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貸出動向で見る政策金利観=大して利上げできない
 10月の「貸出・資金吸収動向」が発表された。銀行貸出残高は前年比1.1%増だったが、8月以降は増勢が鈍化。都銀は同0.4%減とマイナスに落ち込んだ。一方、約定平均金利で見た貸出金利は低空飛行を続け、景気拡大にも関わらず、全般に資金需要は盛り上がりに乏しい。この点は、水野審議委員が地方銀行の貸出金利引き上げ難航を例に「わが国全体の資金需要は高まっていない」と認めている。
 今後、経済が日銀の基本シナリオに沿って動いても、貸出の伸びは非常に低い状態が続くと予想される。この場合、私が見るところ政策金利は大して上がらないと考えられる。なぜなら、日銀が追加利上げしても、資金需要が強くないと貸出金利への転嫁は困難であり、社会的要請から追加利上げに際して預金金利は引き上げざるを得ないため、結果として銀行は預貸利ザヤが圧迫される公算が大きいためだ。
 これは原油高を価格転嫁しにくいガソリンスタンドと状況が似ている。銀行界は二重の意味でオーバーバンキングとなっている。①業態を問わなければ、依然として金融機関(都銀、地銀、第二地銀、信金、信組、系統、労金、政府系。そして郵貯銀行の参入)の数が多い②借り入れ需要に対して資金(預金)供給量が多い(都銀も預超)。数と量の面でオーバーバンキングであり、しかも貸出競争はやるので、体力のある金融機関の低利攻勢で貸出金利は上がりにくいと思われる。
 この場合、貸出ニーズの乏しい地方金融機関はやっぱりアウトライヤー化を志向すると予想され、長期金利は上がりにくい。一方、短期ゾーンは利上げにスライドして動くので、全体としてイールドカーブはベアフラット化すると思う。利上げをどんどんやればフルフラットに近づき、長短利ザヤの消滅は銀行収益を減衰させる。
 金融システム(ガソリンスタンド)から見ると、資金需要が乏しいのに利上げを強行する日銀はOPECのような存在であり、従って大して利上げできないと思う次第である。日銀幹部は「債券系のアナリストが景気に一番慎重な見方をしている」と言うが、上記のような資金構造も念頭にあるからではないかと思うのだが…。
by bank.of.japan | 2006-11-09 22:37 | 日銀 | Comments(21)
Commented by jonen at 2006-11-09 23:25 x
慎重な見方をしているアナリストといえば、、、
http://bizplus.nikkei.co.jp/keiki/body.cfm?i=20061109kk000kk

以前から量的緩和の早すぎる(というより、速すぎる)解除に対して警鐘を鳴らしていましたね。年末あたりから波乱の予感がしますが、どうでしょう?
Commented by bank.of.japan at 2006-11-10 00:52
jonenさん、どうもです。面識はないですが、マネタリスト系では著名な方ですね。私自身はリフレ派ではないので、量的緩和の解除が景気をおかしくするとは思っていないのですが、景気循環的には量的緩和解除とゼロ金利解除が(下降局面を控えた)まずいタイミングで実施された可能性はあります。下降局面が「景気足踏み」で済めば日銀的にはぎりぎりセーフといったところでしょうか。
Commented by 北の通りすがり at 2006-11-10 05:41 x
各銀行の中間決算では、資金利益の動きに注目ですね。
Commented by jonen at 2006-11-10 06:53 x
最近、総裁は発言が揺れ動いてませんが?

経済財政諮問会議では、伊藤教授に突っ込まれて、
「金利政策のタイミングが遅すぎて、経済が不必要に加速することで先行きの景気の波を大きくすることを避けたい」
という発言を、
「リスクが出てからたたくのではなく、早めに意識しておこうという程度の話」
という感じで思いっきりトーンダウンしたと思いきや、
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20061109mh08.htm

昨日インタビューでこんなタカ派全開の発言してみたり、
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20061110i201.htm?from=main2

相変わらずのことなのですが、発言がブレまくっているように感じます。
ブレているというより、両論併記なのですかね?

タカ派の水野審議委員でさえ「ヘッジクローズ」を微妙に増量してきている状況から考えると、景気の先行きに彼ら自信も懐疑的になりはじめているような気もします。

そんな中、キーパーソンの一人はこのように発言しております。
http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=337
ひょっとして、見通しをはずした時点で「アウト」の判定になるかもしれません。
Commented by jonen at 2006-11-10 06:56 x
申し訳ありません。誤字訂正します。

誤:揺れ動いてませんが?→正:揺れ動いてませんか?

誤:彼ら自信も懐疑的に→正:彼ら自身も懐疑的に
Commented by システム5.1 at 2006-11-10 08:38 x
当初想定以上に現政権の日銀包囲網が強いように見受けられます。何しろ、「上げ潮政策」ですし、来夏の参院選必勝体制でしょうから。市場はその辺を敏感に感じ取っているかと。そういった視点で見ると、最近の総裁発言が、本日の読売新聞のインタビューを含めて、利上げ嘆願に映ってしまう。また、うがった見方をすると、これで竹中総裁とかになったら(個人的にはそうは予想しませんが)、全てのパズルが埋まる...。
Commented by walrus at 2006-11-10 08:55 x
 「第二の柱」はあくまで副次的な基準であり、当面の政策運営はあくまでも「第一の柱」に基づいてなされるはずです。こうした観点からみても、「第二の柱」寄りの発言で利上げ期待を誘導する発言はスタンスのブレと捉えられます。アップサイド、ダウンサイドのリスクがバランスしているというのが公式見解であり、やはり淡々とオープンスタンスを維持しながら指標の強弱を見守って決断するのが王道であるはずです。スタンスのブレは、先行き悪い指標が出る可能性が高まったことに対する焦りとも受け取られ、事実上の金利糊代論バイアス(まず利上げありき)と批判されても仕方がないでしょう。需給ギャップ加速的改善=利上げペース加速、需給ギャップ改善の停止=利上げ見合わせ、需給ギャップ悪化=利下げ、という整理に基づけば、景気踊り場局面では利上げ休止が王道ではないかと。一般的に、焦ると碌な事ないですよ。
Commented by walrus at 2006-11-10 09:04 x
市場の景況感を政策判断にあたって踏まえるとの現在のスタンスは金科玉条ではないでしょうか。「究極のベアフラット利上げ」は悲壮感が漂いすぎです。なぜに。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-10 12:30 x
北の通りすがりさん、どうもです。預貸から上がる収益は冴えないところが多いと思われるため、それをどうやって挽回しているのかがポイントです。投信販売、債券取引、仕組み債などでしょうか。私のメーンバンク(第二地銀)はアウトライヤーで頑張ったことがうかがえる決算でした。よくやった!
Commented by bank.of.japan at 2006-11-10 12:40 x
jonenさん、どうもです。心理的な微妙な揺れが発言に表れている可能性はありますが、福井総裁はその場の雰囲気に合わせてアドリブで言い換えをされるのが非常にうまい方でもあります。言葉の言い換えやマスコミ報道の拡声効果等でスタンスが振れているように見える面もあるかもしれません。私自身はそれほどタカ派に傾斜しているとは思っていないのです(むしろポーズ)。もちろん、見通しを外せば(外し方にもよりますが)アウトの公算が大きいでしょう。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-10 12:48 x
システム5.1さん、どうもです。本日もフラット化が順調に進んでおりますね。こういう局面では確かに「第二の柱」は悲願めいたものに見えます。竹中総裁なら、政府の上げ潮が津波となって襲った格好ですね。竹中日銀への従軍かあ、うーん。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-10 12:58 x
walrusさん、どうもです。なんというか、日銀は「淡々とオープンスタンスを維持しながら指標の強弱を見守っている」つもりなんですが、総裁のアドリブでの説明の言い換えなどがヘッドラインリスクになっている面が大きいような。それとも、淡々としているつもりでも、ポーカーフェイスがヘタなんですかね。果報(追加利上げ)は寝て待ち、その間は、ひたすら想定問答、が理想的なんですけど…。「究極のベアフラット利上げ」は玉砕戦の悲壮感あり。怖いもの見たさの気持ちをくすぐりますが、そうはならないだろうと思います。甘いすかね?
Commented by 通行人 at 2006-11-10 14:45 x
>数と量の面でオーバーバンキングであり
数の面のオーバーバンキングは、銀行業界が変に独占的利潤を上げる状況を考えたら、むしろ望ましいことではないでしょうか。参入が難しい業種ですので、多すぎ論は不要だと思います。

量の問題はねぇ。結局、この先も日本の名目GDP成長率はたかだか1%くらいにしかならんと思ったら、どの企業も設備の増設には慎重になりますよ。3%ならもっと考えると思うんだけど。僕の身の回りは小売店が多いのですが、小売店ですら国内は諦めて海外進出を検討していたりします。余談になるけど、国内空洞化の話で行くと、製造業が出て行くのか小売業が出て行くのかどっちが良いか良く考えようみたいな。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-10 20:05
通行人さん、どうもです。確かにオーバーバンキングである方がユーザーフレンドリーではあります。私もローン利用者として有難い(笑)。そういう立場を離れると、数の是正は必要かなと思います。
ご指摘のように低成長を見越してサービス業でも空洞化が起きると、低成長が確定的になりますね。成長鈍化速度より人口減が速いと、相対的に一人当たりGDPは伸びます(生産性の上昇)が…。あまり意味ないすね。
Commented by 通行人 at 2006-11-10 21:13 x
「サービス業でも」ではなく、製造業とサービス業のトレードオフになると思います。為替と成長率と両方の点で、円高と高成長は製造業が海外移転、円安と低成長はサービス業が海外移転みたいな。言い換えるなら、内需依存国家を目指すのか、外需に頼る経済でいくのかという事だと思います。
生産性の話、それこそが宮本武蔵じゃないかなと(^^;
Commented by 壱万円札 at 2006-11-10 21:22 x
オーバーバンキングですが、例えば市町村の数でいえば、「市町村は多い方が良いですか?少ない方が良いですか?」と問えば、多くの方が「多い方が良い」と答えるはずですが、それでは維持の為に余分に毎年一人あたり何十万円払ってください、となっても考えは変わらないですか?銀行も業界全体でいえば、赤字の公算が高いと思われます。別エントリーのコメントに書いたと思いますが、融資リスク分を引き当てできていない現状では、現在の銀行のすべては粉飾決算しているのと同じで、特に地方の中小金融機関では、現在も破綻の危機にあるところが多数あり、金融当局は困っているそうです。一番良いのは、オーバーバンキングを支持している人に負担してもらう事です。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-11 16:22 x
通行人さん、どうもです。政府・日銀は内外需のバランスの取れた形を志向しているのでしょう。外需主導から、これから内需主導の拡大に切り替わるか、見ものです。確かに生産性の話は宮本武蔵でありました(笑)。
壱万円札さん、どうもです。オーバーバンキングであるがゆえに、地方金融機関ではなお再編が続いているのだと思います。運用難、地価の低迷が続くと地方金融機関の再編はまだまだ終わりがないかもしれません。
Commented by 壱万円札 at 2006-11-11 17:31 x
管理人さん、マスコミ等によると合併等による「地方金融機関の再編」などでは地方金融機関は今後経営が成り立つとは思えません。今まで十数年預金低金利政策による、金融機関超超超保護でも、地方金融機関の少なからずは現在実質破綻しており、あとは対応策を金融当局が考えている模様だそうです。「地方金融機関の再編」というよりも、「地方金融機関のあり方」を考えながら大胆な外科手術が必要と思われますが、現在金融当局が考えているのは、政治家が口利きした不明朗融資もスムーズに合併でも引き継がれる事だそうです。
Commented by 通行人 at 2006-11-12 13:06 x
>それでは維持の為に余分に毎年一人あたり何十万円払ってください
誰もそんな事は言ってないと思うし、根拠くらい示したらどうでしょうか。
小売店の床面積と坪売上みたいな、根拠がある「適性値」と比較して、オーバーバンキングという言い方には多少なりとも根拠がある「適正値」は存在しないと思います。
Commented by システム5.1 at 2006-11-14 15:10 x
オーバーバンキングは本石町さんや通行人さんが指摘するようにユーザーフレンドリーです。たとえば、タクシーの数が多い場合、利用者はタクシーを捕まえやすくなり、競争によって価格は下がるはずです。しかし、それが過度に進めば、自然淘汰されるはずです。その過度に進んだ状態(今のオーバーバンキング?)を維持するために、たとえば、税金などが投入されるなら、それはおかしい、ということを壱万円札さんはおっしゃりたいのかと理解しました。想像力を大分働かせましたが(笑)。
Commented by 壱万円札 at 2006-11-14 21:08 x
>>それでは維持の為に余分に毎年一人あたり何十万円払ってください
>誰もそんな事は言ってないと思うし、根拠くらい示したらどうでしょうか。
現在のオーバーバンキングを維持する為には多額の公的資金を投入するしか方法がないようなので、オーバーバンキングを支持するということは、負担を覚悟せねばならないことになります。根拠ですが地域金融機関や金融当局が焦げ付き債権の数値をひた隠しにしているので公表数字は存在はしません。地域金融機関の実質破綻の記事は経済雑誌に散見されます。
>オーバーバンキングという言い方には多少なりとも根拠がある「適正値」は存在しないと思います。
私より先にオーバーバンキングを肯定しておいて、「適正値は存在しない」というのは論理矛盾ですよ。
システム5.1 さん、その通りです。
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