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新札切り替えの謎=「千円札」の国際化?
 以下は、新札切り替えの謎についてしばらく前に日銀マンが披露した「憶測」である。確証のある話ではないので、軽い読み物として受け止めて頂きたい。なお、今回のネタは、下のエントリーでの壱万円札さんのコメントで思い出したもの。壱万円札さん、多謝です。
 まず切り替えの謎とは、旧千円札の戻りが鈍いことだ。約20年前の改刷に比べると、今回の切り替えペースは全券種とも緩慢だ(詳しくは「新しい日本銀行券の普及状況 ~ 改刷から1年を経て」を参照)。交換率は10%ほど出遅れており、これは低金利によって現金保有コストが低くなっているのが主因と思われる。
 興味深いのは、券種別の交換速度。前回改刷では一万円札の交換ペースが他券種(千円、五千円)よりも速かったが、今回は逆で千円・五千円が速く、一万円がスローとなっている。これは高額紙幣はタンス預金として滞留しやすい一方、小額紙幣は流通しやすいためだと解釈される。問題は最近の動向。交換ペースの速かった千円・五千円は勢いが鈍くなり、全券種ともほぼ70%前後に集約してきた。
 過去半年の千円札の交換率(%)は71、72.3、71.8、72.2、72.5、72.9と超スローなペースになっている。右肩上がりで交換度合いを示すグラフはそろそろ天井圏にぶつかりつつあるような感じで、80%まで届かぬうちに横ばいになるのではないかとも思ってしまう。
 日銀マンが首をひねるのは「タンス預金化した旧高額紙幣の交換ペースが緩いのは分かるにしても、タンス預金には適さない小額紙幣の交換が急速に伸び悩むのは解せない」ということだ。千円札が退蔵されたのように見える理由が何かあるのかもしれないが、確かに合理的な解釈を見出すのは難しい。
 私と彼が話し合ったときに浮上したアイデアは、アジアなど国外で流通しているのではないか、というもの。海外旅行で持ち出された分、日本にきた外国人が持ち帰った分がアジアなどの各都市で流通しているのではないか。千円札の発行枚数は34.4億枚、うち新券は25.1億枚。その差9.3億枚が旧券で、金額ベースで9300億円。その全部ではないにせよ、かなりが海外流出している可能性があるのではないか。
 私はあまり海外に行かないので、現地の事情は良く分からないが、日本人が多く行く都市では円が使えるという声をよく聞く。買い物対応であればおつりとして千円札のニーズはそれなりいあるだろうなあとは思う。いずれによ、海外に流出した現金を捕捉する統計はない(と思う)だけに真実は闇の中である。このアイデア、不発ですかね。ご意見・助言、歓迎です。
by bank.of.japan | 2006-09-07 22:31 | 日銀 | Comments(12)
Commented by von_yosukeyan at 2006-09-08 04:53 x
国内における外貨現物も、海外における円現物も、デリバリーは数行の外銀(邦銀は海外でほとんどリテール営業を行っていない)に集中していますが、海外での銀行券需要は皆無に近いので、邦人が海外で使った円現物はほとんど日本に送り返されているそうです。正確な数字は知らないのですが・・・。

それと、個人的に海外で円を使ったことがあまりない(クレジットカードかキャッシュカードで現地通貨調達)ので外してるかもしれないですが、海外で円を使ってもお釣は現地通貨で帰ってくることが多かったような気がします。円が使えるところでは、円でお釣が来るのが普通なんでしょうか?
Commented by bank.of.japan at 2006-09-08 11:09
von_yosukeyanさん、コメント多謝です。うーん、旧千円札の国際化説はやはり根拠は乏しいですねえ。旧券9億枚、普通にタンス預金されている、と解釈すべきなんでしょうか。引き続き考えてみたいと思います。
Commented at 2006-09-08 12:52 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by takuya at 2006-09-08 12:53 x
小さな要因をひとつ。
小生、パチスロが好きで自宅にスロット本体とコイン貸機(旧札対応のみ)を融資ております。そのため、旧千円札を500枚程(多すぎ)機械の中に入れており、それで遊んでいます。
他にも旧札対応の機械が個人所有となっていればお札もセットでしょう。
ちりのひとつとして本当に小さな影響があるかも(ちりも積もれば、、、、)
他にも見落とし項目が一杯かも、、、



Commented by bank.of.japan at 2006-09-08 13:56
Willyさん、どうもです。確かに金庫形状によって旧券が滞留しやすい側面はあるかもしれませんね。この考えを応用すると、例えば壷に現金を保管する場合、底の部分は滞留したままになるとか。貴重なご意見、ありがとうございます。

takuyaさん、どうもです。意外な使われ方があるのに驚きました。少なくともパチスロファンの方々による旧券ニーズの高さは間違いなさそうですね。別なニーズもいろいろありそうです。多彩なニーズの結果が旧券の戻りを鈍くしている可能性がありそうです。ご指摘、多謝です。

Commented by mosi lager at 2006-09-08 18:57 x
初めまして。いつも参考にさせていただいています。
小生、海外在住暦もかなり長くなってきていますが、
確かにアジア圏では、普通にお釣が日本円で来るところもあります。
ベトナムでは結構。インチョン空港はかなり驚きました。
闇両替というのも結構あるはずです。
仮説、十分可能性があるようにも思えますが。

ついでに小生のくだらない手術体験のHPアドレスを付けさせていただきました。暇つぶしにでもなれば。
Commented by bank.of.japan at 2006-09-08 20:32
mosi lagerさん、貴重な情報有難う御座います。規模が不明ながらも、流通している一端がうかがえますね。統計等で捕捉が出来ないのが残念です。先ほどホームページをのぞかせてもらいました。私は幸いにも海外に居る時は入院するほどの病気にはならなったのですが、体験談は何であれいろいろな方の参考になると思います。私の叔父もベトナム赴任中に盲腸となり、大変な目に遭ったようです。その話を聞いたときはあまり詳しい事情は聞かなかったのですが、 mosi lagerさんの体験談から察するにかなりの苦労があったのだと今さらながら思った次第です。今後ともよろしくお願いします。
Commented by von_yosukeyan at 2006-09-08 23:59 x
自動機の新券対応も要素として考えられますが、自動機は大抵は新券対応が終了している点と、両替機のような金融機関以外に設置されている自動機に対して「旧券が必要」ということになると、手数料の面などで非常にややこしいので、実際のところコスト的な問題で新券対応ができてないという機種はあまり多くないのではないかと思います

私自身は、日銀ペーパーで指摘されている通り、前回の改札以後に銀行券の流通構造が変化したことが要因ではないかと思います。一つは、金融機関事態が合併や効率化によって、銀行券の管理や輸送を合理化したことで、例えば同じグループ内の信託や銀行の間で輸送業務を一本化したり、出納業務の機械化で銀行券を行内で有効に還流させる仕組みを作っているところが増えている点が指摘できるのではないかと思います
Commented by von_yosukeyan at 2006-09-09 00:02 x
二つ目が、現金現物に対するコストの上昇が挙げられます。これは、銀行などが小売店などに対する、いわゆる両替手数料やオーダー手数料を徴収するようになったことで、金融機関の外に出てしまった銀行券も、金融機関への還流が少なくなるように民間でも努力している点が多々あるのではないかと思います。また、大資本のスーパーやコンビニの発達によって、地方内で還流していた現金の流通構造が、地方から都市に流れると言う大きな対流構造に変化していることも要因ではないでしょうか

個人的には、へたくそな札勘しているときは、つるつるの旧券よりも、手触り感が着実にある新券のほうが好きで、旧券が混じってると「うげー」という気分になります。あと、新券切り替え時に「新券は片方だけ厚いので、自動機のカセットに入りにくい」って話は良く聞きましたが、結構慣れたみたいですね
Commented by bank.of.japan at 2006-09-09 00:19 x
von_yosukeyanさん、詳細な技術的裏づけのあるご説明ありがとうございます。私も、現金の流通システムに一つの要因があるのではないかと推測しており、特に銀行券をリサイクルさせる仕組みについては知り合いの金融関係者から指摘されたこともあり、説得力はあると思います。現金コストの上昇で金融機関への還流が少なくなるのもうなずける理由ですね。引き続きご指導お願いします。
 von_yosukeyanさん、金融関係に異常に詳しいのはやはりある種の関係者なんでしょうか。只者ではない感じがしてとても気になるのですが(笑)。
Commented at 2006-09-29 17:06 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2006-09-30 00:22
これはこれは、意外です。謎めいてきましたね(笑)。
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