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“苦しいポジショントーク”、“関東軍の暴走”=日銀二題
 本日は水野審議委員の講演があった(プレスクローズド)。講演テキストによると、部分的にタカ派の発言があったが、ヘッジ表現も多く、やや“苦しいポジショントーク”との印象を受けた。「年末にかけて個々の指標が弱い数字になっても、それが一時的な振れなら、徐々に金利水準の調整を行うことが適切」と一応タカ派ポーズを示す一方、「ゼロ金利解除後、地方銀行は貸出金利引上げに難航し、わが国全体の資金需要は高まっていない」と目配りの良さも。「市場参加者とできる限り、『金利観』を共有し、サプライズを与えない金融政策運営を行うべきだ」はその通りで、来年1-3月期の追加利上げが予想されても、やっぱりその時の経済統計や株価などは重視すると思うので、“びっくり利上げ”はないと考える。ですよね?
 なお「米国景気減速を受けたわが国の景気悲観論から長期金利が低下する展開が続くようであるならば、将来的に長期金利の振幅を大きくするリスクを抱えこむことになるかもしれない」は、あくまで日銀のシナリオが当たった場合。これに対し、長期金利の低下は正しい可能性もある。対話は、中央銀行と市場が対等で成り立つ。“キンサキ”は日銀の半奴隷なので仕方ないが、JGBは侮れない(統計好転や株高などで金利は自律的に反発するはず)と思うが…。

 それでも最近は日銀の利上げ強行論がくすぶる。私は、(確約できないが)統計データ・金融資本市場が完全逆風となる中で、利上げを強行するとは思っていない。日銀は前回のゼロ金利解除を失敗している。「愚者すら経験に学ぶ」のだから、賢者(と思われる)日銀は慎重な判断を下すと思う。でも、やっちまったら? 官僚答弁なら「仮定の質問には答えられない」だが、まあそのときは「暴走した」ということだろう。
 そう言えば、先週の参院財政金融委員会で、無謀にも「戸田発券センター」をネタにした民主党・大久保議員が面白いフレーズを口にしたのを思い出した。「発券局が“関東軍”となって暴走した…」。これは本石町界隈では結構ウケたのだが、日銀の何人かと話して意見が一致したのは、「仮に暴走する部局があるなら企画局であろう」であった。
 なぜなら、企画局は重量級の作戦参謀が揃っているためだ。関東軍暴走が基本的には「作戦参謀」という俗人的な要因が大きいことを考えると、現場部局で暴走が起きる場合は、当該局に「(重量級)作戦参謀」がたまたま“出向”していたことが主因になるのだと推測される。作戦参謀なき現場部局の暴走は簡単に鎮圧される一方、企画が暴走すると誰にも止められないわけだ。
 「福井体制」で最重量級の作戦参謀は総裁自身である。暴走利上げ(ないと思う)の作戦が立案されるなら、トップダウン(ボトムアップは考えにくい)であり、企画参謀は命令一下、利上げを敢行することになる。企画の暴走は、政府にとって「日銀関東軍の暴走」を意味する。繰り返すが、そんな事態はない、と思う。

追記 「三〇兆円高地攻防戦」の続編フィクションとして関東軍物を創作するのは面白いかもしれない。戦死希望者、いますか?
by bank.of.japan | 2006-11-08 21:50 | 日銀 | Comments(14)
Commented by route138 at 2006-11-08 22:09
企画局の「重量級の作戦参謀」は、本音では慎重な見方をお持ちなんじゃないかと思ってますけど‥‥。彼らは、(総裁と違って)前回のゼロ金利解除騒動を自ら体験されてますから。まあ、総裁の命令が下れば、そうとは言っていられないのかもしれませんが。
Commented by walrus at 2006-11-08 23:11
 記者が福井総裁がタカ派的なことをいわざるを得ないような質問を繰り返し、福井総裁がその都度状況次第で利上げを否定しないという原則論を述べると、一行文、大見出しが踊って利上げ観測が高まるというパターンが繰り返されているようにも見えます(比較的市場は冷静ですが)。マスコミの方には、一度福井総裁に年内「利上げをしない」可能性について質問し、その結果も同等に大見出しで報じていただきたいものです。本当にオープンスタンスであるのならば、答えとして、やはり「その可能性は否定できない」という原則論が語られるはずです。次回定例会見で質問ご担当の方、お願いできないでしょうか?無理かな。
Commented by 通りすがり at 2006-11-09 00:25
水野さんの講演録を読んでいると、かつてストラテジストの頃の「風見鶏」的なレポートを思い出しました。まあ、ああいうひとですから(笑)
記者会見に関してはwalrusさんに同意。いかにもな誘導質問だなあ、というような聞き方や見出しの作り方が最近多くなって来たように感じます。それに対して市場は冷静というか無反応だなあ、と感じるときがあるぐらいです。
Commented by von_yosukeyan at 2006-11-09 00:30
どうでもいいツッコミですが、「愚者すら歴史に学ぶ」では?

「愚者は歴史から学ぶ。我輩は経験から学ぶ」(Otto von Bismarck)
Commented by bank.of.japan at 2006-11-09 00:45
route138さん、どうもです。その見立てには深く頷く次第です。命令は出るんでしょうかね。前総裁とは違って、風はよく読む方だと思いますが。
walrusさん、毎度です。このブログは他社さんも見ていると思うので、望みはあるかも知れません。私がやるとマッチポンプの失笑ものでしょうね(笑)、多分。
通りすがりさん、どうもです。確かにマスコミがやや先走りの感がありますね。これはなかなか拭い難い体質で、それゆえブログをはじめたという動機のひとつでもあります。追加利上げの先走りはしかし、私は結果的に置いてけぼりになる可能性はあるかもしれません。そのときは申し訳ないです。
von_yosukeyanさん、どうもです。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、と思っていたのですが。逆でしたかね。ちょっと調べますね。
Commented by 通行人 at 2006-11-09 01:33
佐賀県庁みたいに記者会見映像をすべてネット配信したら良いかも知れない。本石町日記さんは大変かな(^^;

ところで、最近はどういう言い方しているのかわかりませんが、アナウンスメント効果は金融政策の変更に対するサプライズを起こす事で、実際に金融調節を行わずに目標とするインフレ期待に誘導する事だと思います。馴れ合いっぽい対話をいくら市場としても、期待の転換にはつながらないわけで、サプライズを与えない運営も良し悪しじゃないかと。まあ、追加利上げサプライズは御免ですが。
僕らが欲しいサプライズは、インフレ参照値論の再確認です。もう中の人たちですら存在を忘れているみたいなので。
Commented by 北の通りすがり at 2006-11-09 04:09
関東軍物アイデアです。拙い点はご容赦を。
(作戦名)金利戦線押出作戦
(基本設定)●政府:金利戦線不拡大方針を関東軍に示達。
●関東軍:市場大陸に展開。ファンドゲリラの跳梁を許せば、確率的には小さくとも、バブル戦争後の日本が血で築いた”緩やかな景気回復”権益が崩壊する可能性があるとの立場。
●副井大将:金利戦線押出を企図するも政府の意向も無視出来ず。やむを得ず木製飛行機で”地ならし”爆弾を市場大陸要所に投下し、既成事実積み上げを図る・・・・なんて如何でしょうか(笑)?
Commented by bank.of.japan at 2006-11-09 11:51
通行人さん、どうもです。会見自体は、TV報道各社は録画している(うちは写真のみ)ほか、ロイターorブルームバーグも回しているはず。後者は後で専用端末で放映していたはずです。TVも含め、どこかの社がネット配信したらいいかもしれませんね。もっとも視聴者数少なくて採算取れないかもしれませんが。ところで、日銀自身が物価安定の理解の存在を忘れているような…。忘れないと追加利上げできない?
Commented by 壱万円札 at 2006-11-09 11:53
関東軍の暴走ですが、関東軍の暴走を期待していた勢力があったわけで、参謀だけでできたわけではないと思います。何かあったらレッテル張りするわけですが。国債の大量発行という関東軍の暴走もあるわけで。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-09 12:03
北の通りすがりさん、どうもです。創作のアイデア提供多謝です。面白いですね。各種投資家をインフレ(資産バブル)の芽をばら撒く軍閥群とみなせばいいわけですね。円キャリー軍閥は欧州にインフレを密輸しているBIS指名手配の匪賊。REIT軍閥は国内バブルを散布する極悪集団。地銀アウトライヤー軍閥は、JGB価格機能を阻害する市場経済の敵、といった具合ですね。日銀関東軍は最終戦争(あらゆるインフレ要因の根絶やし)に向けて、地均し爆弾を投下していく構図でしょうか。止めようとした作戦参謀は次々に粛清されるストーリーがいいかもしれません。いくらでも想定可能ですね。面白い。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-09 12:19
壱万円札さん、どうもです。国債大量発行を暴走に見立てると、発行体は政府ですので、「大本営の暴走」。日銀はこれに歯止めをかける(利上げによる規律強化)青年将校団?という役回りでしょうか。日銀的にはこっちの方がかっこいいですね。
Commented by 壱万円札 at 2006-11-09 20:57
大久保議員の戸田発券センターに関する質問は右記ぐらいしかヒットしなかったが、それなりに問題はありそうですね。もしかしたら戸田発券センターは十万円札や百万円札刷る予定かも。http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=21793&SAVED_RID=1&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=9&DOC_ID=1617&DPAGE=1&DTOTAL=1&DPOS=1&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=22306 http://blog.goo.ne.jp/tsutomu-okubo
Commented by bank.of.japan at 2006-11-10 00:56
壱万円札さん、どうもです。戸田関連の追及はテクニカルに難度が非常に高いので、あまり見込みはないと思われます。私もある程度取材してみましたが、穴はなさそうです。政治家は問題追及するにしても、ある程度世間の耳目を集めないといけない立場にありますが、戸田はちょと地味過ぎると思います。それから戸田は銀行券の受払い拠点ですので、紙幣印刷は財務省の所管となります。
Commented by 壱万円札 at 2006-11-11 17:52
ようやく大久保議員の「関東軍」発言の議事録が右記にアップされてます。http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/165/16511020060003a.html
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