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噂の真相=尾ひれの付き方は複雑性
 昨日、今日と金融市場では、日銀追加利上げをめぐって様々な噂が飛び交ったようだ。そのうちの幾つかについては私のところにも知り合いの市場関係者から問い合わせがあり、明確に否定できるものは否定した。「噂(ルーマー)」は得てして根拠に乏しく、ちょっとした出来事に想像が重なり、人から人に伝えられる間に様々な尾ひれが付く。恐らくは一つの噂であったのに、それに様々な尾ひれが就くことで噂は複雑性の様相を呈し、微妙にバージョンが異なる「噂」が複数流通する、ということもある。昨日、今日はまさにそんな噂が出回った日であった。
 飛び交った噂を羅列してみようと思ったが、止めた。なぜなら、書いたことが次の噂のネタ元となり、根拠なき噂を再生産するメカニズムを作りかねないためだ。昔、為替の取材をしていたとき、ある推測を知り合いのディーラーに話してみた。彼はいたく気に入ってくれ、それを別の誰かに話したのだろう。いつしか、私の「推測」は様々な尾ひれをまといつつ一人歩きし、それと気づかぬ私はその噂を追跡取材するという間抜けな事態になったことがある。
 ただ、噂の一つだけは、日銀の業務運営上はあり得ないことなので、現場関係者の濡れ衣を晴らすためにも紹介したいと思う。それは「日銀が12月に利上げしても年末の資金繰りが大丈夫かどうかメガバンクにヒアリングした」というもの。業務上、資金繰りのヒアリングをするのは金融機構局である。ヒアリング担当は業態別に分かれているので、この噂の場合は「大手銀行担当(大手銀行等のオフサイトモニタリングを行う)」(昔の資金一係ですね)となる。
 まず、「12月に利上げする」ということは、政策委にも分からない。企画局もそうだ。金融機構局はそもそも金融政策から遮断されており、何も知らない。「大手銀行担当」は金融政策を知らない局の一部に過ぎず、彼(or彼女)らの金融政策との距離感は「日銀北門前の通行人」と同じであると言ってよい(怒らないでね、担当者さん)。
 従って、われわれ一般人と同じぐらい金融政策を知り得る立場にない金融機構局大手銀行担当者らが、メガバンクに利上げを前提にした資金繰り(しかも年末という先の話)をヒアリングするのはあり得ない、わけだ。それにメガバンクは資金の出し手であるので、資金繰りを心配される存在でもない。なお、一応噂の真偽を確認するため、メガの資金担当者や金融機構の担当に確認したが、両者とも噂の珍妙さにバカ受けであった。
 金先などロングがたまり、為替も円安ポジションが多く、全般に何かをきっかけに調整しやすい地合いであったところに、追加利上げ絡みの噂が調整の引き金を引いたというこであろうか。それにしても、円キャリー絡みの話はさすがに日経新聞、同金融新聞が書くと影響力でかいですね(念のため、私と日経の間には何の連携もないです)。驚きましたです、ハイ。

ps これは特に為替市場を中心に広まった観測であろうが、主に円キャリートレード要因で日銀が利上げする、ということはない。これは以前のエントリーで紹介した「円キャリーバブル論」を唱えるJPモルガンの菅野さんですらも認めるところ。金融政策はやはり国内経済・物価情勢を対象に運営されるしかない。
by bank.of.japan | 2006-10-19 18:54 | マーケット | Comments(10)
Commented by 壱万円札 at 2006-10-19 19:29 x
噂が飛び交っているのですか。噂で市場が織り込み、利上げ環境が整うという日銀の高等戦術かも。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-20 00:20
壱万円札さん、どうもです。結果的に織り込みにはなるかもしれません。ただし、日銀は高等戦術を駆使するほど気の利いた組織ではないです(笑)、残念ながら。むしろ、噂に当惑、苦笑、爆笑、驚愕、といった感じでしょう。
Commented by 為替トレーダー at 2006-10-20 07:53 x
もしかして私も今回の噂に尾ひれをつけるのに一役買ってしまったかも・・・。
ちょっと根拠に乏しい噂でも、トレンドがでてしまえば悪ノリしてしまうというのもマーケットの性かもしれません・・。
噂が広がるのはとても早くて、広範囲で、しかもかなり歪曲されていくというのは、ルーマーが飛び交うたびに毎度おもいます。
ここ数年は、純粋に金融関係だけじゃなく、気象情報とか、テロ情報とかの守備範囲もかなり広げないといけなくなってしまいました。
確認に時間をあまり費やせないまま、マーケットが動いていくと、現場レベルの焦りは相当なものだとおもいます。そこにまともな人は逆張りで設けていくんでしょうが・・・
Commented by システム5.1 at 2006-10-20 08:17 x
昔は金先って相対的に冷静な市場だったのですが(もちろん、99年以前の話。それでも、キャッシュに比べると???や力ずくのマーケットではありましたが)。最近は、かつての債先市場のようですねえ。短いところのスワップも。スペックが極端に減った債先が大人に見える(笑)。
Commented by Pittsburgher at 2006-10-20 12:04 x
いつも勉強させていただいております。
>それにメガバンクは資金の出し手であるので
お差支えなければ、①資金の「取り手」が誰か、②それを裏付ける外部資料は何か、という点をご教授ください。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-20 12:29
為替トレーダーさん、どうもです。噂・観測など何でも材料にして動くのが市場で、そして様々な材料で動くからこそトレーディングニーズが発生し、流動性も出てくるのだろうと思います。噂が出るのは市場らしい証拠。もっとも噂に振り回されるのも疲れますが(笑)。
システム5.1さん、どうもです。確かに相対的に債先の方が妙に冷静ですね。ファンダメンタルズを静かに反映しているのでしょうか。これに対し、金先ゾーンはフリーハンドを握ったBOJの庭先ですので、ファンダメンタルズとは別にBOJの存在そのものが不透明要因だったりして…。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-20 12:52
Pittsburgherさん、どうもです。資金の取り手で目立つのは「外銀」です。短期市場の業態別調達・運用構造は、日銀が7月31日に発表した「金融市場レポート(追録) 量的緩和政策解除後の短期金融市場の動向 」(PDFファイル)内の図表などが参考になると思います。
Commented by jonen at 2006-10-21 23:06 x
こんなネタを発見してしまいました。
新たな燃料投下となるのでしょうか?

福井総裁"不適切な講演"で新たな火種(10/20 )
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/ota/20061019nb9aj000_19.html
Commented by 壱万円札 at 2006-10-22 15:30 x
jonenさん、燃料投下ありがとうごさいます。福井氏は識見高く、人柄も良いと報道されてます。パーフェクトな人間はなかなかいないのは当然ですが、イエロー・カードの出ている福井氏には次はレッド・カードしかありません。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-22 22:45
jonenさん、どうもです。総裁はそう頻度は多くないですが、マスコミ抜きの講演はやっているようです。指摘された事例は知りませんでした。内容からは、それほどの燃料になるとは思いにくいですが、お知らせ多謝です。
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