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日銀のこのずっこけ感がいいよね=展望リポートの日に統計悪化とは…
 展望リポートの内容については後述するとして、私が最も感銘を受けたのは、「日銀にとってはこれからの経済を語る大事な日に物価がマイナスになり、生産統計も弱いのが出ちゃった」というずっこけ感である。こういう「間の悪さ」がたまらなく日銀的で良いなあ、と思った。
 記念すべき日、雨が上がり、晴れ着で家を出た瞬間、目の前を通り過ぎた車に泥水を掛けられたとか、または壇上に上ろうとして階段をずっこけるとか(笑)。願わくば、景気が日銀のシナリオに反して大崩れしないように…。
 さて、展望リポートである。まずタカ派方向で気になる点は、「上振れ・下振れ要因」のパートにおいて、「第3に、…」以下の部分の分量が多いこと。いわゆる低金利を続けた場合の不動産やら金融市場(円キャリーetc)などバブル懸念なのだが、ここを重視するなら「正常化」への執着感がうかがえる。ただ、展望リポートの内容は、政策委メンバー9人のごっちゃの思いがぶち込まれているので、この部分は水野委員らタカ派・正常化路線グループの意向が強く反映されているのではないかと思っている。
 一方、タカ派色が薄まる感じの部分は、「今後の金融政策運営において…」の文章から「極めて低い金利水準による…」の表現が抜けたこと。その前の文章には入っているのだが、「極めて低い…」を政策運営の説明に直接的に入れなかったのは、金利水準の調整にある種の達成感があるような印象を受けた。日銀企画筋はそういう受け止め方に違和感を示したが、文章表現としては正常化路線を和らげたい心理がうかがえ、ちょっと弱気なんじゃないの。
 もう一つは「改善の度合いに応じたペースで」という表現。これってフォワードルッキングせず、むしろ足元(orバックワード)ルッキングになったような印象である。スケジュール感を否定したいがための工夫だとしても、受け止める方としてはフォワードルッキング色が薄まる印象があり、私としては展望リポート全体としてタカ派色が薄れたと感じる次第だ。
 みなさんはいかがであろうか。

追記 連休中もエントリーを幾つかアップしますので、よろしく。
by bank.of.japan | 2007-04-27 19:20 | 日銀 | Comments(29)
Commented by 同意 at 2007-04-27 20:40 x
本石町さんと私の考えていたように、やはり日銀は利上げする意向を持っていませんでしたね。今日の福井総裁会見で、私は全く根拠のないものと思っていましたが、少数ながら巷に飛び交う『利上げあり』論を否定すべく、明確に当面は利上げしない意向が表明されましたね。今は追加利上げをすべき時期ではないので、これはこれでよかったのではないかと思います。利上げは、今年後半以降の景気の再度の加速が確認されてから秋にすればそれで十分でしょう。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-27 22:07
同意さん、どうもです。エントリー途中でコメント頂き多謝です。総裁会見はヘッドラインではややホーキッシュな印象の発言ありましたが、前提条件が多く、ご指摘のように利上げに前のめりな感じはないです。展望リポートはやや慎重になった、という感じでしょうか。
Commented by gs at 2007-04-27 22:16 x
悪いのは日本だけじゃなかったようですね。乗用車に加えダンプカーの泥水も掛けられたといったところでしょうか。
First-quarter GDP growth weakest in four yrs
April 27, 2007 08:31 AM ET
WASHINGTON (Reuters) - Weaker exports and a steady slide in spending on homebuilding helped slow U.S. economic growth to its softest pace in four years during the first quarter, the Commerce Department
reported on Friday.
Commented by bank.of.japan at 2007-04-27 22:37
gsさん、どうもです。そのニュース、驚きましたね。足元はまだインフレ懸念があり、個人的には物価統計が遅行的であることを考えると、今後は物価上昇の鈍化が予想されるのですが、一見すると低成長・インフレ懸念=ややスタグレーション的、のような印象で、ちょっと心配です。フローは良いけど、ストック調整の影響がボティブローにようにこれから効いてくるんでしょうか。ファンダメンタルズとは、不安だメンタルズとはよく言ったものです。
Commented by PK at 2007-04-27 23:19 x
日本企業は対米直接投資をしましょう (^^)/~
液晶テレビとか、米国で組み立てはできないんですか?
住宅投資が減速した今こそ、日本企業は米国直接投資を進めるべきです。
日米一蓮托生頑張りましょう!!
Commented by 飛車 at 2007-04-28 00:34 x
1.正常化すべきは物価上昇率であって金利はその操作変数にすぎない
2.日銀の中の人が金利を語るなら、名目金利と実質金利の違いくらい理解してくれ。現時点でわかっていない奴は即刻辞任しろ。
3.外国が不景気傾向だからといって、即座に日本国内に反映されるわけではないし、日本が調子悪いから外国も調子悪いのかも知れない(相関と因果)。ちゃんと寄与度分析してからね。
4.利上げしたんだから景気減速して当たり前なのに、何を大げさに驚いているのかわからない。金融政策は効果があるとわかったのが、そんなに都合が悪いのか?
5.資産価格は金融庁に、産業構造は経済産業省に任せて、日銀は物価の安定(CPI1~3%)に寄与すべし
Commented by dell at 2007-04-28 00:53 x
タカ派色もなにも、デフレの最中に利上げを検討すること自体が異常なわけで、本来なら緊急利下げをすべきところでしょう。
でも、日銀は年内に利上げすると思いますよ、1回へたするとあと2回。景気の腰が完全に折れるまでやるでしょうね。
Commented by 芋焼酎 at 2007-04-28 01:45 x
利上げは景気が良好であることが確認されてから行うべきだ、という議論があります。しかし、それでは物価や景気の振幅が大きくなる可能性が高いので、日銀は足許の経済・物価情勢を踏まえながらフォワードルッキングな金融政策を行うのですよね。
したがって、振幅が大きくなる可能性がゼロではない以上、足許のCPIがどれほど下ぶれしようとも利上げすべきとの議論には、正当性があると私は考えるのですが、間違ってますか?
仮にO/Nが2%や3%に達しているのであれば、もちろん話は別ですよ。しかし、成長率が2%近傍に達している先進国の政策金利を、50bpから75bpにしようとするだけで、マスコミや政治家等要人からここまで否定的な意見が出ること自体が、異常なんじゃないですか。
Commented by ゼロ近傍 at 2007-04-28 09:22 x
CPIが+0.1とか0.2の時は小幅のプラスと表現し、-0.2の時はゼロ近傍と表現するのは何でしょう。-0.3もゼロ近傍???教えて日銀!
Commented by ??? at 2007-04-28 11:06 x
家計からみればすでに物価は安定しているのでは。家計は物価がちょっと上がるのも嫌で、日銀は物価下落に備えた金融政策運営上ののりしろをぜんぜん与えてもらえないということではないかと。日銀が気の毒とまでいう気はありませんが(笑)。それにしても、消費者物価って、そんなに頼りになる指標ですかね。過去の動きなんか、全く実感に合わないですけど。
Commented by 飛車 at 2007-04-28 12:10 x
>>芋焼酎さん
>したがって、振幅が大きくなる可能性がゼロではない以上、足許のCPIがどれほど下ぶれしようとも利上げすべきとの議論には、正当性があると私は考えるのですが、間違ってますか?

1.下方向に外れる方の振幅の大きさは考えないのですか?
2.「振幅」という単語は、何を表しますか?物価上昇率が高くなりすぎて、その後の金融引き締めが厳しいものになるという意味でしょうか?
3.「今利上げしなければ物価上昇率が高くなりすぎる」とする根拠が明示されていませんので、正当性は感じられません。可能性だけなら、誰でも何でもいえます。実際に政策に移すからには、根拠を示すか、根拠が無い場合には外れたときに責任を取るなどの、「真面目にやってる」という保証が欲しいと思います。
4.名目金利と実質金利の違いはわかりますか?今回の利上げ&物価上昇率の下落で0.8%の実質金利となりました。これは実物経済の世界で投資行動を決定する際には十分に高金利と考えられる金利です。
Commented by 芋焼酎 at 2007-04-28 12:49 x
飛車さん、お教えいただきましてありがとうございます。

ちなみに、実質金利0.8%は先進諸国と比べると低すぎないですか?
実質金利が低すぎるから景気への刺激効果が大きくなりすぎて、景気が上ぶれる可能性が(下ぶれる可能性よりも)高く、したがって実質金利を上げるために利上げを行うものと理解をしておりました。
Commented by 飛車 at 2007-04-28 13:29 x
先に謝っておきます。0.8%というのはO/Nをベースにしたもので、O/Nだけが金利ではありません。TIBOR12ヶ月では1.3%くらい。短プラベースでは2.1%くらいですか。

実質金利=名目金利-期待物価上昇率ですよ。現時点のアメリカは物価抑制のために実質金利を高めにしていますが、2003~2004年にかけてはFFレートが1%。コアCPIも1%で、実質金利は0%でした。この間、日本はCPIが▲0.3%でしたから実質金利は0.3%ありました。

ところで、何のために諸外国と比較するのですか?金融政策は国内の景気安定化のためにあるので、横並びに運営するものではありません。横並びにしちゃったら、通貨が別々になっている意味が無いじゃありませんか。

>したがって実質金利を上げるために

日銀のお仕事の目的は何で、その際に使用する道具は何ですか?
Commented by bank.of.japan at 2007-04-28 19:45 x
みなさん、色々コメント頂き多謝です。利上げ肯定派、反対派のそれぞれの指摘は分かります。私はリフレ派ではなく、25bpのマクロインパクトは軽微であるとの立場ですが、とは言うものの、日銀の見込み通りに景気が回復するかは不透明であるため、景気回復の加速感が確認するまでは「利上げ反対」という考えです。「緩和的金融環境」であるなら、景気を若干吹かしてもいいのではないかなと思う次第です。
Commented by 同意 at 2007-04-28 20:06 x
ひとつの見方でありそれは間違っていると言われればそれまでですが、内閣府のモデルによると、25bpの利上げがもたらすGDPの引下げ効果は0.1%です。そして利上げの効果が出るまでには時間がかかります。今追加利上げをすべきとは全く思いませんが、「2月の利上げで景気が悪くなった」というのはさすがに苦しい言説と言わざるを得ないのが実情です。
Commented by 芋焼酎 at 2007-04-28 23:21 x
飛車さん、教えていただきありがとうございます。
Commented by うさ at 2007-04-29 00:13 x
展望レポート「景気悪化の悪循環が生じるリスクは【今回追加項目::さらに】小さくなっていると考えられる。。」

2007年度の消費者物価見通し政策委員のひとり▲0.1%の人(岩田総裁??)がいますね。残り8人は0.0%以上のようですが。

会見で「物価が目先弱くても経済・物価が望ましい方向にあるなら利上げを行っていく姿勢や、低い金利水準を維持すると展望レポートのシナリヲが崩れる姿勢」会見はみていなので(^0^;すが
といっているようロイター等のニュースでは見えたので。。。

私は少しずつ利上げの時期が早まってきて8月まできてしまいました。

ところで本石町さんの利上げ時期はどの辺りで見られているのですか?

???さんへ>私も消費者物価をあんまりあてにしたくない口なんです。
調査委員(公表されていないと思うのですが)の所得環境とか、家族構成とか、年齢とか、日本の標準になっているのかなーと思っていたり。




Commented by ??? at 2007-04-29 12:04 x
今回の展望レポートの記述はいろいろところで記述が甘いようですね。迷いも感じられますし。白川(方明)さんがいなくなったのはレポートの質という面では大きいのでしょうか。いなくなったことで、本石町日記さんがおっしゃるように、タカ派度が後退したという面もあるようですけど(笑)。ところで、みるのは、消費者物価よりも国内資源の稼働状況の方がまだましということですかね。なかなか失業率が4%から下がらないことは、重要なポイントである気がします。
Commented by 害債 at 2007-04-29 13:52 x
家計調査に応じた事のある私の同僚の意見ですが、そうとういい加減に書くといってましたよ。そもそも、あんな大変な作業に応ずる家計ということ自体、サンプルに相当なバイアスがかかっていると思うのは私だけでしょうか?
ちょっと逆の意見になるかもしれませんが、一方で金融政策を決定する方々の物価感覚というのも一般の方々とまったく異なるのかもしれません。私のように郊外で電話は携帯中心でSkype併用、88円の安売りカップラーメンを愛好し、閉店間際の半額お惣菜と安売りの豆腐とお肉と食事を済ませる(良い子の皆さんはけっしてまねをしないでください)立場からは、物価の上昇なんてどこにも感じられませんが、都心に近いところに住み資産価格の値上がりを横目にみながら、おいしい食材に目がなくてたまにレストランで外食、ちょっとした距離も車で外出しタクシーも良く使うという人だと、さすがにちょっと値段が上がっていると感じるのかもしれません。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-29 14:08
うささん、どうもです。年度内に一回できれば奇跡的なこと。場合によってはできないかもしれない、さらに場合によっては次は利下げかも、という悲観シナリオです。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-29 14:10
???さん、どうもです。少なくとも白川理事時代に比べると分量は減る傾向です(今回のリポートはまだ比較しておりませんが)。タカ派度は後退感があるのではないかとの印象で、なんと言うか芸風が変わった感じですかね(笑)。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-29 14:14
害債さん、なんとまあ私と同じ消費行動をお取りのようで(笑)。夕方、スーパーにちょっと早く着き過ぎたとき、半額シールが貼られるのを待ったりするときがあるのですが、これを恥ずかしいと思わないのは変ですかね。このバーゲンハンティング感が結構好きだったりして…。
Commented by 害債 at 2007-04-29 15:16 x
わたし(たち?)の消費行動は「一般家庭」のものではないでしょうけれどね(笑)。ただ、エタノールブームで食品一般には価格上昇圧力がかかりそうです。こういうときは一部のひとが仕組んで便乗して物不足を演出してしまうことがありますので気をつけませんとね。かつて10年以上前に米不足がひと時だけ騒がれたけれどあれは明らかにヤラセでしたね。一気に古米古古米を減らし、タイ米なども消費が進むという政府のかたがたにはすばらしい結果になったのでは?
Commented by PK at 2007-04-29 21:07 x
エタノールでアメリカがやりすぎると、カルドアの言ったような経済変動が準備される。食料は賃金財を構成するので安定が望ましい。
Commented by 飛車 at 2007-04-29 22:52 x
消費者物価指数って、調査対象品目とウェートは公表されているけど、あれの調査は定点観測しているんじゃないんですか?調査員割り振って、好きなところに買い物に行かせてアンケート回収いるの???

スーパーの場合、昨今はポイントカードが問題になりつつあるようで。商品券も場合によっては大問題に・・・。
Commented by うさこ at 2007-04-29 23:41 x
本石町さん>ありがとうございます。

一日だけの特売品とかも、対象外なんですよね。
結構そういうのまとめ買いしているな~

ある一定金額以上購入したら何かくれるものとかも好きだな~

飛車さん>ポイントや商品券の問題も大きいですね。

そういえば近くのスーパー、お惣菜、今年くらい?から1割値段上がった
あと、月末 土日に野菜・魚・お肉コーナーが全品3割セールしてたけど、
今年からそれやめて、数品目だけ3割で売るようになったな~
日持ちするものもあり、まとめ買いしてたから
高くなった気がする。

日銀は次は雇用と消費関連の指標に注目していくのかなと個人的には思っています。
PS うさ(うさこ)

Commented by のりしろ at 2007-04-30 08:26 x
今回の展望リポートに登場している、のりしろって何ですか?以前、水野さんが口にして、総裁から否定されたのりしろ論でしょうか?足元の物価がレンジから外れる中で、のりしろの議論とか、いまいちピンと来ないんですが・・・。
Commented by walrus at 2007-04-30 18:41 x
ここでの糊代とは、インフレ率の糊代です。景気悪化とともにゼロ金利制約下でデフレが進むと、デフレスパイラルの進行に対して金利面から打つ手がなくなるので、そうした事態を回避するために、ある程度のインフレを確保、容認すべきとの考え方です。物価指数上のインフレ率に上方バイアスがかかっている場合は、より高いインフレ率の確保が望ましいことになりますが、この点について日銀は今のCPIの上方バイアスは大きくないとの見方です。金利のりしろ論は利下げ余地を確保するために(状況をあまり省みずに)利上げを実施していくことですが、インフレ糊代確保の場合、利上げをより我慢するという文脈になります。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-30 21:25 x
害債さん、どうもです。エタノール絡みの便乗値上げですかあ。購入量の削減で防衛するしかないですかね(笑)。

飛車さん、どうもです。末端レベルの調査がどうなっているのか興味深いですね。ポイントカードは私も某電機店で重宝しております。

うさこさん、どうもです。ULCルートの物価上昇が中々見込めないので、今度は失業率でしょうか。NAIRUはしかしかなり低いような…。

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