官房長官の「外貨準備」積極運用論は…(追記あり)
 いずれ取り崩す可能性があるなら、流動性を重視せざるを得ないので、運用利回りはそうは高められないだろうと思う。外貨準備は大半が米ドル建てのはずで、リターンを高めるなら通常はデュレーションを伸ばす方向となるが、逆イールドだからなあ。かといって、トレジャリーを積極売買してキャピタルを狙ったら、図体がでかくてマーケットインパクトが凄まじく、米FRB&財務省が激怒するかもしれん。
 じゃあ、どうするか。ユーロにシフトする? ユーロ高の潮流の乗っかって利益は上がるだろうが、(大量の米債売りになるので)米国債市場は暴落するリスクがある。これは米政府から国家安全保障上の脅威とみなされかねない(橋本首相の例の発言ですね)。外貨準備の通貨別比率がほとんど変えられないなら、まあ運用利回りを高める方法はないんじゃないか。
 財政諮問会議(5月8日)の議事録見ると、塩崎議員は以下のように述べている。
 「国は資産も債務も両方持っているわけで、これをどう管理して、かつ収益を上げていくかを考えなければいけない。何も収益を上げないで、ただ放置しているのは意味がない。
 特別会計の話があるが、例えば外為特別会計などの利回りは十分高いのか。中国が今度外貨資産の運用を図る投資運用機関のようなものをつくると聞いているが、手放すだけではなく、持ったままで収益を上げていくことを通じて国民負担増を回避する、逆に還元できるような発想もやっていただきたい。
 尾身議員の下でも、例えば霞が関の建て直しなど、いろんなことを考えている中に国自身が収益を上げていくという発想も入っていると聞いているが、是非そういった面も含めて御検討いただきたい」
 まず太字の部分は誤解があるように思う。そもそも外為特会が背負っているリスクはすごいもので、為替リスクはノーヘッジ、負債は円の短期調達で金利リスク大で、資産側も金利リスクはある。ご存知のように、世界最大の円キャリーファンドである。今のところは一般会計に利益を供給(還元している)しており、太字は外為特会を特定したものではないだろうが、奇跡的にやられずに十分な利益を出しているお利巧な特別会計であると褒めるべきでしょ。
 結論 世界最大の円キャリーファンドとして取りあえず成功しているのだから、これ以上利益追求しなくていい。それに財務省が運用がうまいとも思えないしね。

ps 溝口財務官が円キャリーが儲かることを予見して30兆円介入したのなら、空前絶後の名財務官でありますね。たまたまなんだろうが…。

追記 この件に関する筋論をbewaadさんがご指摘されているので、合わせてご参照頂きたい。
 
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by bank.of.japan | 2007-05-16 21:55 | マーケット | Comments(18)
Commented by 元IB現PB at 2007-05-16 22:11 x
 うーん、世界最大の円キャリーファンドである外為会計、メスを入れるべきだと思うんですけど。これまで「奇跡的にやられずに十分な利益を出して」「取りあえず成功」してきた」という現状分析は、イールドカーブが常に立って、かつ長いトレンドでは金利低下傾向であったので、デュレーションの長い債券運用は常に儲かると考えてるALM感覚のない金融機関と共通しますよね。
 塩崎議員は、「もっと儲けろ」というリターンの話ではなくて、「これをどう管理して」というリスク管理をしろと言う話だと好意的に解釈すると、実に筋の通った意見だと思いますが。出来ることならば、正しい処方箋は、ポジションクローズの方向では?
Commented by bank.of.japan at 2007-05-16 22:22
元IB現PBさん、どうもです。私も基本は圧縮であると思いますが、官房長官は現状を前提にリターンの向上を求めている悪い予感がします(笑)。リスク管理の観点であれば、「日銀も利上げしているが、大丈夫なのか」と問い掛けるべきでしょうね。なお、財務省のマーケット感覚は謎です(一部の知り合いはよく理解しています)。長期債が出せず、短期債でぐりぐり回すとき、スワップ10年で払えば金利リスクはヘッジできる、と考えたこともありましたので…。
Commented by 通りすがり at 2007-05-17 00:53 x
>溝口財務官が円キャリーが儲かることを予見して30兆円介入したのなら、空前絶後の名財務官でありますね。たまたまなんだろうが…。

これはなにか悪い冗談でしょうか?大量買いオペによる量的緩和は短期国債が現金と変わらないゼロ金利下では効果がないから長期国債でやれと言う批判に対して、「政策が成功してインフレ率が上がり長期金利が上がれば日銀のB/Sが悪化し債務超過に陥る」と主張して頃、「IMFも米国も認めないのでできないが、外貨買いオペなら、成功するとB/Sが改善するのでやっても良いけど云々」と言っていたのをお忘れですか?

溝口さんがテイラーと協議して行ったことは、まさに「儲かる投機は均衡回復的」というフリードマンの主張通りの事に過ぎません。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-17 01:16 x
通りすがりさん、どうもです。溝口氏の大量介入を評価されていらっしゃる立場からのコメントと受け止めしたが、それでよろしいのでしょうか? 当ブログではたびたび表明しておりますが、私はリフレ派ではなく、介入に関しても非不胎化は「?」という立場です。ちなみに「政策が成功してインフレ率が上がり長期金利が上がれば日銀のB/Sが悪化し債務超過に陥る」との主張は、日銀側の主張なのでしょうか? 
Commented by 通りすがり at 2007-05-17 07:47 x
>「政策が成功してインフレ率が上がり長期金利が上がれば日銀のB/Sが悪化し債務超過に陥る」との主張は、日銀側の主張

そうです。バーナンキ教授などが長期国債買い入れによる緩和政策を推奨した頃に、日銀が常にそれを盾にして拒否していた論理です。このため、「機能不全に陥った日本の金融政策」by バーナンキの中で、わざわざ政府による日銀の赤字補填手段まで言及があります。

為替介入によるデフレ阻止は、リフレ派だろうが誰だろうが認めざるを得ません。翁邦男も、これだけは認めていた筈です。
Commented by 害債 at 2007-05-17 12:36 x
>奇跡的にやられずに十分な利益を出しているお利巧な特別会計であると褒めるべきでしょ

議事要旨の後のほうに伊藤議員の発言として「本来は金利裁定が働くからこの利益部分は準備金として組み入れなければならない」という趣旨の発言がありますね。一理あると思います。(耳が痛い・・・)。
Commented by 一読者 at 2007-05-17 15:26 x
外貨準備の増加は、溝口さんの時までの大蔵・財務省の円売りドル買い介入の「結果」ですから、それを縮小させるには、根本的には逆の円買いドル売り介入をするしかないでしょう。そして、それはおそらく、1ドル140円くらいの円安局面でなければ不可能でしょう。事実、1ドル145円までいった1998年の円安時には榊原さんが円買いドル売り介入をやっていたと思います。個人的には、1ドル130円くらいになったら円買いドル売り介入をやってもいいと思います。ただしこれは、円高誘導が目的ではなく、1ドル130円くらいで「売り抜ける」ことが目的なので、為替市場への影響を出来るだけ少なくするために不胎化介入でなくてはならないわけですが。
Commented by 飛車 at 2007-05-17 16:41 x
変動相場制では外貨準備は持つ必要がなく、為替介入の結果増えてきたもので、ドル債をうかつに市場に放出する事を考えたら、全部まとめてゴミ箱に入れた方がマシじゃないかと思います。日本側で、勝手に債権放棄に応じます宣言して、保有高を減らしたって市場では何も起きないんじゃないかと。ま、そんな事をせずとも、たまにはアメリカにもドル売り円買い介入してもらい、円準備を作ってもらって、庭先で交換消滅させられたら良いのですが。

支払い能力に常に影響を与える事から、真剣にユーロシフトせざるを得ない管理フロート制の国の外貨準備とはまったく存在意義が違うということで。
Commented by PK at 2007-05-17 17:43 x
本来なら日本がビクトリア循環をなしうる局面であるのに、敗戦国ゆえに米国民主党などに脅かされる。
日本の外貨準備はGDPの5~10%あればいい。
民主党がガタガタ言わないなら、日本の国内の様々な市場形成を図りつつ、財務省は少しづつ売っていった方が良い。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-17 20:19
通りすがりさん、どうもです。お書きになった範囲での日銀の主張にはおかしなところがありますね。金利が上がる=日銀債務超過になる、とは限らないので。為替介入(で円安になるの)がデフレ阻止で有効なのは確かで、これは日銀も採用する可能性があった手段(外債購入)ですね。

害債さん、どうもです。その部分は私も考えさせられました。ただ、円高のときドルを買い、円安のとき逆をやるのが繰り返される(そううまくいくか不明ですが)と、利益が出ると想定するのは甘いすかね。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-17 20:29
一読者さん、どうもです。筋論はそうですね。ただ、逆介入も一応は為替安定という定義でやらないと、会計の目的(為替安定)にそぐわない面もあります。いわゆる「利食い」も可能となると、商業ベースの取引も会計上認める必要があるかもしれません(法改正?)。なお、金利操作になっている場合は、介入は自動的に不胎化になると思います。

飛車さん、どうもです。本来持つ必要がない外準がこんなに溜まったのは、管理フロートに近い為替政策になったからかもしれません(いわゆるダーティフロート)。今のところ米債は収益源ですので、ゴミ箱に捨てるのはもったいないような(笑)。
Commented by カナリーワーフ at 2007-05-17 21:17 x
外為特会の運用リターンを向上させる上で、MOFが自前でやることはおそらくありえないでしょうから、運用の外注するのでわれこそはと思うものは手を上げよとアナウンスされれば当地から東京に急行しますが、一方で、政策目的だの政策手段だの国会への説明責任だのとのいう論点で、運用ガイドラインががんじがらめになり、さらにファンドマネージャー1社に対する委託額も限定的になると、絶対額としての運用フィーが結構小額になる可能性もあるなぁと思っています。

なお、金融論の議論からは大きく逸脱しますが、大陸欧州諸国の金融当局の最近5年くらいの動きをみていると、米ドル以外への運用多様化は、単に金融資産の運用効率改善という論点とはまったく異なる(おそらくわが国政府としては意図していなかった)わが国の安全保障上大きなインプリケーションを持つメッセージをワシントンに伝える側面があるようにも思います。もし、塩崎先生のご発言がこのことを十分に意図した上でのことだとすると、安部政権による戦後政治の総決算(少々大げさかもしれませんが、ヤルタポツダム体制への挑戦)への本気度を感じさせるご発言でもありますね。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-17 21:59
カナリーワーフさん、どうもです。知り合いの外資系金融機関の方も同じような期待をされておりました。ただ、実際に運用方針を実務に落とし込む段になると、がちがちの規定やら、一社当たりの運用上限規制、さらには手数料も入札制となり、バカらしくてやってられない、となるかもしれません(笑)。そんでももって「損はするなよ」との暗黙の指導があったら、たまったもんじゃあないすね。
 なお、後段のご指摘は、実は密かに期待するところでもあるのですが、諮問会議の議事録読むと、ちょっと思いつきで言った感じも受けるもので、過剰期待かもしれません。それに、そこまでの超高度かつ深遠が判断があるなら、すべて極秘のうちに話は進行し、外準管理は官邸直結になるスケールのもの。かつて橋本総理が「売りたい気分に駆られる」とポロッとこぼして大騒ぎになった教訓が生きていれば、そもそも私がエントリーで取り上げることにはなっていないでしょう。
Commented by 椿ライン at 2007-05-17 22:35 x
 毎度興味深いエントリーご苦労様です。塩崎さんは個人的に好きな方でもあり、私もカナリーワーフさんの「ヤルタポツダム体制への挑戦」に一票です。
 しかし外準の運用収益を上げても、いまもって外為特会の利益を一般会計に組み入れる際には、「FBを増発して剰余金を納めている」のが現状です(メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場~P193より)。
 ドルを売ることができないのなら、外準と為券が増えてBSの左右が膨らむだけ。財政再建には貢献しませんね(涙)。
 むしろここ1~2年、外準の増加ペースが鈍っていることを見ると、為市課はあえて非効率な運用をしている感もあります。米債市場でインバート化が進み、インカムゲインは上がっている筈ですから、この1年間で554億ドルしか増えていないのは謎です。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-19 00:29 x
椿ラインさん、どうもです。塩崎さんにそこまでの腹があるかどうか。あれが凄いす。外準の増加ペースについては、通貨構成やデュレーションがどうなっているか見ないと何ともいえないですね。
Commented by カナリーワーフ at 2007-05-19 03:34 x
MOFがサイトで公表している運用の枠組みから窺う限り、一応、通貨構成や金利リスクの限度(本石町さんご指摘のデュレーションとかコンベキシティとか)に関する定量的な運用のベンチマークはありそうですけどね。想像するに、インデックストラッキングぐらいはしているんじゃないかと。MOFは情報の非対称性の有利な側に常にいると市場参加者が思っている(少なくとも私はそのように思っていますが・・・特に為替介入は自ら判断してるわけですから)状況下では、市場パッシブ以外のどのような投資判断をしてもインサイダーのそしりは免れないでしょう。そのような制約の中でそれなりに標準的な運用をするとなると、何らかのインデックスを使ったインデックストラッキングかなと。そうであれば、仮に損失が出てても、それは市場がそのように動いたからです、と主張できるわけで。
Commented by NY114丁目 at 2007-05-20 12:27 x
中国の場合、国内短期金利が米国10年債金利より高いため、外貨準備の保有コストが高くついており、保有コストを下げるためにも、リスクをとって期待収益率を引き上げる必要性が高いのだと思います(韓国も同様)。他方、日本の場合、FB金利がこれまでほぼゼロであり、また、円短期金利が米国の長期金利を上回ったことも殆どないことを踏まえれば、わざわざ(いろんな意味で)リスクをとってアクティブ運用するインセンティブが財務省になかったのかなと思います。
しかしながら、FB金利は上昇基調にあり、椿ラインさんがご指摘のとおり、外為特会の運用収入分がそっくりそのままFB増発につながる状況では100兆円を超えるFB残高の保有コストに政治家の先生方も目を向けることになると思われます(なお、FB増発は一般会計繰入分のみだけではなく、剰余金全てです)。好意的に解釈してFB増発分を長期国債の消却に充てると考えても、政府の負債デュレーションを短期化させることになり、やはり短期金利が上昇していく中では危険なことをやっているなと。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-20 22:23 x
カナリーワーフさん、どうもです。日銀が数年前に保有外貨の運用でベンチマークを導入しております。これは全くの推測ですが、MOFもその後に追随している可能性はありそうです。

NY114丁目さん、どうもです。なるほど、中国が積極運用しないといけない事情はその辺にあったのですね。ありがとうございます。FBの金利は、日銀のシナリオ通りであるなら、上昇基調です。もっとも、景気は良くなるので、税収は増えそうです。最悪は、米経済が後退し、米金利の低下とドル安が到来することでしょうか。そうならないよう祈るしかないですね。
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