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経済構造分断仮説下の金融・財政正常化は…
 経済構造が分断しているように見え始めたのは大分前のことだ。バブル崩壊以降、景気は何度か回復したが、ほんとんど実感はなかった。この間、回復は基本的には外需主導であり、国際競争力のある製造業が経済を引っ張り、生産関連統計では景気は浮揚したように見えたというわけであろう。セクター別では、製造業は海外経済に連動する一方、国内主体の非製造業は連動が鈍い構図であり、両者は異なる経済圏に置かれているイメージだ。
 最近の三菱UFJ証券のレポート(お借りします)に、海外(グローバル)経済圏企業と国内経済圏企業のそれぞれの実質付加価値(一人当たり)の推移を示したグラフがあった。グローバル経済圏のチャートはバブル前後から上下動しつつ急カーブで右肩上がりに価値が増している一方、国内経済圏は対照的にバブル前後から緩やかに右肩下がりになっている。
 レポートを作成したチーフエコノミストの水野和夫氏によれば、国内労働者の比率でみると海外経済圏に属するのは14%、残りは国内経済圏となる。全体に経済が成長しても、それが一部のけん引によるものであるなら、多くの人々に回復の実感が伴わないのは当然かもしれない。地域別ではご存知のように輸出拠点の東海地区の回復が目覚しいが、そこは日本経済の一角というよりは海外経済につながる地域なのだろうと思う。
 問題は、経済構造が分断化した状態にあるとき、金融・財政政策が正常化する意味だ。マクロの成長に応じて利上げ、財政再建に舵を切り始めると、国内経済圏にマイナス打撃をもたらして分断が強まるのではないかと懸念される。クラスの平均偏差値が上がっても、それが一部の急上昇によるものである場合、クラス全体に課す試験を厳しくすれば多くが脱落するような感じかもしれない。
 私が日銀の利上げがうまくいかないのではないかと心配するのは上記の構造が深まっているのではないかと考えられるためだ。確かにマクロ経済全体の判断としては金利正常化なのかもしれないが、東海地区などには見合っても、残りの地域には逆風となる。経済は二極化しても金利は一本である。可能なら別々にした方がいいのだが、通貨分離するわけにはいかない。世界経済が減速するとき成長鈍化がきついと潜在成長率を下回ってデフレ圧力が強まると悪夢である。

追記 もとより分断化とは二極化であり、バブル崩壊以降の金融緩和・財政出動は崩壊の打撃が大きかった国内経済圏の下支え、つまりは分断激化を防ぐ接着剤の意味合いがあったと思われる。なお、分断化(二極化)の実情については、しばらく前の日経新聞月曜観測における中国銀行の永島頭取が率直に語っていたのが好感を持てた。元日銀理事としてさすがにゼロ金利解除そのものには肯定的であったが、発言内容の一部には利上げのマイナス作用を暗に指摘している面もあり、理事時代よりもなかなか味のある発言ぶりに感服した次第である。
 日銀の反論としては分断仮説の否定であろうか。確かに短観などは分断がないように見えるが、調査対象から負け組が淘汰されるサバイバルバイアスもあるし、労働者数のセクター別比例配分も勘案しないといけないかもしれない。
by bank.of.japan | 2006-09-12 23:08 | 経済 | Comments(0)
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