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一万田総裁の担保政策論=農林中金をめぐるやりとり
 ふとした思い付きで始めた一万田シリーズだが、意外にも各方面(?)から好評を頂き、多謝であります。特に日銀も含む若い方(複数)の関心が高いのはうれしい限りであります。ということで、シリーズの最新です。引き続き昭和24年04月15日の衆院大蔵委員会より。

○小山委員 現在農業手形あるいは漁業手形というような制度があるのですけれども、これは実際問題としては、地方ではほとんど利用されておらない。これは結局日銀に持つて來ても、日銀の担保の対象になるというような問題ともからんで來るじやないか。農業手形、漁業手形が一向利用されないというのは、日銀総裁はどういうふうにお考えになつておりますか。

○一万田参考人 農業手形を技術的に改善するという点は、農業組合の大会のときにもお話が出ているのです。これは改善すべき点もあろうかと思いますが、これが相当役立つていると思います。ただ今年は魚がとれないのですよ。漁業手形で網やいろいろお買いになつても、魚がとれないから全然拂えない。こういうようなのは、金融機関、金融機関と言いましても、いつ拂われるかわからぬような漁業なんかについては、少し長いめの、三箇年くらいな、何か適当な金融を考えるように、しなくてはならぬと思いますが、今の漁業手形の問題は銀行屋さんはほとんど出しておらぬのです。魚は長崎の沖の方へ行つて、東北の方へは全然來ないので、全然魚はとれない、どうもしかたがないというような状況であります。

○小山委員 農林中央金庫に日銀が金を流す場合に、やはり担保をおとりになるわけですか。

○一万田参考人 もちろんとります。

○小山委員 どういう担保をとつておりますか。

○一万田参考人 それはいろいろのものをとります。

○小山委員 手形でもおとりになりますか。

○一万田参考人 場合によつてはとります。

○小山委員 場合によつてはですか。それとも主として手形をとられるのですか。

○一万田参考人 担保の点については御心配なさる点はありません。担保につきましては、中央銀行としてはやはり中央銀行の貨幣價値の維持、從つて資産の流動性というようないろいろな制約を受けまして、きまつた規則がありますが、それは國の経済のその時の実際の状況に應じて、やむを得ないという状況があればということで、担保については何もそんなに固く考えずに、彈力性をもつて操作しております。しかしむちやくちやなものを持込んで金を借ろうという、これはむりですよ。

この太字部分は名答弁ではないかと思った。特に最後のところはイイ。また、小山長規委員もなかなかな追及ぶり。全般的なやりとりもハイレベルな印象である。こういう国会論戦は見ごたえがあるだろうなあ。金融はハイテク化しても、金貸しの本質は変わらない、というか、昔の方が手触り感があって私は好きですね、こういうの。
 この委員会にはまだネタが多いので、折りを見て紹介する予定。乞うご期待。
by bank.of.japan | 2007-05-05 22:01 | 一万田総裁 | Comments(7)
Commented by ゴム3号 at 2007-05-06 13:47 x
金融の本質的な部分が見えてすごく面白いので是非続けてください。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-07 12:05
ゴム3号さん、どうもです。戦後間もない時期にしては、今でも通用する話題、ないしは参考になるやりとりが多く、何だか昔の方が本質に近い議論をしていた感じを受けます。今後も折を見て取り上げますので、よろしくお願いします。
Commented by 飛車 at 2007-05-08 13:31 x
一万田総裁シリーズの人気。周囲の人全ての顔を立てる答弁を心がけるわりに脇が甘い総裁に対する葛藤みたいなものがあるのでしょうか。

歴代総裁で見るとどうなんでしょう。経済学的にも実務的にもネタにはならないですが、ジャーナリズム的には歴代総裁発言から見る総裁の個性とかって切り口は面白いかも知れませんね。時代背景ごとの経済環境が絡んだら経済史になるかも。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-08 20:20
飛車さん、どうもです。全く隙がないのは逆に官僚的で親しみがない、という面があるかもしれません。答弁内容だけで人物判断するのは難しいですが、それでも面白いと思わせるところが魅力を感じます。
 まあ、個人的に経済史に疎いので、議事録はほとんと勉強のつもりで読んでおります(笑)。
Commented by 飛車 at 2007-05-09 23:03 x
いやいや。筋論をバシっとぶつけてくれれば、まあ相手が何を考えているのかわかるんですよ。まあ、一万田総裁の答弁は「シロートはすっこんでろ」みたいなところがありますが、それはパフォーマンスで示しているという自負でしょう。
予防線だらけで何が言いたいのかわからないと、聞き手が「何かごまかそうとしているんじゃないか」と最悪の事態を想定しちゃいます。

経済史はいいので、歴代総裁の答弁シリーズみたいなの書きません?(^^;
Commented by bank.of.japan at 2007-05-10 18:49
予防線だらけ=ヘッジが多い、のはある意味日銀官僚の得意技でありまして(笑)。常にごまかそうとしているという印象ないではないです。歴代総裁の答弁シリーズ、もう少し時間ができたらチャンレンジしてみたいですね。
Commented by 飛車 at 2007-05-12 00:48 x
是非是非お願いします。
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