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「マメを食うハト」との対話は…=ヘッドラインリスクが生じる理由①
 ちょっとうろ覚えだが、日経新聞の岡部論説主幹が大分前の紙面で、マスコミ報道のあり方について、いずれ明らかになる事実を熱心に追うより、分析・解説に力を入れる方向に行くべきだとの主張をされていた(私も賛成)。この問題意識は恐らくはマスコミ各社に共通するものだと思うが、現実にはしかし、各メディアの記者はニュースを追うのに必死で、日経新聞も例外でない(むしろ媒体も多く、もっと必死のはず)。
 かくしてニュースのネタを必死で拾う記者は、マメを探し回って食うハトと同じようなものと言える。マメを食うのはハトにとっては生存本能であり、マメがまかれる、ないしはマメがまかれるような動作を見ると、条件反射的に群がる。記者も同様であり、ニュースのネタがある、ないしはあると思われる場合にはネタないしネタのようなものに飛び付いてしまう。
 日銀の金融政策の基本スタンスは、「景気が(展望リポートの)シナリオに沿うなら利上げが必要」というもの。この場合、利上げ=マメであり、「マメをまく」宣言していることになる。このため、会見・講演などは「マメ食い」の格好の場となり、その時期が迫ってきたのではないか、との感じが少しでも広がると、マメ食いゲームが白熱する。
 そういうとき、総裁・審議委員が会見で一般論として答えても、その答えの中にネタになり得るフレーズがあれば、切り取られてヘッドラインになりやすい。一方、市場の織り込みゲームもヘッドラインを契機に始まりがちで、これもまた始まってしまったゲームは止められないことが多い。会見などの要旨を後からじっくり読んでポジションを作り直すのが本来は合理的であるが、利上げ織り込みのゲームに逆張りするのは難しい(そういう参加者もいるかもしれないが)。
 マメを食うハトとの対話は、特にマメまきが前もって宣言されている場合は、かなり難しいと言えよう。一般論として述べたに過ぎないフレーズがマメとして切り取られるのは、「一般論を借りた情報発信」という手法もあり得るためで、生存本能で動くハトはそのフレーズを落とすことができない。特オチのリスクも伴うからだ。一番いいのは、ハトの群れに「マメはまかない(利上げしない)宣言」をすることだが、日銀としては無理な話である。
 今回はヘッドラインリスクが生じる理由をマスコミの体質の側面から述べた。次回は日銀側のロジックと体質について述べたい。

ps 上記エントリーの内容は、日銀内では“ハトマメ論争”として知られる。この件に詳しい幹部と何度が議論したことがあるが、少なくとも「ハトにマメを食うな、と言っても無駄である」との見解では一致したが、うまい解決策は見出せなかった。詳しくは次回以降で。
by bank.of.japan | 2006-12-12 21:24 | マスコミ | Comments(13)
Commented by 壱万円札 at 2006-12-12 21:49
日経新聞の私の履歴書に今月は渡辺氏が書かれています。氏は大物政治家の家で靴の並び替えまでしていたそうで、まさにハトに気に入られ出世した人物のようです。マスコミには政治関係でもハトに気に入られることは大切なのかな。
Commented by 壱万円札 at 2006-12-12 21:58
(上文章 訂正)日経新聞の私の履歴書に今月は渡辺氏が書かれています。氏は大物政治家の家で靴の並び替えまでしていたそうで、まさに沢山の豆を得たハトが気に入られ出世した人物のようです。マスコミには政治関係でも気に入られることは大切なのかな。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-12 22:14
特に政治家との関係は嫌われるよりは気に入られる方がいいと思いますよ。手法は人それぞれではないかと。
Commented by GS at 2006-12-12 22:43
Headline-riskといえば、欧州でもトリシェ総裁がこれまでの利上げに際して使ってきたstrongly vigilanceの意味が変質してしまったため、市場に戸惑いがみられるという意見もあるようです(FTなど)。景気の潮目が変わるときなど、情報発信を心がけようとする中央銀行と市場との対話が必ずしも上手くいかないのは、古今東西を問わず見られる現象のような気がします。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-12 23:14
GSさん、どうもです。バーナンキもしばらく前に情報発信に混乱が生じたので、ご指摘のように微妙な局面では対話は支障が生じがちです。ただ、今回の場合は、日銀がさほど前傾もしないのに、ヘッドラインリスクが現実化したのが特徴かもしれません。現場に身を置いた感じとして、なぜこんなに突っ走るのだろう、と個人的には思いました。
Commented by maki at 2006-12-13 09:50
ちょっと話はそれますが、今回の場合ってそんなにヘッドラインリスクが大きかったんでしょうか?発言内容を詳細に見ても、そこそこタカ派的だったのではないかと。単に、その後の指標が冴えなかったので、12月は無くなってしまいましたが、そうでなければ、地ならし成功~12月利上げという(キレイな!?)流れだったような気もしますが
Commented by route138 at 2006-12-13 10:18
中央銀行のコミュニケーションポリシーを考えるときの重要な論点かと思います。今回興味深かったのは、西村審議委員の講演と記者会見について、前者はハト派的、後者はタカ派的と、受け止められ方が正反対だったこと。一方向の情報発信である「講演」と、双方向の情報発信である「記者会見」が、本質的に違う効果をもたらすことの典型的なケーススタディーとなりました。FRB議長が(日銀やECBと異なり)記者会見をやらず講演に重点を置くのも、「マメを食うハトとの対話」の難しさを認識しているためだと聞いたことがあります。FRBがやっている「双方向」のコミュニケーションは、議会証言の時の議員とのやりとりくらいではないですか?
Commented by bank.of.japan at 2006-12-13 12:08
makiさん、どうもです。日銀の受け止め方は、特に先週末は指標が冴えないのに、利上げの織り込み(短期市場)が進行し、これは(西村委員の会見で)ヘッドラインリスクが発生した、というものです。私もこの見方には同意しており、もちろん今月の各種統計がことごとく強い状態であれば、ご指摘のように今月利上げというシナリオであったと思われます。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-13 12:19
route138さん、どうもです。ポイントを突いたコメントをいただき感謝いたします。中央銀行のコミュニケーションの在り方として、同一人物が講演と生会見でまったく違った情報発信になってしまった例としては、ご指摘のように典型的なケーススタディであります。これをどう生かすかは一義的には日本銀行の対処法となりますが、私個人としては、報道の在り方として、一つのビジネスモデルが生まれ得る余地があるのではないかと思っております(漠たるものですが・笑)。なお、ハトマメのヘッドラインリスク=ノイズを消すには、FRB議長の手法がベストでありますが、恐らくは日本の風土においては「透明性後退」との批判を浴びるのは確実です。私自身は二律背反の立場で、個人的にはFRB方式には賛成ながらも、業界の一人としては賛成しにくい、となります。まあ、この辺の事情については次回以降で触れたいと思います。引き続きよろしくお願いします。
Commented by システム5.1 at 2006-12-13 12:44
記者にのせられない自信がなければ、会見は行わない方が良いと思います。でも、それを利用している方もいないとは言えないところはありますが(笑)。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-13 15:53
まあ正論ではありますが…。ヘッドラインリスクを逆手に取ったディーリングの高等戦術は使えなくなりますね(笑)。
Commented by ラスト何マイル? at 2006-12-14 00:54
route138さんのコメントは、非常に示唆に富んでいると思いました。
確かに、ECBのTrichetにしても、記者会見をやってはいますが、記者とのやり取りは「双方向」というよりは限りなく「一方向」に近いです。
日銀総裁について言えば、政策決定会合後の記者会見、講演後の記者会見、国会での答弁など、interactiveなコミュニケーションの場が余りにも多過ぎるように思います。
一方で、審議委員のコミュニケーションについては、その機会を制限するという方向性よりは、やはり、それぞれの方のキャラクターというか、「位置付け」みたいなものを受け手が認識して、「最終的な票決への影響度合い」という点から割り引いて評価する方が、成熟した関係ではないかと思います。
Commented by bank.of.japan at 2006-12-14 01:18
ラスト何マイル?さん、どうもです。第二弾で書こうと思っていた一部を指摘されてしまいました(笑)。改めて取り上げるかもしれませんので、ご了承のほどを。
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