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消費者景況感のマスコミバイアス
 景気が良いのか悪いのかを問われたとき、大半の人々は自身ないしは家族、友人など周囲の所得状況などを判断根拠にするものだと普通は考えられる。ところが、日銀が定例で実施している「生活意識に関するアンケート調査」によると、判断根拠に「マスコミ報道を通じて」を挙げる人が意外に多い(という印象を私は受ける)。景気が良くなるとき、悪くなるとき、マスコミ報道は一般的に足並みをそろえる。そうした報道ぶりが景況感調査に「マスコミバイアス」をもたらしているなら、調査結果からバイアス分を差し引く必要があるのだろう。
 上記アンケート調査(直近6月分)の対象は4000人(有効回答1770人)。景気判断の根拠で一番多いのは「自身・家族の所得状況」で47.3%、次が「勤め先や自分の店の状況」で35.8%、そして3番目に「マスコミ報道を通じて」の28.5%が続く。その前の2回分も判断根拠の順位は同じ(詳しく調べていないが、さかのぼっても同じと思う)だ。ちなみに、マスコミ報道を根拠とする比率は27.0%、27.2%、そして直近の28.5%となっており、「3割弱」は定常的にマスコミバイアス判断を示していると受け止められる。
 景気が「良くなっていると思う」という回答比率は昨年12月にそれまでの11.8%から19.2%にジャンプし、今年3月22.0%、6月20.8%と高止まりしている。この結果、景況感DIは平成8年から始まるチャート上では初めて明確なプラス圏に浮上した。だが、昨年後半からの報道は「踊り場脱却」、そして「デフレ脱却」と景気回復の方向で一斉に揃ってきている。従って、この「良くなっていると思う」回答の増大にはマスコミバイアスが掛かっていると見た方がいいのだろう。
 バイアスの差し引き方だが、「3割弱」をどう織り込むか。単純に「良くなっていると思う」回答の3分の1弱をバイアスとみなすなら、6%程度が除外され、景況感DIはプラス浮上しない。好転幅の3分の1なら2%程度で済むのだが…。いずれによ、「マスコミ報道は判断根拠にしないように」と断り書きを入れた方がいいように思うのだが、どうだろう。そんなことをすると、恣意的なアンケートになるのだろうか。
 なお、アンケート全体を見ると、景気は「変わらない」が6割、「悪くなっている」が2割、そして暮し向きDIはマイナス40%前後で浮動しているなど、「景気拡大」に広がっている感じは全然ない。このアンケート、近く9月分が出るようなので、改めてチェックしてみたい。
 
by bank.of.japan | 2006-09-06 21:59 | マスコミ | Comments(10)
Commented by 壱万円札 at 2006-09-07 12:00
脱線しますが、私は以前、某信用金庫に勤務していました。日銀からも色々な調査依頼がありました。コンピューター資料があり、簡単に書き込めるものは正確な数字が書けますが、沢山の書類から拾い出さなければ正確な数字が書けないものは、適当に数字を書き込んでいました。調べて正確な数字を出すのはそれだけかかりきりになっても数日はかかるので、現実的にはやれません。ほとんどの同僚も同様でした。現実的な話、日銀の調査依頼を真面目にしようとすれば、残業しなければできませんが(時間中は目の前の仕事で精一杯です。また時間中やりきれない仕事は残業します。)、日銀の調査依頼の為、残業手当を請求する事は雰囲気的にとてもできません。だから調べて正確な数字を出すような日銀の調査依頼の数字算出はいい加減なものになります。よく考えてみると無料で調査依頼する日銀に無理があります。調査費用を添えて、調査依頼しないと正確な数字は上がってきません。他業態の各種調査も適当に数字を書き込んで出すというのを良く聞きます。
Commented at 2006-09-07 12:58
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2006-09-07 13:52
↑さん、コメント多謝です。
壱万円札さん、どうもです。確かにアンケートに答えるのは何かとわずらわしいものですね。景気の良し悪しも、自分の懐具合いはともかく、経済全体はどうなんだろうと考え込む人もいらっしゃるでしょう。そういうときにマスコミ報道を参考にするのはありがちです。今の仕事に就く前の私など政治・経済への関心はほぼゼロでありましたので、景気情勢を聞かれたら自分の給料の変化を基に答えるか、新聞見出しをそのまま使って答える、ということになりそうです。調査を有償にするのがやっぱり精度の面では必要なんでしょうね。信頼度の乏しい調査をたくさんやるより、有償による精度の高い調査に絞り込んだ方が有効なのだろうと思います。今後ともよろしくお願いします。
Commented by FAM at 2006-09-09 13:09
はじめてかきこみさせていただきます。
よくマスコミの世論調査で気になる数字が「有効回答率」上のケースでも上記アンケート調査(直近6月分)の対象は4000人(有効回答1770人)。
つまり、過半数の人が「有効とされる回答をしていない」ということではないかと(Wそうするとこの数字はあくまでマスコミ側が有効と考える回答を「答えた人の割合」であって正確な数字ではない、といつも思ってしまいますが・・・
 これは視聴率という言葉にも同義語で、視聴率50%の番組は「国民の半数が見ている」と思いがちですが、あくまで「調査機がある家庭の、しかもその時間帯にテレビを見ていた人数のうちの」50%であり、こういった数字の本質は意外と無視されたりします。
 もっとも、日本中の人間を調査するなんて不可能ですが、サンプル調査=国民の本意 という見方はいい加減に止めた方がいいかと>マスコミ
Commented by bank.of.japan at 2006-09-09 20:17
FAMさん、どうもです。ご指摘のことはよく分かります。私は調査手法のことは詳しくないのですが、バイアスをなくす方法もあるのかもしれません。ただ、最近の調査の大半はアウトソースされているようで、末端での調査事情はどうなんでしょう。「国民の本意」という伝え方も個人的には?と思います。
Commented by 壱万円札 at 2006-09-09 21:07
「無作為」という事に忠実であるならば、電話調査も夜中零時や午前三時にも行わなければいけませんが、確実に社会問題となるので、できません。しかし午後十時迄は可能だろうから午前九時から午後十時迄に「無作為」に電話調査する必要はありと思います。
Commented by うお at 2006-09-10 00:06
「マスコミバイアス」と「マスコミの報道に影響を受けやすい」というは、またちょっと違うのかナーとおもいます。バイアスと聞くと、景気が本当は悪いのに、新聞テレビが足並みそろえてイケイケどんどんの大本営しがちである、あるいはその逆のことが起きている、という風に聞こえます。(本石町さんは、景気悲観バイアスがかかっている?(笑))
マスコミが、あまりよく考えずに政府・日銀の発表を拡声するだけであれば、それは政府・日銀の景気判断バイアスが、マスコミによって広げられているだけのような。

話は変わりますけど、このアンケート、日銀の評判とかもいろいろアンケートしてますよね。調査時期的には、景況感よりもこっちの回答の方が、大変なことになってそうです・・・
Commented by bank.of.japan at 2006-09-10 11:36
うおさん、どうもです。私は確かに悲観バイアスあり、です(笑)。ところで、マスコミのバイアスと拡声効果はご指摘のように慎重に区別する必要があると思いました。アンケートの風評絡みのところは大変かもしれません。まだ尾を引くことになるんでしょうかね。
壱万円札さん、こちらにもまたコメントいただき多謝です。
Commented by 元とおりすがり at 2006-09-11 15:21
マスコミバイアスかは別として、統計のクセは注意しないといけないですね。国民の景況感はやはりウォッチャー調査がそれなりにいいと思います。対象は各地域の委託者が決めますが、対象者は電話などで簡単にアンケートに答えられます。モノ・サービスが企業や役所などで集計されるずっと手前の販売者そのものの感覚(にすぎませんが、マスコミ報道は関係ありません)ですから、スピード感もすごくあります。
最近のデータを見ると、まだ大丈夫ですが、微妙な局面になりかけているように思います。

一方、ちょっと違いますが、家計調査は要注意です。謝礼が薄く、調査項目が多すぎるので、対象者をかき集めるのが自治体の重要な仕事だとか。そうはいっても拒否されまくるので、調査員は顔なじみのところに行きやすい。また、企業勤務者の家庭といっても旧公社のようなちょっと公共性のある家庭は受けてもらいやすいので、そちらに偏り気味になるとのことです。この統計でGDPの個人消費の大半が決まってるんですけどね。

またしても、景気ウォッチャー調査の宣伝みたいになっちゃいました。
Commented by bank.of.japan at 2006-09-11 19:46
元とおりすがりさん、どうもです。統計そのもののバイアスはエコノミストからもよく指摘されることですね。家計調査などは注意しないといけないと聞きます。景気ウォッチャー調査はいいと思いますよ。足元下げ止まってほっと一安心ですが、この先どうなるかはご指摘のように微妙です。ウォッチャー調査は、コメント欄が読ませます。現場の息吹が感じられて状況を想像することが多いです。
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