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投資利回りが低いのは…=『大機小機』悠憂氏への違和感
 11日付の日経新聞『大機小機』で、悠憂氏が「日本版ビッグバンの矛盾」と題し、投資立国への取り組みを訴えていた。肯けるところもあるのだが、市場動向の解釈には違和感を持った。具体的には、国民が受け取る金融収益の低さを「政府・日銀の長年の低金利政策」に求め、さらに投資利回りの低さを「日本の機関投資家の投資対象がTBを中心にした債券に偏っているため」と分析していた点である。
 低金利の因果関係において、投資行動(TB・債券買い)を原因に、結果(低金利)を導き出すのは正確ではない。投資行動も実は結果であり、TB・債券買いが強まる原因が別にあるわけだ。つまり、「金利が低い」ことの根本原因は「景気が冴えない」ことが大きい。機関投資家(銀行含む)の投融資行動にリスク回避性がないわけではないが、基本的には「景気が冴えない=民間資金需要が弱い」ために運用難に陥り、消去法的にTB・債券を買わざるを得ない。
 コラムの内容によると、日本の金融機関はあたかも金融技術が乏しく、市場理論に疎いために安易にTB・債券買いに走っている、という印象を受ける。金融機関の中には該当する例もあるかもしれないが、事実としては、上記述べたように景気回復が力強さに欠けるために民間資金需要が弱い(マネーはデフレ的)ことに尽きる。言い換えれば、インフレになれば金利は上がるのである。
 もし、民間資金需要が弱いのにTBや債券を買うのを止めたら…。機関投資家は、運用資金を現金として持つか、強引に民間向け投融資を強めるしかない。そうなると、強烈な官民金利の逆転が起きて、わが国経済の資金循環は狂った状態になる。
 なお、「投資立国」を目指す手段として、金融技術に通じた人材養成の必要性を訴えているが、私はちょっと違う考えだ。日本の金融が劣後している原因は、「技術不足」ではなくて「リスク回避(サラリーマン)的な風土」であろうと思う。いくら技術や理論を向上しても、それが生かされない風土なら、総偏差値収益率の低下を招くだけだろう(日銀のように?)。
 この点は、はからずしもコラムの一文が証明している。「リスクはあるが利幅の大きい内外M&A、MBO、PE案件は、ほとんど外資が扱っている」と。外資で働いている人の大半は日本人である。彼&彼女らは、日系金融機関の彼&彼女らに比べて圧倒的に理論と技術で優れているのか。そうではなくて、理論と技術よりもむしろインセンティブの違いであろう。リスク・リターンに応じた報酬体系(その分従業員は厳しい選別にさらされる)が、リスク性の案件確保につながっていると思われる。
 私は、投資立国を目指す際、外資の力を頼ってもいいと思う(英シティー)のように。それから「拝金思想の一掃」とかあまり言わない方がいい。収益追求=拝金。単に言い方の違いでしかない。「収益は追求するが、拝金はいけない」とは何だろう。仮に「金さえ儲かればいい(ぼったくり)=拝金」とした場合、ビジネスモデルとして継続性がなく、拝金一掃と言うまでもなく自然淘汰されると思うが。
 なんだかこのコラム、うなずけるところがどんどんなくなってきたなあ。

ps 知り合いの日銀若手が辞めた。外資系投資銀行への転進である。彼の活躍を祈っている。彼が見事成功したら、もともと持っていた能力が日銀よりも外資の下で発揮されたことになる。要は技術や理論ではなく、人材の使い方の問題なのでないか。
by bank.of.japan | 2007-01-12 22:38 | 大機小機 | Comments(16)
Commented by 芋焼酎 at 2007-01-13 00:22 x
二つ下のブログにコメントを寄せた芋焼酎です。
わが国の政府と日銀は、発行された国債の50%以上を保有しています。そして、政府と日銀は(ほとんど売却することなく)淡々と国債を買い続ける世界最大の大投資家です。世界に類をみないこれだけの大投資家が存在する日本国債マーケットは、金利が低くて当たり前なのです。日本のみならずどこの国であれ、これほど安定した大投資家が存在すれば、財政リスクプレミアムは顕在化しづらく、金利も低位に安定するに決まっています。大機小機の「政府・日銀の低金利政策」の指摘は正しいと思います。
景気がどれほど良くても、仮に日銀総裁や総理大臣が「保有する国債の大半を売却する」と言った瞬間に、債券は暴落し、金利は急騰するでしょう。
もちろん、政府や日銀が国債を買っているからという理由だけで全てを説明できるわけではありませんが、それだけ日本国債マーケットは歪なマーケットであることを意識する必要はあると思います。
Commented by bank.of.japan at 2007-01-13 00:52
芋焼酎さん、どうもです。確かに政府(郵政)・日銀は大量の国債を買っていますが、例えば日銀にしても負債に大量の銀行券があるため、資産として国債を購入しており、金利を低くする意図はないと思います。やはり成長率が低い、インフレ期待が乏しい(物価が低い)といったことが低金利の大きな要因であろうと考えられます。
Commented by 通行人 at 2007-01-13 02:20 x
アメリカ国債の保有主体の1位はアメリカ政府です。FRBとあわせて40%は公的機関が保有しています。40%と50%で金利にそれほどの差がつくものですか?
日本政府が国債の大半を売却したら、それは国債の償還にあてられるわけですよね。償還しきれない分は、国債を購入して将来の償還に備えるとw。これ、日本政府の債務残高を見る際に、何故か粗負債残高だけを見るからおかしくなるのです。保有金融資産を除いて純負債で見ればよいだけです。
また日銀が売却する=超緊縮型金融政策ですから、通貨発行残高が激減して金利は急騰して当たり前です。日銀は何のために存在しているのか、理解されておりますか?安定的に通貨を供給することがお仕事です。
日銀は金利を低くする意図はなくとも、日本の経済状態がそれを許していないだけです。後は上げるタイミングをいつにし、どれくらい上げるのかだけです。早すぎ上げすぎをすれば再度景気が減速して、ゼロ金利に逆戻りとなるわけです。
Commented by ガーナチョコ at 2007-01-13 03:30 x
 銀行貸出が伸びないので債券買うしかない、という話はよく聞きます。こういうのを聞くと「景気がもうひとつ」なんでしょうね。
 一方で短国入札では、公的な投資家が水準度外視で大口で買っているケースも見られます。プライマリーディーラー制度のおかげで仕方なく業者が応札しているケースもあるように思います。この二つの要因がない場合の金利水準って一体どうなっていんでしょうね? 素朴な疑問です。
 末端投資家がリスク回避スタンスであればあるほど、債券投資が増えるような気がします。景気が冴えないからリスクを取らないと言われれば「はいそれまーでーよー」ですが、銀行や郵貯にお金を置いている日本人ってそもそもあまりリスクを取らないように思います。となると、やはり金利が低くなるように思います。続く。
Commented by ガーナチョコ at 2007-01-13 03:30 x
 もう一つ。日本の機関投資家さんって株と債券の間で機動的に資金を行き来させられるのでしょうか? 株で運用されている資金と、債券にある資金って、その垣根を越えて自由に行き来している印象がないので、そういう風土も金利の上昇幅を抑えている要因かなとなんとなく思ったりもします。これは低金利政策とか景気が冴えないとか、どちらにもあてはまらないんでしょうね。
 大磯小磯さんの見方が正しいのか本石町さんが正しいのか、実際のところよくわからないのですが、要は私自身根本原因もよくわからない、というのが結論です。すみません、こんな閉め方で。
Commented at 2007-01-13 08:52 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 北の通りすがり at 2007-01-13 11:19 x
ガーナチョコさんのコメントを拝見してふと思いついたのですが、株と債券での資金移動が緩やかなのは、会計制度も一因ではないでしょうか?
機関投資家のポートフォリオに、償還まで持ちきる(中途売却は会計上のペナルティ有)代わりに、時価評価の対象とせずに済む「満期保有目的」扱いの債券が、結構な割合を占めているのかも・・・
以上、全くの思いつきで書いておりますので、「そんなの常識」or「全く見当違い」いずれの場合もご容赦を。
Commented by keith5150 at 2007-01-13 11:41
日本人にかけているのはリスク&コストに対するリターン、リターンに対するリスク&コストの意識だ、と誰かが言っていたのを思い出しました。
Commented by 害債 at 2007-01-13 16:23 x
機関投資家で株と債券の間の資金移動が簡単かという点についてですが、規模が大きくなればなるほど難しくなりますね。一般にはアロケーションをそれほど大きく動かせるところは少ないのですが、保険会社などは結構緩やかにやっているので総資産の一割程度なら動かせるところは多いのではないでしょうか?
資金需要が伸びないから融資が伸びず債券に走るというポイントですが、少なくとも長期については金余りと機関投資家のLDI(Liability Driven Investment)が原因かと。融資など債券より低い利回りだったりしますが、この原因を作ったのは機関投資家ではなく銀行だと思います。われわれも融資部門も抱えているのですが、結局一部金融機関(とくに地銀など)にあおられて昨年は相当低利での実行を余儀なくされたようです。流動性の少ない融資より債券のほうが利回りが高いという状況で「何ナノこれ?」状態でした。ちなみに「機関投資家」と呼ばれる人々は本来的に一定のリターンを得なければならないし基本的に委託者が安全資産での運用を望まないので、TBは「余資」運用以外に考えられません。長期国債ならいっぱいありますけれどね。
Commented by 害債 at 2007-01-13 16:27 x
補足ですが、「外資系に勤める彼、彼女」らの一番優れている(というか一番求められる)能力は、営業力、対人能力、政治力プラス体力ではないかと思われます。ときどきトンデモナイ商品を持ち込んでくるのですが、そういうのがほかでは結構売れてたりするのですからね。
Commented by 飛車 at 2007-01-13 18:29 x
リスクとリターンの問題ではなく、情報不足でいんちき商品をつかまされる連中を見つけようとする志向が強いのかと。アホな商品を買ってしまう連中を見つけ出して商売にするのは、リスクを伴いつつリターンも大きい仕事ではあります。また一方で、自分がわかる事は相手もわかるという前提で行動すればアホな商品は開発しませんし、市場は基本的に予定調和的になります。期待値が一緒であれば、どちらを志向するのかは好みの問題です。が、両者が同一の市場でそれぞれの行動を行った場合、後者の方が予定調和の市場を乱されるという点で不利益を蒙る可能性があります。株式市場みたいにアホが一定のシェアで存在する市場では、まじめに運用しちゃ駄目って事ですねw
Commented by 飛車 at 2007-01-13 18:32 x
>結局一部金融機関(とくに地銀など)にあおられて昨年は相当低利での実行を余儀なくされたようです。

低利での融資をした時点で、他の金融機関から見たらあなたの会社もきっと「煽る側の一員」・・・というのが、客観的事実ではないかと思います。
債権より低い金利で融資するのは埋没費用があるためでは?債権は市場ですき放題に売り買いしても誰からも恨みを買う事はありませんが、融資は相手企業の財務担当者との継続的な信頼関係の構築がなされなければ、次の融資の際に不利な状況に立たされるという側面があります。
営業活動の場において、自らが信頼に値する事を示す必要である、比較的弱い立場の金融機関にとっては、この埋没費用の存在は無視できないかと思われます。
Commented by 害債 at 2007-01-13 19:00 x
>低利での融資をした時点で、他の金融機関から見たらあなたの会社もきっと「煽る側の一員」・・・というのが、客観的事実ではないかと思います

そうでしょうね。
まあどこも投資枠が決められていてサラリーマン的に実行しなければならない部分もあるようです。これはまた本文エントリーに書かれていた
>日本の金融が劣後している原因は、「技術不足」ではなくて「リスク回避(サラリーマン)的な風土」であろうと思う。

というところに回帰してしまうのでしょうね。

飛車さんが書かれている「埋没費用」については、公募債購入より融資のほうがビジネス関係の構築には有効であるという点で同意です。
Commented by bank.of.japan at 2007-01-13 21:25 x
みなさん、色々コメント頂き多謝です。かなり議論が進展し、ここで改めてまとめる必要はなさそうですね(汗)。思いつつままに簡単な感想を。

通行人さん、どうもです。エントリー内容を補足するコメントと受け止めました。債務残高が余りに大きいので、その規模が注目されがち(マスコミの責任も大・反省)です。やはり資産・債務の関係(資金循環)で捉えるべきでしょうね。

ガーナチョコさん、どうもです。ポート内の資金移動は、制度上の縛り(銀行の場合は銀行勘定・トレーディング勘定など)もあるので、そう簡単ではないと思われます。フリーに動くのは「何でもやるヘッジファンド」ではないかと。国債管理政策の豪腕もあり、それで金利が低めになる側面もありますが、まあそんなに大きな差はないかと思います。

北の通りすがりさん、どうもです。フォローありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。

非公開コメントさん、そうおっしゃらずに引き続き突っ込みよろしく(笑)。今度飲みにいきましょう。
Commented by bank.of.japan at 2007-01-13 21:33 x
keith5150さん、どうもです。痛い指摘ですね。コスト度外視の取り組み、他人事ではないです(笑)。

害債さん、どうもです。率直かつ詳細なフォロー、痛み入ります。国債・融資の金利逆転、これこそがわが国金融市場の本質的な歪みではないかと。会計要因・風土要因・社会要因等の絡まった象徴的現象。これは学術的に分析の価値ありではないかと。というか日銀がやるべき分析テーマですよね(笑)。日銀金融機構局金融高度化センターの解析を待ちたい。優れているのが「営業力、対人能力、政治力プラス体力」であるとのご指摘、脱帽であります。
Commented by bank.of.japan at 2007-01-13 21:38 x
飛車さん、どうもです。これまた率直なご意見、多謝です。融資金利の低さに関するご指摘にはうなずける面あります。その他の要因として、会計要因(融資は非時価会計)も結構大きいと思うのですが。債券は好きに売り買いできますが、損益が明確になります。低利融資するぐらいなら流動性の高い債券買った方がいいように思いますが、わが邦銀経営層はなお融資が本業、債券はバクチとの意識が強いようにも思えます。
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