政府系金融機関(政投銀)民営化も乱暴なのではないか
 政投銀など政府系金融機関の民営化をめぐる国会(委員会レベル)討議は断片的にしか見ていなかったが、既存組織をそのまま民間に移行させるのは郵政と同様に乱暴なやり方であるな、という印象をもった。郵政問題では、国営のまま縮小・廃止という民主党案に私は賛成であった(必要な機能があれば残す)が、政投銀などの民営化でも民主党の反対論に同調するところが多かった。
 政府系金融機関は基本的には民業補完が役目であり、政投銀の例では公益に資する長期資金を供給している。つまり、民間ではリスクを負い切れない長期資金を低めの金利で提供しているはずで、理論的にはハイリスク・ローリターンのバランスシートで、民営化には耐えられない。逆説的には、採算が取れるなら民業を圧迫していたことが証明されるだけで、また融資先に大手上場企業が多いなら、「低利」がまた民業を圧迫していただけとなる。
 仮に民営化が政府系金融機関の縮小(政府B/Sの縮小)が目的であるなら、検討すべきは融資資産の売却ではないかと思う。この過程で、どう考えても公益に値しない不良融資というものがあれば責任追及すればいい。JALなんかそれでケリが付くのではないか。まともな融資なら民間が買うだろうし、買わないなら問題融資であり、なぜそんなに突っ込んだのか事実を究明する必要があるね。
 究極的には、政府系金融機関は直接融資から手を引き、可能な限り(人員を含めて)規模を縮小。利子補給を市場補完の主たる手段にすればいいと思う。いくら金融技術が発達しても、市場というものは何らかの失敗はつきもので、公的に補完すべき機能は残るだろう。
 どこで補完するかの線引きは難しいが、モラルハザードを避けつつ、効率的に市場を補完する仕組みを作ることに知恵を絞るのはやり甲斐のある仕事だと思うが、いかがであろうか。多かれ少なかれ公益に資することにプライドを持った人材が多いのだから、民営化して営利追求するよりもこの方が全然マシでしょ。
 もっとも、こんなこと今ごろ書いても流れが変わるわけではない。政投銀の民営化では、JAL向け融資が国会でもかなり突っ込まれておりましたね。政投銀職員のボーナスはJALのストックオプションというのはどうだろう。もちろん税金投入は禁止である。政投銀の企業再生能力が高いなら、喜んでストップオプションをもらうはずだが。イジワル?
 
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by bank.of.japan | 2007-06-06 22:58 | マーケット | Comments(16)
Commented by Texas Longhorns at 2007-06-07 06:00 x
Amazingly, I basically agree with what you are saying. However, your point that "some projects may be too risky for a commercial bank" can be covered by syndicate loans. If it is too risky for one bank, several banks can share the risk. Given the develpment of syncicate loans recently, I don't see the necessity of DBJ in this regard.

Now, if there exist externality from lending, such as lending to environmental project, then I see a necessity of DBJ.
Commented by すなふきん at 2007-06-07 07:38 x
「新銀行東京」についてはどういう位置づけになるんでしょうね。あくまでも「公益」に徹するのか、民間流に採算重視なのか、さっぱり意味がわかんないんですけど。中小企業の救済という「崇高な」理念と利潤の確保は両立するんですかね。金融ど素人としての疑問でした。
Commented by Eco at 2007-06-07 09:28 x
政策投資銀行職員のボーナスはJALのストックオプション、いいですねー。リスクもリターンも一心同体で頑張ってもらいたいところです。ストックオプションがイヤなら、JAL向け債権の現物支給というのは如何?B/Sのスリム化にもなって一石二鳥!
Commented by おそまつくん at 2007-06-07 11:11 x
>究極的には、政府系金融機関は直接融資から手を引き、可能な限り(人員を含めて)規模を縮小。利子補給を市場補完の主たる手段にすればいいと思う。いくら金融技術が発達しても、市場というものは何らかの失敗はつきもので、公的に補完すべき機能は残るだろう。

そのために、政投銀と商中は民営化して、残りは一つの政策金融機関にしたのではないですか?
JALのストックオプションも、国営なら難しいでしょうが、政投銀を民営化すれば簡単にできるでしょう。
Commented by bank.of.japan at 2007-06-07 20:34
Texas Longhornsさん、同意していただき、大変に光栄です。意外でしたよ(笑)。DBJの意義として、環境面の金融的サポートは幅広い支持は得られそうですね。

すなふきんさん、どうもです。公的支援と利益追求は相反するので、新銀行東京が現状のようになったのは自然な流れでしょう。相反する指名を背負わされ人たちがむしろ可哀想だと私は思います。

Ecoさん、どうもです。再生に成功すれば大金持ち。インセンティブは大きいと思います。もっとも、成功するほどの高い能力がある人達なら、そういう人達は最初から民間にいって活躍すべきであろうとは思います。

おそまつさん、どうもです。私自身は、政投銀の民営化には反対で、政府系金融は全体として直接融資から撤退。ミニマムのサポートに徹し、一方でマクロ経済を十分に行うのが一番理想的ではないかと思います。ミクロレベルではあまり民間金融に立ち入らない方がいいかなと考えます。


Commented by 飛車 at 2007-06-07 21:17 x
政策投資銀行の職員に融資先からストックオプションの申し入れって、それじゃ付け届け以外の何者でもないような。
ところで、このニュースはあんまり追っかけていないのですが、JALの財務状況ってそんなに悪いのですか?JASとの経営統合が引き金になったのでしょうか?

いずれにせよ、民営化論の多くは後先考えていないものが多いので、脊髄反射的に反対(笑)
Commented by 椿ライン at 2007-06-07 22:18 x
 毎度ご苦労様です。政策金融の民営化も関心が高いのですが、DBJが絡んで過剰債務企業の再建策が問われているという点で、JAL問題がかつてのダイエーに似てきたことが気になります。
 東洋経済6月9日号で、JALが支援要請で動いていることについての主力行のコメントが面白かったですね。「要請の背後には政投銀がいると感じた」と書いてましたから、DBJはプロラタ以上の比率で、みずほCB、MUFGにDESを飲んで欲しいのでしょうか。
 個人的には、ストックオプションはDBJより、JAL経営陣&労組に付与してもらいたいです。「先得」で7~9月の繁盛記の利益の先食い&CF改善なんかを狙うより、死ぬ気で市場に評価される再建策を総会までに出してみたら良いんじゃないですかねぇ。乱筆失礼しました。
Commented by bank.of.japan at 2007-06-07 22:25
飛車さん、どうもです。融資先が健全であれば付け届けですが、そうじゃないなら…。JALについては、小村総裁ではないですが、個別企業の件はコメントできない、ですかね(笑)。実際、私も担当外ですので、コメントできないです。すいません。民営化論、特に金融系は、どうにもならんデカイものを民間に投げ込むなよー、と言いたいすね。補給なしで、軍を出撃させるようなもんでしょう。自活自戦、玉砕(破たん)は許さん、かな。
Commented by three-hyphens at 2007-06-07 23:07 x
DBJの退職金をJALのストックオプションにするのは面白いアイデアですね.椿ラインさんの,JAL経営陣へのストックオプションにも賛成です.
でもこういう瀬戸際企業の場合,オプションはモラルハザードもありますから,給与を株価に比例させるような素直な仕組みの方が良いかもしれません.

でも結局は,インセンティブの仕組みがうまく機能していないのは,DBJに限らず,民間の金融機関も一緒だと思います.民間金融機関経営陣へのストックオプションの付与などが普及すると,日本の金融システムももっとましになると思うのですけど….
Commented by 椿ライン at 2007-06-07 23:27 x
 three-hyphensさん、ご意見ありがとうございます。DBJに限らず、インセンティブの仕組みが機能していないのは、日興コーディの件を見ても明らかですね(オプションでも株の現物でも、悪い方にインセンティブが働いた例でした)。
 DESは経済合理性で言えば再建策の手段として非常に良いのですが、よくIRCJの人たちが言っていた「カラDES」では意味がありません。追加のリストラ策もないままでは、単なるカラッポのDESになって、将来のダイリュージョン・リスクが強まるだけです(カタカナが多くて済みません)。株主責任で済めば優待目的でJAL株に投資している人たちが損をすれば言い訳ですが、まだ政策金融のDBJが絡んでいる以上、JAL個社の問題ではないですよね。
 個人的には、DBJ(財務省)が国交省と共にJALに引導を渡し、法的整理に持ち込んで労組をぶった切るしかないような気が・・・。たびたびの乱筆失礼しました。
Commented by どちぎん at 2007-06-08 00:09 x
はじめまして。全く同感です。20年程度かけて粛々と規模縮小を図るべきでした。銀行の利益の源泉は調達力にあるというのが私の持論でして、それのない銀行で何千人も雇用し続けることは不可能でしょう。この規模で民営化に突入するのは非常に危険だと思いますね。行員さんはとても能力高くて大好きなんですけど。
Commented by bank.of.japan at 2007-06-08 00:52 x
椿ラインさん、どうもです。DESする際に、一般的には貸出債権の時価評価を行うはずですが、かつて流行ったDESは等価交換でありましたね。今回もそうなんですか? あまり詳しくフォローしておりませんので。

three-hyphensさん、どうもです。いわゆるサラリーマン的な風土のデメリットは、頑張っても報酬面ではアップサイド(ショートガンマ)がなく、リスクテークするインセンティブが働きにくいことでしょうか。状況が悪化すると、縮小均衡しやすいのは何とかしないといけないと思います。

どちぎんさん、どうもです。もっとも悲劇的な状況に陥るのは、職員の方々でしょうね。(マクロの)景気対策で政府系金融が使われた側面もあって、それは本来は邪道でありましょう。少なくとも、上場企業への直接融資は、相当前の段階で撤退すべきであったと思います。広がり過ぎた戦線を縮小する際、ある戦域を丸ごと放り出すようなものだと思います。
Commented by 飛車 at 2007-06-08 15:06 x
>>本石町日記さん
付け届けと言ったのは、倒産すれば紙くず、しなければ報酬になるので、融資継続判断につながるからです。DBJの職員にはDBJのストックオプションを与えれば良いです。

今回のケースでは、ストックオプション導入は大企業経営者(連帯保証無し)の借入時のモラルハザードを防止するため、個人的にもリスクを自覚してもらう事にあります。
リスク選考度合いはその人の性質なので、制度だけを導入しても、トップの性質がリスクアバーターなままだったら、今以上にリスク回避型の経営を採られます。よって今回は正解です。

そして次の経営者からはリスク志向な人が経営者になりたがるという逆選択が始まりそうです。ただし、ベンチャーキャピタリストが、多数の小投資先を抱える事でリスクヘッジをし、投資先経営者にリスクテイクを求めるなら仕組みとしては成立しますが、単一の大企業グループがリスクラバーな経営者をトップに据えるのはあまりに危険かなと。

「リスクをとる事はすばらしい」という言葉を何も疑問を持たずに受け入れる事は、「年率50%の安定した配当が得られます」という宣伝文句を信用するのと同レベルだと思います。
Commented by おそまつくん at 2007-06-10 19:12 x
>政投銀の民営化には反対で、政府系金融は全体として直接融資から撤退。ミニマムのサポートに徹し、一方でマクロ経済を十分に行うのが一番理想的ではないかと思います。ミクロレベルではあまり民間金融に立ち入らない方がいいかなと考えます。

政策金融全体を縮小させたいなら、政投銀の分野は真っ先に縮小対象でしょう。しかも、政投銀は利子補給なしでやってこれるのですから、民営化がもっともふさわしうでしょう。
ミクロに立ち入らないといいつつ、民営化反対とは、すごい矛盾です。
政投銀の民営化反対のままで、本石町さんの考えは実現できないと思います。
Commented by linate at 2007-06-11 07:38
かつて新米銀行員だった頃、DBJが政策優遇金利とかそういう名の下でマーケットではあり得ない低い金利を優良企業に提示し、ローンマーケットを攪乱していたことを思い出します。スケールの小さな取引先になると今度は商工中金が同様のパターンでローンマーケットを荒らしていたようです。

DBJの超低金利でなければペイしえないようなプロジェクトは上場企業は本来は手がけてはならないはずで、環境対策施設のような採算性から疑問はつくがやむを得ないアベレージライフが超長期の投資の場合はDBJの直接融資ではなく民間銀行のシンジケートローンに政府保証あるいは利子補助でもつければいいだけの話でもあると思います。この時代に何のために存在しているのか理解に苦しむ銀行でした。
Commented by bank.of.japan at 2007-06-11 18:47
飛車さん、どうもです。確かに、リスクラバーな経営者だと猪突猛進&クラッシュになりやすいですね。かといってリスク回避型だとジリ貧。バランスが難しいです。

おそまつくんさん、どうもです。ミクロに立ち入る、という意味の捉え方の違いでしょうか。私は、直接融資は避け、仮に中小企業向け金融をサポートする場合(これも是非論はいろいろありますが)は、(民間融資の)利子補給にとどめた方がよいと思います。

linateさん、どうもです。全面的に同意します。わが国の間接金融のスプレッドが異常に狭い理由の一つは公的融資の存在もあるのではないかと思います。民営化されて融資攻勢をかけると最悪ですね。
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