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長期金利、行って来い=短期金利の先行指標?
 30日の長期金利(10年国債利回り)は“CPIショック”の余韻が残り、1.645%に一段と低下した。この結果、長期金利は量的緩和が解除された3月上旬の水準に戻った。いわゆる『行って来い』の展開である。日銀マンには気の毒であるが、私にとっては実に自然な流れであり、長期金利の『行って来い』が短期金利(無担保コール翌日物)でも演じられると、私の読みは的中(決してうれしくはない)してしまう。
 もちろん、債券市場が必ずしも正しいとは限らないので、何かをきっかけに上昇に転じる可能性はあるが、「将来のインフレを予防する」or「将来のバブルを予防する」を目的とした日銀の利上げロジックはどうも信憑性に乏しいので、下がる長期金利が正しいように思える。
 なぜか「デフレ脱却」に関心が向いているマスコミではほとんど取り上げられていないが、エコノミストの一部では「景気は既に踊り場に入った可能性」が指摘されている。これが踊り場では済まずに後退局面になってしまうと、ゼロ金利に逆戻りせざるを得ず、行って来いの長期金利は短期金利の先行指標だったことになる。
 今後景気動向がどうなるのかは予断を許さない。日銀の持続的成長見通しが実現する可能性がある反面、利上げ停止モードに入った米経済がソフトランディングせずに住宅バブルの大幅な調整を余儀なくされるリスクもある。気になるのは、先のエントリーでも紹介したように、欧米投資現場に身を置く金融マンの方々のブログで不吉な予兆が伝えられ始めたことだ。
 欧米が多少コケても日本経済が安泰であるためには、内需が力強くなるしかない。現在、おう盛な設備投資に加え、個人消費に火が付けば安心である。企業収益のダムが家計に流れ、消費が盛り上がり、生産が増えて企業収益がまた増え、設備投資がさらに活発化するという前向きの循環メカニズムが勢いを増す…。うーん、書いていて何だか虚しくなるバラ色のシナリオだなあ、こりゃ。

みなさん、バラ色ですか?

 繰り返すが、私は景気は良くなって欲しいと強く願っている。過去の日銀の運が悪いことから、私は職業上敢えて日銀の見通しとは逆張りしているが、量的緩和の解除、そして利上げというプロセスが、将来「第二次逆噴射利上げ」と命名される失態は見たくはない。これは本気です。
by bank.of.japan | 2006-08-30 22:14 | マーケット | Comments(5)
Commented by walrus at 2006-08-30 23:08 x
米国減速シナリオはもはやFEDメインシナリオです。問題はソフトかハードか。住宅市場指数(住宅業者景況感)悪化→住宅価格下落→個人消費悪化という経路が想定されます。足許の住宅市場指数を個人消費がフォローしてしまった場合、世界同時不況です。ポイントは資産効果の背景となってきた住宅価格が崩落を回避できるかでしょう。足許までは何とか粘っていますが、一方で個人消費の先行指標である消費者信頼感が天災なしで前回ハリケーン襲来時の水準に下げてきてます。日銀に悪寒が走っていると推測します。まだ米株の米個人消費資産効果は顕在と思われますが、これで米株も下落トレンド入りしたら恐らく踊り場(利上げ停止)ではすまないのではないでしょうか。なお、bank.of.japanさんご指摘の通り、CPIショックが日銀スタンスにさほど影響しないという事実を債券市場は薄々感じているはずですが、いまだに長期金利が低下しているのは、CPIショックは単なるきっかけであり、債券市場が読みに行っているものは米国のファンダメンタルズ変調だからでしょう。短観が出る頃は10年1.5%割れの公算大とみています。
Commented by bank.of.japan at 2006-08-31 01:13 x
walrusさん、ご無沙汰です。確かに米消費者信頼感指数の低下は気になるところですね。私は長年のウォッチで金利低下の地合いが体に染み付いているので、このフラットニングが実にしっくりとくるのですが…。いやな体質になったもんです(笑)。世界がどんなにコケても、日本は内需が火を噴く、というシナリオは夢想なんでしょうか。私の読みが外れても、米経済にはソフトランディングしてほしいと願いたいです。
Commented by システム5.1 at 2006-08-31 08:01 x
という状況にもかかわらず、「国内景気は磐石。設備投資の強さや資産価格の上昇が気になる」といった理由付けで、日銀が再利上げを行えば、一段のフラット化が待っていそうですね。まずは、CPIの発表を受けた市場の動きに政策委員のみなさんがどう発言するか興味があります。
ところで、米国にとどまらず、欧州では金利上昇とユーロ高が悪影響を及ぼし、中国も3QにGDPは10%を割りそうですね(それでも十分高いか)。世界景気減速の蓋然性は高まっているでしょう。
Commented by システム5.1 at 2006-08-31 12:18 x
(補足)債券市場参加者にとって、足元のカーブ形状の変化は、思いっきりスティープ化ですが(笑)。
Commented by bank.of.japan at 2006-08-31 12:29
システム5.1さん、どうもです。CPIに続いて“生産ショック”となったようで。まあ、この地合いに対して政策委員が違和感を示しても(そういうセンスのない発言はしないと思いたいですが)、市場は聞く耳を持たないような感じですね。何だか金先の買い戻しが激しい、ブルスティープ化という理解でいいんでしょうか?
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