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大久保議員の今後に期待=マニアックな日銀追及の傾向と対策、上田知事の好例
 11月2日、参院財政金融委員会で日銀半期報告があった。総裁・副総裁、理事ら日銀首脳陣に対する集中審議である。与野党通じて、目の付け所がマニアックであったのが民主党の大久保勉議員だった。結果は、「目の付け所は良かったが…、空回り」であろうか。
 一般的に日銀を追及する場合、正面攻撃と側面攻撃がある。金融政策運営の適切性を様々な論点で問うのが前者で、金融政策以外のマイナー(orマニアック)な分野を突くのが後者だ。もともと側面に攻撃を仕掛ける例は非常に少ない中で、大久保議員は「埼玉県戸田の発券センター」に絡んでいくという私も初めての細かいネタを取り上げた。まあ、ネタ自体はマニア心をくすぐる。
 ただ、側面攻撃は日銀の意表を突く面があるのは確かだが、十分な専門知識の蓄積と練り抜いた攻撃方法を用意しないと、前線防衛ラインの突破に至らない。発券業務はもともと超専門的であり、センター建築仕様も特殊化されているので、その不備を突くのは容易ではない。日銀専門家を上回る知識を身につけて近接特殊戦に挑むか、専門領域に深入りせずに皮肉を効かした質問を飛ばす(スナイパー攻撃)しかない。でないと、専門用語の十字砲火の前に撃退を余儀なくされる。今回、大久保議員はネタを持て余してやや自爆した感もあった。残念である。今後に期待したい。
 マニアック路線でスナイパーな質問がうまいなあと思ったのは、民主党の上田清司議員(現埼玉県知事)であった。大久保議員も追及した当座預金取引先以外(システムベンダーなど)への天下りについて、上田議員は下記の質問を放っている(平成15年4月18日、第156回国会・財政金融委員会より)
上田(清)委員 「福井総裁、九七年に、副総裁として引責辞任をなさいましたが、原因は一体何だったでしょうか」
福井参考人 「九八年の三月だったかと思いますが、当時の日本銀行におきます、接待を中心とする不祥事の責任をとって退任いたしました」
上田(清)委員 「当時、たしか百人前後の処分がなされて、ザブンだとかドブンだとか、そういう非常に忌まわしい接待事件がございました。私は、当時、日銀考査と天下りの関連を図表にして提出したことがございます。日銀の局長以上ぐらいの方々が各金融機関にOBとして天下りをされる、それに考査の時期が余りにも近い場合には何かと問題があるんじゃないかということで、時系列的に資料を提出したことがございました。
 同じように、まことに恐縮ですが、福井総裁も、富士通総研という富士通のグループ会社、コンピューター機器等を製造販売する会社でありますが、この中にも元局長もお二人、総研の中におられるというふうに私は伺っておりますが、これが、全国の金融機関に天下りしておられるところの日銀OBを通じて営業活動ができるためにある意味ではお迎えもされているんではないかというふうに、私はあえてうがった見方をしております。
 それは、富士通総研が、売り上げ五十億、純利益二億から三億の企業の中で、日銀の、局長を含むOBを三人役員で抱える、そういう仕組みで業として本当に成り立つのかどうか、こういうことも含めて私は大変気にしておりますし、また、IBM、日立製作所、NTTデータ、こちらにも元局長がそれぞれおられます。日銀の威光を使って、もし金融機関に何らかの形でコンピューター等々の機器あるいはシステム等を購入させる、あるいは採用させるという仕組みをしているとすれば、私は日銀のある意味での正当性みたいなものがうまくいかないんじゃないかと、この際、こうしたところも含めて、天下りを一切しないぐらいの決意が福井総裁にあられるかどうか、そのことを確認したいと思いますが、いかがでしょうか」
福井総裁が無難な答弁をしたのに対し、
上田委員 「必ずしも私の意図しているところは伝わらなかったみたいですが、通信機器メーカーに、日銀の皆さんが振るわれてきた見識、能力というものがどれほど本当に必要なんだろうかというふうな疑念を私は持っております。あくまで、コンピューター機器、システム等々の採用について、極めて、日銀のOBの方々がおられると都合がいい、こういうことだというふうに私は判断しておくということをあえて申し上げておきます。今後考量していただきたいというふうに申し上げたいと思います」
 イチローのレーザービームみたいな質問である。ところで、上田議員は「外国為替特別会計」でもマニア垂涎の射撃を行っている。これは次のエントリーで紹介したい。乞うご期待。
by bank.of.japan | 2006-11-04 15:43 | 日銀 | Comments(9)
Commented by 害債 at 2006-11-04 16:20 x
大久保勉議員は元モ●ガンス●ンレーですのでファンド関係の事情に通じておられるということを小耳に挟んだことがあります。その筋のかたの話ではまだ村上ファンド事件についてネタが出るといううわさもあってハラハラしていたのですが、そうですか、自爆でしたか・・・
Commented by bank.of.japan at 2006-11-04 17:21
害債さん、どうもです。金融関係には詳しい議員(発券センター絡みでもそれなりに情報は集めていたのは流石)ですので、後は尋問テクニックの問題でしょうか。マニアネタは斬り口を見つけるのが難儀ですので、あまり多面的な切り込みはしないほうがいいと思います。所詮は我々は素人ですので、日銀専門分野の特殊部隊にはかないません。企画“想定問答”正規軍とストレートに砲撃を交わすのが無難かと。
Commented by 壱万円札 at 2006-11-04 18:54 x
そういや、金融危機の際の審議会だったか特別委員会だかの議事録を載せて、事態の真相に迫っていた木村剛著(あの頃は尊敬していた)『粉飾答弁 上・下』を大変興味深く読んだ覚えがあります。審議会とか委員会の議事録を読むのも勉強になりますね。
Commented by route138 at 2006-11-04 19:01 x
外為特会のネタは楽しみですね。そういうえば、行天元財務官が最近掲載された日経の「私の履歴書」で、外貨預託(MOF預託)が旧東銀に優先的に配分されていたことを、それとなく「暴露」してましたね。10年くらい前に出た、日銀OBの石井正幸さんという人が書いた「日銀崩壊」(毎日新聞社刊)という暴露本には、外貨準備に裏勘定があるという記述がありましたが、本当なんでしょうか? 今もあるんでしょうかね?
Commented by bank.of.japan at 2006-11-04 21:52
壱万円札さん、どうもです。国会議事録は、テーマにもよりますが、結構面白いやり取りがあるものです。マスコミは全国ネタでないとなかなか報じないので、お宝的なものが眠ったままのことも多いです。結構、勉強になるし、読み物としても楽しめる面があったりします。
route138さん、どうもです。特会ネタ、お待ちください。MOF預託はかつては超極秘で、東京銀行と三菱銀行が合併する際、現場の打ち合わせでもお互い触れなかったとか。両行の知り合いの一人は「しゃべるとMOFに酷い目にあう」と言っていました。裏勘定の件は聞いたことないです。昔に比べて透明化しているので、仮にあったとしても、隠すのは至難の業ではないかと。
Commented by 壱万円札 at 2006-11-04 22:05 x
そういや金融危機の際、外為か何かを使って金融当局が大手銀行にミルク補給しているという噂がありました。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-05 17:24
スパムコメント削除の際、上の壱万円札さんへの私のコメント削ってしまいました。失礼しました。改めて書きます。危機当時、邦銀の外貨調達はかなり苦しく、MOF預託活用の噂はありましたが、未確認でした。日銀も為替スワップを検討したフシがありますが、実施には至りませんでした。当局からのあまり露骨なサポートはなかったのではないかと思っております。
Commented by システム5.1 at 2006-11-06 08:16 x
MoF預託、今さら...て感じはしませんか。古くからの金融(市場)関係者なら...。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-06 10:58 x
システム5.1さん、どうもです。「ジャパンプレミアム」という言葉を聞かなくなって久しいです。逆に、外銀がコール市場でプレミアムが付く時代。隔世の感があります。
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