短資会社の謎=仲介者がなぜ「取り手」なのか
 今回は水野委員のネタではなくて、水野委員が指摘した事象の補足。量的緩和の解除、そして利上げを経たインタバンクの状況について、有担コール市場に関しては「限られた少数の出し手と取り手が中心のマーケットになっています。いわゆる担保を付した取引ですが、資金と担保が同時に受け渡しされない決済となっているほか、担保の掛け目が額面ベースであることなどから、余り利用は広がっていません」と述べていた。
 有担保コール市場は確かに「限られた少数の出し手と取り手が中心のマーケット」である。その状況を、日銀が先月31日に出した金融市場レポートの「追録・量的緩和政策解除後の短期金融市場の課題」で確認してみよう。図表6「有担保コール市場残高の推移」を見ると、まず『出し手』として最大は「信託(含む投信)」である。図表が始まる92年以降、途中から地銀がやや顔を出すが、信託が最大の運用主体なのは変わっていない。
 一方、『取り手』を見てみよう。不思議なことに気が付く。90年代後半から「短資会社」が有担コールの最大調達者となっている。短資会社はご存知のように資金の仲介業者である。仲介=ブローキングであるなら、調達ポジションを持つはずはない。調達なのは、仲介=ディーリングであり、具体的には信託などから打ち込まれた資金を自らのバランスシートで飲む(負債計上)わけだ。調達ポジションがあるなら、当然見合いの運用ポジションがあり、何かが資産計上されている。
 ゼロ金利から(解除時期を除く)量的緩和に以降した超低金利時代、短資会社の運用は初期的には日銀当座預金が占め、その後は短期債などの比重が高まったと思われる。調達はわずながら有利子であり、日銀当座預金で運用すると逆ザヤとなる。これを解消するため、多少の利ザヤがあるターム物の運用に傾斜したと推測される。短期調達・短期運用が逆ザヤだったため、短期調達・ターム物運用に変化したわけだが、仲介業者がショート・ロングの期間ミスマッチを取るファンドと化した格好でもある。
 もとより、短資会社は好きでそうなったわけではない。まず、立場が弱いこと。そして、有担の資金を必要とする向きが乏しいため、出し手が有担で放出する資金は結果的に自分で飲まざるを得ない事情がある。かくして、有担保コールの世界は微妙に歪むことになった。このほか、問題点はまだまだあるのだが、私がこの問題に詳しかったのは数年前のことで、最近の事情は詳しくフォローしていないので、どなたか精通している方がいれば是非助言を。
 なお、レポートの追録では「短資が自己勘定で金額のミスマッチや資金・担保の受渡しにかかる時間差のバッファーになっている」と指摘しているが、このバッファーは色々な歪みの緩衝役になっているわけであろう。いっそのこと、出し手が無担運用にすると決めちゃえばいいのに、と思うのだが。だめですかね。

ps 逆ザヤ仲介でも短資会社がしのげたのは剰余金が潤沢だったため。有担保コールをディーリングで放出すると「融資」となり、これに引当金を積んでいた(デフォルトは事実上ない)のが剰余金の源泉となっていたはず(違ったらご指摘を)。短資合併が盛んなころ、某社長曰く「合併しても先細り。解散して剰余金を山分けした方が本当はいいんだよね」と。


渋谷陽一の夏休みロック講座(古くてすいません)ならぬ、本石町日記の夏休み金融講座でした。金融政策も含めていろいろやろうかな。
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by bank.of.japan | 2006-08-03 23:09 | マーケット | Comments(7)
Commented by ろじゃあ at 2006-08-07 17:55 x
ご無沙汰しております。
短資会社って学生時代から結構謎で・・・。
興味深いお話っす。
それよりも渋谷陽一さんのお名前が・・・本石町に似合うロックはなんなんでしょうかねえ(^^;)。
60・70年代のブリティッシュハードロックが日銀には似合う気がするのですが・・・どうでもいいことですいません。
金融政策も含めて色々やってくださいまし。
Commented by bank.of.japan at 2006-08-08 00:40 x
ろじゃあさん、どうもです。短資会社の話は反応薄を覚悟しており、その意味ではコメント多謝です。渋谷陽一に反応されるとは。もしかして同年代? 日銀に似合うロックは何か…。うーん、難しいですねえ。替え歌名人の「…みたいな。」さんなら何かアイデアあるかもしれません。今度聞いてみますね。天国への階段、中立金利への階段、ああ、外したかな(汗)。
Commented by ろじゃあ at 2006-08-08 22:16 x
それはそれは。
お役に立てたようで。
実は昔CD聴きながら日銀の周りを徘徊したことがありまして(←ちょっと不気味。仕事の行き帰りにCD聴きながら通過しただけです)、日銀の前をリズム取りながら歩いた限りではUFOの「Doctor,doctor」あたりはすごくいい感じだったのですが・・・むろん根拠はありません(^^;)。
ドアーズの「ハートに火をつけて」とかだと誰が誰のハートに火をつけてどうなる・・・なんて小理屈をこねたくなってしまいますが、これも歩きながら試したことがあります。
タイトルから行くと今の日銀に対してツェッペリンの「Communication Breakdown」とか持ち出すと皮肉になっちゃうかもしれないし・・・(^^;)。ちょっと、難しいっすね、自分で言い出しといてなんですが。
「日銀ロック」とかいってイメージにあいそうなロック集めてアルバムにしたりして・・・売れないかなあ・・・(^^;)
失礼いたしました。
Commented by ・・・みたいな。 at 2006-08-10 11:22 x
をを、こんなところで振られていようとは。遅レスですみません。
と言って、せっかく振っていただいたのに申し訳ないのですが、60・70年台のブリティッシュ・ハードロックは、以前から興味はあるものの未着手状態でして(汗)。むしろ教えを請いたいくらいです。80年台以降の軟弱なMTV世代なものですから(渋谷陽一にも反応しますが、むしろ萩原健太か?ピーター・バラカンはびみょーw)。
ただ、それなりに想像しましても、プログレ系が合いそうな気はなんとなく致します。とっつきにくく、聴き慣れないと良し悪しが判らない、という意味で(笑)。得意のベタな発想としては、(これをプログレに分類してよいのかどうかわかりませんが、)Dire Straitsの「Money for Nothing」なんてどうでしょう。やっぱりピアノとかシンセではなく、エレキギターが似合いそうですよね♪
Commented by bank.of.japan at 2006-08-10 11:56
Communication Breakdown、Money for Nothing。いずれもツボですね。ろじゃあさん、…みたいな。さん、参りました。
Commented by 通りすがり at 2006-08-16 02:36 x
信託関係者です。
出し手が無担運用しない、というよりも過去に結んだ信託銀行と委託者との間の約款上、出来ない場合が大半だと思います(汗)
や、昔はコールローン=貸付金であり、貸付金ならきちんと担保を取らないといかん、という制約があったんですよ。
今は時代が違いますが、委託者(=信託銀行の顧客。年金・投信等)は何万といますので、これを更新するのは結構洒落にならないコストがかかってしまう、って感じでそのまま残ってます。。。
かといって債券レポに資金を出そうとすると今度は債券の「売買」とみなされて約款上難しくなる場合もあったりするんです、これが。
無担コールにせよ債券レポにせよ約款を拡大解釈させる手もあるんですが今のご時世では無茶し過ぎだし。
いずれにせよ、低金利のために誰もきちんとメンテしてこなかったつけの一部がここにたまっている感じなのですが、O/Nが未だ0.25%程度でしか回らないのであれば、当分この歪みを解消させる動きも出にくいかな、と思われます。
Commented by bank.of.japan at 2006-08-16 11:08
通りすがりさん、どうもです。ご丁寧に背景をご説明頂き有難う御座います。有担コールをめぐっては関係業界がそれぞれ難しい状況に置かれているのは察しておりました。柔軟に対応しようとすると、やっぱり善管注意義務違反に問われるんでしょうね。引き続きよろしくお願いします。
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