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「丁寧かつ誠実な過剰発信」の副作用=ヘッドラインリスクが生じる理由②
 今回は、ヘッドラインリスクが生じる理由その②として日銀側の要因である。既に前回エントリーのコメント欄で「route138」さんと「ラスト何マイル?」さんのやり取りでも触れられているが、まずは総裁・副総裁・審議委員の会見回数が異常に多いことが挙げられる。
 会見は、用意した講演テキストを読むのとは違い、アドリブの答弁となる。講演後の質疑応答もアドリブだ。言質を取られることなく、会見・質疑を完璧にこなすのは難しい。国会答弁で鍛えられた霞ヶ関官僚ならまだしも、民間出身の審議委員に完璧を期待するのは酷である。不用意な発言は出やすく、しかも回数が多いとあってはヘッドラインリスクは増大する。
 もう一つは、「丁寧・誠実」という政策委員会の性格である。これは透明性を高めたい、という善意に基づくものだが、結果的に言葉を尽くしてたくさん述べる、ことになりやすい。言葉が多く、かつ細かく説明するほど、ヘッドラインとして切り取られるフレーズは増大する。しかも、先に述べたようにその回数が多いのだから、ヘッドラインリスクは高まる。
 本来、引っかけ質問には、例えば麻生大臣のように切り返すぐらいの対応でもいいと私は思うのだが、政策委メンバーは誠意を尽くしたい(これは本当)という気持ちがあるので、生真面目に答えやすいわけだ。
 従って、日銀側としてヘッドラインリスクを減らすには、①会見・質疑の機会を減らす②丁寧・誠実に拘泥しない-といったことが必要である。ただ、日本の風土としては、いずれも透明性の後退と受け止められ、日銀としては実行は難しい。まあ、やるにしても超長期的な課題である。なお、対症療法としては、政策委メンバーに会見の模擬演習を行い、アドリブ能力を高める、ということが考えられる。
 個人的には、会見・質疑を必要最低限(定義は難しいが)まで減らすのは賛成である。

ps 私は1990年代前半の4年間、英国に駐在した。その間、確か総裁会見は一回だけだったと思う。ベアリングズが破たんしたときだ。また、IMCがロンドンで開催されたとき、休憩で会議場から出てきたグリースパンFRB議長に先輩記者と無謀にもぶら下がった。その模様である。
私ら 「good afternoon, chairman」
グ議長 「………………………………………………………(無言)」(この間、珍しい虫を見るような目付き) 黙って立ち去った。
 現場には各国の記者がたくさんいたが、ぶら下がったのは私らだけ。みんなぶら下がりが無意味だと知っていたのだろう。ばつの悪い思いをしたが、スペインのメディアの記者が「nice try」と言ってくれたのが救いであった(笑)。
by bank.of.japan | 2006-12-14 22:04 | 日銀 | Comments(20)
Commented by ファルマコン at 2006-12-14 22:54 x
私も日銀審議委員の発言回数削減に賛成です。最近の日銀関係の情報発信をみていると、市場の多くの方が振り回されて、挙句のはては執行部?が内部情報をリークして火消しに廻ったように見えます。他の主要国と比べて、この国の情報発信・管理のつたなさ、いい加減さをあらためて思い知らされました。でも、こうやって振り回されないとメディアの方にはつまらないのかも。。。
Commented by a-kun at 2006-12-15 00:35 x
市場参加者としては、ヘッドラインリスクによるボラティリティが出てくれた方が儲かる(ときもある)ので歓迎すべきなのですが、経済運営という点においてはやはり発言し過ぎだと思うのです。政策決定会合だって月1回でも多すぎると思いますし。やっぱりあれだけ露出してしまうと発言に重みが欠けてしまうのです。そのことが日銀が国内でリスペクトされない要因のひとつになってしまっているような気がします。
でも一番困るのはブラックアウト期間や国債入札日ですらおかまいなく呼び出したり牽制したりする国会のみなさんかな。責任ある立場として経済政策を語るのならせめてクリティカルな時間帯かどうか確認してから発言してほしい。
Commented by カナリーワーフ at 2006-12-15 05:03 x
「ヘッドライン」をうまく乗りこなした例として思い出されるのが、1997年6~8月当時のブンデスバンク・イッシング理事のマルク高への口先誘導。当時、ブンデスバンクとしては、マルク安が輸入物価上昇圧力として懸念され、また、ユーロへの統合を目前に控えてマルクの軟化は避けたい局面であったわけですが、当時2週間ごとに開かれていたレポレート会合の間で、イッシング理事が、レポレートの引き上げをやるぞやるぞと脅し続け、結局、レポレートの引き上げもマルク買い介入もなし。金利1bps、介入実弾1ドルもマルク買いのために使うことなく、まさに「ヘッドライン」に市場参加者を貼り付けることによって8月中盤にはマルク高基調に引き戻したのでした。あの時は、本当に「イッシングすげー、ブンデスバンクすげー」と思ったもんです。
Commented by Teddy at 2006-12-15 06:58 x
某大手米系証券の日本のチーフ・エコノミストは、「日銀総裁の露出は多すぎる」とこのあいだのレポートで書いていました(「沈黙は金」というタイトルだったような)。
ただ、Fed、ECB(特に後者)は日替わりのように色々な人がしゃべります。情報発信は今の中央銀行には不可欠です。コミュニケーション・スキルを磨くしかないのでは?
Commented at 2006-12-15 09:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2006-12-15 10:05 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by オレンジ at 2006-12-15 10:10 x
本石町さんがおっしゃるように露出回数を減らし、あまり丁寧に対応しないという考えに賛成です。本来、露出頻度と透明性とは次元が異なるように思います。むしろ問題なのは、審議委員さんたちです。彼らにどこまで独自の情報網や分析能力があるのかという点でしょう(少し言い過ぎか、立派なエコノミストの方もいらっしゃるので)。米地区連銀総裁の下にはボードとは別のエコノミスト集団がいますし、管轄区のアネクドート情報を積極的に収集しているようです。顧みて、日本の場合は、です。
Commented by route138 at 2006-12-15 11:53 x
 日銀のコミュニケーションポリシー改善は、3つの次元に整理する必要があります。1)日銀独自の判断としてできるもの(講演など) 2)メディア側も関与して判断する必要があるもの(記者会見など) 3)立法府が判断すべきもの(総裁の国会出席回数の削減や議事要旨公表の早期化には日銀法の規定改正が必要)ーーです。今回のテーマの2)の記者会見について、メディア側の判断も重要なのは、そもそも記者会見は日銀が主催しているのではなく、記者クラブが主催しているものだからです。ところが会見の回数について、メディアは、予算も記者の陣容もあるので減らす必要はない会社と、予算も陣容も限られているので本音では減らしてもらいたい会社に割れています。日銀側も、露出を増やしたい一部審議委員と本音では記者会見はやりたくない一部審議委員に割れている。というわけで、現在の回数は維持しつつ、様々な工夫を施すしかない。例えば、審議委員の会見は東京でやった方がいいのではないですか? 地方の方々との意思疎通は重要なので講演は地方でやり続けるのでいいでしょうが、会見は、多くの記者が参加できる東京でやった方が、発言が偏った解釈をされるリスクは減ります。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-15 14:05
ファルマコンさん、どうもです。回数はすぐには無理でも減らした方がいいですね。振り回されるのは個人的には疲れるので、困ります(笑い)。

a-kunさん、どうもです。確かに情報発信の需給関係上は、発信頻度過多によって注目度が薄まる面はありますね。国会答弁も、何で呼ばれたのか不明なケースも見受けられ、これは省庁も含めて共通の課題かもしれません。

Commented by bank.of.japan at 2006-12-15 14:20
カナリーワーフさん、どうもです。イッシング理事、発言だけでそこまでのゲームができるのは、超高等な対話術ですね。もとより、ブンデスバンクへの信頼が厚いという基盤の上に成り立つ対話なので、わがBOJがそうなるのは…。
Teddyさん、どうもです。そのリポート、私も見ました。沈黙は金なり、だと私も思います。露出頻度を維持する場合、テクニックを磨くしかないですね。模擬会見あれば、私は喜んで協力します(笑)。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-15 14:20
daizさん、貴重なコメント多謝です。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-15 14:59
オレンジさん、ご賛同ありがとう御座います。審議委員には、専属スタッフが一人付くだけですが、仕組みとしては日銀内のリソースを使え、事務方も最大限サポートするはずです。実際上は、「自由に使う」というわけにはいかないでしょう。組織の長である地区連銀総裁と審議委員を比較するのは無理があるかもしれませんが、独自の情報網と独自の分析能力においては限界があると思います。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-15 15:09
route138さん、どうもです。論点整理やっていただきまして多謝です。ほぼ言うことなしです。私も、審議委員の地方講演・会見は再考の余地あると思います。講演内容の筋書きはマクロ分析(現状、先行きの各論・リスク分析)→政策運営の概略といった流れで、このパターンは総裁講演と共通するもの。個人的には、小難しい話は一切しない、会見もローカルネタに限定する、もありかなと思っております。
Commented by GS at 2006-12-15 18:13 x
Greenspan議長が極一部の親しい記者(例えばWポストにいたベリー)とは直に話しをして、記事のトーンに影響を及ぼしていたというの話を聞いたことがあります。そのためベリーの観測記事をウォール街のエコノミストは貪るように読んでいたそうです。こうした裏のルートを使えとは言いたくありませんが、要は、日銀・市場・マスコミ・政府の間で、日経の藤井委員もかつて指摘されていたような「大人の関係」が築かれていないことが問題の本質だと思いますが、如何でしょう。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-15 19:49
GSさん、どうもです。「大人の関係」が容認される風土であればいいとは思いますが、恐らくは90年代の一連の金融汚職事件によって「不透明な癒着」と受け止められるかもしれません。オープンな関係は透明ではありますが、本音が言いにくい、という側面もあります。個人的には、癒着しない「大人の関係」が理想だと思っております。
Commented at 2006-12-16 00:07 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-16 13:48
↑さん、いつもありがとうございます。貴重な経験と情報、多謝です。今後ともよろしくお願いいたします。
Commented by Teddy at 2006-12-22 08:53 x
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=am82mO0PYZxw
Commented by Teddy at 2006-12-22 08:58 x
失礼しました。勢いあまってエンターキーを押してしまいました。今更古いネタを蒸し返してなんですが、Bloombergの名物コメンテータのBaum女史は、BBよ、記者会見を開け、そして、「構文解析」で高給をもらっているFedウォッチャーの首を切ろうじゃないか、みたいなことを言っています。引き合いに出されているBOEのキング総裁の講演はまだ読んでないですが。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-22 17:57 x
Teddyさん、どうもです。面白いネタをありがとうございます。まだざっとしか目を通してませんが、露出し過ぎる日本とは逆のケースになっているようですね。バーナンキ、しゃべらナイトのノリでしょうか(笑)。
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