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100円時計で考える「代替バイアス」=体感物価は凄いデフレ?
 昨日のエントリーではワインシュタイン教授の博士号増加論に焦点を当てたが、実は同教授が触れていた「代替バイアス」も気になっていた。物価動向を身近な例で考えた場合、代替バイアスが滅茶苦茶大きいことがあるからだ。害債さんもコメントで触れていたので、ちょうどいい機会なので取り上げてみたい。
 金融市場ではCPIショックを受けて消費者物価指数の上方バイアスが話題になったが、身近な消費行動に照らすと実は半端ではない上方バイアスが存在する(体感物価は凄いデフレ)のではないかと私は思っている。統計学的には私が言うことは与太話かもしれないが、指数で見る物価と個人が体感する物価の違いは相当に大きいと思う。
 しばらく前、仕事上の必需品かつ愛用の電波時計(ソーラー式)が壊れた。アウトレット物(1万数千円)だが、買い替えは痛い出費である。数千円の修理代でも直して使おうかなと思い、つなぎのために100円ショップの時計を買った。これが意外に使えるのである。見た目も悪くない。うちの子どもに「いくらだと思うか」と聞いたら、「3000円!」との答えであった(笑)。
 その後、電波時計の故障は製造上の不良が原因であることが判明し、無償修理という奇跡が起きた(ラッキー!)。これにより100円時計は予備役となったが、私としては使い続けてもいいと思った。もし無償修理でなかったなら、1万数千円の時計は100円時計に置き換わっていた公算が大きい。この場合の代替バイアスは凄まじい。また、これに限らず、私は100円ショップを愛用している。ハサミ、定規、本立、ハンガー、自転車のチェーンetc。時計ほどではないが、身の回りでは激しい代替バイアスが起きている。ユニクロでもセール品の購入が多い。
 消費者物価統計は一物一価であり、特売品は捕捉しない。100円ショップが入っているのか知らないが、多分入っていないのだろう。多くの人がセールに見向きもせず、100円ショップに行かなければ物価統計は実態に近いのだろう。だが、地元の特売専門スーパーはやたら込んでいるし、物価統計の上方バイアスは相当に大きいというのが実感である。もちろん、特売品や100円ショップの影響はじわじわ波及したのだろうが、人々の消費行動に基づく物価動向は統計よりかなり激しいデフレを示していたのではないだろうか。
 確か1990年代の初めだったと記憶するが、イングランド銀行が四季報で「日本の消費者物価は広範囲なディスカウントの動きをカバーしておらず、実勢物価をかなり過大評価し、日本の実質金利は高い」と分析したことがある(手元に資料なく、詳細は不明)。
 もちろん、ディスカウントを統計に取り込むのは技術的に難しい。何かがセール対象となっても、全国民がそのセール品に依存するわけではない。統計上、私のようなバーゲンハンターは異常値として除外するしかないのは分かるが、消費最前線はデフレ的様相が続いている気がしてならない。
 今年7月のエントリーで、花王社長の発言を紹介した。「家庭用品分野では今もデフレが続いており、収益環境は厳しい」、「デフレが終わったとの認識で金融政策(ゼロ金利解除)が実施されるタイミングなのか」-。ダム論が思うように働かない中、追加利上げできる状況なのか。私は心配である。

 
by bank.of.japan | 2006-10-24 21:13 | 経済 | Comments(17)
Commented by 通りすがり at 2006-10-25 00:47 x
仮に「体感物価」に近い物価指数を作成するとしたら、
(ありきたりな素人考えですけれど)
価格.comとか、食品スーパー向けの仕入情報サイトの
価格動向を織り込めば良いのでしょうか?
・・・逆に下押しバイアスが強すぎるかもしれませんが(苦笑)
Commented by すなふきん at 2006-10-25 07:45 x
エントリ内容にはげしく同意です。近所の99円ショップは常に客足が途絶えませんし、主婦なんかも結構大量買いしてるみたいです。ただ経済学の基本ではそうした消費行動で浮いた予算を他のところへ回すのでそれだけではデフレと限らないというのがありますが、「浮いた分」を他の贅沢品wなど買うのに回してる形跡ってあるのでしょうか?実際どうですかね。
Commented by Otgoo at 2006-10-25 11:12 x
「なるほど、そうだよな!」と膝を叩き、久しぶりに書き込みました。
>すなふきん さんがおっしゃる通り、地方では「浮いた分」そのものが無い様な状況だと思います。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-25 11:19
通りすがりさん、どうもです。スーパーの店頭価格(セールも込み)をベースにするのがいいのでしょう。昔、西友関係で何か指数があったような気がします。下押しバイアスは確かに強いでしょう(笑)。
すなふきんさん、どうもです。所得一定であれば「浮いた分」を何かに回せるのですが、所得環境が厳しくなっていく方々にとっては生活防衛のためにデフレ商品に依存する構図になると思われます。この場合、日用品を中心に値下げ圧力にさらされ、生産メーカーは収益悪化ないしは収益確保のためにコスト削減(賃金下げ)を余儀なくされ、全般としてデフレスパイラルに陥る公算が大きいと思います。過去、CPIベースのマイナス幅はわすかでしたが、体感物価ベースでは一時期デフレスパイラルに近かったのではないかと思います。本当は地価も物価に入れたほうがいいのでしょうね。地価とスーパー物価を織り込んだ物価統計作ると、90年代以降の指数はつるべ落としとなり、長期不況の実像が手にとるように分かったのではないかと思われます。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-25 11:23
Otgooさん、どうもです。すなふきんさんへの返事を書く間にコメントいただき、すれ違いになりましたが、「浮いた分」の考察は上記の通りです。私も生活防衛のために特売・100円ショップ依存を深めております。閉店間際の値下げは格好のターゲット!
Commented by 壱万円札 at 2006-10-25 18:07 x
百円・99円ショップや特売が実態物価と公表物価の乖離をもたらしている、という意見はかなり前に読んだことがあります。だがバッタ屋や特売は昔からあります。それに百円・99円ショップ以上の価格破壊があります。パソコンです。今売っているパソコンは、昔のスパコン並の性能があるそうです。昔のスパコン並がいくらしたか知りませんが、少なくとも数億円、もしかすると数十億円はするかも知れません。昔なら少なくとも数億円したものが、数十万円ですから、もしかしたらパソコン持っている人は、生活が苦しいどころか、大金持ちかも知れません。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-25 20:10 x
壱万円札さん、どうもです。所得不変を前提とすると、パソコンの急激な値下がりは実質可処分所得の増大にはなります。ただ、私の場合はかつてのスパコン並のパソコンを保有しても、使い方が変わらないので、金持ちになった気がしないです(笑)。
Commented by 壱万円札 at 2006-10-25 21:20 x
金持ちが一人で高級外車百台持っていたとします。しかし乗れるのは多くて一台なので、本人はそんなに贅沢には感じてない事があるかも知れませんが、周りはそう思わないのと同じかも。
Commented by オレンジ at 2006-10-26 09:24 x
イトーヨーカドーではIYカードメンバーにポイント付与というディスカウントをやっていますが、このポイントが四半期に最低一度くらいは10倍つく期間があります。また、メンバーには定期的に10~20%オフというセールもやっています。この手の「ディスカウントバイアス」も結構、大きいはずですが・・・
Commented by bank.of.japan at 2006-10-26 16:00 x
オレンジさん、どうもです。ポイント制による割引も、物価上方バイアスの要因として無視できないでしょうね。特に大手スーパーの利用者は広範囲にわたっておりますので。実際の消費行動に沿った指数がどんなもんか、興味深いです。
Commented by von_yosukeyan at 2006-10-26 22:35 x
オレンジさまのポイントで思い出したんですが、NRIの推計だと4000億円規模で、電子マネーよりも流通規模が大きいそうです

個人的には、スーパーで買い物するときは、特売日(20・30日、火曜日)にまとめ買いして5%引き(+株主優待でさらに5%引き)にしてもらうし、買い物袋はマイバック持参で10円引きです。セールといっても基準には様々な要因もありますし、カードのポイント還元、メーカーとタイアップした値引きクーポン(例えばビールを購入したら他社のビールの割引チケットがもらえるとか)を考慮すると、「セールを基準に」といっても、条件は際限なく複雑になって、統計には適さない気もしますが・・・
Commented by bank.of.japan at 2006-10-27 00:11 x
von_yosukeyanさん、どうもです。ご指摘のようにセール形態の多様化によって技術的には物価統計に織り込むのは不可能なのだと推測されます。残念ながら…。
Commented by von_yosukeyan at 2006-10-27 03:59 x
>壱万円札さま、本石町さま

電子製品の代替バイアスを考えると、ちょっと例は適切ではないかも知れません

例えば、1976年に登場したスーパーコンピューターCray-1は、価格が800万ドルで性能は整数演算性能136MIPS、浮動小数点演算性能0.13GFlops。これに対して、PS3のCellは256GFlopsで5万円、ボクのポケットに入ってるPHS(京セラAH-K3001V)に使われてるSH-7290は、3年前で1000ロット辺りの出荷単価が2500円で173MIPS。Cray1の性能は、30年後にCellの2000倍になり、価格では携帯電話用アプリケーションプロセッサの百万分の一にまで低下したことになります

しかし、ゲーム機や携帯電話で、Cray1が主任務にしていた暗号解読、核シミュレーション、原子力潜水艦の音響解析はやらないでしょうから、代替バイアスは働きようがありません
Commented by von_yosukeyan at 2006-10-27 04:53 x
面白いことに、CPIの算出基準では、PC、ノートPC、カメラの三品目は技術革新と価格変動が激しいとの理由で、大手家電量販店のPOS情報から、販売数量と価格から指数を算出しています。おそらく、使われているのは日経データのNEEDS-SCANのデータを元にしているのだと思います

NEEDS-SCANは、スーパー、CVSのPOS情報を元に、商品価格、単価、客層といったかなり細かいデータが蓄積されているので、どうしてCPI算出にPCだけではなく、他の商品品目でもNEEDSを使わないのだろうと思います。ある程度は、ディスカウント要因を勘案できると思いますし(もちろん100円ショップのPOS情報は入ってないですが)
Commented by bank.of.japan at 2006-10-27 11:20 x
von_yosukeyanさん、詳細な解説ありがとうございます。使用目的を考えないと代替バイアスとは確かにずれてきますね。それにしても、性能対比価格の変化は凄まじい…。物価統計へのNEEDSの応用は興味深い論点です。日銀関係者と議論してみたいと思います。いつも詳しいコメントいただき多謝です。
Commented by Willy at 2006-10-29 16:00 x
PCなどは品質調整をしすぎると、なんのための物価指数だ、ということになりますよね。
一方、セール品の影響や、相対価格の変化により引き起こされる消費ウエイトの変化によるバイアスですが、総務省が調査対象品目をネットオークションで出品して調べるのが一番確実ではないでしょうか?オークションにかけられないものは、大体、価格規制があるもののような気がしますし(例:診療費、電気代)。冗談みたいなアイデアではありますが、案外、調査費も安かったりして。いや、むしろ利益がでるかも(笑)。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-30 11:18
Willyさん、どうもです。品質調整も「計算」ですので、実態とのズレはあるのでしょう。帰属家賃も計算が複雑でなかなか理解は難しいです。オークションでの調査は面白いアイデアですね。中には希少性から高騰する品目もあるかもしれませんが、多くは最安値に収れんしそうな…。
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