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フォワードルッキングは「やりたいようにやる」の方便=利上げのための景気過熱論
 福井日銀総裁の講演があった。注目は「経済・物価が見通しに沿った動きを続けるには金利水準の調整を行うことが必要だ」、「急激な調整で景気が波を打つことを避けるためにフォワードルッキングに行動する」などであろうか。まあ、これに近いことはこれまでも言ってきたが、改めて強調したということであろう。
 日銀の政策運営ロジックを噛み砕くと、①景気はシナリオ通りに動く②そのためには利上げが必要③もし利上げしないと景気が過熱する(orバブルになる)④そうなってからだと急激な利上げが必要でクラッシュする⑤従ってフォワードルッキングな調整を行う-であろうか。この講演は、金融市場に利上げに前向きな印象をもたらし、ユーロ円金利先物など売られたようだ。では、本当に日銀は利上げに前向きなのか。
 私自身は、「景気が見通しシナリオ通りなら利上げが必要」とのロジックは基本的にはポーズに過ぎないと思う。このロジックは「錦の御旗」のようなもので、簡単には降ろせない。降ろすと量的緩和の解除やゼロ金利解除の判断が誤りであったことにつながりかねず、これからも掲げ続けないといけないロジックである。景気が足踏みしても恐らくは掲げるだろう。
 実際の利上げ判断については、6年前のゼロ金利解除の失敗を教訓に、相当に慎重に行うのではないかと思う。市場関係者の間では、来年1-3月期に利上げする、との見方が多いが、これとて経済統計データや株価・為替市場などの動向が追い風にならないと、利上げには踏み切らないと考えている。
 ただ、実際に判断するのは日銀である。いくら私が日銀は慎重に政策を運営すると思っても、最後は政策委員会メンバーの判断にかかっている。ここで心配なのは、錦の御旗の正当性を証明するために利上げに突っ走る行動であろう。このリスクは小さくない。
 「景気がシナリオ通りでも利上げが必要」と断じてしまったため、例えば年明けになって利上げしないと景気がシナリオ通りになっていない、という見方が強まる恐れがある。こういうとき日銀は『信認』にこだわりやすい。景気シナリオへの信認、そして政策運営への信認を確保するため、データや市場が追い風でないのに、利上げを強行するリスクはないではない。
 この場合、日銀はフォワードルッキングを強調するだろう。ただし、これは「やりたいようにやる」との方便であり、EURO SELLERさんは「実効性の無い発言で狼おじさんと言われてしまいそう」と指摘されたが、日銀はまさに狼おじさんではないことを証明するための利上げをやってしまうわけだ。将来の景気過熱論は、利上げしたいための方便と化す。
 利上げしないと景気が過熱すると日銀が本気で思っていたら? 成長重視の安倍政権は「だったら景気を過熱させてらどうか」と詰め寄るべきであろう。ダム論は滅茶苦茶効き始め、国民の多くが景気拡大を実感するに違いない。そして日銀には景気過熱のソフトランディングを新たな任務として課すのがいい。みなさん、低金利を続けると景気が過熱すると思いますか。
by bank.of.japan | 2006-11-07 20:30 | 日銀 | Comments(23)
Commented by 芋焼酎 at 2006-11-07 23:13 x
私はそうは思いません。確かにCPIは低い水準にあるものの、政策金利を25bpから50bpへ上げたところで一体何が違うのでしょうか。 いざなぎ超えにより景気循環的にも景気の踊り場入りが視野に入りつつあるのに、それでも景気の上ぶれリスクが否定できない状況下にあっては、政策当局としては(アナウンス効果も狙っているのかもしれませんが)追加利上げを選択肢として有することは当然のことと考えます。
Commented by 通りすがり at 2006-11-07 23:27 x
多分、低金利を続けようと利上げをしようと実体経済はほとんど影響はないでしょうね。だからこそ日銀も観測気球を上げられるというものです。某阪神のエース同様、何度も気球を打ち上げて「仕方ないや」というムードが大きくなったら利上げするんだろうな、と思います。
逆に財務当局はどうなんでしょうね。彼らだって消費税を上げたくてうずうずしていると思う(そのうち基礎年金の国庫負担割合も引き上がるしね)のですが、「景気が悪い」と日銀を叩いている限り税率アップは難しいと思うのですが。
Commented by 通りすがり at 2006-11-07 23:56 x
日銀の見通しシナリオは、重要な前提条件として、「米国景気の調整は緩やかなものにとどまる」という点がありました。他方、米国景気ホンマに大丈夫なんかいな、という話を考え合わせると、もしかして、事務方の裏メインシナリオは、「米国景気はメインシナリオ比下振れました。従って、追加利上げは見送ります」ということかもしれません・・・ただ、田舎在住の私からすると、たまに上京した折にみる首都圏のオフィスビル、マンションの建設風景は、十分”バブっている”印象です(苦笑)
Commented at 2006-11-08 00:00
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-08 00:21
芋焼酎さん、どうもです。私も25pbの利上げのマクロインパクトは軽微であろうと思います。問題は、そうは言っても景気がその後下降した場合に、日銀が結果責任を負わされるリスクが大であることです。今度失敗すると2度目ですので、下手すると法改正のリスクがあります。なるべく安全運転で追加利上げしてほしいと願う次第です。
通りすがりさん、どうもです。ご趣旨に概ね賛同です。財務当局は確かに増税路線上は、景気が悪いと言うのは都合悪いですが、目先は金利を上げさせないために圧力をかけ続ける戦略でしょうか。国民からすると最悪は財務省・日銀の引き締めゲームが始まることです。ところで、首都圏がバブって見えるのであれば、これは破裂しますね。バブルとはそういうものです。おぉ、コワッ。
Commented by route138 at 2006-11-08 00:21 x
なんだか、総裁と事務方との間に温度差があるような気がしますけど‥‥。きょうの講演でも、事務方が用意した草稿にはなかった表現(「前もって緩やかに手を打つ」)を話しておられましたし。本当のところはどうなんでしょうね。もちろん、総裁が事務方に遠慮する必要なんてないんですけど‥‥。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-08 00:25
on_the_Gさん、どうもです。お元気ですか。かなり日銀サポート的な見方ですね。是非、応援して頂きたいと思います。私のポジションは逆ですが(笑)。ちなみに、帝国データのアンケート調査では、8割弱が回復の実感がないとの結果でした。バイアスがあるにせよ、回復を実感する層は限定的な感じがします。追加利上げできるぐらい、統計データやマーケットの動きが追い風になればいいと願っております。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-08 00:33
route138さん、どうもです。温度差ではなくて、むしろ総裁のアドリブですね。これは、総裁の個性でありまして、基本的に自分の言葉でしゃべりたいという気持ちが強い方です。総裁からすると、想定問答的な言いっぷりは、サービス精神が乏しいという価値観をお持ちのようです。事務方は慣れているので、彼ら自身はせいぜい苦笑いを浮かべる程度です。どんなアドリブが飛び出すのか、これは企画局幹部も把握しておりません(笑)。企画局の連中は、総裁が言ったんなら仕方ねえやぁ、と達観しておりますよ。
Commented by at 2006-11-08 01:02 x
低金利でも利上げが続くと予想されるなら景気は過熱しないどころか下降するんじゃないでしょうかね。上ぶれリスクより下振れリスクのほうがはるかに高いでしょう。実感がないといわれるような好景気なんだから宇和ぶれするくらいでちょうどいいと思うんですけど何で景気過熱が警戒されてしまうのかがよくわかりませんね。GDPの数字だって今年後半はわるそうですし、CPIは原油が落ちてるからおそらく今年度中にはマイナス圏再突入でしょう。名目金利の水準だけで金融緩和かどうかを判断するのは危険ですね。どういう方向にしていくかの方が重要でしょう。景気を過熱させるには日銀が言うところの時間軸効果を出す必要があると思います。そのためには再度0金利量的緩和をやらって低金利がさらに長期間続くと思ってもらわないと駄目なんじゃないでしょうか。
Commented by EURO SELLER at 2006-11-08 01:17 x
その総裁のアドリブが株式市場を冷やし,円高をもたらし,最後にはひょうたんからこまのように利上げが起こる。おじいちゃんは狼ではなかったという証明とともに・・・そりゃあ,世界的に引き締めがブームでなんですけど,おじいちゃんが退任してから景気が垂れるようでは責任は大きいですぞ。
Commented by システム5.1 at 2006-11-08 08:30 x
本石町さんの考え、概ね全面的にAgreeです。利上げを容認しないと消費税率アップはできないという趣旨のご意見がありましたが、一方、それに伴う金利上昇は国債利払い負担増や国債消化難を招く可能性があるわけで、財務省が基本的に利上げに反対なのは一応、周知の事実かと。
Commented by オレンジ at 2006-11-08 08:53 x
市場が織り込んでいる、利上げしないと信認問題に発展する(特に海外勢に多いらしい)といった理由をあげつらいはじめたのは、かなり寂しい気がします。それだけ、日銀は追い込まれているのかな、という気もしました。逆に、市場に付け込まれるだけですね。
Commented by walrus at 2006-11-08 09:57 x
 講演は執行部作文、質疑応答で本音(金利糊代論)炸裂といったとこでしょうか。当面はタブー(意味がない)とされていた中立金利水準論まで飛び出したのには、唖然としました。総裁を諭す骨のある事務方はいないのでしょうか。妄想ルッキング、近未来ノールッキングスタンスで風を切る姿は全く速水総裁にだぶります。結果もだぶらないといいですね。
Commented by 俊彦 at 2006-11-08 11:25 x
金利が上がることは、金利収入が増えるので個人にとってはある意味政策的な減税になりますよね。個人金融資産をこのように活用することで、消費を増やすことが一番良いのではないでしょうか?いざなぎ超えに実感が無いのは手取りが増えないからで、これが金利収入増によって消費が刺激されれば、変わると思いますが如何でしょうか?
Commented by システム5.1 at 2006-11-08 12:07 x
マクロ的には利上げは経済にとってマイナスです。>俊彦様
Commented by bank.of.japan at 2006-11-08 12:15
◎さん、どうもです。上振れした方がちょうどいい、というご指摘に賛同です。上振れ確認後に金利調整するのが望ましいと思います。
EURO SELLERさん、どうもです。総裁自身はアドリブに強い意図はなかったと思うのですが、結果としては影響を与えてしまった感があります。強気姿勢は単なるポーズと信じたいです。
システム5.1さん、どうもです。ご賛同、多謝です。まあ財務省は実利的な判断をしていると思います。機関投資家は金利が上がった方がいいので日銀サポート的ですが、資金需要が乏しいので、結果はベアフラットするだけですから、無理筋の利上げは運用側にもメリットないと思うのですが。どうなんでしょうね。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-08 12:28
オレンジさん、どうもです。海外勢は追加利上げにベットしてユーロ円金利先物をショートし、損失ポジションを抱えているとの観測を聞きました。ポジショントークとして利上げして欲しいのでしょうか。自ら立てたロジックに追い込まれるのは最悪ですね。そうはならないと思いたいです。
walrusさん、どうもです。第二の柱が妄想モードに突入しないことを願っております。想像し過ぎて妄想に陥ると、それが現実に見えるリスクがありますので。利上げ作戦要綱を明示し過ぎると、破壊的透明性になるので、ちょっと失敗だったかも。
俊彦さん、どうもです。一瞬、福井俊彦さんかと思ってオッとしました(笑)。ご指摘のロジックですと、利上げするほど消費が炸裂して景気過熱になります。また、国民の間での金融資産保有には非常な偏りがあるので、潤うのは一部の富豪層に限定されます。システム5.1さんご指摘ようにマクロ的には打撃が大きいでしょう。
Commented by nanashi at 2006-11-08 12:34 x
『信任』?
『信認』?

Commented by bank.of.japan at 2006-11-08 15:31
nanashiさん、どうもです。信認、ですね。直しときます。
Commented at 2006-11-08 21:02
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 俊彦 at 2006-11-09 09:44 x
企業収益を考えるといまの経済がそれほど悪いとは思いませんが、金利を上げて困る方はどなたなのでしょうか?
Commented by bank.of.japan at 2006-11-09 12:13
on_the_Gさん、頑張ってください。機会があれば是非、お会いしたいと思います。非公開コメントにチェックに上、連絡先お知らせいただければ幸いです。
俊彦さん、どうもです。企業収益が家計に流れるメカニズムがさらに働くことを日銀は期待しており、これは日銀としても「いまの経済」の設備投資と消費のバランスがややつりあっていないと見ております。景気回復の恩恵が及ばず負債を抱えている企業・家計は金利上昇は打撃になると思います。政府も負債が巨額なので困るでしょうね。
Commented at 2006-11-09 20:23
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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