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『三〇兆円高地』攻防のエピローグ=やや速過ぎた撤退
 5年かけて築いた山を、兵士達は黙々と崩した。途中、必死に守った防衛線を幾つか通過した。30兆円、27兆円、22兆円…。いずれも御前会議がにわかに信じがたい大義を掲げて防衛を命じた地点であった。戦塵にまみれた将校に聞いた、「虚しくはないか」と。将校は「命じられたことをやるだけだ。思考は兵を臆病にする」とかすかな怒りを見せて答えた。
 撤退戦は現場指揮官の判断に委ねられた。作戦要綱はすでに「金利戦」に書き換えられ、軍事理論上も「山の高さ」が言及されるのはあり得なかった。作戦参謀らも撤退戦への興味は無くしていた。だが、不思議なことが起きた。天の声が響いたのである。「10兆円割れは確実」、「6兆-7兆円まで下げる」。現場に混乱が走った。
 陸軍法が改正される前、軍内では勝手に天の声を語る将校、勝手に天の意思をおもんばかる将校らが幅をきかせていた。下士官・兵から『御殿女中将校団』と揶揄されていたが、逆らうと辺境に飛ばされるリスクがあった。法改正により、御殿女中将校らは駆逐されたはずだったが、残党がいないとは限らなかった。「天」またはその「声」に自動反応する狂信的将校が撤退戦を混乱させる恐れがあった。
 その不安は杞憂だったが、別なところで撤退戦は混乱した。撤退速度が結果的に速かったため、まだ下の方だと思われた岩盤に衝突。インタバンク住民らは不安におののき、金利は上昇。ロンバートが発動されるに至った。金利が上がる標高に到達するのは時間の問題だったとは言え、「撤退戦の失敗ではないのか」との声が住民から挙がった。即日砲が打たれ、山は再び高くなった。天の声も実は虚報であったことが今になって分かった。
 作戦参謀らはそれでもなお撤退戦への興味は示さなかった。「フォワードルッキング」の理論に魅了され、天は「インフレクションポイント」と海外の赤い新聞から流用した難解なスローガンを発し、ひたすら金利を高くする作戦で頭は一杯だった。後方の混乱を問うと、「現場の話だ」と素っ気無い反応しかなかった。(続くかも)

以上は、創作である。念のため。
by bank.of.japan | 2006-05-30 22:05 | 日銀 | Comments(3)
Commented by 名無之直人 at 2006-05-31 01:44
なんかこう、オペって?、日銀って?、お金って?、とか素人考えがぐるぐると回り出してしまいますね・・・。

真面目な話、新聞でなく『旧聞』マスコミが媒体が欲しいです。アナリストやらストラテジストやら日銀の委員やらTVのアナウンサー達がかつて何と語っていたのかを淡々と記録に残して、彼らが如何に言説を翻していったのかを綴るような・・・。

戯言失礼しました。
Commented by システム5.1 at 2006-05-31 07:42
いえ、過去の検証は絶対やるべきだと思います。TVのアナウンサーはともかく...。
Commented by bank.of.japan at 2006-05-31 12:43
名無し之直人さん、どうもです。確かに新聞では要人・識者の言説をトラッキングするのは難しいです。記録ブログというのがあれば便利なんでしょうね。グーグルが発達すると自動モニターができそうな気もしますが。私もブログが継続するよう頑張りたいと思います。
システム5.1さん、どうもです。立ち位置や考え方が明確な要人・識者の場合、それらを理解していれば日々モニターする中で、検証は可能です。問題は、ときどき「えっ?」という主張をする人でして(マル公絡みの件とか…)。意図的なのか、それとも本気なのか、当惑することが多いです。気にしなきゃいいんでしょうが。ちょっと疲れます。
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