロ政策で見ると、財政部の方にも手詰まり感があったのかも知れませんね。
(おしまい)
Commented by 梶ピエール at 2007-07-10 23:34 x
はじめまして。いつも参考にさせていただいています。さて、特別国債発行の件ですが、いろいろ記事を当たってみたところ近々行われる予定の第一次の発行分(600億ドル規模)はそのまま人民銀行の外貨準備とスワップされる(正確には間に一つ政府系金融機関をかませている)ようです。つまり当面の間発行された国債は市中消化されないはずで、当然のことながらマネーサプライに対しては完全に中立的です。ただしこれまで不胎化の主な手段であった人民銀手形はほとんどが3ヶ月から1年ものの短期で償還を迎えてしまいますので、今後長期国債の売りオペを不胎化の手段として使えるようになることは人民銀にとっては大きな意味を持つのは確かでしょう。
 で、金融政策に中立的であるにもかかわらずなぜ株式市場が過剰に反応したか、ということですが、財務省がアナウンスした時点(先月27日)では国債の消化方法について十分な説明がされておらず、急激に市中消化をして金利が上昇するのではないかという憶測が流れたこと、預金金利に対する課税を撤廃するというアナウンスも同時に行われたこと、あたりが理由のようです。まあ、要するに③市場が勝手に誤解したが正解、というところでしょうか。
Commented by bank.of.japan at 2007-07-11 01:15 x
椿ラインさん、どうもです。以前紹介した日銀のワーキングペーパー「中国の金融調節」によると、人民銀行の負債で増加したのは、手形と準備預金と超過準備などで、手形で吸収しきれない分は、後者の二つで代替されたと思われます。なお、人民銀行B/Sは、日銀に外為特会をくっつけた形なので、手形=FBみたいなもので、手形比率はもっと高くてもいいと思われます。
Commented by bank.of.japan at 2007-07-11 01:22 x
梶ピエールさん、どうもです。ご教授ありがとうございます。なるほど、スワップさせるわけですね。それから、特別国債については、アナウンスの際に説明が不十分で誤解された、ということでしょうか。日本でも財務省がいきなり国債発行するぞ、と言えば、長期金利は跳ねますね(笑)。
Commented by 害債 at 2007-07-11 06:56 x
なるほど、勉強になりました。ありがとうございました。
Commented by von_yosukeyan at 2007-07-12 01:46 x
ボクも一応エントリを上げてみたのですが、人民銀行のバランスシートから考えると、手形の流通制度が未発達な現状から、買いオペは必然的に人民銀手形(正確に言うと一種の短期証券)による不十分な不胎化しかできておらず、流動リスクを人民銀が一手に引き受けてるという現状があると思われます。ボク自身は、梶ピエールさんが仰るように3の「市場が勝手に誤解した」という認識に近いのですが、特別国債の起債規模が昨年の貿易黒字に匹敵する巨額なものですから、消化方法のアナウンスが十分なされていなかった件から考えても、誤解も仕方がないのではないかと思います

椿ラインさんのコメントに若干補足しますと、金融調整手段としての政策金利の引き上げは、内需を鈍化させる危険性から、人民銀としてはかなり慎重で、買いオペと預金準備率の引き上げが主たるものであると思います。歴史的に観ると、預金準備率はまだ8.5%でそれほど高くはないのですが、買いオペによる金融調整は、不胎化が不十分な点から考えて限界に近いのではないかと考えます。意図としては、政策手段の多様性の確保と、人民銀のバランスシートの健全化が目的ではないかと思います
Commented by bank.of.japan at 2007-07-12 19:18 x
von_yosukeyanさん、どうもです。ご指摘のように、消化方法も含めて国債発行の詳細が十分伝わらない中、巨額の発行規模が市場にサプライズを与えたのかもしれません。
 人民銀の事情は推測するしかないですが、手形による吸収は市場インフラの未熟さのほかに、(吸収の)コストが高くつく面もあって、外貨準備にマッチングする規模に至らないのかもしれません。日本のように、外貨管理は別会計(外為特会)にして、FBに相当するものを出したほうが人民銀への負担は軽くなるのは確かだと思います。
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