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遠くの戦争は「買いオペ」、近くのミサイルは「売りオペ」=日銀の有事対応調節は…
 本日の日銀金融調節は、朝方ノーオペの後に午後に4000億円の即日売りオペ(売手)であった。北朝鮮のミサイル発射にも関わらず、インタバンク市場が落ち着いているため。
 ここでベテランの資金ディーラー達は思った。「3年前のイラク戦争の時には1兆円の買いオペをやったじゃないか」と。当時は戦争の危機もあって株価が下がっていたが、インタバンク市場は今と同様に落ち着いていた。遠くの戦争ですら「買いオペ」だったら、近くのミサイルなら当然ながら「買いオペ」であろう、というわけだ。
 インタバンクが落ち着いているのに強引に資金供給するのは“演技”。有事調節なるものがあるなら、今回も“演技”しておかしくない。何せ近場の有事だからだ。ところが、売りオペであった。遠くの戦争は買いオペ、近くのミサイルは売りオペ、となってしまった。インタバンク的な見方としては、本日のように資金需給に応じたオペを淡々と打つのが正しい。イラク戦争にかこつけて買いオペやった方がワザとらしいオペである。
 この日朝の調節会議では、ミサイルは雑談として話題になったが、即日オペを打つ発想は皆無であったようだ。まともである。調節ラインの幹部らは人が入れ替わっており、3年前のことは覚えていなかったのだろう。以下は余談である。
 3年前のイラク戦争勃発時は、「速水体制」から「福井体制」への移行期。当座預金残高15-20兆円の量的緩和が実行されていた。戦争の影響で株価は危機的な水準に下落中だったが、これ以上の追加緩和に慎重であった日銀は打つ手なし。そこで考えたのは、戦争要因で不安定化する株価の影響がインタバンクに及ぶのを防ぐため、という迂遠なロジックに基づくオペによる緩和っぽい演技であった。
 現場は札割れを恐れたが、一部メガの偶発的な積極応札で札割れは奇跡的に回避。そんな事情に疎かった日銀上層部は調子こいて追加1兆円をやろうと画策したが、さすがに現場の正論によって阻止されたと聞く。
 また、戦争要因で臨時の流動性供給をやったのは日銀だけ。当事者であった英米の中銀は普通の対応であった。恐らくは、戦争に参加していない日本の中銀が流動性供給を行ったのが解せなかったのか、FEDは日銀に「何をしているの」と探りを入れた、との話も聞いた。
 これは私の想像だが、戦争にかこつけた演技のオペだとの事情が英米中銀に分かるはずもなく、日本の金融センターがアルカイダか何かによる潜在的な危機にさらされ、日銀が予防的な流動性供給を行ったように見えたのではなかろうか。英米が把握しないテロ情報を日銀が持っているのでは。そんな重要情報があるなら、早く知らせろよ。それが探りを入れた背景だと思ったのが、考えすぎであろうか。

教訓 国際的な戦争リスクにかこつけた流動性供給演技は、国内的には何とか通用しても本物のリスクに直面した関係国には不審に見える→下手な鉄砲演技、いくら撃っても当たらない

インタバンクではこの1兆円供給、「保身オペ」とか「アリバイオペ」とか揶揄された。
by bank.of.japan | 2006-07-05 17:24 | 日銀 | Comments(0)
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