下のエントリーに関してちょっと昔話を。
メガバンク市場部門の知り合いと邦銀のグローバル再展開について雑談した中で、彼は「人の問題ではなく、組織の問題。今の組織のまま海外に出て行ってもまた失敗するだろう」と言っていた。これは個人個人は能力はあるけれども、銀行はそれをうまく活用できる組織体制(マネジメント、インセンティブの与え方など)になっていない、という問題意識である。確かに、外資系金融機関の大半は日本人であり、稼いでいる人が多い。 これで思い出したのが、シカゴのオプションハウスとして有名だった「オコーナー」という会社だ(当時の流行言葉ではロケットサイエンティスト集団)。90年代前半、SBC(スイス銀行)は通貨オプション市場で有力な存在で、国際業務が躍進中であった。その後、英投資銀行のSGウォーバーグを買収。UBSを吸収し、現在に至っている(名称として残ったのがUBS)。90年代の前半、私はロンドンにおり、SBCのプレゼンス拡大に興味を持ち、取材したことがある。このとき、国際的に無名であったSBC躍進のきっかけを作ったのが「オコーナー」という会社であることを知った。 SBCロンドンにはオコーナー出身の米国人幹部がおり、その一人(女性=グローバルリスク管理のヘッド)に「なぜSBCといっしょになったのか」と聞いた。実はこのとき、日本興業銀行(IBJ)もオコーナー獲得に動いていたことを知っていたので、そのこともあわせて聞いたのだが、彼女曰く「相手先の候補は三つあった。SBC、ドイツ銀行、IBJ。SBCを選んだのは、オコーナーの共同経営者らをSBC本体の幹部にし、人事権を与えるとの条件があったから」。 後日談として、みずほグループ誕生後だが、オコーナー獲得のためにシカゴに出向いたりしていた旧興銀幹部とたまたま合う機会があった。「オコーナーは本当に欲しかったんだよなあ」と振り返っていたが、人事権を与えて本体の幹部にする可能性は「あり得なかった」そうだ。IBJに合流しても(金銭的条件は相当に良かったようだ)恐らくオコーナーは子会社の一つとなり、人材も散っていったと思われる。 出井氏の言う「目に見えないもの」も、人材の使い方によっては得意分野になるならまだ救いがある。国民性として、人材の使い方がうまくない(焼却炉行きになりやすい)なら、目に見えるもので勝負するしかない。どうなんでしょう。ぐっちーさんの「世界最強の軍隊」(ジョーク集)にならえば、アメリカ人の経営者、ドイツ人の幹部、日本人の社員が「世界最強の金融機関」なんだろうか。うーん、軍隊アリの生活が生涯続きますね(トホホ)。 ps1 ロンドンの某邦銀証券現法の現地社員(イギリス人=かなり優秀)と仲良くなり、昼飯を食っていたら「オコーナーという会社のインタビューを受けて受かったんだよね」とポツリと言った。私が「シカゴのオコーナー?」と聞くと、「そうだ」と言う。「お前、進路間違えただろ」と指摘したら「うん」と深くうなづいていた。あいつ、今どうしてるんだろ。 ps2 当時シティーではカジュアルフライデーが普及しつつあったが、SBCロンドンは「いつでもカジュアル(除くセールス)であった」のに驚いた。よく話をしたエコノミスト(オランダ系)はアロハシャツみたいなのを着ていた。みんな楽しそうだったな。 ここ7-8年の国際金融の勢力変化はよく見ていないのだが、米系投資銀行(バルジブラケットと言ってましたね、古いですが)がやっぱり上位独占ですか?
by bank.of.japan
| 2007-06-20 22:15
| 金融システム
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Comments(19)
日本人そのものが金融に全く向いていない訳ではないと思います。以下の条件が備われば、日本人も金融で勝負できると思います:
①年長者の見解や空気、前例ではなく、専門的知見に基づいて合理的に意思決定を行う体制作り(=年功に全くとらわれない、人事システムの確立) ②成果が数字ではっきり表せる部門に関しては、成果と業績を完全に連動させ、成果によっては、例えば、取締役の10倍以上の報酬を、10年目の選手にも与えられる報酬制度 ③上記の制度の結果、破格の待遇を受ける人間が生まれても、嫉妬や嫌がらせをしない覚悟 この3つが備われば、日本も金融で勝負できると思います。
0
米国投資銀行で働いていたのですが、日本人も相当活躍しております。日本人が金融に向いていないのではなく、日本の組織です。破綻した長銀や日債銀の出身者が、活き活きと外資系で活躍していることを見ると、金融危機の時に変に公的資金を入れて銀行を残す必要があったのか疑問です。抜本的な改革を先延ばししただけとすれば、山本金融大臣がいくら東京シティー構想を打ち立てても効果なしでしょう。
>>金融で勝つには
面白いと思う反面。それって保険のおばちゃんで実現されているのでは?と思ったりして。
毎度ご苦労様です。昔話ではなく、日本の金融史をかいま見た話としてたいへん興味深く拝見しました。
tomさんのご指摘も仰る通りですね。東京シティー構想と言いながら、外為法改正で三角合併を骨抜きにしようとする当たりに、政府として本当に外資を受け入れる用意があるのか疑問に感じます。日本橋を東京シティ構想の拠点にしても、三○不動産を利するだけのような気が・・・。 ところで、保険のおばちゃんって金融力に寄与したんですか? 初耳です。親・兄弟・親戚・友達を保険に入れて、GNPでマメにフォローするという「人脈をカネに変えるビジネスモデル」は既に破綻しているような気がします。死亡保障の人気が下がったことはともかく、今後は銀行の窓販解禁もありますしね。 かつては日本三大おばちゃん(日生のおばちゃん、学研のおばちゃん、ヤクルトのおばちゃん)と言われた業界ですので寂しい感じもありますが、他の業界も含め、販社としてのおばちゃんの役目は既に大きな転換期を迎えたと思われます。
> 椿ラインさん
通行人さんは、成果次第では年収が○億円になる、つまり取締役の10倍以上の報酬を得る「おばちゃん」が、既に存在したことを言っておられるのだと思います。
osome さん、ご指摘ありがとうございます。地銀のスーパーセラーに通じるものがありますね(報酬は知りませんが)。
金融で勝つにはさん、どうもです。ご指摘のようにマネジメントを変えることで、相当に能力は発揮されるだろうと思います。この辺の銀行経営層の意識がどうなのか。昔に比べて相当変わったと期待したいですが…。
tomさん、どうもです。生き生き出来る人、出来ない人、いろいろでしょう。問題は、国際金融で勝負するならするで、勝負できる体制に持っていけるかどうか。また、かつてのように(国際協調融資の)スプレッド競争にならなければいいがと思います。 通行人さん、どうもです。下のosomeさんの観点で理解しました。問題は、やはり持続性かもしれません。 椿ラインさん、どうもです。東京シティー構想は私もピンときませんね。ビッグバンから10年あまり経過し、またやるのか、という思いです。まあ、あまり構想には関心ないですが(笑)。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
確かに仕組みとしては存在しますが、専門職能、ましてや歩合制だと、日本では一段下の存在とみなしている面があるかと。これほとんど常識と化しているので、改革しなければといわれても、会社を清算して新たに作り直すくらいのインパクトが無いと、従業員の感覚は変わらないでしょう。
冒頭の「金融で勝つには」さんのご意見に賛成です.
「通行人」さんのご指摘の保険のおばちゃんのような,インセンティブ制が局所的にうまく行っているかどうかの議論ではなく,経営全体にもっとインセンティブ制度を改善できる範囲がないか,経営陣が意識的に考え直すべきかと思います. さらに言えば,数字で簡単に個人の成果が計れている部門へのインセンティブ制の導入は比較的簡単で既に実現したりもしていますが(たとえば,「保険のおばちゃん」),数字で計りにくい成果を挙げる部門にどのようなインセンティブを導入すべきかという課題にもっと取り組むべきでしょう.それらを数値化するための,管理会計(金融機関だったらリスク管理等)やらの基本的なツールは比較的揃っているはずですから,あとはそれらをインセンティブと結びつけてどう活用するかの経営者の力量の問題です. 部門別の収支・リスク管理などの一つの大きな目的はインセンティブのコントロールであるはずと自分は思っているのですが,実際の管理会計の扱われ方を見ると,内部監査の一環ためのやっつけ仕事のようなことが多く,何だかなあとがっかりします.
非公開コメントさん、どうもです。ご指摘、同感です。
飛車さん、どうもです。カースト的状態が固定化されていると、いったん解体するぐらいのことが必要かもしれません。 three-hyphensさん、どうもです。数字で計りにくい業務の数値化は難しいですね。リスク管理に関しては、銀行の場合はバーゼル2対応のための管理となりがち。検査対応に主眼を置いたリスク管理は、経営とは離れたものになりやすいですね。
>>three-hyphensさん
経営陣が意識的に考えるべきとする点には賛同しますが、部門別収支の評価への反映は現状でもやっているのでは?部門単位だと平均化されてわかりにくいとか、見かけの給与には反映しないけど出世に差がつくとかではないでしょうか。 日本的経営なるものがあるとして、その一番の肝は、総合職全社員が将来の幹部候補生であるという幻想にあると思っています。今現在の利得より将来の出世を考えて、頑張るという面に期待しているわけです。 保険業界が典型ですが、社内分業の徹底で、歩合型の営業をする人と、支援組織・管理組織に回る人間が分かれたとき、幹部候補生は支援組織・管理組織側の人間だけになると思います。支援組織・管理組織が戦略級の企画・判断を司り、歩合制の営業マンは、あっても戦術の判断のみ。指示事項をしっかり行ってもらう事で、いわば投入量可変の変動費になるわけです。ニッセイのおばちゃんに社長より稼ぐ人はいても、絶対にニッセイの社長にはなれないという事です。 というわけで、歩合を望む人が増えればそれはそれで結構な事なのですが、今現在の従業員の発想としてそういうニーズがどれだけあるのか?が率直な疑問です。
>> 飛車さん
インセンティブの最適なあり方は,本人がコントロール可能な(すべき)指標に基づいて報酬を与えることです.(理由は割愛しますが,報酬体系をきちんと論じた本には大抵書いてありますのでご覧下さい.) 部門別収支は,部門トップへの報酬にはダイレクトに反映させるべきですが,個別社員にそのまま反映させるべきはケースバイケースです.平均化によりうまく行かないことは,飛車さんのご指摘の通りです.(たとえば,警備員にストックオプションを与えても何のインセンティブにもなりません.) その際は何らかの代理指標を用いる必要があります. 一方で,飛車さんの「幻想」のご指摘には大いに同感させられます. 「歩合制を望むニーズがどこまであるか?」の論点ですが,そもそも幹部候補生は,将来経営者になって株主価値の向上を常に求められる立場であり,歩合制よりも,もっと厳しい成果主義とリスクテイクのプレッシャーの下に置かれます.「私は歩合制は嫌だ」などいう候補生は,経営者候補としてはさっさと落第させ,支援・管理の中間管理職に専従させて比較的安定した給与を与えるのみとした方が良いかと思います.
>>three-hyphensさん
別に上場企業だけが企業ってものでもないと思います。上場企業経営者を見ていると、「成長神話」の持続に四苦八苦して、かえってやりすぎて衰退を早めているんじゃないかと思うこともありまして。株主というのは、会社の存続に対しては他人事なのかなぁと思う事がたまにあります。そのうちに、「馬鹿が上場する」といわれるようにならないか心配です。 それと、「私は歩合制が好きだ」というリスクラバーな経営者が博打的な経営を行うのと、「私は歩合制が嫌いだけど、役目なので仕方がない」というリスクアバーターな経営者が慎重な経営を行うのと、僕は期待値がイコールならどちらでもOKだと思います。個人的には後者にシンパシーを感じます。
>> 飛車さん
株主側の姿勢の問題への指摘はその通りだと思います.こうした経営者・社員のあるべき論は,株主のあるべき論と表裏一体で語られるべきだと思います.なお,私が念頭においているのは,上場・非上場を問わず,経営者と株主が分離している企業です. また,おっしゃられるように「期待値がイコール」との前提を置かれるのなら,リスクの小さい後者を選ばれることには私も同意します.私の疑問は,果たして後者のようなリスク嫌いの経営者が,リスクをとることに心構えができている経営者(ただのリスクラバーではありません)と「イコールの期待値」を上げられるのかという点です.歩合制で働く人は,自分の利害と企業の利害を一致させることを厭わない人たちです.経営者であれば,進んで自分の利害を株主の利害と一致させるような心構えであって欲しいものです.
上場企業においても経営者と株主はほとんど分離していませんよね。経営者は大株主の一人である事も多いのですが、それ以前に前回の株主総会で方針について既に信任を得ているわけです。TOB周りでもめている話をされたいのであれば、あれは既存株主と、新規株主の方針対立の問題ではないかなぁと思ったりします。
後半ネタについては、それは信念の話なので、多分これ以上の議論は無駄でしょう。将来の利益については、誰もわかりませんので、「想像」で話をするしかありません。 また、株主の利害と経営者の利害が一番一致しているのは、オーナー企業です。利害の一致を図るのであれば、MBOするのが一番正しいということになりませんか?
>> 飛車さんへ
繰り返しになりますが,経営者・社員(組織)のあるべき論は,株主のあるべき論と表裏一体で語られるべきだと思います.飛車さんご指摘のような「株主も経営者も特にもめてない」という現状を所与とすれば,経営者や社員について「こうすれば良くなるだろう」と語るのは不毛なことと思っています.株主が現状でOKというのであれば,私のような外野がその中の組織について「これはこうあるべきだ」と話すことではありません. また,おっしゃるとおり利害が一番一致しているのはオーナー企業です.こちらもご指摘のように,MBOも,エージェンシー問題による経営のパフォーマンス低下を改善することを目的の一つとして行われたりします.ただし,実際には,ストックオプションや株価連動報酬などを用いて利害の一致を図っているケースも多いようですので,結局は利害の一致を図る手段は,資本と経営の分離を残すことによるメリットなども考慮してケースバイケースで行われるのが真っ当なあり方かと思います.
長々とお付き合いさせて申し訳ありません。
片側の極論だけでは心もとなかったので、あえて反対側の極論を述べさせていただきました。現実は中間にあり、ケースバイケースの判断が必要だという点ではまったくの同意でございます。 実務上の問題としては、株主利益最大化を軽い気持ちで口約束して、短期的な拡大方向で経営をして余計なリスクを犯したり、衰退を早めてしまう経営者の例をいくつか拝見させていただきました。それは株主の選択というより経営者がそういうスタンスが常識だと思って軽々しく経営スタイルを変えてしまう事で、そういう嗜好の株主を集めてしまうというところに問題があるのかなと思うことがあります。確信も理論的な分析も実証も無い話ですが。
> 飛車さん
飛車さんのおっしゃる「実務上の問題」は全くその通りかと思います.私としてはライブドアなどが,そのわかりやすいケースだったかなと思っています.ライブドアは,経営者の甘いスローガンに乗せられやすい株主が集まった挙句坂を転がり落ちてしまった典型例に見えました.経営者と株主の間に,敵対までいかなくとも,健全な緊張状態が常にあると良いのですけど.
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