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金融庁幹部インタビューの感想=笑った点、疑問と違和感覚える点
 日経金融「不動産はバブルか」のシリーズで金融庁幹部のインタビューが出ていた。いくつか感想を箇条書きに。
・笑った点 念のために、これは幹部に向けたものではない。思い出し笑いである。さて、どこで笑ったのか。具体的には、「収益還元(DCF)法は必ずしも合理的とは言えない面がある」、「願望を織り込んでいるなら価格の妥当性を疑わざるを得ない」との部分だ。
 私はそっくり同じことを日銀考査局関係者に言い寄ったことがある。2002年秋、「不良債権問題の考え方」をぶち上げた日銀はDCFの活用を訴えた。あたかも、それが不良債権問題解決の魔法の計算かのように。「邦銀はDCF知らないから不良債権が処理できないのか、違うだろう、きちんと計算したら倒れちゃうからだろう、DCF使っても将来収益なんて願望じゃねえのか」と私。同じような言い分、まさか今日の当局者発言で目にするとは思わんかったです、ハイ。
・疑問と違和感覚える点  「今の不動産は通常の状態ではない」。そうですか、とは言いにくい。そもそも通常の状態は定義できるのか。地方圏はまだマイナスではないかと思われるが、それが「通常ではない」と言うならまだ分かる。では都市圏が「通常ではない」→「異常になりつつある」のだろうか。バブルと言いたいとしても、バブルかどうかは破裂して分かるものであって、予見的に言えるものではないと思うが…。
 また、金融庁が地価形成の通常・異常に興味を持つのはどうも違和感を覚える。ある銀行が特定案件ないし同種案件に突っ込み過ぎ、それが焦げ付いたら当該銀行の経営が傾く、という観点において、その案件(例、不動産関係)への個別的な興味を持つのなら違和感はない。金融庁の仕事として当然だ。
 
 そう言えば、日銀金融機構局も「バブルは繰り返すな」、「次のバブルは形を変えて忍び寄ってくる」と言っておる(笑)。金融庁もこのインタビューではマクロ的に不動産の異常(バブル化)に懸念を抱いている感じだ。とても困るのは、そして最悪は、日銀含む諸官庁が寄ってたかってバブルつぶしに奔走することだ。そうなってはバブル崩壊の最大の教訓(潰すより、潰れた後のケアが大事)がまったく生かされていない。「バブルへGO!!」は過去に飛ぶ必要もなく、今のこの瞬間が時代設定としてふさわしい気がする。
 諸官庁さん、そんなに不動産のバブル化に関心があるなら、一度集まって協議したらどうですか。日銀企画局が音頭取った方がいい。このままだと潰し合戦始まるんじゃないかと心配である。米国の不動産が怪しいというのに…、大丈夫なんだろうか、わが国の官庁は。

ps 考査関係者もまあ分かってはいたようです。DCFは不良債権処理を少しでも促進するためのスローガン的フレーズですね。ところで、日銀の景気見通しも「願望を織り込んでいる」のではないですかねえ、と嫌味を言ってみる。
by bank.of.japan | 2007-03-19 21:25 | 経済 | Comments(18)
Commented by 椿ライン at 2007-03-19 22:05 x
 今回も面白いエントリー、ありがとうございます。日経本紙でも滝田さんのファンドについてのインタビュー記事がありましたが、日経金融の記事は私も本石町さんと同じ部分に違和感を持ちました。「願望を織り込んでいるなら・・・」というくだりに、足銀の粉飾決算を思い出しました。

 不動産バブルとはやや話がそれますが、先日、日銀の河合さんが出席したイベントがあったようです。議事録が出ていないのが残念!
http://www.waseda.jp/wnfs/labo/labo2.html
Commented by bank.of.japan at 2007-03-19 23:25
椿ラインさん、どうもです。計算方法に「将来の、今後の」という概念が入ってしまうと、願望になる面は否めないでしょう、特にその方が都合がいいときは。河合さんはその筋では有名ですね。
Commented by 飛車 at 2007-03-20 00:46 x
願望が入り込んでいけないなら、世の中の事業計画はすべて存在自体が許されざるものになってしまう。企業家のアニマルスピリットを否定してしまったら、景気がよくなるはずも無いorz

で、僕的には何度も書いているけど、金融庁が市場の価格付けの適正化で規制を加えるのは、十分な議論のうえでOKだと思う。(通称)総量規制みたいに、内容が曖昧なまま(この点で規制とは呼べない)、「月の出ない夜もあるよ」みたいな言い回しで民間の判断を誘導する指導は大反対。コントロールと責任を放棄して何が指導だと思う。一般論として命令には、「受け手に誤解の余地が無い事」「解釈の相違で責任の所在が曖昧にならない事」というのが絶対的に必要。言葉遊びは禁物。この辺の線引きが曖昧なのがおかしい。
日銀は、底抜け防止に緩和する事が大事であって、バブル潰しの利上げはオーバーキルの原因。金融庁に土下座して頼まれない限り利上げはしないくらいの感覚でいてもらいたい。

>本石町日記さん
命令書の内容の明確化の件。第二の柱とかフォワードルッキングとかインフレ「参照値」とか、曖昧な言い回しで責任を回避させないように、記者として質問していただけたらうれしい。
Commented by 本石町さんへ at 2007-03-20 07:02 x
1.「バブルは潰さなければバブルでない」という言説について

映画で使われたことから頻繁にシロウト筋で使われていますが、これは明らかに誤った言説です。米国における不動産市場にバブル的な要素があることは数年前から(シロウトはともかく)不動産市場の専門家の間では指摘されている事柄でしたし、本格的な「破裂」まではいかないにしても、どこかで「調整」は必ず行われるだろうというのは予測としては決して少数派だったとは言えなかったと思います。

バブルの発生を未然に防ごうとする人々を揶揄したくなる人達の気持ちは痛いほどよくわかりますが、「バブルなんて潰さなければバブルじゃない」というのはさすがに言いすぎです。各種統計の動向から、実体経済からどの程度乖離しているのかということは現在ではある程度把握可能になっておりますし、実体経済に基礎を置かない異常な数値の上昇が「バブル」なのであって、潰れて初めて「バブル」だったと気が付くというのはシロウトだということの証明です(新興企業のイメージ戦略に煽られて、財務的な分析をすることもなく株を買い込んでしまうようなものででしょう)
Commented by 本石町さんへ at 2007-03-20 07:21 x
2.今の日本の不動産市場は健全なのか。

全体としてみれば、今の日本の不動産市場を「バブル」と言うのは言いすぎですが、「ミニバブル」的な要素があり、一部に価格形成をめぐる怪しげな動きもあることは事実です。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070315/121133/?P=1が氷山の一角にすぎませんが、私が内々でファンド関係者から耳にする話とも整合します。
ただし、別に「利上げしろ」というつもりはありません。しかし、適正な価格形成に必要な規制をきちんとしないと、後で大変な目に遭うよという可能性は指摘しておきたいと思います。その意味で飛車さんと私は同意見です。
Commented by 本石町さんへ at 2007-03-20 07:31 x
(念のため引用しておきます)
 「『サクラ鑑定』という言葉をご存じですか」

 不動産ファンドの取材をしていた記者に、ある不動産鑑定士が唐突に問いかけてきた。年は還暦を過ぎた頃か。大手銀行、債権回収会社などで幾多の不動産評価の経験を積み、現在は大手不動産鑑定会社に身を置いている。

 鑑定士は、過熱する不動産価格の先行きを憂いていた。割安と言われる日本の不動産物件を目がけ、世界中の資金が集まり出したのが数年前。以来、投資額は増加の一途をたどり、金融庁によれば国内外の不動産ファンドが保有する不動産残高は15兆円に近い規模に達したと言われる。


 その資金の受け皿として中心的な役割を果たすREIT(不動産投資信託)も急騰を続けている。年初から最高値をつけた2月26日までの東京証券取引所のREIT指数の上昇率は25%と、東証株価指数(TOPIX)の3倍以上。東証に上場するREIT全銘柄を足した時価総額も6兆円を突破した。

 間もなく発表になる公示地価でも、大都市圏では価格上昇が有力視されており、さらなる資金の呼び水となることは間違いない。
Commented by 本石町さんへ at 2007-03-20 07:33 x
猫も杓子もREITへ
ところが、活況を呈する業界とは裏腹に、鑑定士の顔は冴えない。「不動産に流れ込む資金量があまりにも異常で、不動産業界のあちこちに変調を来している」(鑑定士)。

その一端が「サクラ鑑定」の増加なのだという。

サクラ鑑定とは、土地評価の依頼主が10程度の物件をまとめて不動産鑑定会社に依頼し、見積もりを取ってもらう行為。鑑定会社はそれぞれ独自の基準をもって査定するため、不動産評価額にはばらつきが出る。依頼主は見積もりを複数の鑑定会社から取り、最も評価を高くつけた会社に鑑定を依頼する。

悪質な場合、あらかじめ希望した評価額を“追認”するように迫る依頼者もいるという。過熱気味のREITの背後で、「残念ながら『地価のかさ上げ』とも言える取引が目立ってきた」と先の鑑定士は言う。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070315/121133/
Commented by 本石町さんへ at 2007-03-20 08:42 x
散見されるシロウト言説のことを批判しているのであって、本石町さんを「シロウト」と言っているわけではありません。念のため。
Commented by bank.of.japan at 2007-03-20 18:29
飛車さん、どうもです。ご指摘には概ね賛成です。金融取引の健全性維持の監視・規制なら話は分かります。結果として価格の適正化が図られ、システムの安定につながると期待されます。

本石町さんへさん、どうもです。詳しい解説ありがとうございます。資産価格の変動は近年の金融政策にとって大きな課題ですが、正解となる処方せんが見当たらないのが難題ですね。潰そうとせず、大きく膨らまさず、潰れたら迅速にケア(緩和)する、でしょうか。このブログではもっぱらマクロ的観点で取り上げとおりますが、まだマクロ的に対処すべき状況にはないと思います。もっとも、局所的にバブル化し、鑑定士が苦慮する事態も起きているのかもしれませんが。
Commented by 飛車 at 2007-03-20 19:33 x
バブルという言葉に明確な定義があるのか無いのかという状態なのです。「実態経済からの乖離」という定義は、実態経済って何よとなってしまいます。
後日の視点で「崩壊したなら値付けが適切じゃなかった」と言う事後的定義もありです。ある意味懸命な定義かも知れません。
個人的には、「(1)価格上昇期待が価格決定に正のフィードバックをもたらし、短期的に売買が繰り返されつつ価格が上昇する状態」と捉えたら良いのではないかと思います。さらに付け加えるなら、「(2)その状態が、同一市場に広く敷衍し、崩壊したときに経済に与える悪影響が甚大なもの」としたいです。
REITにしても、株式市場にしても、そもそも市場の値付けは本質的には(1)の状態が恒常なわけで、ミニバブル的((2)の状態を満たしていないので)な値付けが存在しなければ、市場が成り立たちません。この状態がゆるされるのは市場を通じてリスクの分散が図れるからに他なりません。分散できない規模までバブル的値付けが揃って膨れたら、それは(2)の条件を満たした本格的なバブルという事になります。
Commented by 飛車 at 2007-03-20 19:35 x
さて、REITですが、まだ供給サイドが少ない小さな市場ですから、REIT市場だけ見ればすぐにリスク分散できない状態に陥りがちなのではないかと思います。せっかくのリスク分散の場所ですから、懸念を警鐘して、脊髄反射的に叩き潰したり、上場基準を厳格化して供給をコントロールしようとせずに、ガンガン資金を呼び込んでガンガン上場商品を増やしていく事でリスク分散の分母を増やすのも、適切な価格設定を実現する手かも知れません。土地バブルを懸念して汐留の土地売却を見送ったみたいな、狂った脊髄反射的判断は避けて欲しいですね。
Commented by bank.of.japan at 2007-03-20 20:55
飛車さん、どうもです。またまたコメント頂き多謝です。ご指摘のように誕生から間もない市場だけみると、規模が小さい故に拡大時の伸び率は急激ですので、それに目を奪われると誤った対応を取るリスクはありますね。発展途上の市場を叩きつぶし、成熟化の道を絶つことのないように祈りたいです。
Commented by 椿ライン at 2007-03-20 23:18 x
 飛車さんのコメントなるほどと思いました。ありがとうございます。
 金融庁幹部といえば、週刊エコノミスト(3/27号)に佐藤監督局長の寄稿が載っていますね。「不動産市場の動向と金融行政上の課題」と題して、REITやバーゼル2について触れています。
 個人的に気になったのは「例えばノンリコース・ローン、ファンドへの投資、建設業・不動産業への通常融資の3者を合わせた不動産向けエクスポージャーをひとまとまりとして捉え、信用集中リスクの管理を行うことも課題となろう」というくだりでした。総量規制か!?
 ノンリコース・ローンについては回収可能性うんぬんの問題も指摘なさってます。またREIT絡みで行政処分でも出るのでしょうか・・・。
Commented by ぽん at 2007-03-22 07:29 x
通常融資の3者を合わせて不動産エクスポージャーとみるというのが米国OCCのガイドラインじゃなかったでしたっけ?>椿ラインさん

考査局が昔言っていたDCFは償却引当のDCF法なのでしょうか?それとも不動産評価のDCFなのでしょうか? >本石町日記さん
Commented by bank.of.japan at 2007-03-22 20:22
ぽんさん、どうもです。考査局はもちろん前者の方でして、ここでは不動産とごっちゃにしてしまい、紛らわしい印象を与えたことをお詫びします。将来のキャッシュフロー(企業の収益、不動産の賃料)の「見込み」に焦点を絞って展開した方が良かったかもしれません。
Commented by 北の書生もどき at 2007-03-22 21:36 x
こんばんは。本日の地価公示はなかなか興味深い結果でしたね。
ブログ更新を楽しみにしております。
Commented by bank.of.japan at 2007-03-22 22:01
北の書生もどきさん、どうもです。先ほどアップしました。そちらにもコメントいただくと多謝です。
Commented by 椿ライン at 2007-03-22 23:46 x
 ぽんさんご指摘ありがとうございます。ドメスティックな私は英FSAやOCCのガイダンスも全く知りませんが、JCIFのレポートによれば、紆余曲折があった内容なのですね。
http://www.jcif.or.jp/View.php?action=PublicReport&R=89
 不動産信託受益証券に投資することと、REITに投資することの経済的効果はほぼ同じですが、個人的には不動産ファンドと建設業(デベロッパー?)を一緒にすることには違和感を覚えます。信用集中リスクか!?
 預金量1兆円程度の大手信金が自己資本を省みずに土地関係に過剰融資していたケースはともかく、FSAは来年度の監督方針でOCCモデルに転換するのでしょうか・・・。
 昨年、JPモルガン信託が行政処分を受けた時、FSA銀行一課では「外資系の日本法人はコンプライアンス、リーガルリスクにコストを余りかけない」などと説明していました。JPの件は個人に問題があったと思いますが、FSAの不動産に対するスタンスは、バブル懸念より、コンプラ上の問題を気にしていたのではないかと。そう考えると、佐藤さんの発言は総量規制への方針転換に思えますぅ。
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