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「大機小機」六本木族氏の主張にはうなずける=結論はしかし…
 久々の「大機小機」。論者は六本木族氏である。「長期志向の経営を標榜しながら、短期志向の経営に陥っている。これは日本企業経営のパラドックスと言える」との主張は結構うなずけた。詳しくはコラムをご覧になって頂くとして、気に入ったフレーズは以下の通り。
・新年度である。予算達成に向けた日本の組織の集中力は高い。
・とりわけ売り上げ目標達成に向けた執着心は強く、利益度外視の過当競争体質に結び付く。
・単年度の予算達成に邁進するのは短期志向の経営そのもの。
・中長期の経営計画は各部門のプランの積み上げを企画部が体裁を整えたものに過ぎず、洞察と決断に欠けるものが多い。
・このところの業績改善は主に好調な外需に支えられたものであるのは否めない。
・日本企業の経営体質がどこまで進化したのかは実は不明だ。
・モノ作り、巧みの技、顧客志向などの現場力だけでは先がない。
 六本木族氏のコラムはなかなか読ませるのが多い。私のお気に入りの一人だが、「分析」には同調するものの、「結論」は違うことが多い。今回の場合、「パラドックスを乗り越える経営の革新」を訴えておられる。理想論としてはそう言うしかないが、恐らくは日本企業の特性はコラムの分析通りで、それがまた日本企業らしさであるのだろうと思う。従って、革新できるのは多分無理であり、現状の特性を前提にいかに生き延びるかを考えるしかない。
 利益度外視の過当競争も辞さない覚悟で、異常な集中力を発揮する組織。そして一般的には無理だと思われる創意工夫を異常な修練によって獲得したモノ作り・巧みの技で解決する。その結果として多少とも利益が残れば良しとする戦いである。
 
 六本木族氏の企業特性の分析は、金融政策の運営上も重要な示唆をはらむ。すなわち内外需のバランスの取れた景気回復と日銀は言うが、外需が崩れると同時に景気はガタガタと落ちていく公算が大きいわけだ。もとより成長が鈍化しても変わらぬ日本企業は薄利多売・過当競争への邁進を継続するはずで、物価は上がらない、または下がるリスクがあるのではないか。利上げした方が「息の長い成長につながる」(武藤日銀副総裁)とはどうしても思えない。
by bank.of.japan | 2007-04-04 20:49 | 大機小機 | Comments(16)
Commented by ファン at 2007-04-04 22:34 x
私は利上げはニュートラルな立場ですが、金融政策に関しては本当に意見が割れていると思います。私が接している人だと、大企業の経営者・インベストメントバンカーなど企業経営や企業金融に携わっておられる方々はかなりの部分が「利上げ賛成派」です。それは、マクロの視点で金融政策を見ている人たちからはあまり出てこない、「ゼロ金利」は企業経営の資源配分を歪めるという主張に基づく事が多いのです。

対して、シンクタンカーやジャーナリストの人々はマクロ経済の視点から利上げに反対の人も多いように感じています。この問題に関しては、いわゆる「合成の誤謬」で、ミクロで見ている人が間違いで、マクロで見ている人は正解と決めてかかる気にはなれないのですが(だからといって、マクロで見ている人を間違いという気にもなれません)、企業経営に関わっているかどうかでここまで意見がキレイに分かれるケースというのも珍しいと思います(その事実を指摘させて頂きたかっただけです)
Commented by bank.of.japan at 2007-04-04 23:33 x
ファンさん、どうもです。立場によって見方が変わるのは当然であろうと思います。難しいのは、経済の行方が誰にも分からない以上、利上げの是非の正解も不明なこと。私は二度目の失敗を避けるためにも利上げしない方がいい、という立場ですが、間違っているかもしれません。ご指摘はよく分かります。引き続きよろしくお願いします。ところで、ジャーナリストが利上げに反対である、というのは知りませんでした(笑)。
Commented by 飛車 at 2007-04-05 02:38 x
あえて反抗的な解釈をば。

・日本の大企業は設備依存型製造業で長期限界費用が逓減する
・よって独占が成立するまで売上高獲得競争が継続する
・長期的戦略の大前提として短期的な売上予算の達成は絶対至上命題
・中期経営計画では、売上計画と設備投資計画以外はマイナー要因。投資時期と規模が最大にして唯一の決断
・売上至上の立場から、輸出を含んだ販売戦略が必須
・利益度外視の売上優先戦略が恒常化するのは自然

・規模の経済は例外的存在
・通常は長期限界費用曲線がU字型となり適切な企業規模が存在する
・やむを得ず大企業化を進めている産業ばかりに着目すべきではない
・大企業ほど優れているというのはただの先入観
・大企業だけに注目すると、モノ作り・巧みの技・顧客思考に染まっているように見えるのは自明
・大企業という狭い対象を一般化して語る点で、構造論者と同じ過ちを犯している

・輸出製造業の設備投資を抑制しようと利上げをした場合、内需関連産業にとっては過度な高金利となり、オーバーキルを招く
・G7で海外の中央銀行に景気鎮静化を要請し日本国内の内需外需のバランスをとるという手段もある
Commented by 飛車 at 2007-04-05 02:45 x
文字数の制約を回避しようと削りに削ったらわけわからなくなりましたんで補足します。

要するに、大企業ばかり見ていると、規模の経済が働いている特殊な企業群を過度に重視するようになり、国際競争力だとかTFPとか、そっち方面に答えを求めるしかなくなるって事です。彼らの産業は利益ゼロを志向する産業なので、そんなところを重視したら、どんどんデフレになっていきます。
視野を広くもって、日本人の大半がどういう産業で雇用されているのかとか、日本に暮らしている人にとって豊かな暮らしとは何かとか、面倒だから大企業しか調査しないのは止めるとか、日銀・財務省はもっと外交努力しろとか、そいういう事をしっかり考えて欲しいなぁと思うのでした。
Commented by 飛車 at 2007-04-05 02:53 x
>>ファンさん
自称では説得力ないかも知れませんが、私も一応経営者のはしくれだったりします。あなたも、輸出製造業と金融業の経営者だけが経営者として認められると思っているわけでは無いでしょう。

自分で色々と書いておいてなんですが、こういう問題について「利害関係者の意見」を鵜呑みにするのは、あまりよろしいことではないと思います。参考意見程度にとどめて、できればそれぞれの主張する理由に矛盾点が無いか、自分にとってどちらがより説得力を持って感じられるかを考えて欲しいと思います。
Commented by すなふきん at 2007-04-05 07:21 x
私のような世間知らずのど素人の意見で恐縮ですが、ミクロの見方をする人とマクロの見方をする人の違い(あるいは対立)は昔からあって、結局両者のバランスで経済は成り立ってたようにも思うんです。それは何もミクロな人にマクロな発想を強制することにもならないしその逆でもない。得意分野に特化するという原則から言えばそれはそれでいいと思うのですが。つまりミクロは民間の役割に該当しマクロは政府の役割に該当するといった、割当の問題に過ぎないと思うのですが。民間は民間でミクロの論理で勝手にやり、政府は政府でマクロ的にそれなりの役目を果たすべきところを、今は政府までミクロな発想に偏りすぎているために混乱が起きているという印象があります。しかもデフレが完全に払拭されていない状況が重なっていることが問題を引きずる要因になってると思います。民間部門と政府部門の違いを切り分けることなくただ民間の行動原理を直輸入すべきという発想がその端緒になってるのではないかと。
Commented by すなふきん at 2007-04-05 07:24 x
追伸。政府部門には日銀も含んでおきます。
Commented by システム5.1 at 2007-04-05 08:39 x
上記飛車さんのご指摘、うなずくところが多いです。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-05 12:48 x
飛車さん、どうもです。鋭い考察、有難うございます。大企業と中小・零細企業を分けて考察するのは確かにその通りです。たまたま外需で潤う大企業・製造業に対し、中小零細企業は雇用の大半を占め、大企業のあわせた利上げがオーバーキルを招くとのロジックは同感です。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-05 12:55 x
すなふきんさん、どうもです。経済政策の在り方としては、bewaadさんが以前言っていたと思いますが、ミクロ介入の回避、十分なマクロ政策だと思います。官民の役割分担は難しいですが、きちんと考えないと混乱が生じる恐れがありますね。
Commented by 通行人 at 2007-04-05 23:10 x
デフレは椅子取りゲームなわけで、大企業経営者は椅子取りゲームの加速を求めているのです。大企業経営者が言う「資源配分を歪めている」は、ライバル企業がなかなか音を上げないのは低金利が原因だから、金利をあげて早くつぶしてくれという意味じゃないかと思います。決して、パレート効率的な資源配分や金利設定を求めているわけじゃないという事で。むしろ、逆だと思った方がいいですよ。

CPIが△3%から0%近傍まで改善してきた事で、実質金利は3%から0.5%まで大幅低下しました。大企業経営者にとっては、相手企業が資金的に一息ついてしまうのは、なんとしてでも避けたいのではないかと思う次第。金利を考えるときは名目値じゃダメですよね。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-06 00:06 x
通行人さん、どうもです。グローバルに展開する製造業も確かに国内市場では椅子取りゲームようなシェア争いをやっているように見受けられます。ライバル企業を淘汰する利上げを求める気持ちは分かりますが、筋は違いますね。金融政策を産業政策に割り当てるつもりはさすがに日銀にもないと思います。
Commented by Teddy at 2007-04-06 18:32 x
ank.of.japanさんの揚げ足取りでもないですが、かつて、新世紀初頭、「創造的破壊」を強調し、"The Only True Reformer"とかなんとか、Newsweek(確か)に記事の載った総裁がいらっしゃらなかったでしたっけ?あの局面で、「ゾンビ企業」の強制退出を迫る意図があったのなら、やはり、現行のルール不在をもっと簡単な監視しやすいものに改めるべきだと。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-06 20:18
Teddyさん、どうもです。もしかしてハ○ミ総裁ですか(笑)。うーん、その意図があったとしても、あくまでも個人的な思いだったんじゃあないですかねえ。今の日銀は一応物価安定・持続的成長のために金融政策やってますが、説得力はあまりないです…。
Commented by Teddy at 2007-04-09 11:46 x
bank.of.japanさん、いつも遅れてやってきてかきこして、お礼もせず、すみません。
そういえば、小生、こないだ、30年おくればせで、Kydland・Prescottの"Rules rather than Discretion"を読んだせいで、やや偏った見方となったようです。その論文の論理は、各国の政策に反映された以外は、ほんとはようわかっていないかもしれません。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-09 20:39 x
Teddyさん、どうもです。その本、私は読んでおりません(笑)。すみません。裁量かルールか、は重要な論点ですが、ルールにせよ、裁量の余地がかなり大きい、のが現実の姿ではないかと思われます。
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