今週月曜日の日経新聞に国際電気通信連合会(ITU=国連の専門機関)の事務総局長を務めた内海善雄氏が「私の苦笑い」で以下の面白いエピソードを披露していた。
・事務総局長就任直前、全職員に電子メールを送り、「目安箱」として仕事の改善案を募った。ところが「新しいトップが密告を勧めていると労働組合が騒ぎ出し、大トラブルになりかけた。 ・対話のつもりで、インド訪問時の印象(よく働き、よい通信製品を作る)をメールで全職員に送ったら、「トップが『インド人はよく働くが、ITU職員は働かない』と非難した」とまさかの曲解。 このコラムは「国連機関では日本流の協調主義は通じず、容赦ない競争社会悟る」とのタイトルがあり、「脱お人よし」の覚悟で、したたかになる必要がある、との教訓が込められたもの。「目安箱」なるものが、海外で一般的かどうかは私には分からないが、この手の意見聴取がうまくいくかどうかは、トップ(or経営層)を信頼できるかどうかにかかっているので、日本社会でも警戒されることはあるだろうなと思った。 率直な意見は、それが善意によるものでも場合によっては体制批判(or経営批判)となるケースもある。私なんかはややへそ曲がりなところもあるので、「目安箱」などは反体制分子をあぶりだすための仕掛けじゃないのか、と思ったりする。 ITUの場合、トップは経営ビジョンがあるはずで、組織の改善点などはトップダウンで実行していくものとみんなが思っていたところに、いきなり目安箱が出されて驚いたのかもしれない。または、国連も官僚的な組織で、命令に従うのに慣れており、意見を言え、という誘いのメールに猜疑的な印象を持ったのかもしれない。 内海氏の披露したエピソードが国際的な場面における普遍的な教訓であるのかどうか。国連だから通じず、他では通じた可能性があるのか。この辺は興味深いところだ。みなさんはいかが?
by bank.of.japan
| 2007-06-21 22:50
| その他
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Comments(11)
この手の問題は難しいですね、大変に。今回の事例は、全く思ってもいないし言ってもいないことを『言外のニュアンス』として受け取られ、誤解されてしまったという事例ですが、私がこの話を聞いて思い出すのは日本にやって来た優秀な外国人の話です。
彼は、大変に優秀な人材で、私が聞く限り、周りからも高く評価されていたと思います。しかし、ある時に彼から深刻な表情でこう言われたのです。「私は日本でやってける自信がない。この国にはうまく適応できないんだ」と言うのです。 「どうして、そう思うの?みんな、君のことは高く評価してるよ」と言ったら、「職場で誰も褒めてくれない。僕は評価されてないんだ」と彼は言うのです。 その場で「滅多なことでは人を褒めない日本の文化」を説明すると、半信半疑であったとは思いますが彼は一応納得してくれ、彼の同僚に「良いと思ったら徹底的に言葉に出して褒めてあげて欲しい」と伝えておきました。
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日本というのは、礼儀を重んじ、勤勉で大変素晴らしい国だとは思うのですが、「きちんとやって当たり前(そんなことでは誰も褒めない)」、「できなければ途端に罵倒」という国だと思うのですが、確かに、精神的には「かなり辛い国」だと思います。
官僚に対しても、企業に対しても、マスコミに対しても、「彼らがこんないいことをやった」なんて報道はまず目にしませんし、果たすべき義務を果たしていることなど評価の対象にもなりません。その反面、ずさんな仕事をすれば、その先にあるものはバッシングの嵐です。 「褒める文化」からやってきて、幼少の頃から褒められて褒められて育ってきている人からすれば、なんて冷たい人達なんだろうとも思うでしょうし、自分が他の人と比べて評価されてないと思うのも当然だろうと思います。「どうして、日本人はありがとうを言わないんだ?」と言われた時には、確かに、人々の暮らしやすさを考えれば「ありがとう」をきちんと言える国であった方が良いのだろうなと思ったのですが、今の日本人の平均的なコミュニケーション能力を考えるとなかなか難しいかもしれないのが少し残念です。
国連(だけでなくアメリカだってそうです)はものすごい階級社会ですから、トップにモノを言っていい人は採用の時から厳然と分けられていて、その壁を乗り越えるのはまず無理だ、というのがありませんかね。
一般的には「トップにモノを言わない程度の仕事」として、年収一千万以下で仕事をしている人にトップが労働条件以外の相談をしたらアンフェアなんじゃないでしょうか?そのコンサルティングをやらなきゃいけないとか、やらなくてもいい事をやった結果責任を負わなくて良いとは契約のどこにも書いてないでしょう。 日本の「高卒以上が全員幹部候補」ってのは「皆が幹部になった団塊の世代」より下にとってはまやかしですしね。
>「きちんとやって当たり前(そんなことでは誰も褒めない)」、「できなければ途端に罵倒」
だから日本の場合はインセンティブを引き出すために欧米とは違った仕掛けが発達したと言えるのかも知れません。だって何も見返りがないとこれでは誰もやる気を出しませんよね。もしそれがいわゆる日本的雇用慣行であるとするなら、件の「日本的な文化」を残存させたままでこうした仕組みが崩壊することは何らかの弊害をもたらしそうな気がするんですよ。それならそれで何か代替的な仕組みなりが出来ればいいのですが。
これは金融制度が変われば、変わります。
間接金融制度は、皆が貧乏人で優秀な人にその配分を任せる制度です。人の金を臆病に確実に使わなければなりません。 しかし、豊かな社会になり資産持ちが現れ、不動産なども十分に流動性を持つようになると、直接金融制度に移り、金持ちが優秀な人間を見出して運用させるようになります。そこでは、褒めなければうまくいきません。 従って、日本においても、市場を整備してオーナーが多くなれば、褒める文化が発達してくるでしょう。
目安箱って、内部告発制度というか、いわゆる内部統制制度では?
これは必要な仕組みだという説得ができなかったんだろうか。 >「トップが『インド人はよく働くが、ITU職員は働かない』と非難した」 某F社の話を思い出しました。これ、日本人は恥辱ととらえつつも、汚名返上を図りますから使えますが、それでも微妙なときというのはあります。 個人的なことを言えば、目安箱設置はこっ恥ずかしいものの、内部統制という面で一般社員がどういう事を感じ、どう考えているのか。あるいは、中間管理職の報告が正確か。こういったことを確認するために、直接メールをもらうなり、喫煙所の雑談で引き出したかったりします。部門間のコミュニケーション不足とか、色々な問題が直通メールから解消したケースもあります。が、扱いに困るメールもあるのは確かです。信頼性を得るには日本では大岡裁きを積み重ねるしかないようです。
コミュニケーションさん、どうもです。その外人さんの事情はよく分かります。日本が労働者にはつらい精神を強いるのもうなずけるところ。やたら精神論になりやすいですし。変わって欲しいですが…。
kumakuma1967さん、どうもです。労働条件がしっかり契約上、規定されていると、 余計なことはタダ働きという理解になるのかもしれません。 すなふきんさん、どうもです。日本的な労働慣行も、全体主義的ですが、うまくワークしてきたのでしょう。これからどう変わっていくのか、なかなか予想は難しいですが、精神的なつらさが増すのだけは避けて欲しいですね。
PKさん、どうもです。褒めるだけでなく、報酬面もきちんと報いることが不可欠でしょうね。
飛車さん、どうもです。目安箱は、その後のフォローが重要なのでしょうね。有効に機能するには、いずれにせよトップ(or経営陣)の対応が信頼を得られるかどうか。がんばろう、というメッセージだけではあまり意味がないかもしれません。
うちは外資ですが,"目安箱"をカイゼン活動と捉える日本企業の風潮はなく,どちらかというと密告制度とまでは行かないまでもガス抜きあるいは極端な場合マネージメントの力不足を示すものと見ているようです。ボトムアップを受け入れるかどうかの彼我の文化の差ですね。
ITUは通信の標準化,つまり各国各企業がしのぎを削って自分達の利益を最大限に上げるべく自分達の通信方式を標準として認めさせる場所であり,他国の利益のえじきにならないように,各国の通信主権を主張する場所でもあります.何か失言があれば必ずそれは外交的に利用されるだろうし,ましてやお人よしの日本人が事務総局長だったなら最大限にそれを利用しようとする勢力が動くでしょう.
元の新聞記事には「『組織』ではなく,徹底して『個人』が意識の中心にある」とあります.こういう徹底した個人優先主義というのが,内海氏には意外だったのかもしれないですね.まあ,日本の大企業に浸かっていたら,わからないかもしれません.
EURO SELLERさん、大分前にコメント頂いたのに、レス遅れてすみません。やはり目安箱は一般的な改善運動ではないのですね。よく考えてやらないとマネージメントの力不足と見られるのは良く分かります。
Crasher Joeさん、どうもです。なるほど、ITUは善意に基づくお人よし的な行動は通じにくいところなのですね。和の精神とは対極の組織であるなら、むしろ冷徹にやっていくのが当然の行動なのかもしれません。
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