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改めて銀行券と国債買い入れオペについて
 市場関係者と話していたら、「銀行券が減ると国債買い入れオペもすぐに減額されるのではないか」との懸念があったので、改めて銀行券と国債買い入れオペの関係を整理してみたい。
 まずは現状認識から。本日公表の「営業毎旬報告」によると、20日現在で銀行券残高は約74兆円。一方、国債(長期国債)買い入れ残高は約56兆円となっている。資産・負債関係を単純化してみると、銀行券という負債74兆円の反対側には、資産として57兆円の長期国債があり、残りは18兆円の短期オペという資産が存在する。
 次に、銀行券が減った場合の資産・負債の構成変化だが、長期国債は原則売らないことを前提としているため、券が減ると短期オペが減っていくことになる。短期オペはいろいろあるが、減らすのはまあどれでもいい。減らしやすいのは「貸付金」すなわち「共通担保資金供給オペ」、昔の手形オペであろうか。
 そして買い入れオペである。今も日銀は月に1兆2千億円買っている。ところが、保有残高は傾向として減っている。ちょうど一年前は約66兆円だった。今年6月には約60兆円だったものが約55兆円に減少し、その後は横ばいで推移している。これは過去に買った国債の償還(詳しくは短期債に乗り換え、その後に現金償還となる)が結構あるためだ。償還具合いがどうなっているかは、日銀保有銘柄の内訳を精査すれば分かるが、私の手には余るのでここでは割愛したい(債券関係のプロで詳しい方がいればご指摘を)。
 話を簡単にするため、今後の国債買い入れと償還の規模がほぼ同程度と想定する。この場合、長期国債残高は56兆円で安定推移する。従って、理屈の上では、銀行券が減っても残高が56兆円になるまでは短期オペを減らすだけで済み、国債買い入れの減額に手をつける必要はない。現実的にはどうか言えば、日銀は国債の売り切りを避けるため、銀行券残高が56兆円に接近するどこか手前のところで国債買い入れの減額に着手するのであろう。
 なお、銀行券がどうなるかは実は日銀にも良く読めていない。タンス預金の金利感応度が非常に弱いと減らない可能性もある。減ったとしても比較的小規模かもしれない。いずれにせよ、減ったら直ちに国債買い入れも減額になるとは限らない。あくまでも減り方がかなり急激である場合に限られるのではなかろうか。私はタンス預金が増えたのは、現金の匿名性が嗜好された面がかなり大きい(金利感応度はゼロに近い)と思っているので、銀行券残高はそんなには減らないと見ている。国債買い入れ、減らすことにはならないかも。

ps 券動向のシミュレーションはいろいろ可能だが、少なくとも日銀は減ることを見越して買い入れ減額はしないはず。あくまでも事後的な対応を取るであろう(でないと、見込みが外れたときに金融調節の負担が増すからだ)。
by bank.of.japan | 2006-08-22 21:35 | 日銀 | Comments(0)
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